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フィアロコーポレーションが新モビリティ体験拠点「PHIARO MOBILITY HUB」を宇都宮市にオープン
ホンダ「S2000」を再定義する新プロジェクト発表
2026年9月18日 17:19
- 2026年9月16日 開催
フィアロコーポレーションは9月16日、栃木県宇都宮市篠井町に建設した新たなモビリティ体験拠点「PHIARO MOBILITY HUB」のグランドオープニングイベントを開催した。
新設されたカフェ&コミュニティスペース「M-TRACE」にてプレゼンテーションが行なわれ、施設誕生の背景が紹介されるとともに、JDMを次世代につなぐ「RE:DEFINING JDM」を掲げ、ホンダ「S2000」を再定義していく新プロジェクトが発表された。
新拠点「PHIARO MOBILITY HUB」に誕生した知的創造空間「M-TRACE」
「PHIARO MOBILITY HUB」は、旧ヒーローしのいサーキットを引き継いでリニューアルオープンした施設。発表が行なわれた「M-TRACE」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が空間デザインを手がけた新たなカフェ&イベントスペース。平日は貸し切り営業となるが、土日は一般開放となる。
サーキット場である「SHINOI RING」のレストハウスとしての役割を果たしながら、カフェやブックストア、各種イベントスペースを備え、モビリティとデザインが融合した知的創造空間として構築した。
あいさつに立ったフィアロコーポレーション代表取締役社長の岩崎晃彦氏は、「新しくなった施設の見学や体験を通して、私たちがこれから取り組む感動の可能性を少しでも感じ取っていただければ嬉しい」と呼びかけた。
職人の「木型製作」からデジタルへと、フィアロコーポレーションの87年の歩み
プレゼンテーションでは、岩崎氏がフィアロコーポレーションの歩みと、なぜ同社がサーキット運営という新たな仕組みを始めたのかを説明した。
フィアロコーポレーションは1939年に創業し、今年で87年目を迎えるモビリティ開発プラットフォーム企業。埼玉県の本社をはじめ、栃木、愛知、東京、福岡など国内8拠点、さらには米カリフォルニア州アーバイン、ハンガリーのブダペスト、中国・上海の代理店オフィスを含め、グループ全体で315名規模のオペレーションを展開している。
1939年の創業当時は日本の自動車産業の黎明期であり、図面から立体を起こす職人による「木型製作」が同社の原点。その後、1970年代のモータリゼーション飛躍期には、1978年に当時の価格で5000万円という巨費を投じて3次元CAD/CAMシステムを導入。材木置き場の中に最新の大型機械を設置するという当時の決断が、その後の近代的な開発企業へと成長する大きなターニングポイントとなった。
1980年代には自動車産業のグローバル化に伴い北米へ進出し、ホンダの初代「NSX(NA1)」の開発にも携わるなど実績を重ねた。1990年代~2000年代にかけては、環境・安全技術の実験車やプロトタイプ開発を手がけ、単体部品から車両1台分のデザイン開発およびエンジニアリングプロトタイプまで事業規模を拡大させた。さらに2010年代には、製品の価値が「ハードからソフトへ」「体験価値(UI/UX)」へと変化する中で東京・原宿にデザイン&エンジニアリングチームを設立し、顧客との企画段階からの共創を推進してきた。
そして、自動運転、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)、バッテリEV(電気自動車)、AIといった大変革期を迎えた2020年代から現在にかけては、電池パックの自社開発から車両全体の開発サポートに至るまで、高度なテクノロジーを提供する企業へと進化を続けているという。
リアルなテスト場と文化の創造。「PHIARO MOBILITY HUB」で目指す未来
岩崎氏は、リアルなテスト走行の場として「PHIARO MOBILITY HUB」を設けたのは、どれほどデジタル技術が高度化しても「実際にリアルな世界で走り、テストし、検証して技術を磨くプロセスは絶対に変わらない」と理由を強調。その上で、開発車両のテスト走行を行なう拠点の必要性を感じていた際、旧ヒーローしのいサーキットを引き継ぐ縁を得たという。
同拠点では、平日は自動車OEMやスタートアップ企業向けのR&D(研究開発)や先行技術テストの拠点として活用するが、休日はモビリティ文化を育み地域や一般ファンへ広げていく拠点として機能させる。
地域連携の取り組みとして、2026年9月24日には地元・宇都宮市との包括連携協定の締結を予定。岩崎氏は、近隣の小学校への出前授業によるモビリティ教育や、過疎地・高齢化地域における将来的なマイクロモビリティの検討、さらにはサーキットコースを活用した子供たちのリレーマラソン大会など、地域社会に貢献する取り組みを積極的に推進していく方針を示した。
さらに、「モビリティとは単にクルマやバイクで移動することだけでなく、人間が動くことに感動や価値を見出すこと」と語り、この地から新しい文化と人々のつながりを生み出していく意気込みを語った。
ワールドチャンピオンダンサーMiyu氏と、F1リザーブ兼SFドライバー岩佐歩夢選手
続いてステージには、フィアロが掲げる「CHALLENGER(時代を動かす人)」の象徴として、2人のゲストが登壇。
1人目は、19歳でハウスダンスの世界最高峰バトル大会「JUSTE DEBOUT」優勝を果たし、米ブルーノ・マーズ氏とのCM共演や日本人ダンサー初の米大手エージェンシーCAA契約など、世界的に活躍するダンサーのMiyu(ミユ)氏。2人目は、全日本スーパーフォーミュラ選手権で活躍するTEAM MUGENのドライバーであり、Visa Cash App Racing Bulls F1チームのリザーブドライバーを務める岩佐歩夢選手。
トークセッションにて、自身の活動モットーが「不可能を可能に」であるというMiyu氏は「達成するには挑戦や、自分自身で動く必要がある。『Movement is Life.』はまさに自分にピッタリで大切にしている言葉」と語った。
岩佐選手はレースについて、「エンジニア、メカニック、チームスタッフと共に活動している。最後に自分がマシンを速く走らせてゴールまで持っていく。それこそムーブメントでつながっている、そんな戦いをしているので、本当にピッタリの言葉」と語った。
岩崎氏は、「全然違う2人の若い世代が単身で世界に挑戦を続ける姿は、フィアロの企業文化とつながるところ。互いに刺激をして、高めあっていきたい」とエールを送った。
「SHINOI RING」での体験走行
プレゼンテーション終了後、各参加者は、グループに分かれ、敷地内の各コンテンツを巡るエクスペリエンスタイムへと移行した。
本格的なドライブやレース体験が可能なショートサーキット「SHINOI RING」では、フィアロが用意した体験用車両によるオンロード走行が行なわれた。BEVなどほかにJDM(日本市場固有モデル)コレクションとして日産「スカイライン GT-R」、ホンダ「NSX」「S660」、マツダ「RX-7」、トヨタ「スプリンタートレノ(AE86)」が用意され、大雨が降るなかであったが、参加者がコース走行を体験した。
雨のぬかるみを突き進む、新設ダートコースでのオフロード体験
敷地内に新しく増設されたオフロード/ダートコースでの体験走行は、当初は参加者のドライブによる体験を予定していたが、連日の雨によりコースが厳しいコンディションとなったため、安全面からフィアロのプロスタッフが運転する体験となった。
スズキ・ジムニーで、高低差のある山林や激しい泥濘地を走破、開発車両の泥濘路テストや将来的な災対車両・オフロードモビリティの検証場としてのコースを体験した。
F2実車から自社EVバギー「DUX」、最新シミュレーターまで多彩な展示
会場内およびピットエリアには、フィアロとモータースポーツへの深い関わりを示す特別な展示車両が多数並べられた。
注目を集めたのは、日産から貸し出されたEVコンセプトモデル「ハイパーフォース」でフィアロがデザイン開発協力として深く携わった車両として展示。
そして、岩佐歩夢選手がヨーロッパのFIA-F2選手権で実際に走らせた「F2レースマシン」の実車展示。
サーキット走行の合間には、同社がかつて開発に参加した初代ホンダ「NSX(NA1)」をはじめとする極めてコンディションの良いJDM(日本市場固有モデル)コレクションも間近で見ることができた。
また、同社がゼロから開発したオリジナルのEVバギー「DUX(デュックス)」も展示された。ハンガリーのグループ会社フィアロテクノロジーズが手がけたバッテリパックや走行駆動系システムを搭載し、SHINOI RINGを連続30周以上の耐久性と最高時速100km/h以上の性能を持つ。若手エンジニアを中心に試作能力を証明するために開発されたモデルで、瓦礫の多い災害現場での支援活動や路面検知センサーの搭載など、社会的価値の創出も視野に入れているという。
その他にも、スタートアップ企業Lean Mobilityの試作プロトタイプデモカー、将来のキッズ向けEVカート、さらには岩佐選手が実際にトレーニングで使用するプロ仕様およびSHINOI RINGのデジタルツイン体験が可能な「MOTOR HOME」のドライブシミュレーターなども展示された。
ダンサーMIYU×岩佐歩夢選手が載るS2000による夢のドリフト競演
15時過ぎに予定されていたスペシャルライブパフォーマンスの時刻が迫ると、それまで降っていた雨が急に上がった。
岩佐選手のドライブするS2000がコースを周り、パフォーマンス場所で派手にドリフトに進入すると、そこからダンサーのMiyu氏が降り立ち、ダンスパフォーマンスが開始された。
コース中央に置かれた特設エリアで力強く優雅なハウスダンスのパフォーマンスに合わせて岩佐歩夢選手が操るホンダ「S2000」がスタート、ダンスの動きとシンクロするように、S2000がMiyu氏の周りを連続ドリフトで周回するという、異例のコラボレーションが繰り広げられた。
ダンスとモータースポーツの臨場感が融合した演出、そして、奇跡的に雨が上がったことに対して、見守っていたメディアや関係者からは大きな拍手が沸き起こった。
パフォーマンスを終えたMiyu氏と岩佐選手は、M-TRACEのステージに戻り、初めてドリフトするクルマと競演したMiyu氏は「ダンスでは絶対にかからない遠心力や重力で、初めての体験ですごく新鮮だった」と語り、笑顔を見せた。
また、ダンスの周囲で緻密なマシンコントロールを披露した岩佐選手は、「今までやったことのないパフォーマンスだったけれど、ダンスの動きを見ながら周りを回っているので、自分自身が一番『ムーブメント』を感じていたと思う」と手応えを語った。
岩崎氏も「雨で屋外パフォーマンスができない場合のオプションBを用意していたが、使わずに実施できて本当によかった」と安堵の表情を浮かべていた。
フィアロが挑むプロジェクト「RE:DEFINING JDM」と「S2000プロジェクト」
イベントの最後には、岩崎氏から新プロジェクトのプレゼンテーションが行なわれた。それが、日本のスポーツカー文化を次世代へと継承・再定義するプロジェクト「RE:DEFINING JDM」の「S2000プロジェクト」の発表。
対象となるホンダ「S2000」は、1999年から約10年間にわたり生産された日本を代表するオープンスポーツカー。岩崎氏も、プロポーションの美しさ、約1.2tという軽量さ、高いボディ剛性、前後重量配分50:50、そして9000rpmまで回るNA(自然吸気)エンジンといった要素を備え、「僕の中では、当時のいわゆるそのスポーツカーの到達点、完成系の1つなのかなと思う」と絶賛。
岩崎氏は「これからこういうクルマっていうのは、なかなか出てくることはないだろうなと思う。こういったクルマの魅力を、今の時代にフィアロがどういうことをできるのかを話したい」と語り、プロジェクトのコンセプトを発表した。
それは、単なるレストアやアフターパーツの足し算ではなく、長年自動車OEMの量産開発を担ってきたフィアロのエンジニアリングとデザイン技術を注ぎ込み、オリジナルへのリスペクトを持った上で現代の技術で「再解釈」するプロジェクトだとした。
たとえば、エクステリアは、オリジナルのプロポーションや魅力を極力尊重・保持しながら現代的に落とし込む。インテリアは最新のテクノロジー、デジタルUI、マテリアルを取り入れ、時代に合わせた空間へ大胆に変更する。
そして、最後に走りについては、OEM開発で培った技術を投入し、単純な馬力競争ではなく、ストリートやコーナーをいかに気持ちよく走れるかという走りの質と足まわりを徹底的に磨き上げると説明した。
さらに、開発の拠点として「SHINOI RING」を最大限に活用。すでに岩佐歩夢選手によるテストドライブが行なわれ、車体に装着されたセンサーやライダー(LiDAR)から走りのデータを取り込んでデジタルツイン化を進行させている。岩佐選手のドライビングデータやフィーリング、Miyu氏の持つ身体表現やリズムの感性、そしてフィアロのデザイン・エンジニアリングチームの技術を融合させ、人の感性に響く最高の一台を作り上げていくという。
このS2000はまず1台だけ作り、来年には完成させたいという。希望者がいれば販売もする予定で、ナンバーも取得して公道走行も可能。現在はデザインに手を入れ始めるくらいの段階だという。
ただし、一方で岩崎氏は「売るのが目的ではない」とも語る。売ることを第一に考えるよりもオリジナルの素晴らしさを生かしながら「今の時代にS2000があり、今のフィアロの技術があれば、こういうクルマになる」という提案が第一であることを強調した。





































































