試乗記

Modulo独自技術“実効空力”の基礎となったエアロパーツを装着した「S2000」と、進化した初代「NSX」に乗ってみた

Moduloパーツを装着したホンダを代表するスポーツカー「S2000」と「NSX」を試乗してみました

Moduloパーツを装着した過去のスポーツカーを振り返る

 ホンダ純正アクセサリーブランド「Modulo(モデューロ)」が誕生30周年を迎えた。そこで開発元であるホンダアクセスは、Moduloブランドの過去・現在・未来を体感できる「Modulo 30th Anniversary EXPO」と題した取材会をモビリティリゾートもてぎで実施した。

 アルミホイール、エアロパーツ、サスペンションなどを主に開発してきたModuloは、1996年にはカッコよさだけでなく空力性能向上を意識したエアロパーツの開発をスタート。現在のコンプリートカー「Modulo X」にもつながる“クルマをひとつの塊ととらえ、全体の空力をバランスさせる”を当時から実践しており、1999年に空力効果を持たせたS2000用のModuloエアロを開発。やがて2008年には独自のエアロダイナミクス開発思想「実効空力」を具現化し、当時のFD型シビックから採用したほか、2011年にはNSXのエアロパーツに「実効空力」を取り入れている。

 今回の試乗会では、そのModuloのエアロパーツを装着した「S2000」と、実効空力の黎明期のエアロパーツを装着した「NSX(初代)」に試乗することができた。過去に販売された、中にはかなり激レアなものもあるという各種パーツを装着した、ホンダを代表するスポーツカーのデモカーに試乗できたのは貴重な経験だった。

タイヤの接地性を高めて4輪でスムーズに曲がる2台

 S2000は発売年の1999年式がベースで、実効空力を提唱する前の当時の仕様を再現したものだが、すでにトータルバランスを意識したチューニングが施されている。これにより、接地感を高めるとともに、一体感のある気持ちよいドライブフィールを実現しているという。少し遅れて追加発売されたローダウンサスペンションやエキゾーストも装着されていた。

試乗車のS2000(AP1)は1999年式。ボディサイズは4135×1750×1285mm(全長×全幅×全高)、車重は1240kg、ボディカラーはグランプリホワイトで、内装色はブラック/レッド。1999年の価格は338万円(東京地区)
搭載する直列4気筒2.0リッターエンジン(F20C)は、最高出力250PS/8300rpm、最大トルク22.2kgm/7500rpmを発生。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式。装着タイヤサイズはフロントが205/55R16、リアが225/50R16
Moduloフロントアンダースポイラー 当時の価格は5万円
ボディ床下の空気の流れに着目し、フロントアンダースポイラーは形状にこだわっただけでなく、フロントストレーキをセットで装着する仕様にしていた。今ではどんな車種にも標準で装備されているアイテムだ
リアストレーキ(当時の価格は3万8000円)は4か所の整流板で構成され、ボディ床下の整流効果を高め、スムーズな空気の流れを生み出し高速走行時の安定性を向上させていた
Moduloトランクスポイラー(当時の価格は3万8000円)
Moduloスポーツマフラー(当時の価格は13万9000円)
当時のカタログ

 一方のNSXは、3.2リッターのC32B型エンジンが搭載されてからのNA2のタイプSをベースに、NSXの発売20周年となる2011年にアニバーサリーアイテムとして発売され、生産終了品のスポーツサスペンションやエキゾーストのほか、実効空力の考え方を取り入れ、リアのマイナスリフトを実現しリフトバランスを最適化するというトランクスポイラーが装着されていた。

試乗したNSX(NA2)は1999年式でグレードはTYPE S。ボディサイズは4430×1810×1160mm(全長×全幅×全高)、車重は1320kg。ボディカラーはミッドナイト・パープル、内装色はブラック。1999年当時の価格は1035万7000円
搭載するV型6気筒3.2リッターエンジンは、最高出力280PS/7300rpm、最大トルク31.0Kgm/5300rpmを発生。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式。装着タイヤサイズはフロントが215/45ZR16、リアが245/40ZR17
ドライカーボン製のModuloトランクスポイラー(当時の価格は78万円)
当時のカタログ

 どちらも乗るのはひさしぶりのこと。9000rpmまで回るAP1のF20C型エンジンは、やはり絶品この上なし。それを引き立てるビートの効いたサウンドもまた絶品だ。さりげなくスポーティになったルックスもよく似合っている。

 NSXもいわずもがな。ほどよくひきしまった足まわりを持ち、空気の流れを最適に制御することで、接地性を高めて4輪で曲がるというModuloの理念が、この2台で構内路を短い時間ながらドライブしてもいくばくか感じられた。

サスペンションは、Moduloスポーツサスペンション(当時の価格は15万円)を装着。車高が10mmダウンするほか、フロントのみ5段階の減衰力調整機構が備わっている
さりげなくスポーティなルックスになりつつ、空力効果を得られるのがModuloの凄さだろう

 市販状態で完成品と評されるS2000とNSXは、エキゾーストやエアロをいじるとかえって性能がダウンするアフターパーツが少なくないと聞いたものだが、もちろんModuloならそんなことはない。Moduloのこれまでの独自の取り組みとその優れた性能に感銘を受け、今後がますます楽しみになってきた。

サスペンションは、前後5段階の減衰力調整機構を備えるModuloスポーツサスペンション(当時の価格は27万8000円)を装着している
NSXも4輪の接地感のよさが印象的であった
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一