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世界初の「インバータ・コイル一体化構造」を使い「無線給電道路システム」社会実装を目指すホンダ・大成建設・大成ロテックの共同研究説明会
2026年10月6日 11:48
- 2026年10月5日 開催
本田技術研究所、大成建設、大成ロテックの3社は10月5日、共同で取り組んでいる「磁界結合方式無線給電道路システム」の共同研究内容ついて解説する説明会を都内で開催した。
3社はカーボンニュートラルの実現や「自由な移動の喜び」の提供に向け、BEV(バッテリ電気自動車)の利便性向上を支える技術開発やサービス展開に共同で取り組んでおり、無線給電道路システムによるD-WPT(走行中無線給電)は充電に伴う停車時間や充電頻度、車載する駆動用バッテリの搭載量などを低減する技術と位置付けられている。
同日に3社連名で報道発表を行ない、磁界結合方式を採用する無線給電道路システムの概要や技術的優位性について公開したほか、2026年末から福島県田村市にある大成建設グループ次世代技術実証センター/田村「T-FIELD/TAMURA」実証実験走路の一部にD-WPTの試験走行路を構築し、大型商用車向けを視野に入れた最大150kWの高出力での性能検証などを開始。さらに2027年度以降には、東日本高速道路が実施する館山自動車道(千葉県)における走行中無線給電技術の実証実験「館山プロジェクト」に参画するといったロードマップを明らかにした。
GAユニットは「インバータ・コイル一体化構造」を世界初採用
最初に登壇した本田技術研究所 総合研究センター 電動パワーユニット研究開発室 開発責任者 上田拓氏は、まず、3社での取り組みがスタートした背景について説明。
ホンダでは「人々に自由な移動の喜びをサステナブルに提供し続けること」、大成建設グループでは「人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献すること」という目標を掲げており、それぞれ事業領域は異なるものの、技術をつうじて「持続可能な社会の実現に貢献したい」という思いを共通して持っていることから、人や物の移動を支えるモビリティの分野と交通を支える社会インフラで連携を図り、それぞれで進化していくことが重要だとの考えから共同研究が行なわれることになったと述べた。
磁界結合方式による無線給電道路システムの実現に向けて3社はそれぞれの得意領域で技術開発を行ない、ホンダは道路に埋設して車両に送電する直流配電型の「GA(Ground Assembly)ユニット」に加え、車両側で受電する「VA(Vehicle Assembly)ユニット」の開発を担当。大成建設はインフラの系統電源から供給される交流のAC電源を直流のDC電源に変換してGAユニットに供給する「直流電源システム」を開発し、大成ロテックはGAユニットや直流電源システムからGAユニットに電力供給する直流配線などを道路に埋設して無線給電道路システムを実装するための施工方法について開発している。
一方、GAユニットを埋設した無線給電道路の舗装構造や無線給電道路と関連設備に関する更新手法の開発、耐久性試験や直流配電実験、無線給電実験の実施などについては3社共同で取り組むことになっている。
走行している車両に非接触で電力供給を行なうD-WPT実現のためにホンダが2021年から開発を続けてきたVAユニットとGAユニットは、インバータとコイルを同じユニット内に収めた「インバータ・コイル一体化構造」をそれぞれで採用。道路埋設ユニットでこの技術を採用するのは世界初としている。
VAユニットは車両に対する搭載性のよいコンパクトサイズでありながら高出力の受電を可能にしており、1つを乗用車に搭載するケースから大型商用車に複数を搭載するパターンまで対応。共通仕様のVAユニットで幅広い用途をカバーする構造となっている。
GAユニットではインバータとコイルを一体化するため、大型車が通過する際に発生する厳しい荷重に耐える強度と耐久性を備えつつ、一方でアスファルト舗装に対する影響を抑える適切な剛性の設定といった技術課題をクリアすることが求められた。
これに向け、ホンダがHEV(ハイブリッドカー)やBEVの開発で培った過酷な環境に対応して信頼性を維持するインバータ技術を活用したほか、車両開発でなじみ深いCAE(Computer Aided Engineering)解析によって路面からの荷重がGAユニットや舗装にどのような影響を与えるか詳細なひずみ量解析を行ない、GAユニットの構造を最適化。4輪車開発で培ってきた知見の活用でインバータ・コイル一体化構造の採用を実現している。
また、道路下に埋設されるGAユニットと直流配線、道路脇に設置される直流電源システムは「直流配電型GAシステム」によって接続。これまでにあるD-WPTではコイルを備えた給電ユニットとインバータが別々で、給電ユニットとインバータは交流配線で1対1で接続される構造のため、埋設する給電ユニットと同じだけ交流配線が必要となり、インバータも直流電源システムと給電ユニットのあいだに埋設することになるため、配線が複雑化するとともに広い埋設エリアを必要としていた。
直流配電型GAシステムではGAユニット内にインバータとコイルが収められているため、別立てのインバータを用意して埋設する必要がなく、直流電源システムからGAユニットまでの配線も直流配線となり、隣接するGAユニット同士を数珠つなぎにするレイアウトも可能になって配線の簡素化と埋設エリアの縮小を実現。道路工事の施工性を高められると期待されている。
最後に上田氏は「ホンダは今後、大型商用車から乗用車まで含めた幅広いモビリティでの展開を見据え、日本での社会実装や、将来的にはグローバル展開も視野に入れてさらなる技術革新を行なっていきます。この技術の社会実装はホンダだけで成し遂げることはできません。さまざまな分野の皆さんと垣根を越えて共創しながら取り組むことが重要だと考えています。今後もホンダは無線給電の技術をとおして、自由な移動を支える新たな社会インフラの実現に挑戦してまいります」とコメントしている。
GAユニット埋設エリアの通過中は走行で消費される電力以上に給電
路面への施工については大成ロテック 研究開発部 開発責任者 加納孝志氏が説明を担当。施工方法や更新方法について検討する試験施工では、すでに供用が開始されている道路に直流配電型GAシステムを埋設してD-WPT化するシチュエーションを想定して手法を検討しているという。
まずは既存のアスファルト舗装の表層50mmを削り取ったあと、GAユニットを効率よく適切に設置できる縦横幅に合わせて中間層を計90mm削って埋設スペースを確保。切削面の不陸調整と接着剤の塗布を行なってGAユニットを設置し、GAユニット周囲の作業スペースに速硬性モルタルを打設。最後に表層のアスファルトを施工し直してD-WPT化が完成する。
大成建設 次世代技術開発室 開発責任者 遠藤哲夫氏は、2025年からスタートした取り組みで明らかになったインフラ側の課題と対策、今後に向けたマイルストーンなどについて説明した。
2025年のステップ1では埼玉県鴻巣市にある大成ロテック技術研究所で舗装材の物性試験を行ないつつ、埼玉県幸手市にある大成建設グループ次世代技術実証センター/幸手「T-FIELD/SATTE」でインフラ側の課題として見えてきた「施工性と将来的な更新性の確保」「車両総重量20tクラスの大型車の走行に耐える舗装構造の実現」「直流配電型GAシステムにミリ秒間隔で大電力を安定して供給する直流電源の実現」という3点の解決に向けて研究開発を開始した。
2026年のステップ2ではT-FIELD/SATTEで3つの課題解決に向けた研究開発を継続しながら、ここで得た成果をT-FIELD/TAMURAにある実証実験走路に反映させ、実走行での機能検証などを行なってその後の公道実証に進めていく。
1つめの「施工性と将来的な更新性の確保」という課題については大成ロテックによって開発されたD-WPT化の施工フローによってクリア。2つめの「車両総重量20tクラスの大型車の走行に耐える舗装構造の実現」に向け、舗装路面を模した「舗装試験体」を使い、T-FIELD/SATTEにある輪荷重試験機で20tクラスの大型車が頻繁に通過する交通条件を再現した台上試験で耐久性評価を実施した。
この結果、当初用いた従来工法ではGAユニットを埋設した位置にひび割れが発生することが確認され、対策が必要だと判明。研究開発を経て舗装構造やGAユニットの剛性を見直していった結果、走行による荷重で「わだち掘れ」はできていくものの、問題となったひび割れは起きなくなっている。具体的には、将来的な路面更新で打ち替えることになる表層については一般的に使われているアスファルトをそのまま利用してランニングコストを抑えつつ、中間層や基層に独自の工夫を施す構造にしているという。
「直流配電型GAシステムにミリ秒間隔で大電力を安定して供給する直流電源の実現」では、高速道路での利用を想定した80km/h走行時にGAユニット上をVAユニットが通過する36ミリ秒というわずかな時間で可能な限り効率よく電力供給するべく、GAユニットに電力供給する直流電源システムを新たに開発。
直流電源システムでは系統電源から供給される交流電源を直流電源に変換する「AC/DC変換器」を備えるほか、事前に電力を蓄えて瞬間的に放電できる「キャパシタユニット」を採用。GAユニットにVAユニットが接近して給電可能になってから1.5ミリ秒で最大出力の150kWに近い給電を行ない、高効率化を図っている。
実際にどれほどの電力が駆動用バッテリに充電できるかについては車種や走行条件などによるばらつきが大きく、まだ開発中の技術ということもあって明確な数値は示されていないが、少なくともGAユニットが埋設されているエリアを乗用車で通過している状況では走行で消費される電力を上まわる電力供給が行なわれ、バッテリ残量が増える傾向になることは間違いないとコメントされており、あとはどれだけGAユニットのある区間を増やせるかがキーになると説明されている。
T-FIELD/TAMURAにある実証実験走路では2026年度末までに1周約900mというコース内の40mにGAユニットを使ったD-WPTの道路施工を実施。最大150kW出力でのD-WPT性能実験に加え、40tクラスの荷重車による積荷走行試験、長期耐久性評価などを行なう計画としている。



















