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大成建設など9社、西新宿エリアにおける5G通信を活用した自動運転車とインフラを協調させる実証実験説明会

2022年1月20日 実施

西新宿エリアで行なわれている実証実験の様子。自動運転で交差点を右折している

自動運転の社会実装を目指す取り組み

 大成建設グループは1月20日、「西新宿エリアにおける自動運転移動サービス実現に向けた、5Gを活用したサービスモデルの構築に関するプロジェクト」のオンライン説明会を実施。参画企業が協力パートについての説明を行なった。

 このプロジェクトは、東京都が目指す未来の東京戦略「スマート東京」の1つで、西新宿エリアの移動環境の整備や地域の魅力創出を目標に、街作りのなかに自動運転が浸透する未来を目指し、サービスモデル構築に向けて必要となるインフラ協調、5G活用の検証を行なうもの。

 プロジェクト参画企業は、日本信号(インフラ協調)、KDDI(5Gなど)、大成ロテック(インフラ協調)、小田急電鉄(実証パートナー)、プライムアシスタンス(遠隔見守り)、損保ジャパン(リスク評価・保険)、アイサンテクノロジー(3Dマップ作成)、ティアフォー(システム・車両開発)で、大成建設を含めて全9社が関わり、それぞれが自社の強みを活かせる分野で協力するという。

実施参画企業
プロジェクト概要(日時・車両)
プロジェクト概要(走行ルート)

 実証実験は、新宿駅西口地下ロータリーから都庁を回る約2kmのコースで、トヨタの「JPN TAXI」をベースに開発された自動運転対応車両が使用される。期間は1月22日~2月4日で、当初は一般人の試乗も予定していたが、新型コロナウイルスの感染再拡大にともない関係者のみの試乗となっている。

自動運転の仕組み

自動運転に使用する車両について

 ティアフィーの事業本部の竹内氏によると、使用する車両はJPN TAXIがベースで、自動運転用LiDAR(ライダー)を6個、物体認識用カメラを6個、信号認識用カメラを2個、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)を1個、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を1個搭載。アイサンデータテクノロジーにより事前に取得している3D点群地図データと、実際に自動運転車両が計測している周辺の3D点群データ、走行軌跡データ、カメラ画像データを組み合わせて処理し、自車位置や周辺構造物などのデータを取得。周囲にほかの車両がさほどいなければほぼ自動運転が可能なレベルになっているという。逆に車歩分離されていない道路や車線がない道路だと、完全な自動運転はまだ難しく、そういった場合は運転席のドライバーが手動で介入することになる。

高精度3次元地図について
アイサンテクノロジーが取得している3D点群データ
自動運転車両が取得する3D点群データを重ね合わせて処理
すべてのデータを重ね合わせた状態

今回の実証実験の大きなテーマは「インフラ協調」と「5G技術の活用」

 大成建設の都市開発部 新事業推進本部 デジタル・スマートシティ推進室長の飯塚氏によると、今回の実証実験の大きなテーマは、信号や周辺環境を含めた「インフラとの協調」と、高速通信による自動運転車両の遠隔見守りやUX(ユーザーエクスペリエンス)の提供、信号情報の連携などを行なうための「5G技術の活用」だという。

今回の実証実験の2つの大きなテーマ

 日本信号のスマートモビリティ推進室 内山氏によると、信号灯色と現示切替までの残秒数などの信号情報を、高速な5G通信で自動運転車両へ通知し、予備減速や発進準備が可能となりスムーズな交差点通過を支援できるとしている。夕方の西日や街路樹など外部の影響されることなく信号情報を正しく認識できる点もメリット。交差点に設置しているセンサーやカメラにより、歩行者や対向直進車の情報なども検出して自動運転車両に送信することで、車両側のセンサーでは死角になる場所も確認することができるようになり、より安全な右左折を支援できるとしている。

信号情報の連携による走行支援
危険情報の連携による交差点走行支援
信号情報連携の概要

 今回の実証実験では「中央通り東」交差点と「新宿中央公園前」交差点の、2か所で信号情報連携が実施される。特に「中央通り東」交差点では対向車線をまたぐ「右折」となるため、カメラを使った歩行者や対向直進車の情報も連携して安全性を高めている。

 また、実証実験の乗り場となる新宿西口地下ロータリーは、停車車両が多く死角が多く安全面に課題があったが、カメラを設置することでカーブミラーのように死角をなくし、インフラ側で自動運転車両が安全に発進できる支援も行なうという。

ロータリーに設置したセンサー(カメラ)を用いた発進支援
自動運転車両がスムーズに発進できる環境を5G通信を活用して整えている

 その他にも、新宿西口地下ロータリーから都庁方面へとへ向かう約300mほどのトンネルでは、トンネル内でも自社位置をより正確に推定させるために、壁面に反射強度の異なる塗料を塗布したパネルを設置。車載のLiDARが反射強度の違いを認識することで自車位置を正しく推定できるという。大成ロテック営業本部参与の斉藤氏によると、この塗料は3層構造で「ワンダーコーティングシステム」と称するもの。すでに高速道路や国道のトンネル内装工にも採用されているもので、経済性、耐久性、視認性、快適性の向上などが優れているだけでなく、国交省に認定された不燃材料でもあるという。今回は実証実験用に2層目の塗料をLiDARに検知されやすいように改良を加え、白色系とグレー色系の2種類を使用している。

トンネル内での走行支援について
反射強度の異なる塗料を使用している
実際のトンネルの壁面

自動運転車両を見守る安心と安全への取り組みも実施

 損保ジャパン リテール商品業務部の國井氏は、これまで数多く参加してきた実証実験で得られた知見を活かし、より安全に安心して自動運転車両の実証実験をサポートするとしている。具体的には、走行前にリスクを評価する「自動運転リスクアセスメント」、走行中の自動運転車両を遠隔でチェックする「自動運転見守りサポート」、万が一の事故の際に保障を提供する「自動運転専用保険」の3つのサービスを検討しているという。また、自動運転リスクアセスメントについては、デジタルの力を活用することでさらなるレベルアップを目指していて、「自動運転デジタルリスクアセスメント」を開発しているという。これまで蓄積してきた事故データをはじめ、自動運転システムや3D点群データを活用してより精細なリスク評価を行なえるようにしつつ、走行環境のリスクを定量的に客観的に可視化して安全な実証実験をサポートするとしている。

損保ジャパンの自動運転向けサービス概要
損保ジャパンの自動運転リスクアセスメント
5G通信を活用した遠隔見守りサポートサービスについて
【東京都】「西新宿エリアにおける自動運転移動サービス実現に向けた5Gを活用したサービスモデル構築に関するプロジェクト」紹介動画(5分53秒)