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JR西日本とソフトバンク、自動運転BRT専用テストコースで「自動運転・隊列走行 BRT」実証実験開始

2021年9月27日 発表

滋賀県野洲市に設置された自動運転と隊列走行技術を用いたBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)専用テストコース

 JR西日本(西日本旅客鉄道)とソフトバンクは9月27日、滋賀県野洲市に自動運転と隊列走行技術を用いたBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)専用テストコースを開設して、10月から「自動運転・隊列走行 BRT」開発プロジェクトの実証実験を開始すると発表した。

 両社は、日本初となる連節バスの自動運転化や自動運転バス車両の隊列走行の実用化を目指して、2020年3月に「自動運転・隊列走行 BRT」開発プロジェクトを立ち上げた。これまでに、専用テストコースの設置など実証実験に向けた準備を進めてきた。

 今回、専用テストコースの走行路が完成することに伴い、3種類の自動運転車両(連節バス・大型バス・小型バス)を用いて、車種が異なる自動運転車両が合流して隊列走行などを行なう実証実験を開始する。

 今後、テストコースでの実証実験を通して、「自動運転・隊列走行 BRT」の技術確立とシステムの標準パッケージ化を目指し、2020年代半ばをめどに次世代モビリティサービスとして社会実装を目指すとしている。

自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの開発プロジェクトコンセプト動画

最高速60km/hでの運用を目指した実証実験

 同日開催された記者会見に、西日本旅客鉄道 鉄道本部 理事 イノベーション本部長 久保田修司氏、ソフトバンク 執行役員 法人事業統括付(広域営業担当)兼鉄道・公共事業推進本部 本部長 清水繁宏氏が登壇して、同プロジェクトの狙いを話した。

 実証実験を行なう専用テストコースは、滋賀県野洲市冨波乙のJR西日本網干総合車両所宮原支所野洲派出所内に設置。総面積約2万2800m 2 で、コース総延長約1.1km、直線最長約600mとなる。

 同プロジェクトのポイントとなる隊列走行の実証では、連節バス・大型バス・小型バスといった3種類の自動運転車両を使用。隊列の車間は走行時10~20m、停車時1~3mで制御、走行区間が異なる車両を組み合わせ/解除することでさまざまな需要に対応するため、最大4台の車両で隊列走行を目指す。

 同プロジェクトにおいては、BRT専用道路での運用と条件を限定することで、自動運転技術の早期実用化を目指しており、自動運転車両の最高速についても60km/hで開発を目指すという。

 ソフトバンクの清水氏は「駅間での最高時速、巡航速度の最高が60km/hを目指して開発を進めております。それを1つの目標として、障害物検知であるとか、信号との連携であるとか、対立走行のスペック、こちらの方を開発しています。世の中にある自動運転車両は、15km/h~30km/hぐらいで走ってると思うんですけれど、やはり、今回、基幹網としてのBRTを考えた時には、それでは非常に輸送能力が落ちますので、今60km/hを想定してスペックを詰めている状況でございます」と説明する。

 JR西日本が「自動運転・隊列走行 BRT」サービスの開発に取り組むのは、次世代モビリティサービスの選択肢を拡げる狙いがあるといい、「専用道による安全性・定時性・速達性の実現」「専用道の利点を生かした自動運転・隊列走行の早期実現」「需要に応じた柔軟な輸送力の確保」「他の交通手段と連携した一体的でフラットな(段差の少ない)交通網の実現」「運転手の担い手不足の解消」「シンプルな設備によるローコストなモビリティサービスの実現」をそのメリットに掲げた。

 BRTに対しては、導入コストや維持管理コスト低減への期待があるといい。西日本旅客鉄道の久保田氏は「まず1つは線路を敷くということではなく、道路はアスファルトの整備でやっていけるということと、車両についても鉄道車両に比べるとバスは大型のバスにしても安価に入手することができます。そういった意味で地上設備、バス車両ともにコスト低減が鉄道に比べると期待はできると考えてます。もう1つあるのは、メンテナンスと維持コストで、線路に比べると道路の方がメンテナンスといったものは少ないと考えてますので、全般的にはコストは下がっていくと期待しております」と述べた。

2023年に専用テストコースでの自動運転・隊列走行に関する技術確立へ

 テストコースにおける主な実証実験項目としては、「自動運転・隊列走行に関する車両の技術検証」「自動運転・隊列走行に適した走行環境・地上設備の検討」「乗降場への正着制御や車両の遠隔コントロールなどの運用面の検討」「さまざまな環境下における比較検証を通じた事業性の検討」が行なわれる。

 今後のスケジュールとして、2021年10月に自動運転に向けた車両の機能試験開始、2022年春ごろに3種類の自動運転車両を用いた隊列走行の試験開始。そして、2022年夏ごろには、乗降場への正着制御や車両の遠隔コントロールなどの運用面の試験開始。

 2023年に専用テストコースでの自動運転・隊列走行(先頭車:ドライバー同乗、後続車:無人運転)に関する技術確立を目指す。

プレゼンテーション資料