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江の島で実証実験中の自動運転バスに乗ってみた! 「信号協調」や「交差点センサー」を実際に目で見て感じて体験

2019年8月21日 開催

ゆきぴゅーも次世代モビリティを体験ですの!

 8月21日から開始された江の島での自動運転バスの実証実験の様子を、こちらの記事(小田急グループとSBドライブ、江の島で自動運転バスの実証実験開始。対向車の有無を確認して右折など高度化)でお伝えしましたが、同日に行なわれた報道関係者向けの試乗会に私も参加してきましたので、そのレポートをお伝えします。

日野自動車の「ポンチョ」をベースに改造した実証実験の車両
車両の前後左右に見慣れない色々な機材が!?
通信アンテナやレーザーレーダー、ミリ波レーダーなどが装着されています

 さっそく鮮やかな青いボディが目を引くバスに乗り込みます。8月26日~30日に行なわれる一般モニターの試乗では、乗車の際に事前予約した人のスマートフォンに、本人確認として車掌さんからデジタルスタンプを押してもらえるとのこと。今回の実証実験では、近い将来ドライバーが無人になった場合でも人手が必要なシーンがあると考えて、車掌さんの役割をする人が乗車しているのです。では、出発~!

スマートフォンの画面上にこのようなデジタルスタンプが押されます。ここでまず私は「不思議~!」と感動。スタンプの裏に秘密があります
湘南海岸公園の駐車場から国道に出て、試乗スタート!

 今回の実証実験は「自動運転レベル3」相当の有人走行ということで、運転士さんは座っていますがハンドルに手を触れていません。ただし、自動運転で対応できない事象が発生した場合にはすぐに手動で操作するので、両手は常にハンドルの近くにスタンバイしているのが後方座席からも見えました。

運転士さんがハンドルに触っていないのが確認できます

 2018年に行なわれた実証実験と比べ、大きく進化した点は信号機との連携です。「信号協調」といって、「前方の信号が今は何色で、何秒後に変わるのか」とか、「通過するころには何色になるのか」などを常に予測して車両制御しているのだそう。なので、もし赤信号になると予測した場合には、減速しながら信号に近づいていくことできるのです。すご~い! それって急ブレーキや急発進などの防止にも繋がりますものね。

“ベビーカーを利用している人をサポートする”というデモンストレーションも組み込まれていました

 技術協力をしたコイト電工の担当者によると、交通量に応じて決定している信号の秒数を、交通管制センターから通信回線を経由してバスに提供していて、このような信号制御機を用いた自動運転車両への情報提供は今回初めての試みなのだとか。今回は走行ルート上にある5つの信号すべてと協調・連携ができているのだそうですよ。

信号は青でも予測が停止になっているのは、対向車がいるので止まるという指示を出しているから。その後、対向車がいなくなると自動運転で右折
左折と右折なら断然右折の方が難しいとのこと。やはり対向車が一番の課題なのですね

 国道での走行は最高速を40km/hに設定しているそうですが、夏休み中ということもあって江の島周辺の道路は混雑気味。なかなか40km/hまでは出せないという状況でした。さて、しばらく走ると今回の実証実験の最大の山場とも言える「江の島入り口」の交差点にさしかかりました。ここでは路肩の高い位置に「交差点センサー」を設置して対向車を検知し、LTE回線でバスに情報を送っています。これも今回から始まった新しい技術。ひっきりなしに通り過ぎる対向車をしっかり待って、時差式信号機の矢印が出たところで正確に自動運転で右折した時には、心のなかで「よし!」とうれしくなってしまいました。

江の島大橋の上は最高速が35km/hに設定されています
自動運転に慣れてきて、景色を眺める気持ちの余裕も
運転士さんの後方にある2つのパネルにはいろいろな情報が
中でもこれが大注目! ルート上にある5つの信号機のリアルタイム情報が表示されています

 橋を渡って江の島島内に入ると、磯料理店などが立ち並ぶにぎやかなエリアを通過します。ここで出てくるのが信号機のない横断歩道。往来の多い横断歩道なので、ここでは「停止する」プログラムを組み込んでいるとのこと。歩行者がいなくなると「発車します。おつかまりください」のアナウンスがあって、再び自動走行が開始されました。

「停止します」のアナウンスがあり、数秒間停車
歩行者がいなくなったら再び発進

 走行中のバスでは車内での転倒事故などを防止するため着席することになっていますが、立ち上がって移動したりする人が出た場合にはAIセンサーが検知して「危ないですので走行中の立ち上がりや移動はご遠慮ください」とアナウンスが流れます。それと合わせて車内の様子を遠隔で見守る「ディスパッチャー(Dispatcher)」と呼ばれるシステムも運用。異常を検知するとピンポーン、ピンポーンとアラームが鳴り、遠隔監視しているスタッフから「何か異常はありますか?」との呼びかけがあったりします。

遠隔で車内を見守っているスタッフ。この日は藤沢市観光センター内で遠隔監視していました

 江の島島内は残念なことに路上駐車が多く、三角コーンを置くなどの対策をしているそうですが、やはりゼロにはならないのが現状です。自動運転バスの場合、前方に路上駐車があった場合には手動での対応になりますが、今年はすれ違えるくらいの道幅があるところに限り、路上駐車しているクルマを自動で回避する機能を組み込んでいるのだそう。試乗では、ちょうどいい場所(?)に路上駐車のクルマがあったので、その機能も体験。車内では「障害物を検知しましたので車線変更しています」とアナウンスされ、路上駐車の車両を回避しながらゆっくりと右へ、そしてまた元の車線に戻るという流れがありました。

車内には前方や運転士さんの様子が分かるモニターも設置
アナウンスだけでなく画面表示の文字でも注意喚起

 再び江の島大橋を渡って、今度は交差点を左折。新江ノ島水族館前のバス停で降車して15分ほどの自動運転バス試乗は終了。路上駐車や横断歩道がない場所での歩行者の横断、まわりのクルマの急発進や急ブレーキなどが、自動運転バスの実現に向けた大きな課題なんだなと感じた貴重な試乗体験でした。歩行者としてもドライバーとしても、近い将来に訪れる自動運転社会について考えるいいきっかけになりました。

ドライバーなしの自動運転バスが江の島を走る日も近い!?