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相鉄バスと群馬大学、営業運行として日本初の大型バス公道自動運転を横浜市で実施
「I・TOP 横浜 路線バス自動運転プロジェクト」の実証実験
2019年9月17日 12:00
- 2019年9月14日 開催
相鉄バスと群馬大学は9月14日、大型路線バスを使用した自動運転の第1回実証実験を神奈川県横浜市で実施した。
これは大型バスを使用した営業運行(里山ガーデンフェスタ実行委員会から貸切営業として運行を受託)の自動運転の実証実験として日本初の試み。大型路線バスでの自動運転適用における課題の解決や、地域における自動運転の機運の醸成を図ることが目的となっている。
また、横浜市が推進している「I・TOP横浜 路線バス自動運転プロジェクト」の一環として、郊外における交通ネットワークの維持、人口減少に伴う労働力不足への対応などを目的に、自動運転バスによる地域交通課題の解決を目指すものとしている。
10月14日まで行なわれている実証実験では、横浜市内にある「よこはま動物園ズーラシア」から約900m離れた「里山ガーデンフェスタ 2019 秋」の会場を往復運行。この実証実験を皮切りに、横浜市内で相鉄バスが運行する路線内でも自動運転の早期実現に取り組み、自動運転「レベル4」による営業運転を目指していく。
初日の9月14日には、よこはま動物園ズーラシアで実証実験の出発式を実施。最初に相鉄バス 取締役社長 菅谷雅夫氏があいさつを行なった。
「路線バスの現状ですが、知られているように運転士不足と言われています。実は私ども事業者としては今に始まったことではなくて、もう10年以上前からこうなることを予想していました。大型二種免許を保有している人の人数が減ってきている、新たに大型二種免許を取る人が少ないということなんです。これはいずれ大変なことになるだろうなと当時から思っていました」。
「そのために、われわれができることは何でもやろうということで、その中の1つとして『機械ができることは機械に任せよう。人しかできないことを人がやろう』というふうに考えました。自動運転の機運も高まっていますし、技術も高まってきました。これにわれわれ路線バス事業者が主体的に関わっていくべきであろうと常々考えておりました。また同時に、有人でのバスの運転、昨今では緊急事態でバスが事故を起こしてしまうということもあります。是非そういった人間のミスをフォローするために機械を使いたい。今回は群馬大学さまとご縁がありまして、一緒にこの実証実験にこぎ着けることができました」。
「群馬大学さまは国内でも有数の実証実験の研究施設を学内にお持ちで、日本各地で実際に自動運転の実証実験を実施されている。とりわけ前橋市では、お客さまから運賃をいただく営業運転の自動運転を実際にされたとのこと。自動運転の技術は一般の乗用車に適用する前に公共交通、とりわけお客さまのお役に立つ路線バスで最初に使うべきであり、それが社会的に有益であるというお考えをお持ちのところが、私ども事業者と一致しまして、今回の取り組みになりました」。
「自動運転をするためには、クルマが自立して安全に走る、こういった技術が大切なのはもちろんですが、いわゆる道路交通法をはじめとする諸法規を改正していただくこと、それから自動運転の車両が安全に走れるように道路を改修していただくこと。こういった社会的基盤をソフトの面、ハードの面で整えていくことが大事です」。
「私ども事業者が一番責任を持ってやらなければならないことは、実際に自動運転のバスにお客さまが安心して乗っていただけること、これがとっても大切です。それから、お住まいの地域に自動運転バスが走ることを認めていただくこと。それともう1つ、自分が運転するクルマの前後、あるいは隣を自動運転バスが走る、そういったことを認めていただくこと、そういう環境を皆さまと一緒に作っていくことがわれわれ事業者に課された使命だと考えております」。
「相鉄沿線にこれからも路線バスによる公共交通のネットワークを維持し、充実させていくために、この実証実験を成功させて大きな1歩としていきたいと思います。今回の実証実験は横浜市の経済局さまが音頭をとって始められました、われわれ地元企業を応援していただく“I・TOP横浜 路線バス自動運転プロジェクト”の一環として実証させていただくものであります」と語った。
自動運転の開発を行なってきた群馬大学 次世代モビリティ社会実験研究センター 副センター長 准教授 小木津武樹氏は「われわれは実証実験に非常に力を入れて実施しており、北は北海道から南は九州の大分まで、これまで28回で、今回で29例目ということになります。われわれは日本国内の公的な研究機関として実証実験を最大規模で実施しており、そうしたノウハウを利用して各地に自動運転を導入するための機運を情勢していく活動を行なっております」。
「われわれの技術の大きな特徴は『レベル4』と呼ばれる自動運転に注目しているところで、レベル4というのは運用の条件を限定化して、無人の自動運転を実現していく、そういった自動運転のレベルです。地域限定、運用条件限定といろいろな条件を限定して、とくに路線バスのように決められた運用を事業者が行なうといった分野に自動運転を導入していくことを、ファーストステップとしてとらえています」と解説した。
“I・TOP横浜”を推進している横浜市からは経済局長 林琢己氏が参列。「これまでも“I・TOP横浜”でいろんな実証実験をやっております。とくに自動運転はかなりやっておりまして、以前には金沢動物園の中で、自動運転バスを8km/hぐらいのスピードで走らせていました。今日は公道で20km/hぐらい出すということで、バスのサイズも全然違いますし、やはりだいぶ進歩して画期的なことだと思っています」。
「その他には、みなとみらい21地区でAIを使った事業で、観光に来ている皆さまがそれぞれのスポットで乗り合いタクシーを呼んで、そこにAIを使って最短距離でお迎えに行くという実証実験をちょうど1年前にやっておりました。横浜のいいところは市民の皆さまが解放的な雰囲気で好奇心も強く、いろんな環境でいろんなチャレンジができるというところで、われわれも積極的にこういった新しい取り組みを後押ししていきたいと思っております」。
「働き手が減っていくことはこれからの深刻な問題で、こういった新しい技術でそれを補っていくことが非常に大事であることと、これからとくに郊外でコミュニティが高齢化していくことが起きます。路線バスの採算が合わなくなってしまうと地域の人たちが孤立していき、これが大きな問題になっていくだろうという危機感がわれわれにもございます。この自動運転バスがそういった問題を解消する大きな道になるのではないかと期待して、横浜市としても大いにバックアップしていきたいと考えております」と語った。
出発式ではテープカットが行なわれた後、自動運転バスによる実証実験がスタートし、これに前後して車両の撮影などが行なわれた。
自動運転の実証実験は「里山ガーデンフェスタ2019 秋」が開催されている10月14日まで、「よこはま動物園 正門」と「里山ガーデン正面入口」間を無料運行している。この機会に最新の自動運転技術を体感してみてはいかがだろうか?