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【JMS2026】ビジネスセッション「滞らないシステムで広がる安心」開催、いすゞ社長山口氏らが「止めないためのデータ連携から自動運転まで」を解説

2026年10月13日~16日 開催
「滞らないシステムで広がる安心」と題したセッション終了後、登壇者による記念撮影

 幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)にて10月13日~16日の4日間にわたり、モビリティ関連企業とスタートアップ企業の共創イベント「Japan Mobility Show Bizweek(ジャパンモビリティショー ビズウィーク)2026」とデジタルイノベーション総合展「CEATEC(シーテック)2026」が併催された。

 自工会加盟メーカーの代表が登壇するトークステージ「未来モビリティ会議」にて会期3日目となる10月15日、商用車メーカー代表とスタートアップなどが参加して「滞らないシステムで広がる安心」と題したセッションが開催された。

ビジネスセッション「滞らないシステムで広がる安心」の登壇者

 深刻化するドライバー不足や頻発する自然災害、地政学リスクといった変化に対し、企業や産業の壁を超えて商用車運行データ、災害情報、自動運転技術をどう接続し「平時の物流効率化」と「有時のレジリエンス(復旧力・強靭性)」を同じ基盤上で実現するかについて議論が交わした。

 ステージには、日本自動車工業会(自工会)の副会長でいすゞ自動車代表取締役社長CEOの山口真宏氏、自工会理事で日野自動車代表取締役社長CEOのサティヤカーム・アーリャ氏、自工会理事でUDトラックス代表取締役社長兼CEOの伊藤公一氏といった商用車メーカーと、AI危機管理ソリューションを手がけるSpectee代表取締役CEOの村上建治郎氏、自動運転を手がける株式会社ティアフォー代表取締役CEOで東京大学大学院特任准教授の加藤真平氏が登壇した。モデレーターはフリーアナウンサーの須黒清華氏。

各社が挑む「止めない」ための最新ソリューションとアプローチ

 セッションの冒頭では、登壇者それぞれから「止まらない物流・交通基盤」に向けた自社と業界での最新の取り組みが披露された。

“滞らない”をテーマに議論は進行した

 いすゞの山口氏は、自工会として「事故死ゼロ」「移動の自由」を目指し自動運転への取り組みを加速させている現状を報告。乗用車における移動の自由には移動しない自由も含まれるが、商用車では「移動し続ける状態を保つこと」こそが命題であると主張した。

 ドライバー不足をはじめとする社会問題に対応するため、前後の工程を含めたシームレスな物流の仕組み作りが不可欠であると強調し、北海道に新設した自動運転専用テストコースを活用して官民でルール作りを進めながら、一般社会への受容性を高める取り組みを推進していると明かした。

日本自動車工業会(自工会)の副会長でいすゞ自動車株式会社代表取締役社長CEOの山口真宏氏

 UDの伊藤氏は、自社にとって最も大切なことは顧客のクルマの稼働を落とさないこと、クルマを止めずに走らせ続けることにあると語った。全国のサービスネットワークによる迅速な修理体制を強みとしつつ、これまでは故障してから直すのが主流であったものを、車両データを活用して故障の予兆を捉え「止まる前に直す予防保全」へと進化させていることを紹介した。あわせて、これを現場で支える整備士やメカニックの確保と育成が、止めない社会を維持するための重要課題であると訴えた。

 日野のアーリャ氏は、物流がストップすれば人々の生活そのものが立ち行かなくなると危機感を示した。いかなる事態でも途切れなく物流を維持するためには「テクノロジー」「人・社会」「インフラ」の3つが強固かつシームレスに接続していなければならないと力説。現在、日野とグループ全体で約50万台のコネクテッドトラック・バスが稼働しており、得られた走行データを運行改善に活かすほか、24時間365日対応のサポートセンターにより稼働停止時間を最小化する体制を構築していると述べた。

 Specteeの村上氏は、自社が2011年の東日本大震災の年に設立された経緯に触れながら、SNSや気象、衛星、さらには車両のプローブデータなどをAIで解析し、リアルタイムでリスクを可視化する技術を説明した。製造業や物流では何が起きているか分からないリスクの不透明性と、サプライチェーン全体が見えないという2つの課題が存在するため、部品構成データや供給ルートを可視化して有事の際にも迅速に補給や代替ルートを確保できるシステムを提供していると語った。

株式会社Spectee代表取締役CEOの村上建治郎氏

 オープンソースの自動運転OS「Autoware」を推進するティアフォーCEOの加藤氏は、自動運転は単なる技術にとどまらず社会課題を解決する重要な基盤であると述べ、オープンな技術を提供することで、多様なプレイヤーが物流や交通の自動化に参入できる環境を整えていることを説明し、持続可能な社会インフラ構築に向けた共創を呼びかけた。

データ連携における「協調と競争」の境界線

 セッションでは、テーマをより具体的かつ本質的な課題へと踏み込ませ、企業間でのデータ共有のあり方について議論が交わされた。最初の議題は、競合する企業間においてどこまでデータを共有できるのかという「協調領域と競争領域の切り分け」について。

 Specteeの村上氏は、サプライチェーンの可視化を進める中で、OEMメーカーとサプライヤーの間では思惑や利害関係が大きく異なり、データ開示のインセンティブが働きにくいという世界共通の課題が存在すると指摘した。

 部品メーカーにとっては自社の技術や仕様、取引構造そのものが競争力の源泉であり、情報開示によるリスクを懸念するのは当然。その解決策として、詳細な内部仕様を開示しなくとも、有事の際に即座に相互接続できる「標準化されたデータフォーマット」や共通プラットフォームを平時から用意しておくことが極めて重要であると提案した。

 これに対し、いすゞの山口氏は、部材調達などのもの作りの手前に関するデータ共有は自工会内でも検討を重ねてきたものの競争領域が深く絡むためハードルが高いと認めるもの、ものを現場へ届ける「物流データ」や「運行データ」、そして「インフラ協調」の領域はまさに「協調領域」そのものと強調した。

 さらに、クルマ自身の性能向上やもの作りは競い合っても、社会インフラの中に溶け込ませて機能させる部分は協調領域で、データをつなぐと決めさえすれば実現可能であるとし、平時からの物流効率化の延長上にこそ有事のレジリエンスが生まれるため、官民や全産業が同じ思いでデータ基盤の整備を進めるタイミングに来ていると呼びかけた。

 UDの伊藤氏もこの考えに賛同し、すでにUDでは補給部品の共同配送などで協調の取り組みを進め、ドライバー不足や配送効率化に成果を出していると紹介した。さらに伊藤氏は、トラックが日々走る通行軌跡データは、災害が発生した際に「どの道路が実際に通行可能であるか」「どこで支援物資が求められているか」をリアルタイムで把握できる宝の山であると語った。

自工会理事でUDトラックス株式会社代表取締役社長兼CEOの伊藤公一氏

 実際の震災対応でもこの走行ログデータの価値が証明されており、自社だけでは気づかないデータの潜在価値を社会全体で掘り起こし、防災や救助に役立てていくことが重要であると振り返った。

 Specteeの村上氏はこれを受け、災害発生直後は公的な通行止め情報などが整うまでに時間がかかり、人命救助のタイムリミットとされる72時間が刻一刻と過ぎていく現実を語った。その局面で現場をリアルタイムに走るトラックの走行データが共有されれば、通行可能なルートが即座に判明し、救援物資の輸送や復旧活動が劇的に早くなると説明。有事の際に1発でデータがつながる仕組みやプロトコルをあらかじめ作っておくことの不可欠さを訴えた。

 日野のアーリャ氏は「データは新たな活動の場」というフレーズを交えて持論を展開。データは1カ所に閉じ込めるのではなく、集約し統合されて共有されることで初めて真の価値を生むと主張。業界内の競争領域と協調領域を明確に分類した上で、協調領域は政府、車両メーカー、物流事業者、そして地域社会全体に対してオープンであるべきだと語った。

自工会理事で日野自動車株式会社代表取締役社長CEOのサティヤカーム・アーリャ氏

自動運転の社会実装と「ステップ・バイ・ステップ」のアプローチ

 データ共有の重要性や、そこから有事への対応という方向が示された一方で、その先の課題として、物流網の維持を困難にしている深刻な人手不足という問題がある。そこで、議論は、自動運転技術の社会実装と社会受容性へと移った。

 ティアフォーの加藤氏は、2030年の社会像を見据えた場合、まずは、時間を消費してドライバーの負担も重い「高速道路・幹線道路のハブ間輸送」を自動化することが最大の切り札になると述べた。幹線道路の自動化が達成されれば、前後の集荷・配送工程の効率化や標準化も一気に加速するはずと分析した。

株式会社ティアフォー代表取締役CEOで東京大学大学院特任准教授の加藤真平氏

 いすゞの山口氏も幹線道路の自動運転の重要性に同意しつつ、神奈川県平塚市で実施している自動運転バスの走行実験を例に挙げ、地域の皆さまが温かく実験を見守ってくださる姿を見て社会受容性の醸成が不可欠と実感したと語った。そして、部分的な自動化だけでは前後に負荷がかかるため、一貫したプラットフォームとして仲間作りを進める必要があると述べた。

 日野のアーリャ氏は、社会受容性を獲得するための具体的な手法として「段階的アプローチ」を提唱した。20トンの大型トラックが時速100kmで無人走行する姿は一般の人に心理的な不安を与えかねないため、まずは港湾エリアや建設現場など限定された空間から実験と実績を積み重ね、信頼を勝ち取っていくことが成功への近道であると語った。

 Specteeの村上氏は、日本は100%の安全性が担保されないと踏み出せない風潮があるが、アジャイルに小規模から挑戦できる社会的な許容範囲(サンドボックス)を作ることがイノベーションを進める上で重要であると提起した。

 UDトラックスの伊藤氏は、段階的に進めることの正しさを改めて実感したとし、テクノロジーが進化しても最後はそれを支える人が鍵になるため、整備士やドライバーの社会的地位向上と人材育成に全力を注ぐと決意を語った。

 そして、セッションの締めくくりとして、登壇者それぞれから未来に向けた決意が語られた。いすゞの山口氏は自工会として事故死ゼロを目指し、リスクを恐れず前に踏み出す覚悟を持って社会受容性と技術開発を進めると語った。

 UDトラックスの伊藤氏は現場を支える人材育成に全力を尽くすと述べ、日野のアーリャ氏は垣根を取り払って社会が求める真の価値を共創していくことを宣言した。Specteeの村上氏はオープンなデータ連携で有事の被災地支援に貢献すると語り、ティアフォーの加藤氏は2030年に誰もが自然と自動運転を目にする世界をオープンソースで実現したいと結んだ。

司会はフリーアナウンサーの須黒清華氏

日本の2大勢力で構築した成功モデルが、日本メーカーの強みになる

 セッション終了後には、メディア向けの囲み取材の場が設けられ、いすゞ自動車の山口社長とUDトラックスの伊藤社長が記者陣からの質問に答えてくれた。

 メーカーの垣根を超えた連携の可能性について質問が及ぶと、いすゞの山口氏は日本市場の商用車業界がいすゞとUDトラックスの「いすゞグループ」および日野と三菱ふそうの「アーチオングループ」という2大陣営に集約されたことで、ASEANなど高いシェアを有しているため、日本で構築した運行データ連携やアフターサービスの成功モデルを展開すれば、新興勢力に対する、日本メーカーの強みにつなげられると語り、連携はもう少し前向きに話を進めたいとした。

 UDの伊藤氏も商用車は決まったルートを運行する特性があるため定点的なデータ収集が得意であり、競合の枠を超えて協力できる領域はまだまだ広がると語った。

 また、山口氏は、自動運転社会の実装やインフラ協調は、単に車両が一緒に走るだけでなく、前後工程の物流事業者や荷主をシームレスにつなぐプラットフォームの構築こそが本質であると指摘した。

セッション後、いすゞの山口氏とUDの伊藤氏がメディアの質問に答えた