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【JMS2026】ビジネスセッション「テクノロジーとともに、人がもっと人らしく」で「AIによってモビリティの未来を前進させる」と日産 エスピノーサ社長
2026年10月14日 10:00
- 2026年10月13日~16日 開催
- 入場料:無料(全来場者登録入場制)
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で10月13日~16日の4日間、モビリティ関連企業と次世代を担うスタートアップ企業の共創を生み出すためのビジネスイベント「Japan Mobility Show Bizweek 2026(ジャパンモビリティショー ビズウィーク2026)」とデジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2026(シーテック 2026)」が併催されている。入場料は無料で全来場者事前登録制。
会場では出展各社によるブース展示に加え、ホール2の奥に設置されたトークステージではモビリティの未来や課題について、産業の垣根を越えたさまざまな視点から議論・発信を行なうカンファレンス「未来モビリティ会議」を連日実施。
開催初日の10月13日にはビジネスセッション「テクノロジーとともに、人がもっと人らしく」が実施された。
「テクノロジーとともに、人がもっと人らしく」~AI・ロボティクスを、「人を置き換える技術」ではなく、「人の可能性を広げる技術」として社会実装させるには~
「AI・ロボティクスを、『人を置き換える技術』ではなく、『人の可能性を広げる技術』として社会実装させるには」というサブタイトルが設定されて行なわれた13日のビジネスセッションでは、日本自動車工業会の副会長を務め、日産自動車 代表執行役社長兼CEOであるイヴァン・エスピノーサ氏、Preferred Networks AI Products&Solutions事業本部長 岡田利久氏、早稲田大学 理工学学術院 教授 AIロボット協会 理事長 尾形哲也氏の3人が登壇。アナウンサーの須黒清華さんがモデレーターを担当し、自動車メーカーのトップ、AI・ロボティクス企業、研究者という立場が異なる3氏が考えるAI・ロボティクス技術との向き合い方について聞き出していった。
最初に自動車産業におけるAI活用について問いかけられたエスピノーサ社長は「まず、私はAIやロボットは人間を置き換えるために存在すべきではないと強く信じています。人間を助け、人々の可能性を広げるために存在すべきです。そしてこの考え方を念頭に置いて、これを業界のレベルへと高めていくにあたり、私たちにはいくつかの重要な課題に対処する必要があります」。
「第1に、モビリティが安全であり、すべての人が利用できる社会を創る必要があります。これが業界として私たちが持つ中核的な使命の1つです。そして次に、日本だけでなく世界の多くの地域で私たちが直面している社会的な課題があります。高齢化社会、そして製造、開発、物流をまたぐ移転可能なスキルを見つけることの難しさという事実です。さらに次のポイントとして、業界全体で協力し合い、正しい基準、正しい規制、正しいインフラを確立する必要があります。これが私たちがこの分野を加速させるための正しい方法を見つける唯一の方法です」。
「私たちは異なるセクターの業界全体で協力し、テクノロジーを現実世界に実装する流れを加速させるために、実際に役立つ知識とテクノロジーを結集させる必要があります。重要な課題はテクノロジーと社会のギャップをどのように埋め、人々が人間としてより豊かに生きられる世界を創るかということだと信じています。これは私たちが直面している最も重要な課題の1つであり、日本の自律型業界における私たちの最大の責任の1つです」。
「このような背景と文脈のなかで日産は、AIによってモビリティの未来を前進させることにも取り組んでいます。2026年度の初めに私たちは長期ビジョン『モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に』を発表しました。そしてこの主要な取り組みの中心にあるのが『AIディファインドビークル(AIDV)』です。なぜこれが重要なのでしょうか? それは私たちの目標はAIを活用して運転とモビリティの負担を軽減することだからです。人々が創造的で意義深く、人間らしいことに多くの時間を費やせるようにします。また、モビリティの自由が制限されていた人々にも新しい機会を創出したいと考えています」。
「同時に、日本はドライバー不足や高齢化、地方における交通サービスの低下といったさまざまな課題に直面しています。そしてAIはこうした社会的課題の解決を助ける優先事項であるべきです。これが日産が『AIドライブ技術』を3つの異なる方法で社会に導入している理由です」。
「第1に、次世代の『ProPILOT』によってドライバーが中心であり続け、AIは人間の能力を向上させるパーツとして機能することです。第2に、自律型モビリティサービスを通じて患者や課題、そしてコミュニティの輸送を支援するために日本中でトライアルを実施しています。そして第3にはAIコンパニオンの活用で各ユーザーを理解し、お互いによりカスタマイズされた体験を提供できるようにしていきます」。
「しかし、この未来は日産だけでは実現できません。AIとロボットが人間を最優先に考え、社会に真の価値を創造する方法で導入されるよう、業界、学術界、政府が協力して取り組む必要があります。AIやロボットが人間を置き換える技術ではなく、人間の可能性を広げる技術としてどのように活用できるかについて議論する機会をいただき本当にありがとうございます」とコメント。AIによってクルマをさらに進化させ、さまざまな課題解決にもつなげていきたいと語った。
AIを社会実装していくにあたっての課題としては、まず岡田氏が意見を述べ「非常に大事な部分だと思っていて、例えば自動運転などのクリティカルな領域に関しては、本当に信頼を勝ち取りつつ一歩ずつ進めるというのが大事なのかなと思っています。われわれは化学プラントの操業を自動化するといった取り組みもしていて、そのようなところではクリティカル性がより求められるようになっていきます」。
「ステップバイステップで担当しているオペレーターとの信頼関係を育てていくことが非常に重要になるので、例えばオープンループで最初は制御とつながずAIの提案を受け取って信頼を勝ち取る。そのあとに、クローズドループという形でシステムと接続して、だけど人がすぐに介入できる形にして、まずはAIを行動させる。徐々にその時間を伸ばしていって、最終的には人がまったく触れなくても自動でできるような形にして、少しずつ信頼を勝ち取れるようにしていく」。
「これは米国のWaymoが自動運転を実装した流れとかなり近くて、社内でデータを貯めて、それをAIが学習していく。そこはかなり地域を限定しながら進めて、ステップバイステップで進めるアプローチかなと思っていて、先進的な米国企業であってもかなり慎重にアプローチを進めているというのは非常に上手い手法だなと感じて、業界をつうじて適用できる課題だったのかなと思います」。
「日本ってかなり調和を大事にする社会だと思うので、コミュニケーションや信頼獲得なしではなかなか新しい技術を出していくのは難しいところがあります。例えばマスコミであったり、あと使っていただくユーザーの皆さまといったいろいろなステークホルダーに信頼されるステップが大事ですね」とコメント。
続いて尾形教授も解説を行ない、「自動運転は米国のシリコンバレーで進められている技術があって、何の問題もなく普通に走れています。これを当然、日本に持ってきたら同じように走ると思うのですが、それを日本でやることをイメージできるかと言ったら、皆さんなかなかイメージできないと思いますね。自動運転を積極的に使う以前に、今もカーシェアだってなかなか広まらないような状況で、どうやって日本にこういった新しい技術を採り入れていくかというのは、まず皆さんの受容性という部分がとても重要になります」。
「でも、日本って新しい技術に対する受容性がめちゃめちゃ高いんですよ。ペットロボットがこんなに売れてる国はほかになくて、ChatGPTを“チャッピー”なんて呼んでいるのも日本だけです。これを米国人に言うと結構笑われますけど、これだけ新しい技術を柔軟に活用できるという、この若い人たちの能力というのも面白いと思っていて、このバランスなんですよね」。
「逆に、企業のほうはすごく慎重になる。信頼性だとか安全性だとか言われて、99%を求められると思ってしまうと、結局なかなかプロダクトまで持っていけないという壁もあります。ただ、実際に出してしまえば受け入れられるケースもあるんですよね。ChatGPTなんて出た直後はハルシネーション(AIの幻覚)だらけで、普通に考えたら怒られるプロダクトのはずなのにみんな喜んで受け入れるということもあった」。
「だから、企業側にあるブランドを守らなければならない、信頼や安全性を確保しなきゃいけないという気持ち。そしてユーザー側の不安と、でも使ってみたら『まあ、これぐらいだったら十分使えるじゃん、面白いじゃん』っていうその受容性、この境目をどう見出していくかという部分は、地道に努力して見つけていくのが難しくて、そこが面白いと思うんです」と語った。
また、両氏のコメントを聞いたエスピノーサ社長は「お2人の発言に同意します。自動運転においてステップ by ステップのアプローチをとるべき理由はいくつかあります。1つめは、例えば車両単体で完全に自律走行可能な技術を提供しつつも、責任はドライバーに持たせることでシステムに関与させ続け、ドライバーがクルマに関するすべての安全に対して引き続き責任を持つという方法です。これにより、ドライバーや同乗者が自動化が進むクルマに段階的に慣れていくことができます」。
「もう1つの方法は製品のシナリオとして検討できるもので、ドライバーなしの完全な自動走行が可能なロボタクシーにセーフティドライバーを同乗させることで、なんらかの問題が発生した場合でも少なくとも誰かがそこにいて、滅多に起きないイベントだとしても誰かが対応できるようにすることです。これによって信頼を維持できます」。
「もちろん、コミュニケーションによって人々がこの技術の力や信頼性を理解できるようにすることも重要です。完全に自律型の無人タクシーサービスを提供する場合でも監視を行なうため、さまざまな目的に対応するリモートコントロールセンターが設置されます。つまり、現実的にはドライバーがいなくてもクルマが管理されていないわけではありません。どのように走行しているか誰かが常に監視しており、万が一の事態が発生した場合にはクルマを制御する準備ができています」。
「人々がこれらのすべてを段階的に理解していくことが重要で、1度に全部を行なおうとすることはお勧めしません。なぜなら、人々が恐怖心を抱いてしまうかもしれないからです。そのため、段階的なアプローチをとりながら技術を人々に一歩ずつ近づけていき、ユーザーや顧客との直接的なコミュニケーションだけでなく、すべてのステークホルダーとの強固で緊密なコミュニケーションを背景に持つことが非常に重要です」。
「メディアや地方自治体、コミュニティともコミュニケーションを取り、技術の導入をサポートしてもらいながらメリットを説明してもらうことも重要です。なぜなら、完全に自律型の技術を実装することは社会に対するメリットが非常に大きいからです。この技術では運転できなくなった人にもモビリティを提供することが可能になり、公共交通機関が抱える多くの制限や一部の地域社会の課題を解決することもできます。この技術には社会にとって非常に多くのポジティブな側面があるのです」と述べ、自動運転でもステップ by ステップのアプローチが必要だとコメントした。
自動運転については、岡田氏から「事故などが起きた際の責任」について言及され、「けっこう難しいなと思うのは、AIではなくまったく違う行動をとっているときに、例えば手が離せないようにしている場合は使っている側の責任だと思いますが、AIでなんらかの事故を起こしてしまった場合にどのような責任が発生するのか、責任がどこにあるのかといった点をどうやって切り分けていくのかが重要な課題だなと思っています」。
「あと、社会の受容性みたいなところを以前調べたときに感じたのは、米国では事後規制みたいな考え方があって、まずはイノベーションを出して、それを減速させないことを重視して、なるべく規制を少なくして何か課題が出てきたら規制を作るという方向性。逆に欧州だと先に規制を作って、そのなかで安全性を担保していく考え方だと思います」。
「日本はどうなんだと考えると、日本はガイドラインというような罰則がない即応的な内容で、例えば自動車メーカーといった関係者が実施するなかで問題が起きないよう配慮して進めていくのが日本の特徴なのかなと思っています。もちろん、海外のような考え方も大事ですが、やっぱり日本に合った法規制やレギュレーションといったものを考えていくのがすごく重要だと思っています」と解説した。
AIを扱える人材育成についての話題では、尾形教授が「AIとロボットというキーワードが出たときに、皆さんこの2つがつながるのは当たり前だと考えているように思いますが、アカデミアで『人工知能学会』と『日本ロボット学会』というのはかなり離れている学会になるんです。最近は近づけていこうとしていますが、元々ロボットというのは製造業で扱われる『物』で、物理の世界に属性があります。人工知能というのは情報なので『データ』なんです。大学の学科としても機械系と情報系ではやはりかなり違います」。
「最近の『フィジカルAI』というキーワードのなかで、この2つをきちんと両方できる人というのが求められています。実際に米国や中国のスタートアップを見ると、両方できるという人のほとんどが20代です。若いころから両方の勉強をしていて、金属を削るマシニングの機械と凄い計算をするサーバーが同じ部屋のなかにあるような、なかなか起きないようなコラボレーションによって前に進んでいるという状態です」。
「残念ながら、今の大学にはそんな人材を育てる枠組みがありません。元々学生たちに教えている先生たちのバックグラウンドも違います。どうやってこの部分を進めていくのかと言えば、若い人たちはどんどん自分たちで自立的に勉強会などを行なって取り組んでいる状態で、そういったところに対する期待もありますが、どこの大学もそうですし、スタートアップなどでも全体でそのような人材育成の枠組みを作っていかなきゃならないんじゃないかと思っています」と説明し、人材育成の面でも課題があることを挙げた。
エスピノーサ社長は重ねてAI導入の目的を語り、「当初はリーダー層だけでなく、誰もがAIに自分の仕事が奪われるのではないかと怯えていました。しかし、私たちは会社のスタッフに対して『AIはわれわれにとって人員を削減する手段ではなく、生産性を向上させるために必要な本当の手段である』というメッセージを繰り返し伝えています。現在10人で行なっている作業の成果を10倍、15倍に増やし、コストを削減しながらより迅速に、より高い価値を持つ製品をお客さまに提供し、私たちが準備している製品の体験を向上させることができるということです」。
「私たちにとって、これはAIを組織化する方法であり、実際に従業員数を減らすことではなく、従業員が持っている潜在的な能力を増強することなのです。もしAIを会社のリソースの総数を削減する手段として捉えたなら誰もAIを使わなくなるでしょう。それは組織を作るという目的に完全に反するものです。私たちが繰り返し行なっているのは、これらの技術を取り入れることで私たちが持っているリソースの総数を減らすのではなく、これまでどおりのリソースでより多くの成果を生み出すことを期待しているとスタッフに理解してもらえるよう努めることです」と説明した。
このほか、尾形教授はAIやロボットに対する国内世論にも触れ、「最近、日本の世論で心配になるのは、『もうAIでは米国に敵わないから頼ればいいんだ』とか、『ロボットのハードウェアは中国から買ってくればいいんだ』みたいな話になりがちじゃないかと感じています。凄い技術を目の前で見せつけられて、なかなか追いついていけない、圧倒された気持ちになるのも分かりますが、やはりちゃんと学ぶことは大事なんだと思っています」。
「私がよく例え話で出すのは、種子島に鉄砲が伝来したときに、そこの島主は3本買ったそうです。1本は使うため、1本は保存用、もう1本は分解用ということで、やはり先行しているところがある状況でも、ちゃんと学べば後追いは有利なんですよ。これまでも日本は、それが家電だろうがロケットだろうがクルマだろうが、全部後追いなんです。全部後追いだけど必ず別のアプローチを見つけて、それなりの製品を作ってきた歴史なんだと思います」。
「AIとの組み合わせでも、それができないということはないだろうと思っています。そういう意味できちんと学び、謙虚に学びつつ自分のオリジナルなアイデアを足していくことは、日本が本来得意技なところなんですね。ですので、若い人たちも皆さんそうだと思いますが、積極的にこういう分野に興味を持っていただいて、色々な人たちとつながりながら、優れたものをきちんと学んだ上で新しい方向に行く、そういう戦略をとっていくことが大事なんじゃないかと思っています」とコメントしている。
ビジネスセッションの最後にエスピノーサ社長は「AIの可能性やAIがどのように人間の能力やポテンシャルを最大限に高められるかについて、よい印象を持っていただけたことと思います。AIを適切に活用すれば、私たちはさらに多くのことができます。経済やテクノロジー、そして製造業や開発においてもそれらを目の当たりにしてきました。AIが世界に貢献できることは非常にたくさんあります」。
「そして先ほども申し上げましたが、AIは仕事を奪うために存在するべきではないと私は考えています。AIは本当に人間の能力を引き出し、より多くの価値を創造して世の中にもたらすためにあるのです。私たちはこれらの取り組みを継続します。自動運転だけでなく、AIが日産とお客さまに価値をもたらすことができるほかの多くの分野においても、企業として前進し続けます」と語り、AIが持つ可能性をアピールした。













