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【JMS2026】ビジネスセッション「環境も経済も、ともにより良い方へ」 マツダ 毛籠勝弘社長と三菱自動車 岸浦恵介社長らが登壇
2026年10月16日 08:43
- 2026年10月13日~16日 開催
- 入場料:無料(全来場者登録入場制)
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で10月13日~16日の4日間、モビリティ関連企業と次世代を担うスタートアップ企業の共創を生み出すためのビジネスイベント「Japan Mobility Show Bizweek 2026(ジャパンモビリティショー ビズウィーク2026)」とデジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2026(シーテック 2026)」が併催されている。入場料は無料で全来場者事前登録制。
会場では出展各社によるブース展示に加え、ホール2の奥に設置されたトークステージではモビリティの未来や課題について、産業の垣根を越えたさまざまな視点から議論・発信を行なうカンファレンス「未来モビリティ会議」を連日実施。
本稿では開催2日目の10月14日に実施されたビジネスセッション「環境も経済も、ともにより良い方へ」の内容について紹介する。
「環境も経済も、ともにより良い方へ」~地域・用途ごとのエネルギーベストミックスを設計し、脱炭素を生活者便益と産業競争力に変えるには~
「地域・用途ごとのエネルギーベストミックスを設計し、脱炭素を生活者便益と産業競争力に変えるには」というサブタイトルが設定されて行なわれた14日のビジネスセッションでは、日本自動車工業会の理事を務めるマツダ 代表取締役社長兼CEOの毛籠勝弘氏と三菱自動車工業 取締役 代表執行役社長兼COOの岸浦恵介氏に加え、TBM 代表取締役CEO 山崎敦義氏、ポスト石油戦略研究所 代表/エネルギーアナリスト 大場紀章氏の4人が登壇。アナウンサーの須黒清華さんがモデレーターを担当してセッションが進められた。
なお、山崎氏がCEOを務めるTBMはカーボンニュートラルとサーキュラエコノミーの実現を目指し、炭酸カルシウムを主原料とする環境配慮型素材の「LIMEX(ライメックス)」などを自社工場で生産するスタートアップ企業。大場氏が代表を務めるポスト石油戦略研究所では、石油を中心にどのようなエネルギーを利用していくべきか、国際政治なども視野に入れながら考察していくといった活動をしているという。そんな両氏と自動車メーカーのトップである毛籠社長と岸浦社長の4人で、これからの日本で利用していくべきエネルギーについて意見交換が行なわれた。
まずは地域・用途ごとのエネルギーベストミックスについて、毛籠社長が日本の各自動車メーカーは世界の約190か国でビジネスを展開しており、国や地域によってエネルギー事情やユーザーニーズが異なっていることから、自工会としては幅広い技術やソリューションを手がけてCO2排出量を効率的に減らしていく「マルチパスウェイ」の戦略が現実的、実効的で日本の強みにできると考えていると解説。
また、日本は周知のようにエネルギー事情が厳しく、一次エネルギーの自給率は15~16%前後となっており、二次エネルギーの電力では7割ほどが石油、天然ガス、石炭といった化石由来資源に依存する状態となっている。今後はAIやデータセンターの利用拡大によって電力需要がさらに高まっていくと予想されていることから、自動車だけを切り取って脱炭素の最適化を目指していくのは難しい情勢で、社会全体でクリーンエネルギーの活用を最適化する視点を持つことが非常に重要になるとの考えを示した。
さらにクルマでは、新たに登場する新型車の性能を高めて低炭素化を図るだけでなく、すでに世に送り出されて日本の道路を走っている8000万台以上の既存車両を低炭素化していくことが求められ、社会インフラを活用しながらCO2排出量を減らしていくため、マツダでは「CNF(カーボンニュートラル燃料)」やCO2回収装置の「マツダ モバイルカーボンキャプチャー」といった新しい技術の開発に挑戦しているとアピールした。
岸浦社長はエネルギーベストミックスについて、三菱自動車としては電動車と再生可能エネルギーの普及拡大でカーボンニュートラルを実現することを目指しており、このためにPHEV(プラグインハイブリッドカー)やBEV(バッテリ電気自動車)といった電動車を世に送り出し、走行する以外の利活用、そして廃車後のバッテリ再利用まで視野に入れることで、人々が負担に感じることなく、普通の生活を送るなかでこれらを利用してカーボンニュートラルの実現につなげていくとの方針を説明。
取り組みの具体例としては、日本郵便に対して8000台を超える軽商用BEVを集配送車両として納入。走行中にCO2を排出しないことに加え、走行ログをデータ化してより効率的な配送経路の提案を行なったり、充電タイミングも調整して電気料金を抑え、電力需給を均等化するエネルギーマネジメントを実施。ここで得た知見を他業界にも展開しているという。
また、離島である宮古島や伊豆諸島などのBEV導入にも東京電力パワーグリッドなどとパートナーシップを結んで取り組んでおり、走行エリアが限定的な離島は1日の走行距離がBEVの一充電走行距離内に収まりやすく、一方で台風などの災害によって停電が発生すると復旧まで日数が必要となり、その期間をカバーする非常用電源としてもBEVを活用日常から災害発生時まで幅広い場面で役立つパッケージとして提供されている。
このほかにも使用済みとなった電動車の駆動用バッテリを「自立型街路灯」に転用。太陽光パネルと組み合わせ、昼間に発電した電気を蓄えて夜間に周囲を照らす自立型街路灯は系統電源からの配線工事などが不要でピンポイントに手軽に設置できる。このような取り組みをさらに内容を深めていきたいと語られた。
大場代表は登壇した3氏の発言を踏まえ、取り組みを進めていながら現時点でゴールとなる目標を達成できていないのはまだ乗り越えるべき課題が残っているからだと指摘。脱炭素についてはこれまで気候変動対策という視点から語られるケースが多かったが、2026年に入って中東情勢の不安定化による石油危機、エネルギー危機が注目されるようになっており、石油については燃料だけでなくナフサ不足など素材としての面でも社会に影響を与えていることから、3社の代表に対して脱炭素技術をどのように生かしていくのか問いかけた。
これに対して素材を扱うTBMの山崎CEOは、欧州ではすでに新車生産時に使用するプラスチック素材の再生プラスチック比率に関する「ELV規則」を策定しており、日本でも閣議決定が行なわれているなど世界的な流れとして動きが拡大していくと説明。素材の安定調達という点では、日本は容器リサイクル法が整備されて使用済みプラスチックを安定的に回収できる環境となっており、再生プラスチックについてはしっかりとした資源循環が可能になっていると述べ、同社のLIMEXについても日本国内で資源が安定的に自給できることから、これらに置き換えることで輸入に頼る資源の依存度を下げることが可能だとした。
“エタノール燃料マニア”の岸浦社長もバイオエタノール燃料について提案
脱炭素技術の活用について、毛籠社長は「限られた資源をどのように社会に配分して効率を高めるか」という視点が重要だと述べ、「エネルギー密度に応じた最適配分」が必要だと説明。航空機や船舶、重量物の長距離輸送といった部分では高いエネルギー密度が求められ、これには液体燃料が有利になる。一方で短距離輸送のクルマはエネルギ密度が比較的低い電気の長所が生きてくるとした。
また、マツダが微細藻類を活用して取り組んでいる前出のCNFは「エネルギーを自分たちで作り出したい」という願いを叶える技術であり、短期的なつなぎの技術になる可能性もありつつ、自工会として提案しているエタノール10%混合ガソリンを市場投入することで、すでに販売されたあとの車両での脱炭素貢献を石油業界と協力してCO2削減に寄与すると語った。
また、微細藻類は油脂を抽出したあとの残渣にタンパク質やDHAといったさまざまな有効成分が含まれており、これを使ってサプリや食品などを作り出すビジネスにつなげることができれば収益性を高め、循環モデルを構築することも可能だと考えており、このような部分にスタートアップの知見やスピード感が生かされれば日本の新たな産業として育てられるのではないかと補足している。
毛籠社長の発言を受け、自身を“エタノール燃料マニア”と称する岸浦社長もバイオエタノールの利用について説明。グローバルでエタノールの活用が一番盛んな国はブラジルでサトウキビを原料に使っており、米国ではトウモロコシからエタノールを生産している。ブラジルや米国のような農業生産が盛んな国では食品向けとバイオエタノール向けの両方の生産が可能だが、日本の場合はサトウキビを使った砂糖の自給率は40%ほどで、サトウキビからエタノールを作ろうとすれば砂糖の自給率が下がってしまう。
砂糖を作ったあとの絞りかすからエタノールにすることも技術的は可能だが、現状ではコストが高い点がネックになっている。この課題をベンチャー企業などとも協力して克服し、大量生産によって価格を下げることができれば海外依存からの脱却が可能になる。自動車メーカーとしては直接手がけることは難しくても、生産されたバイオエタノール燃料をいかに効率よくクルマで使うかといった面で協力して、エネルギー危機にも対応しやすくなると述べた。
大場代表は2点目の質問としてコスト面について挙げ、脱酸素やサーキュラエコノミーではさまざまな技術が発表されて注目されるものの、コストの高さが課題になるケースが多いと指摘して、どのようにすればマーケットで活用されるのかと問いかけた。
山崎CEOは海外のスタートアップが高いスピードや規模感を持って事業を進めていける要因として、研究開発の段階から大きなLOI(意向証明書)やオフテイク契約を手にして、それを見た投資家から大規模な資金調達を得て研究開発を加速させていくという事例を紹介。LOIで「物性と価格の条件を満たした場合には一定数を購入する」といった条件が示されることで、スタートアップ側としては超えるべき具体的なハードルとなる一方、企業側の期待やコミットがあることも明らかになって必要な技術やサプライチェーンが一気に集まってくると説明。
大場代表も過去に素材系のスタートアップの活動に関わった経験があり、そこでは初期投資で資金を集めることに苦労し、その影響で生産規模を絞り込むと単価が上がって誰も手を出さなくなる傾向もあるとコメント。オフテイク契約で生産物の買い手と数量を確保することで、初期ロットの経済性を高めることが効果的だと分析した。
岸浦社長はサーキュラエコノミーでコストダウンするアイデアとして、現在は資源回収でペットボトルや空き缶などを細かく分別しているが、例えばこれをひとまとめにして溶かし、そこから別の素材を取り出していけるような技術が生み出されれば大量の処理を手間なく行なってコストを下げることが可能なのではないかとの考えを提示した。
セッションの最後には、モデレーターの須黒さんから登壇した4人に「これから必要となる具体的なアクションはどのようなものでしょうか」と問われ、毛籠社長は「まず、自工会としてはさまざまな課題がありますので、自工会で共通規格みたいなものをできるだけ造って、サプライヤーの皆さんとも脱炭素にも資するような実証開発ができるようにしていきたいと思います」。
「マツダの取り組みとしては、先ほどから申し上げている微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料、それからクルマに搭載するCO2の回収装置。これらの技術はかなり手応えがありますので、これをどのように経済合理性のあるシステムとして拡大していけるかということが課題です。そのための技術としては、まず造る人、使う人、それから初期のコスト。こういった差をどう埋めていくかということで、われわれ自身ができることは、まず自らオフテイクするということになります」。
「仲間を作って、具体的にはマツダの部品を運ぶような物流全体でバイオディーゼルを使っていく。それからもう1つは、マツダが製造するクルマに初期充填する燃料として、ディーゼル車については全数カーボンニュートラル燃料を使う。こういった形で自らコミットして、脱炭素化を進める取り組みをしていきたいと考えています」とコメントした。
岸浦社長は「今日も議論に話題になっていましたが、ベンチャー企業の皆さんをはじめいろいろな業界の垣根を越えて、とくに頭の柔らかい新しい人たちと一緒になって技術的なブレイクスルーしていくということに、われわれとしてもしっかり取り組んでいきたいというのが1つです」。
「もう1つは先ほども申し上げたように、すでに製造したBEVやPHEVのバッテリをいかに有効活用して世の中に役立てていけるかという部分で、このスキームはかなりできてきましたので、次は使っていただけるようにもっと自治体さんや企業さんにアピールしながら連携し、一緒にやっていきたいと思っております」と述べた。
山崎CEOは「われわれは、国内もそうですが、グローバルでのサプライチェーン作りと仲間作りが必要だと思ってます。LIMEXのときも投資家の皆さまにご評価いただいたモデルだったですが、自分たちの横須賀の工場で出たリサイクル素材を高機能化させるということもやっています。さらに世界中でリサイクル素材を集めてる方々と連携してリサイクル素材を購入させてもらい、われわれが提携する加工先でわれわれ独自の処方でCirculeXを作って、その国の自動車メーカーさんや部品メーカーさんに納入するというビジネスモデルをどんどん世界中で展開していく」。
「大きな工場を作って時間と大きな投資をするようなモデルではなく、ファブレスとして盤石なサプライチェーンを作って、経済性をしっかりと確保しながら世界展開する。これをスピーディにやっていくところが、今われわれがCirculeXでやりたいアクションです」。
「カーボンサイクルは、とにかく出口作りをどれだけやっていくかという状況です。教えていただいたような回収技術もどんどん効率よくしていく必要もありますが、どれだけ使ってもらえるような素材を作っていくかという出口作りだと思ってますので、『こういった素材を使っていろんなもの作りにチャレンジしていきたい』という方々にも集まっていただけたらと思います」。
「ファブレスで世界展開していく取り組みでは、レギュレーションの話とも関連して時間軸が世界中で決まってますので、そこから逆算して、リサイクル素材を使ってどのプレイヤーとどういったパーツでという部分はまったなしの状況になっています。このファブレスのモデルでしっかりとしたサプライチェーンで品質管理を行ない、物性を出して世界展開していくことに挑戦していきたいですね」とアピールしている。
大場代表は「今日は環境と経済がテーマとなるセッションでしたが三者三様で、環境とひと口に言っても本当にいろいろなアプローチがあるなと実感しました。そして掘れば掘るほど色々な課題や可能性があって、まだ『連携すればもっとできるのに』ということがたくさんあるかなと」。
「毛籠さんもおっしゃったように、お互いをもっとよく知れば可能性が広がるということで、これまで知らなかった相手ともどんどん会話をして、お互いを知って連携をどんどん広げていけば、もっと可能性が広がるんじゃないかなと思いました。ここに来ている皆さんには、自動車関連の人もいればそうじゃない人もたくさんいると思いますが、ぜひ今日の登壇者にもどんどん話しかけていただいて、『うちだったらこんな連携ができるよ』とか、そういった話がこれからJMS Bizの場でどんどん広がっていくと本当にいいなと思いました」と語り、聴講している来場者にも仲間作りに参加してもらえるよう呼びかけた。

















