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三菱電機と鴻海、自動車機器事業の共同運営で会見 出資比率50:50で2030年度売上高1兆円を目指す
2026年10月20日 05:05
- 2026年10月19日 開催
三菱電機は10月16日、鴻海精密工業(FOXCONN)による三菱電機モビリティへの50%の出資受け入れに合意したと発表。それに伴い、2026年10月19日に三菱電機本社で記者会見を行なった。同会見には、三菱電機の加賀邦彦副社長、三菱電機モビリティの田中和徳社長、鴻海精密工業EV最高戦略責任者(CSO)の関 潤氏が出席した。
三菱電機モビリティの田中社長は「鴻海精密工業とともに、日本発の高品質なEV用プラットフォームの提供を通じて、日本のモノづくり力が培ってきた高い技術力と品質を、新たなモビリティの価値へとつなげ、日本国内の産業基盤の強化と自動車産業の持続的成長を支えていきたい。三菱電機モビリティが持つ『電動パワートレイン領域』『自動運転領域』『車載インテリジェンス領域』の3つの強みを生かして貢献をしていく」と語ったほか、「中長期では、日本から技術、品質をグローバル市場に展開し、Made in JapanおよびMade by Japanの価値をさらに高め、日本のモノづくりの新たな可能性を世界に示したい」と述べ、「搬送モビリティや空飛ぶクルマなどの新たなモビリティ領域のほか、既存顧客やサービス事業者、海外国策ブランドなど、幅広い顧客や市場への価値提供につなげる」との方針を語った。
今回の協業は、三菱電機グループで自動車機器事業を行なう完全子会社の三菱電機モビリティに対して、鴻海精密工業グループの投資管理会社であるLin Yin International Investmentが50%を出資する。三菱電機モビリティは、鴻海精密工業との戦略的提携に伴う主力事業の強化および拡大によって、2030年度には売上高1兆円を目指す計画を明らかにした。
出資比率を50%対50%としたことについては、三菱電機の加賀副社長が説明。「三菱電機モビリティを成長させるには両社が集中して協力する必要があると考えた。それぞれがコミットする姿勢を明らかにした」と述べたほか、鴻海精密工業の関CSOは、「どのやり方が最も速く伸びるかを考えた結果である。それぞれが強いところがあるが、よくわからないところもある。そこでまずは50%対50%でやることにした。ディシジョンスピードが遅くなるという危惧もあるだろう。だが、三菱電機の漆間啓社長と、鴻海精密工業の劉揚偉董事長は仲がよく、われわれがノロノロしていたら怒られる。また、劉董事長は、日本の経営者は総じて遅いと指摘するが、漆間社長は違うと言っている。私も取締役会に入ることになり、ディシジョンスピードが落ちないように担保する。心配がない」と語った。
社名については、当面、三菱ブランドを冠したままにする。三菱電機の加賀副社長は、「将来、どうするかは決まっていないが、三菱電機モビリティとして、多くのお客さまから信頼を得ていることは資産であり、鴻海からも評価されている点である」と発言。
関CSOは、「将来に向けて先入観を作らずにビジネスを進めようと考えている。どうしたら最も伸びるのかを最重要視していく。ただ、2030年に売上高が1兆円を超えたら、IPOを考えることもあるだろう。そのときには、親会社からの制約を軽くして、自己調達することを考えてもいい」などと語った。
三菱電機と鴻海精密工業は、2025年11月6日に、AIデータセンター向けソリューション事業における協業について覚書を締結したのに続き、2026年4月24日には、自動車機器分野にも協業領域を拡大することを決定し、三菱電機モビリティの共同運営に関する検討を開始したことを発表していた。
三菱電機の加賀副社長は、今回の協業の狙いについて、「三菱電機モビリティの強みを活かすことができる3つの領域を通じて、鴻海精密工業のEVプラットフォームの発展と、次世代のモビリティの普及に貢献する。また、日本から発信する高品質なEV用プラットフォームの提供を通じて、日本の産業基盤の強化と自動車産業の持続的成長にも貢献する」と述べた。
鴻海精密工業の関CSOからは、「鴻海精密工業は、売上高41兆円を誇る世界最大のEMSプロバイダーである。次のステップとしてEV事業を選択し、すでにEVのリファレンスデザインをいくつも作ってきた。10月30日に台湾で開催する鴻海テックデー(HHTD)では、新たに3つのデザインを発表することになる」と前置きし、「三菱電機モビリティに惚れた理由は、Inverterや Controllerといった卓越した電子制御技術を持つ点である。さらに大きなソフトウェアリソースを保有し、ADASやSDVに関する技術を潤沢に持っている。三菱電機モビリティを通じたその先のパートナーとの連携も強化できる」と述べた。
これにより、三菱電機モビリティが持つInverterやソフトウェアによる「次世代超高速小型EDU」や、「最先端ドライバーモニタリングシステム」、「レベル4への基礎強化」といった成果を期待していることを示し、「すでに具体的なシナジーが進んでいる」とも語った。
また、「鴻海精密工業は、開発スピードが速く、調達力、交渉力、スケールメリットによるコスト力に強みがある。また、使えるものがあれば、それをクルマ向けに鴻海がデザインして採用するという『フォームファクター』方式を背景に持つ異例の自動車プレーヤーでもある。しかし、自動車業界での顧客基盤が弱く、コンポーネントや制御技術、ソフトウェア技術も弱い。これに対して、三菱電機モビリティは、自動車業界でのブランド力が高く、グローバルで拠点を展開している実績と、強固な顧客基盤を持ち、車載製品のポートフォリオをそろえている。だが、顧客のスピードに左右され、開発に時間がかかるという課題がある。ADASやSDVで優れた技術を持っていても、受注されない限り、それを活かせないという状況にもある。両社の弱点をお互いに補える関係にあり、相互補完性が高い点も、今回の協業につながっている」と語った。
三菱電機モビリティでは、「電動化関連製品」「新モビリティ事業・サービス」「電動パワーステアリングシステム(EPS)」「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」を主要4事業と位置づけるとともに、収益力が高い内燃機関(ICE)関連事業が経営を支えるバランス経営を進めてきた。また、データ利活用によるソリューション事業の推進により、競争力の向上に取り組んできた経緯がある。
今回の協業により、これらの強みを生かしながら、鴻海精密工業のEV・自動運転事業の強化、拡大を進めることになる。
具体的には、「電動パワートレイン領域」では、世界初のハイブリッドカー向けパワーモジュールの量産化を行ない、約30年間にわたるインバータの量産実績を活かせるとした。また、「自動運転領域」では、50年以上の制御ソフトウェアの開発実績、車両制御関連製品では量産により、1億2000万台以上に搭載。機能安全とサイバーセキュリティ技術に優れていることを強調。「車載インテリジェンス領域」では、ドライバーモニタリングシステム事業において、世界No.1シェアを持つこと、車室内全体検知技術や生体検知技術をはじめとして、世界トップクラスの特許数を持つことを示してみせた。
三菱電機モビリティの田中社長は、「ドライバーモニタリングシステムでは、ドライバーの安全運転や、乗員の体調不良など、車内環境における高度な状態推定を可能にしている。幼児の車内への置き去りなども検知できる。欧州では、2026年から、新車にはドライバーモニタリングシステムを搭載することがルール化されている。この分野で世界No.1シェアを持つ強みがこれからも発揮できる」と胸を張った。
また、三菱電機モビリティでは、アイシンと共同でEV向け駆動用モーターシステム「eアクスル」を開発しているが、「鴻海精密工業が企画しているEVに採用してもらえるように、アイシンとともに協力していく。また、他社への提案も進めていく。アイシンとの協業関係に変化はない」(田中社長)と語った。
一方、鴻海精密工業の関CSOは、「鴻海のEV事業は、受託製造が中心だが、電子業界とは異なり、デザインを含めたCDMS(Contract Design and Manufacturing Services)として展開している。また、BOL(構築、運用、ローカライズ)のなかでも、ローカライズにこだわっており、日本であれば、日本のブランドと一緒に仕事をしたいと考えている。そして、付加価値を得るためにコンポーネント/モジュール、プラットフォーム、アフターセールスの領域にも乗り出している。今回の協業は、コンポーネント/モジュールの強化に乗り出す施策の1つになる。鴻海は、絶対にEVの時代が来ると考えている。EVを選択している企業である」などと述べた。
さらに、「シャープの買収では反省している部分がある。ブランドビジネスを経験したことがないにもかかわらず、口を出してうまくいかなかった。三菱電機は自動車業界でしっかりと顧客をつかみ、ブランド力がある。シャープでの失敗の経験を活かし、執行は三菱電機に委ね、鴻海はシナジーを支える役割を果たすことになる」とも語った。シャープは、鴻海から社長を送り込み、一時的に業績を回復したが、その後業績が再び悪化。現在は、社長をはじめ、執行体制をすべてシャープ出身の日本人体制とし、業績回復を図っている。
また、三菱電機の加賀副社長は、「これまでは、長年のノウハウの蓄積であるエンジンのすり合わせ技術が、三菱電機の競争の源泉となっていた。だが、EV化の進展により、環境が大きく変化している。この機会をとらえるために、両社の強みを生かし、ベストパートナーとして最適な投資を進める。これにより、自動車産業の主要なプレーヤーの一角を担うことができる」と語った。
三菱電機モビリティの2025年度の売上高は8756億円、調整後営業利益率は5.7%の実績に対して、2026年度の売上高は8200億円と減少するものの、不採算事業の収束を進めるとともに、既存事業での稼ぐ力を土台に堅調な事業運営を継続。調整後営業利益率は9.3%に高める。
また、三菱電機モビリティの田中社長は、「今回の鴻海精密工業との戦略的提携に伴い、アジャイルな事業運営を通じて、共同運営によるシナジーだけでなく、主力事業の強化、拡大を図り、2030年度には1兆円企業を目指す。高い収益性も確保できると考えている」と述べた。
なお、三菱電機では、今回の協業に伴い、2027年3月期の連結決算において、減損損失として約1000億円の計上を見込んでいるが、連結業績予想については精査しており、その内容は10月30日に公表される。




















