スマートフォンをパイオニア製クレイドルで本格カーナビ化!【後編】 カロッツェリア スマートフォンリンク ナビクレイドル SPX-SC01 |
カロッツェリア スマートフォンリンク ナビクレイドル SPX-SC01。今回の試用には、NTTドコモのスマートフォン「Xperia arc SO-01C」を用いた |
カロッツェリア(パイオニア)からリリースされた「スマートフォンリンク ナビクレイドル」。見た目は単なるクルマ用のスマートフォンホルダーにしか見えないけれど、その実態はスマートフォンを高性能なカーナビに変身させてくれる注目のアイテム。前回は前編としてクレイドルとアプリの概要をお伝えしたが、今回は装着から実際の試用レビューまでをお届けしよう。
■装着~接続
クレイドルの装着は下部に設けられた吸盤を利用する。この辺りは一般的なPND(Portable Navigation Device)と変わらないけれど、一部モデルに採用されているような「柔らかい素材を使って吸い付く」タイプではない。そのため、同梱されている「吸盤取付板」は必須だ。
装着において問題になるのがその取り付け位置。センサーを内蔵しているため角度や傾きに制限がある……、のはよいのだけれど、それに付随してアーム部分が上下方向にしか調節できない構造になっている。画面を横位置でも使用できるよう回転はできるのだけれど、クリックストップ構造のため0度と90度の位置でしか使えない。要は地面に対して横方向に傾いている場所には取り付けできない。いや、正確にはできなくはないけど傾いたまま使うしかない状況となる。前述のようにセンサーの精度向上のため、仕方のない部分ではあるけれど、ダッシュボードの運転席側はアーチ状になっていることが多いためちょっと不便な感じだ。
左が製品に同梱される「吸盤取付板」。右はもともと取り付けていたPND用でメーターフードのコーナー部に装着していたもの | 試しにPND用に取り付けてみるとクレイドルは傾いたまま。回転方向への微調節ができないのはちょっと不便 |
というワケで、取付位置は横方向への傾きがない位置に。これなら横位置で使用しても気持ちイイ感じ |
前回チラッと書いたけれど、クレイドルとスマートフォンがピッタリくっついている必要はないのだから、助手席側に置けるセンサーユニット的なアイテムだと汎用性が高かったのにな、と思ってしまう。まぁ、これはダッシュボードのデザインによる部分でもあるので、クルマによってはまったく問題がない場合もある。
後は落下防止用ストラップを取り付けつつ、最後にシガーソケットから専用アダプターで電源を引っ張ってくればよい。
クレイドルの設置が終わったら次はスマートフォンとのペアリング作業。Bluetooth系のアイテムを使ったことがあるならおなじみの作業だ。据え置き型のカーナビなどでBluetoothを使う場合、通信機とナビの両方であれこれ設定する必要があるけれど、これは利用するスマートフォン側でのみ作業をすればよいのでとってもカンタンだ。1度ペアリングを行ってしまえば、次回からは乗車時に勝手に接続してくれるため手間いらずなのも嬉しい。
■目的地検索
目的地検索は「ドコモドライブネット」サービスとの契約やクレイドルがなくても実行可能。項目は「フリーワード」や「周辺施設」、「住所」など、一般的なナビと同じで基本を抑えてある。なかでもフリーワード検索は複数の項目による、いわゆる「アンド(AND)検索」が可能なため実用性が高く便利だ。通常多用することになりそうだ。
このアプリの最大特長ともいえるのが、「ドコモドライブネット」サービスとの契約により使えるようになる「最新エリア情報」。検索メニューから選択できるほか、地図画面右下の“ドコモダケ”をタッチすることでも呼び出すことができる。項目は「駐車場満空情報」「GS価格情報」「グルメ情報」「テレビ紹介スポット」の4つ。通信によって最新の情報を取得するため、スタンドアローンの据え置き型ナビやPNDにはない便利さが実感できる。前者2つは通信タイプのナビ、後者2つはスマートフォン単独で同じようなことが可能だけれど、「スポットを探してそこまで案内」という一連の流れをこの1台で完結できるのはとってもラク。検索速度も十分に実用的といえるレベルだ。
スマートフォン本体のメニューボタンを押すと選択できる項目が表示される | 左下の「メニュー」を選べば目的地検索などが行える。目的地検索の項目は「フリーワード検索」など標準的なもの | |
「フリーワード検索」では複数の項目によるAND検索が可能。曖昧にしか覚えていないスポットを探し出すのに重宝する |
「周辺施設検索」はジャンルが細分化されたもの。候補が画面上にズラズラと並ばないため、目的のスポットが探しやすい。ドコモショップもカンタンに探せます |
「遊園地」を探したい場合は「レジャー・遊ぶ」→「遊園地・テーマパーク」という流れ。選んだスポットは詳細情報の確認や目的地の設定などが行える |
「グルメ情報」ではジャンルを選んでお店を探し出すことができる。一部施設は詳細で「ぐるなび」のデータを見ることができる |
■ルート探索~案内
ルート探索は「推奨」「距離優先」「幹線優先」「有料道の使用/未使用」「フェリーの使用/未使用」を選んで行える。そのほか、サービスエリアに併設されたスマートICをルートに組み込めたり、細街路にある目的地にも対応したりと、探索機能は据え置き型ナビと同等といえるレベル。さらにクレイドルを使っていれば「スマートループ渋滞情報」を活用して、渋滞を考慮した最適なルートを選んでくれる。
残念ながらテスト時はそれほど激しい渋滞に出会えなかったため、明確な渋滞回避を体験できなかったけれど、地図上に表示された情報を見る限り情報の精度はかなり高そう。カロッツェリアの「サイバーナビ」や「楽ナビ」に携帯電話を接続しても同様のサービスが受けられる(サイバーナビは情報量が多いけれど)ものの、こちらは手持ちのスマートフォン1つでできるためコスト面で有利だ。また、ルート案内中は渋滞状況の変化に応じて「渋滞考慮オートリルート」をしてくれる。都市部を走る機会が多いドライバーなら、このためだけに加入するのもアリなんじゃないか、と思えるほどだ。
ルート案内に関しては結論から言ってしまえば、こちらはちょっとモノ足りない感じ。というのは、交差点のイラスト拡大図やレーンガイドなどはあるものの、通常の交差点拡大図が存在しないため。イラスト拡大図が用意されている交差点はよいが、そうでない場所はオートスケールで地図を拡大して案内する。好みもあるため一概には言えないけれど、スケールが変わることで距離感が掴みにくくるため、余計に分かりづらい印象を持ってしまう。また、最近のPNDでは当たり前のように用意されている方面案内看板がないのもちょっと寂しい。
最後に肝心の精度。これはさすがに素晴らしく、スマートフォン単体とは比べものにならないレベル。ビル街や都市高速の下などはもちろん、トンネル内でも自車位置をキチンと表示。テスト時にはトンネル内の分岐をわざと間違って進んでみたが、それもキチンと判断してすぐにリルートを開始。新しいポイントを案内してくれた。また、細街路にある目的地へもキチンと案内してくれるのも便利。これは地図データが充実していることに加え、自車位置精度の高さがあってこその機能だ。
オービスの警告は画面上の表示とアラーム音で | ちなみに走行中は各種操作が行えなくなる |
精度の高さはサスガ。高速道路上はもちろん、トンネル内でも自車位置を正確に表示してくれる |
トンネル内の分岐で指示と逆のルートを選択してみると、分岐を過ぎた直後にリルートを開始。すぐに案内ポイントを変更して新ルートによる案内が開始された |
ビル街の谷間&都市高速の高架下というGPSのみではキツイ条件下でも自車位置は正確だった | 精度の高さ&細街路での案内により、入り組んだ住宅街でも安心して走行することができた |
エコドライブを助けてくれるエコステータス機能。スコアやグラフで結果を見ることができるため、ムリなくエコな運転を身に着けられる!? |
■結論は?
まったく新しいジャンルの製品となる、このクレイドル。買いか否かと聞かれれば、「対応するスマートフォンを持っているなら買い!」と言ってイイと思う。精度の高さはカーナビとして十分満足できるし、クレイドル自体は一度買ってしまえばスタンドとしても、クルマ用の充電器としても利用できる性質のモノ。利用価値は高いといえる。
一方のアプリはフルに使おうとすると月額料金が発生するものの、常に最新の地図が使えるのはもちろん、スマートループ渋滞情報を手軽に利用できるのはとても便利だ。後は案内の充実を望みたいところで、据え置き型やPNDでは期待薄だけど、こちらはアプリなので後日アップデートなんてことが……、あるといいかも。あ、あとはまったく持って個人的な要望だけど、タブレットタイプへの対応もぜひお願いしたいところだ。
(安田 剛)
2011年 6月 24日