日産など、「横浜おもいやりライト大作戦」第3回市民会議開催

「横浜おもいやりライト大作戦」会場風景

2011年10月20日開催



  日産自動車、ソーシャルネットワーク団体「グリーンドリンクス横浜」、おもいやりライト運動事務局は10月20日、「横浜おもいやりライト大作戦 第3回市民会議」を神奈川県横浜市みなとみらいにある象の鼻テラスで開催した。この市民会議は、事故の多くなる夕暮れ時にヘッドライトを点灯することで事故を減らすことを目的としたもので、夕暮れ時の早期ヘッドライト100万台点灯を目指すという。

 なお、10月21日には、みなとみらい大通りでテーマカラーである黄色いものを身につけ、黄色いパネルを使って、歩道から走行車両にライト点灯を呼びかける運動も行う。

 1日のうちで交通事故発生件数がもっとも多くなる時間帯は16時~18時の夕暮れ時。ドライバーがヘッドライトを早期点灯することで、歩行者や自転車に乗る人々に車両接近を早く認知してもらうことが可能になる。日産では、今年で40年目となるハローセーフティキャンペーンの一環として、昨年より「横浜おもいやりライト大作戦」に参加している。2011年は、横浜市に活動の焦点を絞り、市民会議を開催し、市民と一丸になって横浜市の交通事故低減に努めるという。

 おもいやりライト運動でプロデューサーを務める山名清隆氏は挨拶の中で、第0回は地下室での会から始まった「おもいやりライト運動」が、ホームページなどですこしずつ広まり、こうして今回世の中に大きくアピールできる機会ができて大変感謝していると語った。

おもいやりライトでプロデューサーを務める山名清隆氏グリーンドリンクス横浜 斎藤真菜代表

 次いで、ソーシャルネットワーク団体グリーンドリンクス横浜の斎藤真菜代表が挨拶を行った。第1回の横浜おもいやりライト大作戦には、取材をする側として運動に関わったという。グリーンドリンクス横浜は、エコに限らず世の中によいことをしようという人たちが、毎回食や旅などいろいろなテーマで、横浜の各所で交流を行っている会。今回、横浜おもいやり大作戦への参加に伴い、同会のテーマカラーである黄色に合わせ、イエロードリンクスという名称で活動を行っていくと言う。

 次に日産自動車の長谷川氏により、これまでの活動が紹介された。日産自動車では、安全なクルマの開発に努力しているが、クルマだけでは何もできず、結局は人が安全運転したり、社会をより安全にしていく活動をしたりすることが必要だと考えたと言う。そこで今回、思いやりライト運動では「人」に対して働きかけをしていく。

 日産では、これまでも「ハローセーフティキャンペーン」として安全啓発キャンペーンを行ってきたが、どうしても企業目線の活動になってしまっていた。そこで今回は、市民が主体的にいろいろなアイディアを出す、安全啓発活動につなげていきたい言う。世の中でどんな事故があるのか、その事故を防ぐには何をすればよいのかといった考えに基づいた内容が、今回の思いやりライト運動での提案に盛り込まれる。

日産自動車 長谷川哲男氏

 また、ドライバーに早期のヘッドライト点灯を働きかける一方で、歩行者にも反射材を身につけるといった呼びかけをしていく。

 思いやりライト大作戦は、準備段階だった7月の第0回から始めて毎月開催し、今回で4回目となる。長谷川氏は、日産とグリーンドリンクスが、今日のような場を使っていろいろな繋がりができたことを嬉しく思っていると語る。この活動をぜひ横浜から始めて日本全国、そして世界へ広げていきたいとし、21日の「あかりの日」には夕方一斉点灯するという活動を行い、ひとつになって明日の活動につなげて行きたい、と締めくくった。



社会、人、クルマの3つのうち、今回は人に訴えて行く夕暮れ時の16~18時にもっとも事故が多いという思いやりライト運動のこれまでの活動
横浜おもいやりライト大作戦のこれまで。準備期間の7月から数えて4回目運動は横浜から始めて日本、そして世界へと広げていく運動の参加企業や団体など。このほかにも個人などが参加しているという

 次に「横浜の夕暮れ文化とあかりで交通安全を考える」というテーマで、トークセッションが行われた。横浜市役所文化観光局の杉山昇太氏が今回の会場である象の鼻テラスについての解説を行った。象の鼻テラスは、横浜が開港した150年前に波止場のあった場所で、象の鼻のように曲がった堤防があることから名付けられた。ここは横浜の近代発祥の場所として、文化、芸術、クリエイティブシティの中心地として象徴的に位置づけられている。また、近隣には赤レンガ倉庫や、大桟橋、山下公園などがあり、横浜の中でも一番横浜らしい中心地として運営をしていると言う。

 その象の鼻テラスでは、10月7~9日に「スマートイルミネーション」というイベントが行われた。横浜は観光資源として夜景が認められてきたが、震災後には暗くなってしまった。スマートイルミネーションは、発電所に繋がっている普通の電力を使うのではなく、省電力でしかもそこにアートの力を加え、横浜らしさを発信していこうというイベント。その中で象徴的なものが、「車座」という、谷川俊太郎氏の詩の朗読に合わせて20台のクルマのライトをコンピューター制御で点灯するものだった。そのような経緯で、ライト技術が高い、日産とのコラボレーションが実現したと言う。

トークセッションの参加者。左から、事務局の森氏、NPO法人アニミの服部氏、日産自動車の渡辺氏、横浜市文化観光局の杉山氏横浜市役所文化観光局の杉山昇太氏

 次にNPO法人アニミの服部一弘氏が、21日にみなとみらい大通りで通行するクルマにライト点灯を呼びかける「アニミ前大集合!一斉点灯呼びかけ大作戦」について紹介した。NPO法人アニミ事務所前に、なにか黄色いものを身につけて16時に集合し、一斉点灯を呼びかけるというもの。呼びかけの際には、黄色いものを身につけて、黄色いパネルを使って走行中の車両に対して呼びかけを行うと言う。

NPO法人アニミの服部一弘氏呼びかけに使用する黄色のパネル


自身も横浜市民という日産自動車の渡辺洋一氏

 最後に、10年以上横浜市民という日産の渡辺洋一氏が同社内での活動状況を報告した。日産は、交通事故を減らすための技術開発を、日本だけでなく世界中のサプライヤーと進めている。

 しかし、技術が浸透するには長い年月がかかるため、人に対して安全の啓発を行い、安全意識を高める努力をしていると言う。ただし、始めから高いハードルの高い要求をしても安全に対する意識が浸透しないため、「ちょっとした思いやりでライトのスイッチをひねるだけで、夕暮れ時の事故のピークを減らすという効果が大きく期待できる」と、おもいやりライト大作戦を行うにあたっての背景を説明した。また、市民の協力を得ながら市民の視点で盛り上げていくのが、運動の浸透につながるとした。

 日産社内のアンケートでは、早めにライトを点灯する「おもいやりライト」について知っていたのは約7割、実際に実行していたのは8割ほどだと言う。自動車会社の中でも完全に浸透しきるのは難しく、これを横浜、さらに世界に広げていくのは一朝一夕ではいかないことを感じたと言う。

 また、今回のような活動については、今まで3カ月程度の短い期間だが、スマートイルミネーションとのコラボレーションも、「1企業だけではなしえなかった。また、今回開催された会議でも『イエロードリンクス』という名前で、これだけの方に集まっていただき、非常に短期でよい成果を挙げていることを感じている。今度は、自動車会社の社員だけでなく横浜市の職員にも広げていくような活動をしていきたい」と語り、この市民会議というアプローチは今後も非常に伸びが期待できるとした。

参加者全員で記念撮影最後はメンバーと参加者の交流時間にあてられた会場でふるまわれた軽食。すべて会のテーマカラーである黄色い食材が使われている
イルミネーションアーティスト、日下淳一氏もイルミネーションスーツを着て飛び入り参加

(平 雅彦)
2011年 10月 21日