【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ 第1回:そうだ GT-R、買おう |
筆者の10年間の友だったRX-7(GF-FD3S) |
■RX-7との別れ。左耳下腺腫瘍。新しい車。
2001年にマツダ「RX-7(FD3S)」(http://www.mazda.co.jp/philosophy/history/rx-7/)の最終6型を購入して満10年間乗り続けてきたが、別れの日がやってきた。“別れ”の理由は話が長くなるのでここでは省略するが、ただ、10年間の最後の1秒まで、RX-7はいい車だったとだけは言っておこう。新車で購入してノーマルからコツコツとチューニングし、エンジン3基分とともに走り続け、その時間から得られた数々の経験はボクの宝物だ。
RX-7を降りたあとは虚無感だけが残り、「しばらくもう車はいらないかな」なんてことまで思っていたのだが、あまりに不便なため、わずか10日前後でその決心が揺らぐ。東京都心部と違い、日常の用を鉄道の利用だけでは済ませられない。日々の買い物なども国道沿いのスーパーやモールに出かけなければならない。埼玉県で暮らしていると、車がないのはとても不便なのだ。
では何を買うか……ということになるのだが、自分は「走り」のよい車が好きなので、スポーツないしスポーティカーからの選択は最初からの決定事項だ。
プレリュード(BB1)Si VTEC |
スポーツカー、スポーティカーということなので基本的にはクーペボディーを好むが、2+2の4人乗りであることが望ましい。ほとんど1人で乗るのは間違いないのだが、所有する車としては1台体制になるので、自動車としてのユーティリティ性はある程度は重視したい。突発的な友人の送迎や、大きなモノを買ったときには後部座席やトランクスペースに積んで帰りたい。
そして、今度の車も、素の状態から長く乗っていきたいので「新車」という条件も大前提としたい。自分は「車好き」だが、自分の愛車遍歴はRX-7が2台目の車だった。RX-7の前の愛車は、1992年式のホンダ「プレリュード(BB1)Si VTEC」(http://www.honda.co.jp/auto-archive/prelude/1996/)で、こいつも新車で購入して約9年間、じっくりといじりながら乗り続けた。今度の車もきっと10年は乗り続けることになるだろう。
個人的にはスポーツ系の中古車の選択はかなりギャンブルと思っていて、自分の周囲にも「不運な悲しい失敗談」と「絶品車に巡りあえた成功談」が同割合で存在するが、筆者はギャンブルが得意ではない。
駆動方式はプレリュードがFF、RX-7がFRだったので、次は「4WDに乗ってみたい」という要望もある。ただ、現在新車で販売している4WDのクーペボディー(SUVは除く)というと、国産車では日産「GT-R」しかない。
2012年モデルのGT-R |
そのGT-Rだが、好きか嫌いかと言えば、2007年のデビュー当初は好きでも嫌いでもない車種だった。
筆者が取材したGT-R開発責任者・水野和敏氏による講演の様子 |
ただ、2010年にCar Watchの取材で、GT-R開発責任者の水野和敏氏の講演を聞いたときにちょっと心に響くものがあり、自分の中でGT-Rへの興味が少しだけ湧いた。当時は愛車のRX-7に大きな不満もなかったので、GT-Rという車種に対する理解を深めた(≒見直した?)……という程度ではあったのだが。なんというか、水野氏のGT-Rに搭載した機能の解説とその機能誕生の経緯に、独自の世界観が感じられたのだ。
1つ1つの機能パーツはGT-R開発チームの新しいアイディアを元に開発されており、こだわりが凄い。「オレは今の車のここが物足りないからこういう新しい機能を考えて搭載してみた」というのは、効率重視の最近の日本の量産車開発では希なケースだ。「機能性が高い」「性能がよい」を超えたその先にあるGT-Rの世界観に対して、自分自身がその是非を判断してみたいという興味が湧いたのだ。この辺りの話題は、水野和敏氏への取材ができたときなどのタイミングで、あらためて紹介したいと思っている。
一言で言い表すならば、X68000に始まり、セブンを選択したときもそうだった「マイナリズムに惹かれる」という持ち前の性分が刺激されてしまったということだ(笑)。
ただ、GT-Rは少々お高い車だ。
クルマは移動手段のための道具なのだから、こだわりを捨ててもっとリーズナブルな車種にすべきという迷いも自分の中にあった。例えばエコカーとか。しかし、あえて車を所有するならばオーナーたる自分が楽しめなければつまらない。そもそも、自動車の運転というのは、人生においては行動が著しく制限される時間帯の1つ。移動という目的に対してはある意味、「無意味な時間帯」と言ってもいいかもしれない。
電車ならば音楽を聴きながら読書もでききるが、自動車は運転中は常にまわりの情景をリアルタイムに判断分析し、操作をしなければならないので行動の自由度はとても低い。同乗者が居れば会話も楽しめるが、1人だと音楽を聴く程度だ。基本的に運転中は意識の大半を運転行為そのものに割り当てなければならない。
ならば運転行為自体が楽しめなければ、自動車を所有していることに価値が見出せないのではないか。往々にしてクルマ好きは、運転そのものが楽しい「ドライバーズカー」を選びたがる傾向がある。
自分はもうアラフォーと呼ばれるいい年になったし、あと10年、今度の車を乗るとするとアラフィフだ。年齢的には「速いドライバーズカー」を乗るのは今回が最後の機会になるかも知れない。そんな気持ちがよぎった。
GT-Rはドライバーズカーとしては究極形だし、「最後のドライバーズカー」には申し分ない。「ガソリン車の日本車」という括りでは、こんな車はもう出てこないだろう。
さらに、RX-7を降りたときとほぼ同時に、MRI検査で左耳下腺に腫瘍が見つかったことも「今度買う車が“ラストカー”になるのでは?」という不安感に拍車を掛けた。左耳下腺腫瘍にまつわる入院や手術の模様については、筆者のブログで触れているので興味がある人はそちらをご覧頂きたい。
とにかく、次に買う車をGT-Rと想定して、実際に動いてみることにした。
■グレードはピュアエディションを選択
さて、長い前置きだったが、ここからの話は「新車をどう安く買うか」という普遍的なテーマになるので、GT-Rと切り離して読んでいただいても参考になる部分はあるはずだ。GT-Rは高価なので最初から現金一括で買えないことは分かっていた。なので、必然的にローンを組んでの購入となる。
今までは、貯金をしながら身の丈の車種を購入してきたので、今回のような“背伸び”をしての自動車購入は初めてだ。テクニカルジャーナリストを名乗って仕事をしているとは言え、世間から見れば「よく海外に行く自宅警備員」に見えるはずだ。
そもそも、GT-Rをローンで購入することなんてできるのだろうか。高級車というのは、動物愛護団体から訴えられそうなほどの小動物の毛皮のコートを着込んで、葉巻をくゆらせながら、両腕を美女の腰にあてがいながら入店し、「ここの店で売っていると言われる“じぃーてぃあーる”とかいうクルマを包んでくれたまえよ、チミ」みたいなノリで購入するお金持ちが大半だと想像していたので、商談すらしてくれるのかどうか不安だった。
まぁ、相手をしてくれなさそうだったら、諦めればいいだけのこと。ある日の仕事の帰りに、意を決して地元の埼玉日産を訪れてみることにした。平日の夜、それも閉店間際。しかし、GT-R担当のカーライフアドバイザー(CLA)氏は親切に応対をしてくれて、購入プランを色々と案内してくれた。CLA氏が言うには、確かに現金でフラっと寄って注文をするユーザーもいるにはいるが、ローンを伴った「かなり大きな買い物」とする商談ケースも多いと言う。ということで、まずは見積もりだ。
商談中の様子。かなり結構細かいことまで教えてくれる。車両保証問題は2007年当時と比べるとだいぶ緩和された印象を持った | 地元の埼玉日産。GT-Rのメンテナンスを行うハイパフォーマンスセンターとして認定されているディーラーだ |
GT-Rには、内装をフルカスマイズできる「EGOIST(エゴイスト)」という特別なグレードを除けば、カタログラインアップされる車種としては3種類ある。1つは基本グレードの「Pure edition(ピュアエディション)」、2つ目は内装やシートを豪華にした「Black edition(ブラックエディション)」、3つ目はセキュリティを強化してBOSEサウンドシステムなどを追加したゴージャス版の「Premium edition(プレミアムエディション)」だ。
ちょっと変わっているのは、プレミアムエディションはブラックエディションの上級版ではなく、ピュアエディションの別方向の豪華版という位置付けである点だ。なお、「SPEC-V」という、後部座席をキャンセルし、カーボンセラミック製ブレーキ「NCCB(Nissan Carbon Ceramic Brake)」などを装着したモデルは2011年で販売を終了している。2012年からは、SPEC-Vのエッセンスを「For Track Pack」という名称の特装オプションとして抜き出し、基本グレードのピュアエディションに対してのみメーカーオプションという形で提供している。
GT-R ピュアエディション(For Track Pack装着車) |
車両価格はピュアエディションが869万4000円、ブラックエディションは947万1000円、プレミアムエディションは961万8000円だ。2007年のデビュー当時、ピュアエディションが777万円だったことを考えると、5年間で結構な値上げが行われたものだ。
詳しい装備の違いはGT-Rの公式サイト(http://www.nissan.co.jp/GT-R/edition.html)を参照して欲しい。2011年まではリーフレットのようなカタログしか表向きには配布されていなかったが、2012年モデルからは、ちゃんとした冊子としてのカタログがディーラーに常備されている。Webサイトよりも冊子の方が見やすいので、購入を検討している人は、ぜひとも入手していただきたい。
結論を言うと、いわゆる第2世代の「スカイラインGT-R」とは違い、R35 GT-Rは全グレードで走行性能やメカニズムスペックに仕様の違いがない。すなわち、内装や豪華装備の違いで、自分好みのGT-Rを選べばよいのだ。
さて、自分はと言えば、最初はブラックエディションが欲しかった。しかし、金銭的な理由でピュアエディションを選択することにした。
GT-R ブラックエディションに標準装着されるレカロシート |
販売店によると売れ筋はブラックエディションかプレミアムエディションとのことだが、自分にとっては「内装に赤色のアクセントが付いて、シートがレカロシートになっただけで77万円高のモデル」という風にとらえ、諦めることにした(笑)。後々どうしてもレカロシートが欲しくなったら、コストパフォーマンスに優れたレカロのSR-7シリーズなどを入れればよいかなとも思う。
ピュアエディションも、レカロシートだけを純正オプションとして選択する手立てがないわけではない。実はピュアエディションは、日産とレカロがSPEC-Vのために共同開発したというリクライニング付きのレカロ製カーボンバケットシートを、メーカーオプションで選択することができるのだ。ただし、こちらは1脚109万円(笑)。ブラックエディションの77万円高はむしろバーゲンプライスといえるか。
プレミアムエディションは、元々自分が豪華装備に興味がなかったので、最初から選択肢にはいれなかった。
ボディーカラーは赤(バイブラントレッド)を選択した。赤が好きなので赤を選択したが、実はGT-Rは、色によっても価格が異なる。もっとも高価なのはシルバー(アルティメイトメタルシルバー)で車両価格に31万5000円が上乗せされる。同様に青(オーロラフレアブルーパール)、白(ブリリアントホワイトパール)、黒(メテオフレークブラックパール)は4万2000円が上乗せされる。これらのボディーカラーは特別塗装色であると同時に、傷の付きにくい特別なボディーコーティングを追加施工するためと説明されている。車両価格に塗装代が上乗せされないのは、赤(バイブラントレッド)とガンメタリック(ダークメタルグレー)の2色のみということになる。たまたま好きな赤は上乗せ課金がなくて助かった……という感じだ。
■オプション、高し!
続いてオプション品だが、これがむやみに高い。利幅が大きい商材なのでやや高めに設定しているのだろうか。身構えていないと思わず噴き出してしまいそうな価格になっているので、自分のような庶民は覚悟したほうがいい。
まぁ、別に高いと思ったら社外品を利用すればいいのだ。GT-Rデビュー当時はあらゆる社外品を排除するマーケティング方針が行われたが、現在はだいぶ緩くなっており、根幹となるメカ部分の改造を伴わない、消耗品等の社外品利用は常識の範囲内で認められている。この辺りの「車両保証の条件に抵触しないカスタマイズ」の話題も、本連載で取り扱うと思う。
さて、オプション品の基本中の基本であるフロアマットからだが、何も言わないと普通にオススメされるのが「GT-R専用プレミアムスポーツ・フロアカーペット」で、これが12万6000円。カーペットのパイルに日本の工芸手法である丹後緞通調を採用していたり、フットレスト部がリアルカーボンだったりするので高いのも仕方ないとは思うが……。
「GT-R専用プレミアムスポーツ・フロアカーペット」は12万6000円 | 「GT-R専用スタンダード・フロアカーペット」は8万6100円 |
「これはちょっと高い」という顔をすると、次に勧められるのは「GT-R専用スタンダード・フロアカーペット」で、こちらは8万6100円。先ほどと比べると安く思えるが、一般的なフロアカーペットは2万円~4万円なので、GT-Rのエンブレムが付くとどうも高くなるようだ。結局、自分はどちらも選ばず、フロアマットは社外品の購入を決意した。
筆者宅の駐車場は屋根付きだが、側面に大きな開口部があって、完全な屋内駐車場とは言い難い構造だ。そのため、ボディーカバーが欲しいと思った。とくに赤色の塗装色は褪色しやすいというのもあるため、ボディーカバーはボディーカラー保護の意味合いもある。しかし、こちらも一般的な車種で2万円~4万円前後の製品のはずが、GT-R用は高価だ。純正品の「ボディーカバーセット」はなんと15万7500円もする。こちらも見積もりから外し、社外品を検討することにした。
そのほかに勧められたのが、「LEDハイパーデイライト キャンセルスイッチ」(2万6250円)。2011年モデルからGT-Rは、走行時にLEDベースのデイライトを強制的に点灯させる構造になったのだが、これをキャンセルするためのスイッチがこの製品。なんだか「押し売りの手口」みたいな本末転倒なオプションだが、筆者の場合、デイライトは事故防止にはとても有効な装備だと思っているので、常時点灯大歓迎ということで見積もりから除外した。
「ボディカバーセット」は15万7500円 | 「LEDハイパーデイライト キャンセルスイッチ」は2万6250円 |
一方、GT-Rのカーナビは純正品が強制的にビルトインされる。これはGT-Rの仕様の中では大きな不満の1つだ。
R35 GT-Rでは、車体のリアルタイムステータスを表示するマルチファンクションメーター用のモニターとして7インチの液晶画面を搭載しており、これは純正カーナビの表示にも利用されている(カーナビ自体はクラリオン製)。R34 スカイラインGT-Rにもこうしたビルトインディスプレイはあったのだが、カーナビは社外品も含め、別体でコンソール側に搭載することができた。
ところがR35 GT-Rでは「純正の囲い込み」が行われた格好だ。ETCユニットやカーナビなど、基本的な電装系のすべてを標準装備にしている割に、「VICSビーコンユニット」はオプション品扱いで3万8063円とやや高めの設定となる。ただ、日産のカーナビ向け情報配信サービス「カーウイングス」を利用すれば、広域な渋滞情報を得られるのでVICSビーコンはもはや不要という話もある。ということで、これも見積もりに入れなかった。
個人的に、電装系では後退時に背後の情景が映るバックカメラを欲しいと思っていた。RX-7もそうだったが、車高の低いスポーツカーは駐車場の車止めが鬼門だ。「車止めにコツンと当たったら止まる」なんていう後退駐車法はスポーツカーでは御法度。車止めが高さ10cmを超えている場合、ディフューザーなどと衝突する可能性があるのだ。こればかりは「後部視界が云々」という話ではすまない問題なので、新しいクルマを買うときには実装したい装備だったのだ。純正価格を見ると7万5635円とあり、これまた一般的な車種の5倍くらいの値段だ。これも見積もりから外し、社外品を考えることにした。
「VICSビーコンユニット」は3万8063円 | 「バックビューモニター」は7万5635円 |
結局、車体の他にメーカー/ディーラーオプションとして注文書に入れたのは効果5年保証のボディーコート(5years coat)と、車体の4面ガラスに車体番号を刻印する防盗施工(1万5540円)の2点のみとなった。
ちなみに自動車取得税は、オプションを含めた総金額にかかってくる。そのため消費税と取得税の2重払いを避けて節税したいならば、納車されてからオプションを購入する方が得だ。メーカーオプションは車体製造時に組み付けられるのでこの裏技は通用しないが、納車後にディーラーなどで作業されるディーラーオプションならばこの裏技が使える。ただ、ディーラーごとにローカルルールがあるようなので、この点については事前確認はしておきたい。ちなみに、筆者が利用したディーラーではボディーコートとガラス面加工は納車後の別会計にできなかった。
そして、最後に紹介しておきたいのが、事実上、車両価格に付帯されることになる「メンテプロパック」(http://www.nissan.co.jp/SERVICE/TENKEN/OSUSUME/MAINTEPRO/)だ。
新車購入時から新車無料1カ月点検時までの限定販売となる「メンテプロ30」は、エンジンオイル5回、エンジンオイルフィルター交換2回、メーカー6カ月点検2回、法定12カ月点検2回を1パックにして若干割引いた商品で、日産の車両保証を維持したいのであれば事実上、購入必須となる。
車種ごとに価格が異なるものの、GT-Rの場合は22万5000円だ。GT-Rは各種メンテナンス時にボディーアンダーパネルを脱着しなければならない関係で、オイル交換工賃が高い。一応、単発で上記の回数分でオイル交換、オイルフィルター交換するよりはだいぶ安価な価格に設定されている。逆に「車両保証はいらない、自分の通っているショップに任せられる」というのであれば、ここはカットできる部分ではある。
結局、869万4000円の車体と、その2つのオプション代、メンテプロ30、自動車取得税、重量税、自賠責保険などの諸経費を合計させた総額は951万7740円となった。ちなみに値引きはゼロ(笑)。ここはメーカーとしても一貫した姿勢なのだそう。
とは言えなんとか削れないかと見積書を精査し、自ら削ったのは車庫証明取得代行費用の1万5540円と、希望番号取得代行費用の3150円、納車費用の9765円だ。これらは自分でやれば実費ですむ。これで約2万8000円が浮く。2万8000円あればフロアマット代の足しにはなる。
筆者の商談ケースの最終見積書。ここにメンテプロ30の金額を加算したものが総支払金額となった |
■GT-Rをローンで安く買う方法
基本グレードのピュアエディションでも総額が950万円となるGT-R。さすがに現金一括は無理なので、頭金を入れた分割払いでの購入となる。分割払いを伴うGT-R購入プランとして、日産のディーラーで提供しているプランは大別すると2つ。
1つは通常の分割払いによる購入だ。具体的には頭金を入れて、その残金を日産ディーラーが提携しているクレジット会社を通してローンを組む手法になる。
埼玉日産(に限ったことではないと思うが)は、車種によって設定金利が異なっており、GT-Rの場合、分割払いを含む場合は年利率5.9%の金利が設定されている。日産は売れ筋のコンパクトカークラスでは年利率0.9%の車種もあったり、期間限定でディーラー独自のローンプランを提供している場合もあるが、GT-Rの場合はこの金利になるようだ。結論から言うと、この金利は相場からすると高い。
後の比較のためにも、ディーラーの提案している金利での計算をしておこう。例えば頭金を550万円にして残金400万円を実質年率5.9%の5年ローン(60回返済)で返済した場合、総支払金額は約463万円になる。年利率は残金に対して年単位に複利に掛かってくるので、支払い年数が多いほど総支払額はぐんと多くなるし、逆に言えば金利を少しでも下げられれば、利息分は結構小さくなる。
ディーラーのローンが高いのは知っていたので、この見積もりを元に一般銀行のマイカーローンや格安金利で知られるノンバンク系のマイカーローンの審査を受けてみることにした。
日立キャピタルを初めとして低金利のマイカーローンは人気が高い |
ちなみに、審査の難度でいうと、ディーラーが提供するローンは比較的審査が甘いと言われている。一方、ノンバンク系の低金利タイプは審査が厳しめで、一般銀行系はその中間くらいと言われている。複数の銀行や信販会社へのローンの申し込みは、あまりやらない方がよいという風説があるが、筆者の担当をしてくれたCLAによれば「GT-Rをローン込みで購入されるお客様は、よく複数の審査を通して検討されていますよ」とのこと。
筆者がまず申し込んでみたのは、埼玉りそな銀行のマイカーローン(http://www.resona-gr.co.jp/saitamaresona/kojin/service/kariru/mycar/mycar/index.html)。端数は省略するが、おおよそ上記のような支払い計画で申し込んでみたところ、「金利4.475%」という標準金利での審査OKが出た(2011年12月時)。ちなみに、埼玉りそな銀行は2012年になって3月30日までの期間限定で0.8%金利を割り引くキャンペーンを開始したようなので、3.675%になるようだ。
続いて、ノンバンク系のマイカーローンでは人気の高い日立キャピタルにて同計画で申し込んでみたところ、3.5%の金利での審査OKが出た。2連勝だ。
ローン計算に便利な「日立キャピタル」の返済シミュレーションページ(http://www.netplaza.jp/simu/)。月々の支払いがいくらになるかという計算が楽にできる |
「自宅警備員」のくせに生意気だ……というヤジが飛んできそうだが、これには理由がある。マイカーローンは無担保扱いのローンだが、実質上は購入するクルマが担保相当になる。そのため、頭金を多く入れて借入金額よりもクルマの価値の方が十分に高ければ、よほど金融事故を頻発させたブラックリスト人間でない限り審査は降りやすい(らしい)。さすがにGT-Rを全額ローンで、というのは厳しいが(支払い年数にもよるとは思うが)、購入金額の半額分くらいを頭金で入れられれば、GT-R購入は真実味を帯びてくる。自分はと言うと、結局、最終的に金利2.9%の地元のノンバンク系のマイカーローンを選択することにした。
ちなみに、最初にした試算と同じように頭金を550万円入れ、年利率2.9%で残金400万円の借り入れを行い、これを60回均等払いで計算すると、支払総額は約430万円となり、支払い利息はディーラーで提示された5.9%時の半額以下となる。値引きがない車種は金利の少ない手段で買うのが吉なのだ。
もう1つ、ディーラーが用意している購入プランに「残価設定ローン」がある。近年、耳にすることも多いこの購入手法に興味を持たれている読者も多いことだろう。
日産も「残価設定型クレジット」(http://www.nissan.co.jp/CREDIT/BVC/)として大々的に訴求しており、当然GT-Rもこのシステムを利用して購入することができる。この仕組みは、最終的に自分のクルマにしたいのであればあまりオススメできない。普通に頭金を入れ、前述のようなローンで購入した方が圧倒的に安く購入できるからだ。
では、残価設定ローンのメリットはどこにあるのか。それは頭金が少なくても購入しやすいこと、月々の支払金額を少なくできて支払期間中はそのクルマのオーナーになれることだ。最大5年60回まで設定できる分割払い期間後の車両価格を日産が保証し、これを残価として設定できる。ユーザーは自分の支払い能力に合った年月分だけの車両価格を支払期間中支払い続け、その支払い継続期間中は車両をほぼ自分の物にすることができる仕組みだ。
例えば、約870万円のピュアエディションを購入するに当たり、頭金を約370万円入れて残金の約500万円を5年60回払いの残価設定ローンで購入したとすると、月々の支払額は5万7700円だ。5年間の間はこれでGT-Rのオーナーになれるわけだ。5万7700円を5年間支払い続けると、約341万円になる。500万円を借り入れたのに、5年後に残金とその利息分の約252万円は残るので“残価”設定ローンというわけだ。
しかし5年後に残金の252万円を支払えれば自分のクルマにできるが、支払えない場合はメーカーにクルマを返却する必要がある。今の例でいくと、頭金を約370万円入れ、5年間で341万円支払い、総計711万円支払って自分のクルマにならないというのは何とももの悲しい気がするが、それが残価設定ローンなのだ。ちなみに、残った残価を再び分割払いすることもできるが、その場合はこれまでの支払い年月と合わせて最長7年が限界期間となる。上記の例でいくと5年間をすでに支払いに充てているので、残価の252万円をあと2年で払いきらなければならないので、金利4.9%だと月々約11万円の24回払いになる。
日産の残価設定ローンの公式サイト。GT-Rも選択できる |
ちなみにGT-Rの場合、日産では残価設定ローンは年利率4.9%の金利で購入できると案内されている。「前出の5.9%のローンよりもお得そうじゃないか」と思った人もいるかもしれないが、最終的に車両を自分のものにしたいということであれば、まったくお得ではない。何故かというと残価設定ローンの金利は借り入れた金額ではなく、残価設定分にもかかるというからくりがあるからだ。
極端な例だが、頭金ゼロで1000万円の購入必要金額のうち、残価を600万円に設定して5年間で400万円を支払うという契約を結んだとする。この場合、借入金額は400万円なのに、利息は1000万円分で計算される。さらに5年後、残価600万円を2年で支払う……とした場合は、その利息は再び残価の600万円に課されてしまう。全期間で見ると、車を手に入れるのにかなりの期間、2重の利息を支払うことになるのだ。
GT-Rも残設定ローンが利用できる。興味がある人は公式サイト(http://www.nissan.co.jp/CREDIT/BVC/)を訪れて実際にシミュレーションしてみよう |
残価設定ローンは、よくリースに例えられるが、確かによく似ている。ただ、車検証上の所有者表記は購入者になるので、リース車は取り付け対象外としているNISMOのスポーツリセッティングコンピュータなども、残価設定ローンで購入中のクルマに取り付け可能とのことだ。
逆にノンバンク系のマイカーローンでは、車両価格と借り入れ金額の対比によっては、車検証に信販会社の名前が付く場合がある。筆者の場合は、今回ノンバンク系を利用したにもかかわらず、所有者は自身の名前が付くことが確定している。ちなみに今回は利用しなかった日立キャピタルの場合、筆者への審査OKのメールに「所有者は日立キャピタルになる」との記述が明文化されていたので、一概にどうとは言えないようだ。
■GT-Rの任意保険を一般条件の車両保険ありで安く見積もる方法
車購入の際に、もう1つ大きな関門がある。それは任意自動車保険への加入だ。
ディーラーは自動車保険の代理店も務めているので、特約店になっている系列自動車保険を勧めてくるはずだ。筆者の場合は、損保ジャパンをかなり強く勧められた。ランニングコストを少しでも安く……ということであれば、この自動車保険についても、自分なりに調べた方がよいだろう。
任意の自動車保険の加入にあたっては、各自さまざまな持論があると思うが、対物賠償や対人賠償を無制限設定にするのはもはや当然として、やや悩み所なのが人身傷害補償や搭乗者傷害補償の部分。
この2つは、事故の相手というより自分側の傷害保険の項目だが、カバー範囲が微妙に被るので、人身傷害補償を3000万円程度、搭乗者傷害補償を500万~1000万円程度に設定するのが一般的だろう。ディーラーなどもそうした見積もりを作ってくることが多い。一般的に、人身傷害補償はほかの車に乗っている場合でも補償対象になっている。他車に乗っている場合は他車の保険がカバーしてくれるはず、と確信できる場合は、自分の車に乗っているときだけ補償される「契約車両限定特約」を選択するとよい。保険料が安くなるので覚えておきたい。
さて、いよいよ本題へ。
GT-Rを新車で、しかもローンで購入するとなれば、万が一の時の車両保険はちゃんと満額支給されるようにしておきたい。借金だけ残るというのだけは悲しすぎる。ローンが終わるまでは車両保険は入っておきたいし、さらにその補償条件も「一般条件」で加入しておくべきだろう。
車両保険には事故において、相手が存在する時にだけ補償される「車対車」という条件と、自損事故や当て逃げ、悪戯などまで広くカバーされる「一般条件」という契約パターンがある。盗難保険は「車対車」でもカバーされるが、万が一のことを考えると、ローンが残っているうちはやはり「一般条件」での契約が望ましい。
車両保険加入の際には、「自己負担額」という設定項目で金額が微妙に変わってくる。契約中の1回目の保険使用と2回目以降の使用において、自己負担額を設定するかというもので、ここを高く設定すると保険料は安くなる。過去を振り返り、1年あたりの平均保険請求回数を計算してみて平均一回未満になるのであれば、1回目を0円、2回目以降を10万円として設定するとそこそこ安くなる。1回目、2回目以降をともに0円に設定することも出来るが、その場合、保険料は高くなる。
車両保険関連で要チェックなのは車両新価保険特約(新価特約)だ。保険料が若干上がるが、新車のGT-Rに付けておきたい。事故の際、一般的に車両保険はその車両の時価分の損害費か、あるいは修理費の安い方しか支給されない。しかし、新価特約をつけていると、修理費が新車価格の50%に達した段階で新車購入資金が補償される。これは新車購入時しか入れない特約なので、できれば入っておきたい。
新車だからこそ安くなる特約割引もある。それが「新車割引」特約で、「新車の事故率は低い」という統計を元に設定された割引制度。新車で購入したクルマに対して2年間だけ期間限定で付帯させることができ、保険会社にもよるが保険料が5~10%割り引かれるお得なものなので、ぜひチェックすべきだろう。
このほか、保険料を安くするテクニックとしてメジャーなのが「運転者限定」特約だ。そのクルマを運転する人を限定し、保険適用カバー率を狭めることで保険料を安くするという特約で、自分以外に運転させないことにして「所有者限定」としてしまえば、割引適用率が向上する。保険会社によっては所有者限定の特約がなく、「本人・配偶者限定」からの用意しかないところもある。本人限定が選べるならば、その方が保険料は安くなる。
また、最近の通販型自動車保険では年間走行距離別割引と呼ばれるものもあるので、これも利用するとよい。これまでの過去の運転経験から1年あたりのおよその走行距離を概算で求めておき、それを申告すればよい。年間走行距離区分と対応する保険料の割引率は保険会社によって異なるが、当然走行距離が短いほど事故遭遇率が下がると言うことで保険料は安くなる。保険会社によっても違うが、年間1万km未満だと20~30%ほど割り引かれる。なお、万が一、設定走行距離をオーバーしてしまったとしても追加の保険料を支払えば補償される。無保険状態になるということはないので、無理に多めの距離を申請する必要はない。
通販型は1年更新が基本になるが、大手は3年間連続契約割引というのもある。更新が面倒という人は、更新の手間が省けてしかも安くなるので利用するとよいだろう。
というわけで、筆者は新車のGT-Rに対し、前述の割引テクを利用しつつ、購入金額の約950万円の一般条件・車両保険を掛ける方針で、10社で見積もりを行ってみた。
まずは国内大手損保会社から。対物=無制限、対人=無制限、人身=3000万円、搭乗者傷害=1000万円、新価特約(950万円)あり、新車割引ありという条件設定で、筆者の個人パラメータである「35歳以上区分」「20等級」「ブルー免許証」という条件で見積もってみたところ、損害保険ジャパンが年間17万9280円(月額1万4940円)、東京海上日動火災保険が19万440円(月額1万5870円)、日本興亜損保が21万2880円(月額1万7740円)、あいおいニッセイ同和損害保険が19万1040円(月額1万5920円)、三井住友海上火災保険が19万4400(月額1万6200円)という感じになった。
損保ジャパンでの見積もり例 |
なお、上記金額は1年契約、12回分割払いでの試算。一括払いでは一般的に5%ほど安くなる。ちなみに、スペースの都合で詳しくは記載しないが、車両保険を一般条件から「車対車」に変更すると、それぞれが半額くらいになる。それだけ車両保険の一般条件は高額ということだ。
それでは、最近何かと「安い」と話題の通販型のダイレクト保険ではどうだろうか。こちらも可能な範囲で見積もりを取ってみることにした。条件は、前出の大手に対して取った見積もりの時と大筋は同じとした。
外資系として有名で、TV-CMでも一世を風靡したアメリカンホームダイレクトだが、車両保険の設定最高額が795万円になるため、筆者の契約ケースでは加入対象外とのことだった。SBI損保も、設定最高額を869万円にしているとのことで加入が認められなかった。
アクサダイレクト、三井ダイレクト、チューリッヒではGT-Rの名前を出した段階で加入を断られてしまった。なかなかハードルが高い(笑)。結果的にダイレクト系で、新車のGT-Rに対して950万円の一般条件の車両保険を付帯させて加入できるのは、筆者の調査範囲ではソニー損保、イーデザイン損保、おとなの自動車保険(セゾン自動車火災保険)の3社のみであった。
ちなみに筆者は、前車となるRX-7を降りてからGT-Rの購入決意まで1カ月ほど開いてしまったため、RX-7時代に加入していた自動車保険を中断する手続きを取っている(手続き後、中断証明書という物が送付されてくる)。
ダイレクト保険締結の際には、その中断証明書のコピーの提出が必要になるのだが、ソニー損保(http://www.sonysonpo.co.jp)は、その中断証明書において「次期契約が20等級」と明記されているにもかかわらず、等級据え置き事故が1件あると診断されて3等級下げられた17等級としての見積もりだった。今回10社で見積もりをした中では珍しい1件となった。と言うことで、ソニー損保は17等級での計算となったのだが、14万4600円(月額1万2050円)となり、20等級で計算されていた大手と比較してもだいぶ安い。
また、イーデザイン損保(http://www.edsp.co.jp/)はちゃんと20等級で計算され、中断証明書を使用した電話応対契約にもかかわらず、1万円のインターネット割引まで適用されて10万5090円(一括払いのみ。分割はクレジットカード等を用いた場合のみ可能)となった。大手の約半額だ。
おとなの自動車保険 |
おとなの自動車保険(http://www.ins-saison.co.jp/otona/)もほぼ同額で、10万7750円(一括払いのみ。分割はクレジットカード等を用いた場合のみ可能)となった。
3社に共通するダイレクト系自動車保険ならではの節約テクニックとして利用したいのは「保険証書の印刷と送付の辞退」だ。これで500~600円安くなる。いざというときに手元に印刷された書面が必要という人も多いと思うが、その場合は、自分でWebサイト上で自分の契約者アカウントでログインし、PC上で印刷すればよいだけのこと。
筆者は、イーデザインと最後まで迷った結果、「おとなの自動車保険」を選択した。イーデザイン損保は、価格が僅かに安かったのだが、契約前の見積書を書面に出してくれず、FAXもしないというポリシーがあって、細かい比較検討ができなかったために契約を遠慮した。「おとなの自動車保険」は、ちゃんと書面の見積書や自社保険にまつわる解説書を送付してきた点を評価した。また、年間走行距離別割引の部分で5000km未満の契約にしたところ、さらに約1万6000円が割り引かれたことも大きなポイントとなった。ここは個人的な判断と言うことで、大した理由ではない。筆者の本音的にもどちらでもよいと思う。
「おとなの自動車保険」をGT-Rで見積もった結果。一般条件の車両保険ありでも大手の半額程度に。筆者の場合は、年間走行距離をさらに小さく設定したことでここからさらに1万6000円ほど安くなった |
というわけで、数は多くはないが新車のGT-Rでも入れるダイレクト系自動車保険はあるのだ。ちなみにRX-7の時は損保ジャパンに加入しており、車両保険を一般条件ではなく「車対車+A」で掛けていて金額は9万1680円だったので、維持費の面ではGT-Rになったからとはいえ、結果的にそれほど負担増にはならないことになった。
■終わりに
GT-Rは、確かに車両価格は平均的な日本車と比較すると高いのは間違いないが、うまく賢く立ち回れば、余計な出費を抑えられるばかりか、過剰に報道されていたウワサなどと比較すれば、結構現実味のある車種だと言うことが分かって貰えたのではないだろうか。とくに35歳以上であれば、任意自動車保険もかなり安くできるため、固定維持費に関しては一般的なスポーツタイプの車種と大きくは変わらない。
さて、実際の納車待ち時間だが、筆者の場合は12月15日に契約を行った段階で2~3カ月待ちとのことだったが、原稿執筆の2月初旬時点では、2月中旬というかなり具体化したスケジュールを聞かされている。つまり筆者のケースでは約2カ月待ちだったということだ。
GT-Rは、毎年11月~12月に次年モデルの情報が開示されるため、12月~2月くらいまでが発注のピークとなるようだが、昨年の震災の特例時をのぞき、カタログモデルであればどの商談ケースでも2~3カ月待ちでの納車となっているようだ。
この後の回では、ついに納車されてからのファーストインプレッションをお届けするとともに、より具体的な維持費の問題や、デビュー当時にかなり熱くその賛否が語られた車両保証問題についての最新事情を取り扱いたいと思う。実際に、車両の保証が維持される形の地味なカスタマイズにも挑戦する予定だ。
(トライゼット西川善司)
2012年 3月 19日