トヨタ、“スポーツハッチバックの新基準”新型「オーリス」発表会
今後の世界戦略車は統一の「キーンルック」デザインに

新型オーリスのCMコンセプトは「時代の潮流と一線を画すスポーツハッチバックとしてのオーリス」。コピーは「NOT AUTHORITY,BUT AURIS.~常識に尻を向けろ~」としていることから、メインカットはあえてリアまわりからとなった

2012年8月20日開催



 トヨタ自動車は8月20日、新型「オーリス」の発表会を都内で開催した。

 発表会にはトヨタ自動車 製品企画本部 チーフエンジニア 藤田博也氏、デザイン本部 第1デザイン室 室長 池田亮氏、製品企画本部 主査 末沢泰謙氏が登壇し、それぞれの立ち位置から新型オーリスの魅力を語った。

新型オーリスのアンベール
新型オーリスのTV-CMのひとコマ。一見女性のようなモデルが登場するが実は男性という裏切りで、既存の常識を裏切る(一線を画す)ことで新型オーリスを訴求する

 新型オーリスでは7グレードが用意され、直列4気筒 DOHC 1.5リッター「1NZ-FE」エンジンと、直列4気筒 DOHC 1.8リッター「2ZR-FAE」エンジンを搭載する。

 1NZ-FEエンジンは2WD車と4WD車で出力が異なり、2WD(FF)車は80kW(108PS)/136Nm(13.9kgm)を、4WD車は77kW(105PS)/135Nm(13.8kgm)を発生。また、2ZR-FAEエンジン搭載車の駆動方式は2WDのみで、最高出力およびトルクは105kW(143PS)/173Nm(17.6kgm)となるが、スポーティグレードのRSのみ106kW(144PS)/180Nm(18.4kgm)を発生する。

 トランスミッションはCVTを採用し、RSのみローギヤード化した専用の6速MTを搭載。

 ボディーサイズは4275×1760×1460mm(全長×全幅×全高。4WD車の全高は1480mm)、ホイールベース2600mmとし、先代オーリスから全長が30mm伸びた一方で、全高は55mm低くなった。これに伴い、ヒップポイント高は先代オーリスから40mm低い280mmとした。

 また、ラゲッジルームには荷室床面の高さを2段階で調節できる「アジャスタブルデッキボード」を採用し、利便性を高めた。ラゲッジルームの荷室長は、リアシート使用時で上段が797mm、下段が860mm。リアシートを倒すと1395mmまで拡大する。最大荷室幅は1350mm。

新型オーリス(RS)のボディーサイズは4275×1760×1460mm(全長×全幅×全高)。ボディーカラーはレッドマイカメタリック
新型オーリス(RS)のインテリア。RSのインテリアカラーはブラックのみで、インストルメントパネルにカーボン調の加飾が与えられる。シートのメイン素材はファブリック
直列4気筒 DOHC 1.8リッター「2ZR-FAE」エンジンを搭載する180G“S Package”。オプションのパノラマルーフを装備
オプション装着車

製品企画本部 チーフエンジニア 藤田博也氏

 発表会では、はじめに製品企画本部 チーフエンジニア 藤田博也氏が登壇し、「国内市場においては、今やミニバン、コンパクト2ボックス、軽自動車、ハイブリッドカーなどが主流となる中で、デザインや走行性能など、クルマが本来持つ魅力に焦点を当てて『カッコよくて走りのいい一台』を作り、自動車史上に一石を投じたいという強い思いがあった」「欧州のCセグメントハッチバック市場は、200万台規模という大変大きな市場。オーリスには、この市場でひしめく強力なライバル達を超える使命がある」と述べた。

 こうした背景を踏まえ、新型オーリスでは「スポーツハッチバックの新基準」確立という明快な方向性のもと、内外装のデザインや走行性能、パッケージングといった、クルマが本来持つさまざまな魅力を高次元で調和させることを目指したと言う。特に“ワクワクするスポーティなデザイン”“欧州車を凌駕する走り”の2点を追求し、「スポーツハッチバックの新しい価値を提案したい」と藤田氏は言う。

新型オーリスは特に“ワクワクするスポーティなデザイン”“欧州車を凌駕する走り”の2点を追求した

デザイン本部 第1デザイン室 室長 池田亮氏

 1点目のデザインに関しては、デザイン本部 第1デザイン室 室長 池田亮氏が解説。池田氏は、「新型オーリスにはとにかくカッコいいクルマが作りたいという、開発者全員の熱い想いが詰まっている」とし、フロントまわりに独自の「キーンルック」デザインを採用したこと、低重心パッケージを活かしたダイナミックなデザインを与えたことなどを紹介。このフロント回りのデザインに関しては、遠くからでも一目でトヨタのクルマと分かるものとし、今後同社の世界戦略車はブランドイメージの統一を図っていくと言う。

 また、新型オーリスのインテリアについて、「エモーショナルな低重心ボディーだが、室内の広さをしっかりとって実用性を確保した」「走りを予感させるコクピットタイプの運転席まわりと、水平基調のダッシュボードを組み合わせ、ワクワク感とともに使いやすさを狙った」と、池田氏はデザインの特徴を述べた。

デザイン面ではフロントまわりに独自の「キーンルック」デザインを採用したことなどが特徴となる

製品企画本部 主査 末沢泰謙氏

 製品企画本部 主査の末沢泰謙氏は走行性能について触れ、「カッコよくて走りのいい一台。この単純明快なクルマ本来の魅力に焦点を当て、経済性、環境性能、スペース性等が重視されがちな国内市場に一石を投じたい。そんな思いを持ってオーリスを作り上げてきた」と説明。

 この新型オーリスは、厳しい道路環境で育った欧州車をベンチマークとし、欧州車を凌駕する足まわりを追求したとし、「先行開発段階では欧州各社が用いているテストコースや、欧州の主要自動車誌が比較評価で使用している公道コースを徹底的に走り込んだ。その走り込みの中で、競合車の強み、初代オーリスの評価を身をもって実感した。同時に、新型オーリスの性能全般に対する方向性を“レスポンスのよい俊敏な走り”とした」と述べる。

 具体的には、単に乗り心地を犠牲にした硬いだけの足まわりではなく、気持ちよくキビキビと走れるレスポンスのよさと、路面の凹凸にもしなやかに追従する上質な乗り心地、ひとクラス上の静粛性を目指し、「こうした相反する要素を高次元で融合させ、意のままに操ることができて快適性も損なわない、新しいスポーティな走りが、新型オーリスで目指した足まわりになる」と末沢氏は言う。

 このスポーティな走りを実現するために徹底的にこだわったのが低重心パッケージで、新パッケージの採用とドア開口部の補強により、従来型比で約10%ボディー剛性を向上させており、「低重心化することでロール剛性が大幅に向上し、コーナリング時の安定性が増すことで、意のままに操れるハンドリングに仕上がった」「開発最終段階の際にはアウトバーンや石畳路など、さまざまな路面で走り込みを行い、欧州で認められる足まわりを実現した」と、その完成度に自信を覗かせる。

 また、1.8リッターエンジンの「2ZR-FAE」搭載車にはダブルウィッシュボーン式リアサスペンションを採用し、高い安定性を確保するとともにコーナーで狙ったラインをスムーズにトレースできるコーナリング性能を実現したとしたほか、スポーティグレードのRSグレードについては「ローギヤード化された6速MTの採用や、専用の足まわりチューニングを施し、かなりスポーティな乗り味を演出している」と解説した。

取締役副社長 加藤光久氏

 なお、発表会の最後に取締役副社長 加藤光久氏が登壇。加藤氏は今後の同社のクルマ作りについて触れ、「今後よりよいクルマを作るにあたって欠かせないのがデザイン。厳しさを増すグローバル競争の中で生き残るためには、一目見てお客様に何かを感じていただけるインパクトが大切。そこには丸くまとまったクルマよりも、むしろ賛否両論あるクルマでもよいのではないか。こうした思いでトヨタ車をデザインから変えていきたい」と言う。

 また、「もっといいクルマを作ろうよ」という兼ねてからの豊田社長の問いかけに対し、「我々が提示した1つのソリューションがTNGA(トヨタ ニューグローバル アーキテクチャ:車体やパーツを共通化し、開発効率を高め、コストを下げる開発手法)。いいクルマを賢く作る。これがTNGAの目指す方向で、本年度のトヨタのグローバル方針にもTNGAを活用した全社の取り組みと仕組みの構築をテーマに掲げ、現在、全社一丸となって取り組みを進めている」とし、今後トヨタのクルマ作りが大きく変化していくと述べた。

(編集部:小林 隆)
2012年 8月 21日