アジアクロスカントリーラリー2012、哀川翔チームがクラス優勝
FLEX GEOLANDAR Show Aikawa World Rally Team参戦リポート

2012年8月12~16日(現地時間)開催



 8月12日~16日(現地時間)、タイのパタヤからカンボジアのアンコールワットまで1500kmの悪路を走破する「アジアクロスカントリーラリー2012(AXCR)」に哀川翔率いるSHOW AIKAWA WORLD RALLY TEAM(TEAM SHOW)が参戦し、寺田昌弘・茅原田哲郎選手がトヨタFJクルーザーを駆りT1G(ガソリン車改造クラス)でみごとクラス優勝を飾った。TEAM SHOWは直前にアメリカで行われたパイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライムレースでの奴田原文雄選手のEVクラス優勝に続く2連勝となる。

【お詫びと訂正】記事初出時、T1G(ガソリン車無改造クラス)としておりましたが、正しくはガソリン車改造クラスになります。 ご迷惑をおかけした皆様にお詫びを申し上げるとともに、訂正させていただきます。

 当初、AXCRには哀川選手と奴田原選手の2名のドライバーで臨む予定だったが、パイクスのスケジュールが山火事によって変更され、両方のレーススケジュールが重なってしまったため、奴田原選手のAXCR出場は断念。急遽パリダカ等海外ラリーへの参戦経験豊富な寺田選手がステアリングを握ることとなった。なお、当初寺田選手は哀川選手のコ・ドライバーとして参戦の予定であった。

 スタートはタイのビーチリゾート、パタヤ。

 初日の競技区間(SS)はわずか2.8kmの特設ステージ。これから走る1500kmに向けてのマシンチェックや選手の足慣らし的なショートステージではあるが、寺田・茅原田選手は地元タイ勢に続き総合3位でゴール。哀川・安東選手も総合7位につけTEAM SHOWは2台揃って好スタートを切った。

哀川翔/安東貞敏選手寺田昌弘/茅原田哲郎選手フィニッシュセレモニーにはなんとアメリカでレースを終えたばかりの奴田原文雄選手も駆けつけた

本格的なクロスカントリーラリーは2日目から
 2日目以降は初日と打って変わり、200km以上のSSや総移動距離が400km近い日もあるクロスカントリーラリーならではの日が続く。これはWRCや全日本ラリー等のスプリントラリーでは見られないクロスカントリーラリーならではのもので、SSの中に泥だらけのステージや川渡り、穴だらけの道路等々、時には道なき道を突き進むコ・ドライバー泣かせのルートも多い。

 初日好調な滑り出しを見せたTEAM SHOWの2台のFJクルーザーも、2日目にはミスコースの連続、そして哀川・安東組はサスペンションに大きなダメージを受けてしまった。その後タフなコースが続くも、2台のFJクルーザーは快調にゴールを目指し、後半に哀川・安東組のマシンがショックが抜けるトラブルによりペースダウンを余儀なくされるものの、当初からの目標である「2台揃って完走」を、昨年逃したクラス優勝まで獲得した上で達成。TEAM SHOWにとって何とも嬉しいゴールになった。

 また厳しい戦いだったにも関わらず、ラリー期間中の哀川選手の表情が終始明るかったのが印象的だった。完走の責任を背負って走り続けるスタンスは昨年と同じはずだが、それでも昨年以上にラリーを楽しんでいるように見えた。他のメディアクルーからも同様の声を聞いたが、その表情は哀川選手が確実にラリードライバーとしてステップアップしている証でもあるのだろう。

マッドあり川渡りありと、何でもアリのSSゴールした車のメンテナンス・修理は夜を徹して行われることも珍しくない

国境を跨ぐラリー
 ちなみにタイの道路は日本と同じく自動車は左側通行で、カンボジアは右側通行。道路を封鎖して行うSSはともかく、移動のためのロードセクションも少なくないラリーにおいてこの違いは日本では見られない特徴だろう。また両国の経済状況の違いは沿道の風景ににも見て取れる。

タイからの出国を待つラリーカーの行列国境を越えカンボジアに入国すると、その雰囲気も一変する世界遺産アンコール遺跡群の中を走るラリーカー

他の日本人エントラント
 日本では馴染みの薄いクロスカントリーラリーではあるが、実は意外なほど日本人エントラントは多い。今年に関しては13チームが出場(うち3チームは他国との混合チーム)。多くの国内クロカン4WD競技者に加え、元WGPホンダワークスライダーの青木拓磨選手は6度目の挑戦、昨年の全日本ジムカーナでSA3クラスチャンピオンとなった川脇一晃選手は、2006年にSUPER GTのGT300クラスでチャンピオンとなった井入宏之選手と組み初出場。昨年はコ・ドライバーとして奴田原文雄選手が、過去にはF1ドライバーの片山右京選手も2度出場している。

元GPライダーの青木拓磨選手は昨年デビューした日本未発売のいすゞの最新モデル「D-MAX」で参戦ジムカーナチャンピオン川脇選手とSUPER GTチャンピオン井入選手はこのラリーの参戦経験を持つ仁科選手と3名乗車で参戦元F1パイロット片山右京選手もかつて2度参戦している

TEAM SHOW
 スバルのWRC撤退以降、日本では少々その人気に翳りが見えるようにも思えるラリーの世界ではあるが、そのような中で勢いが増しているのが哀川翔率いるTEAM SHOWだ。全日本ラリーではトヨタ86、タイを起点とする東南アジアのアジアクロスカントリーラリーではFJクルーザー、そしてアメリカでのパイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライムレースではTMG製EVマシンでチャレンジしており、いずれも大自然と対峙する競技だ。

 現在、クルマの持つ根源的な魅力を最大限に表現しているモータースポーツチームの1つがTEAM SHOWと言えるだろう。これからもこのチームのチャレンジは見逃せない。

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2012年 8月 27日