ニュース

ホンダ、「クロスカブ」など原二バイク5車種とコンセプトモデル1車種の発表会

コンセプトモデルは「Sh-mode」

原付二種バイク5車種を発表
2013年5月22日開催

 本田技研工業は5月22日、本社ショールームで新型二輪車の発表会を開催し、110ccおよび125ccの原付二種バイク5車種と、コンセプトモデル1車種を発表した。5車種は「リード125」「グロム」「CBR125R」「ズーマーX」「クロスカブ」で、これらは2013年3月に開催された東京モーターサイクルショーなどで発表済みだが、今回それぞれ価格と発売日を明らかにしたもの。

 コンセプトモデルは「Sh-mode」というスクータータイプの125cc原付二種バイクで、「Sh」シリーズとして欧州で販売中の人気車種をベースにブラッシュアップを図った国内およびグローバル向けのモデルとなる。

個性的な5車種と“大人向け”スクーター

 「リード125」は、人気の「リード」シリーズの後継車種となる125ccスクーター。環境性能と動力性能を両立させる「eSP」技術を採用したエンジンを搭載し、アイドリングストップ機構を備える。上質感のあるカラーリングとデザインにするだけでなく、シート下にはフルフェイスタイプのヘルメットを2個収納できる37リットルの大容量ボックスを設けるなど、実用性もさらに高めた。7月4日発売予定。価格は28万5600円。生産台数は年間1万2000台の見込み。

「リード125」
「eSP」技術を採用したスクーター用エンジンユニットのカットモデル
PGM-FIインジェクターまわり。吸気ポート形状を最適化し、タンブル生成を行っている
軽量ピストン。ピストンピン穴の形状を工夫することで、ピストンピンも軽量化している
オフセットシリンダーを採用。これにより膨張行程のフリクションを低減でき、燃費向上に寄与する

 「グロム」は、若者をターゲットに開発した12インチタイヤを装着する125ccスポーツバイク。同社の「ゴリラ」や「モンキー」といったミニバイクを彷彿とさせる、小柄ながらもボリューム感あふれるスタイリングで、倒立フロントフォークや前後ディスクブレーキを採用するなど、性能にもこだわった。6月21日発売予定。価格は30万9750円。生産台数は年間5000台の見込み。

「グロム」

 「CBR125R」は、スーパースポーツを意識したデザインの単気筒125ccロードバイク。シャープな印象のフルカウルと、同社の大排気量車CBR1000RRのようなショートタイプのマフラーを組み合わせ、スポーティーさをアピールしながら、約52.5km/L(60km/h定地走行テスト値)の低燃費を達成している。6月17日発売予定。価格は39万9000円。生産台数は年間1500台の見込み。

「CBR125R」

 「ズーマーX」は、シート下の収納スペースが特徴的な若者向けの110ccスクーター。原付一種(50cc)のスクーターとして2001年に初めて登場した「ズーマー」の流れをくむ車種で、“X”をモチーフとしたデザインをボディの各所にあしらっている。「若者が自分たちの個性を主張できる」よう、シート下のスペースは収納物の一部が見える構造になっているのが特徴。リード125同様のeSPを採用するが、アイドリングストップ機構は備えない。6月14日発売予定。価格は27万900円。生産台数は年間5000台の見込み。

「ズーマーX」

 「クロスカブ」は、ビジネスモデルの「スーパーカブ110」をベースに、タイヤのインチアップのほか、車高やサスペンションなど車体の各所の仕様を変更した110ccバイク。ヘッドライト周りをフレームで囲ったり、ハンドル位置を高くすることでアウトドアの印象を強めたデザインとし、レジャー用途に適したモデルとなっている。6月14日発売予定。価格は27万8250円。生産台数は年間3000台の見込み。

「クロスカブ」

 コンセプトモデルとして今回初めて国内発表した「Sh-mode」は、欧州ではすでに販売され人気を博している「Sh」シリーズをベースにした125ccのスクーター。シンプルながらもスタイリッシュさを漂わせるヨーロピアンテイストのボディや、軽快さを演出する10本スポークのホイールなどデザインにもこだわり、「都市部をスタイリッシュに移動したい、おしゃれな大人のお客様に向けた」バイクとしている。「リード125」や「ズーマーX」と同様のeSPを採用し、アイドリングストップ機構などを備える。現在はコンセプト段階であり、詳細発表は9月上旬を予定している。

コンセプトモデルの「Sh-mode」

ASEAN、南西アジア諸国で小排気量車の売れ行きが増加

 本田技研工業 執行役員 二輪事業本部長 青山真二氏によると、同社の世界における2012年度の二輪車販売台数は1570万台で、前年の2011年度に比べ40万台の増加となった。地域別に見ると、全販売数の75%をASEANおよび南西アジア諸国が占め、特にインドネシアの424万台とインドの261万台が際立つ。次にベトナムの193万台、タイの164万台が続く。

本田技研工業 執行役員 二輪事業本部長 青山真二氏
ホンダモーターサイクルジャパン 代表取締役社長 井内正晴氏
カブ、スクーターシリーズの開発責任者である本田技術研究所 二輪R&Dセンター 藤原清隆氏

 排気量別では、51cc以上125cc未満のモデルの販売台数が1300万台と、全販売数の85%にまで達する。今後もこの原付二種クラスの需要はますます拡大するとしており、同社の事業において大きな比重を占めるビジネスとなってきている。これらを背景に、2013年度の販売見通しは、前年度比170万台増の1740万台と予測している。

 アジア諸国で小排気量車の人気がある理由は、低燃費、耐久性の高さ、コストパフォーマンスのよさの3点で、多くの場合は日常生活の足として人や荷物を運ぶために使っているパターンが多い。ただし、最近は主に若者の間での新たなニーズとして、趣味性にフォーカスした利用も現れ始めているという。

 アジアの若者は二輪車に対して「独自のデザインやファッション性を強く求めるようになってきている」ため、コストパフォーマンスに優れ、デザイン・性能も十分な二輪車を提供すべく、同社ではアジア各国での現地生産、現地販売を行ってきている。そういった流れの中で、タイ市場で大きな人気を集めていた「グロム」を含め、今回グローバル市場での販売増も見込めるとした5車種を日本でも発売するに至ったという。

 日本国内での二輪車の生産量をこれまで以上に増やすことは考えていないが、小排気量車については今後もマーケットの拡大が見込めるASEAN諸国やアフリカ諸国、中南米などを中心に、生産力の増強、販売網の強化などを図っていく方針だ。

グロムやCBR125Rなどの開発責任者である株式会社本田技術研究所 二輪R&Dセンター 大熊 孝則氏

 なお、本田技研 二輪R&Dセンターの大熊 孝則氏によれば、今回発表した車種のうち小型のスポーツバイクである「グロム」については、同社の「N BOX」や「ステップワゴン」などへの車載も考慮しながら設計したという。ファミリーバイク特約といった保険の優遇制度も活かすことで、気軽に使える日常の足としてだけでなく、“四輪のお供”として楽しめるのが今回の5車種の特徴とのこと。キャンプ場に持っていった先でのちょっとした買い出しに使ったり、「クロスカブ」ではそのまま山に分け入ってオフロードを楽しんだり、あるいは釣り場の拠点までの足として利用するといったことも可能で、「燃費、維持費の安さはもちろんのこと、2番目のモビリティとして気軽に、風を感じて走れる点をアピールしたい」と話した。

(日沼諭史)