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三菱自動車、パジェロDNAを継承するコンセプトカー3台を東京モーターショーに出品

3モデルで「FR PHEV」「FF PHEV」「48Vマイルドハイブリッド」と3種類の電動化技術を紹介

“三菱自動車らしさを最大限に表現できる”という3台のコンセプトカーを出品
2013年11月1日発表

三菱自動車工業 常務取締役 中尾龍吾氏

 三菱自動車工業は11月1日、11月20日~12月1日(11月20日~21日プレスデー、22日特別招待日、22日プレビュー・ナイト、23日~12月1日一般公開日)に東京ビッグサイトで開催される「第43回東京モーターショー2013」の出展概要を発表した。

 都内で行われた説明会には、三菱自動車工業 常務取締役 中尾龍吾氏などが参加。今回の東京モーターショーを通じて紹介する同社のクルマづくりの基本姿勢、出品内容のハイライトとして世界初披露する3台のコンセプトカーについての解説などを実施した。

 このなかで中尾氏は、持続可能なクルマ社会の実現に向け、三菱自動車ではEVやPHEVといった電動車両を今後も積極的に市場投入し、グローバルでCO2排出量を削減して環境問題に貢献。具体的には2020年までに電動車両の生産比率を20%にすることを目標としていると語り、電動車両技術のリーディングカンパニーを目指すとしている。また、クルマが持つ走る喜びの面では、ドライバーが安心してクルマを操れたときに走る喜びを感じると定義し、路面状態や走行状況を問わずに意のままの操縦性と卓越した安定性を発揮できるランサーエボリューションシリーズやパジェロで培ってきた伝統ある4WD技術が自分たちの強みであると紹介。今後も電子制御フルタイム4WDやS-AWCを磨き続け、さらに2WDモデルでもASCのような4輪を制御する技術を積極的に投入して安心感の確保に努める方針であるとコメントしている。

 ブース内で展示する出品車は、プレスデー13台、一般公開日17台を用意。このうち共通して展示する12台のうち、コンセプトカーとして参考出品するラージSUVの「MITSUBISHI Concept GC-PHEV」、コンパクトSUVの「MITSUBISHI Concept XR-PHEV」、コンパクトMPVの「MITSUBISHI Concept AR」の3モデルを世界初披露。また、2014年初頭に発売する新型軽自動車「eKスペース」「eKスペース カスタム」の実車3台も世界初披露となる。このほかにもFIA アジアクロスカントリーラリー2013に参戦したアウトランダーPHEV、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム2013に参戦したMiEV Evolution IIなどを展示。プレスデーには2013年ジュネーブモーターショーに出品した「MITSUBISHI Concept GR-HEV」、一般公開日にはアウトランダーの2014年モデルやミラージュ「ハローキティ 40thアニバーサリー パッケージ」装着車など5台を展示内容に追加する。

「三菱自動車の強みであるSUVの魅力を最大限に表現できる」という3台のコンセプトカーが出展車両の目玉。歴代パジェロで培ってきたSUVとしての機能性と安心感を表現する手法を、次世代SUVにふさわしいよう洗練させてフロントマスクに投入している
新型軽自動車の「eKスペース」「eKスペース カスタム」も世界初披露される
アウトランダーPHEVやMiEV Evolution IIも展示して、三菱自動車のレース活動についても紹介

MITSUBISHI Concept GC-PHEV

MITSUBISHI Concept GC-PHEV

 FRタイプのPHEVシステムを搭載したフルタイム4WDの次世代SUVコンセプトカーとなる「MITSUBISHI Concept GC-PHEV」。搭載するスーパーチャージャー付きのV型6気筒MIVEC 3.0リッターガソリンエンジンは250kWを発生。このエンジンに、70kWの出力を持つモーターと12kWhの総電力量となるバッテリーを使ったFRタイプのPHEVシステムや8速ATを組み合わせ、ランサーエボリューションシリーズで定評のあるS-AWC(Super All WheelL Control)によって4輪を駆動する。ボディーサイズは4930×1940×1980mm(全長×全幅×全高)で、車両重量は公表されていないが、ハイブリッド燃料消費率は15km/L以上、EV走行換算距離は40km以上としている。車名のGCは「Grand Cruiser(グランドクルーザー)」の頭文字を使ったもので、地球上のあらゆる道を、安全に、快適に走りぬく次世代ラージSUVというコンセプトで開発されている。

 今回の展示車両で唯一車内の撮影が許されたインテリアでは、車内中央に前後シートを縦断するように配置されたタッチスクリーン式の大型インターフェイス「タクティカルテーブル」が象徴的な装備となっており、乗員それぞれが持ち込むスマートデバイスと情報を連動させてドライブの目的地や周辺地域について検索したり、車載通信機によって外部と通信してほかの車両と情報共有するといったカーライフの新しいスタイルを提案する。また、フロントウインドーはAR(拡張現実)技術を使った「ARウインドシールド」となっており、カーナビと連動した進路案内のほか、予防安全技術からデータ提供される「車間警報」「車線逸脱警報」などを表示。さらに車車間通信、歩車間通信によってドライバーの死角から近づく車両や歩行者などの情報をガイドする「コーショントラッキング」も装備している。

 このほかに先進安全技術では、車両のフロントウインドー上部、Aピラー、リアドア、リアゲートなどに合計8個の赤外線カメラを設置。これによって得た周辺情報に画像処理を加えて利用し、夜間走行中の危険因子を素早く正確に判断してドライバーに警告する新技術「Night Eye(ナイトアイ)マルチアラウンドモニター」を採用。ほかにも緻密な車間距離制御で渋滞の緩和やエコドライブを実現する「レーンキープアシスト付CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)」、夜間などでもカメラとレーダーによって自動ブレーキを作動させる「歩行者衝突軽減自動ブレーキ」、路車間通信システムの「DSSS(Driving Safety Support Systems)」を利用する「路車間通信利用運転支援」、運転席正面に設置する赤外線カメラ、ステアリングとシートに内蔵するセンサーでドライバーの覚醒度をチェックする「ドライバーモニター」など数多くの先進技術を投入している。

本格派オールラウンドSUVとして“先進感と安心感”をエクステリアデザインで表現
ボディーサイズは4930×1940×1980mm(全長×全幅×全高)と、現行型パジェロの4900×1875×1870mm(全長×全幅×全高)よりさらに迫力あるボディーを採用
フロントマスクの上方で両サイドのフェンダーに向けて伸びているのはデイタイムランニングランプ。ヘッドライトはバンパープロテクター内に埋め込むスタイルとしている。給電ポートはフロントバンパー下側に設置
Aピラーをブラックアウトし、ドアパネルとウインドの境界にメタリックレッドのラインを引く。車高が高くても乗り降りしやすいようアウターステップを用意する
Aピラーの付け根部分にドアミラー代わりのカメラを設置
Aピラーやリアドアなどの上部に赤外線カメラを埋め込む
リアゲートにサブウインドーをレイアウト。分割式のハイマウントストップランプも特徴的だ
Bピラーレスで観音開きスタイルのドアを採用。4人乗りのシートは完全に分割されたタイプとなる。リアドアはフェンダーと一体型で、泥汚れなどでボディーが汚れていても乗員が乗り降りするときに着衣を汚さずにすむよう配慮されている
液晶タイプのメーターパネルに加え、インパネを横断するように大型のディスプレイを設置。フロントウインドーはAR技術を利用できる「ARウインドシールド」となっている
前後シートを縦断するように大型インターフェイスの「タクティカルテーブル」をレイアウト。このほか、Aピラー内側やドアトリム上部などもディスプレイになっており、死角にある情報を映し出す設定となっている

MITSUBISHI Concept XR-PHEV

MITSUBISHI Concept XR-PHEV

 FFタイプのPHEVシステムを搭載し、2WD(FF)レイアウトでスペシャルティクーペとSUVの融合を表現する次世代コンパクトSUVコンセプトカーの「MITSUBISHI Concept XR-PHEV」。100kWを発生する直噴ターボの直列3気筒MIVEC 1.1リッターガソリンエンジンと120kWのモーターを組み合わせるFFタイプのPHEVシステムは、アウトランダーPHEVと同じく出力をトランスアクスルによって制御する形式だが、リアモーターを採用しないことで軽量化とフリクションロスの低減を実現し、燃費と電費を向上。ハイブリッド燃料消費率28km/L以上、EV走行換算距離85km以上を目標値として設定している。ボディーサイズは4370×1870×1570mm(全長×全幅×全高)。駆動用バッテリーの総電力量は14kWhでフロア下に設置する。

 車名のXRは「X(cross)over Runner:クロスオーバーランナー」の頭文字で、“走る喜びの新次元を拓く次世代コンパクトSUV”というコンセプトで開発されている。エクステリアデザインはクラウチングスタートを切った瞬間の躍動感を表現する「アスリートフォルム」としており、SUVながら直線基調でシャープなライン構成を使い、ロードクリアランスを確保しつつ前傾姿勢のスマートさと両立している。

 新開発となるFFタイプのPHEVシステムには、必要に応じてモーターの駆動電圧を700Vまで昇圧させる「昇圧コンバーター」を搭載。これによってモーターとジェネレーターによる出力と効率を同時に向上させている。さらに100VのAC電源出力機能も用意し、1500Wまで対応する外部給電能力によってバッテリー電力だけでも一般家庭の1日分、エンジンでの発電分を使えば最大で約10日分相当の電力供給が可能になるとしている。

255/50 R20サイズという大径タイヤを装着しつつ、大胆なウェッジシェイプデザインによって俊敏さを演出
ボディーサイズは4370×1870×1570mm(全長×全幅×全高)。ワイド&ローフォルムの次世代コンパクトSUVとなっている
フェンダーまで回りこむよう配置されたヘッドライトは、車体の動きにフレキシブルに対応する「アダプティブヘッドライト」となっている。Aピラーは内部のラダー構造を外部から見えるようにして、骨格の強靭さをアピールする。ルーフにはソーラーパネルを内蔵
リアにかけて跳ね上がるように伸びるボディーサイドやフェンダーのラインを、リアのコンビネーションランプに連続させて躍動感と独自性を演出。ドアパネル下側にランプをライン状に埋め込んで夜間走行時などに存在感をアピールする
ルーフ後端は走行状態に応じて角度が調整できる可変スポイラーとなっている

MITSUBISHI Concept AR

MITSUBISHI Concept AR

 6人乗りのコンパクトMPVのコンセプトカーである「MITSUBISHI Concept AR」では、「Active Runabout(アクティブランナバウト)」の頭文字のARを車名に使用。SUVの機動性を兼ね備えるコンパクトミニバンとして開発されたこのモデルでは、「MITSUBISHI Concept XR-PHEV」同様の直噴ターボ直列3気筒MIVEC 1.1リッターガソリンエンジンをフロントに搭載。このエンジンにベルト駆動のスターター・ジェネレーター、48Vのリチウムイオンバッテリーを組み合わせた「マイルドハイブリッドシステム」を採用している。

 ダウンサイジングコンセプトを実現するために選択されたマイルドハイブリッドシステムでは、車両後方に設置する48V 0.25WhのリチウムイオンバッテリーとDC/DCコンバーターをエンジンに組み込んだベルト駆動スターター・ジェネレーターと連携させ、減速時のエネルギー回生、アイドリングストップ状態からの迅速なエンジン始動、加速時の力強いモーターアシストなどによって低燃費化と快適な走行性能の両立を図る。このほかにCVTや高張力鋼板の採用拡大、シンプルなデザインのインテリアなどで軽量化を徹底し、燃費の目標値を24km/L以上としている。

 ボディーサイズは4350×1780×1690mm(全長×全幅×全高)。車内のシートレイアウトは2人×3列の6人乗りで、フロントシートを回転させてセカンドシートと対座モードにする利用シーンなども提案されている。

デリカ D:5などとも通じる大径タイヤでリフトアップするSUVスタイルのボディー。さらにボディー下部の前後左右にスキッドプレートを設置して乗員保護性能を強調。ただし、燃費性能も重視するモデルだけに、駆動方式は2WD(FF)となっている
リアピラーはエアアウトレット機能を備えて空気抵抗の削減に寄与するデザインとなっている。ブラックアウトされたボディ下側の処理でもSUVテイストをアピール
ルーフにはU字型の「クリスタルライトルーフ」を設定
ダンロップのSUV向けタイヤ「GRANDTREK PT2」を4輪に装着
「MITSUBISHI Concept GC-PHEV」と同じようにドアミラー代わりのカメラをAピラー付け根部分に設置
リアドアの後方にドアノブらしき演出が施され、ミニバンながらスライドドアではなくヒンジドアを採用すると予想される

(編集部:佐久間 秀/Photo:岡田孝雄)