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フォルクスワーゲン、1.4リッターターボで燃費18.5km/Lの新型「ゴルフ トゥーラン」発表会

“オールイン・セーフティ”の思想で先進安全技術や運転支援システムを採用

2016年1月12日開催

新型ゴルフ トゥーラン発表会で、2015年のディーゼル問題や世界販売台数、2016年の活動計画などについて語ったフォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 代表取締役 スヴェン・シュタイン氏

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは1月12日、2代目となる新型7人乗りコンパクトミニバン「ゴルフ トゥーラン」を発売し、都内で記者発表会を開催した。

 11年ぶりのフルモデルチェンジとなったゴルフ トゥーランは、7人乗り3列シートのミニバンで、コンパクトなボディサイズながら多人数乗車が可能なモデルとして人気を集めてきたモデル。価格は284万7000円~376万9000円。

 発表会で登壇したフォルクスワーゲン グループ ジャパン 代表取締役のスヴェン・シュタイン氏は、新型ゴルフ トゥーランの紹介に先立ち、まず2015年について振り返った。

「昨年は本当にさまざまな出来事があった1年でした。グローバルでは、ゴルフ トゥーランとティグアン、ゴルフ ヴァリアント、ビートル デューンといった新型モデルが発表されました。モータースポーツではWRCへの参戦が3年目となり、ポロが3年連続でシリーズチャンピオンを獲得しています」

「そして、9月18日にアメリカに端を発したディーゼル問題が発覚したのは、みなさまもご存じのとおりです。ご心配をお掛けしたことを改めてお詫びします。この問題の発覚直後にはフォルクスワーゲン グループの会長が引責辞任し、まもなく後任の会長が就任しました。マティアス・ミュラー会長が着任し、フォルクスワーゲン グループは生まれ変わり始めます。着任早々にオープンドアポリシーを導入し、常に人を受け入れることを推奨しています。これは、透明性のあるフォルクスワーゲンの姿勢の表れになります。ミュラー会長のリーダーシップのもとで最大限の透明性を確保し、なぜディーゼル問題が起こったかの調査が始まりました」

「現在、この件に関しては450名体勢で行なわれた内部調査がほぼ終了し、アメリカの法律事務所とコンサルティングにより外部調査が進んでいます。調査結果は、上半期に発表される予定です」と2015年を振り返るとともに、世界中に影響を与えたディーゼル問題について語った。

 続いてシュタイン氏は、1月8日(現地時間)に独フォルクスワーゲンAGが発表した世界販売台数についても触れた。「昨年の販売台数は993万台に達しました。ブラジルやロシアなどいくつかの主要市場で経済が低迷していることや、第4四半期に起きたディーゼル問題が我々のビジネスに与えた影響を考慮すると、対前年比で-2.0%というのは満足できる結果だと言えます。もっとも影響を受けたフォルクスワーゲンの乗用車ブランドは前年比-4.8%でした。ただ、エリアによっては販売増のところもあります。市場別の結果ですが、厳しい環境にもかかわらず、ドイツを含む欧州は明確なプラスを示しました。アメリカも同様の結果です。南米は引き続き低迷しました。アジア太平洋地域は、前半より縮小しだした中国のビジネスに強く影響を受けましたが、年末に向けては改善しています」

「日本国内での販売台数も先週の金曜日(1月8日)に発表されていて、6年ぶりの前年割れとなりました。理由としてはディーゼル問題だけではなく、年初よりのさまざまな影響によってマイナスとなりました。コンパクトセグメントでは輸入車、国産車ともに多くの新型モデルが導入され、競争が激化しています。上半期には(同社での)大きな新型車導入がなく、新しい状況への対策が十分ではありませんでした。8月には新型パサートとゴルフ オールトラックを導入し、我々のビジネスに勢いを与えました。そして、軌道に乗ろうとした矢先にディーゼル問題が発生して、10月以降は大幅な販売減となりました。ですが、11月と12月のショールームへの来場者数は回復傾向を示しています。フォルクスワーゲンの品質を好んでもらっている既存のお客様や販売店のお陰で、今年の第1四半期には回復すると期待しています」とコメント。2015年の世界販売台数は1000万台を割り込んだが、主要マーケットの経済状況やディーゼル問題などの難題を抱えたことを考慮すればわるくない結果だと解説している。

 また、グローバルでの今年の計画や活動内容についても発表された。「ディーゼルエンジンの件については、1月からドイツに続き該当する欧州諸国で動き出します。リコールは2.0リッターエンジンから段階的に実施します。部品交換が必要な1.6リッターエンジンは最後となり、第3四半期以降の予定です。日本国内の対応は、国土交通省を通して確認できている36台の並行輸入車について適切に対処したいと考えています。リコール対策以外でフォルクスワーゲンブランドが行なうべきことは、信頼を回復することです。そのためには基本に戻り、ブランド名でもある『Volkswagen』、つまりピープルズカーになることです。それを象徴するのがブランドスローガンで、これまでの『Das Auto.』から」『Volkswagen』そのものにします。文字どおりピープルズカー、すなわち人々のためのクルマになるのです。ニューフォルクスワーゲンになり、本社主導からの離脱と地域強化を進めてスピードアップを図ること、そしてより顧客志向になり、単に製品や技術を提供するのではなく、真のカスタマーベネフィットを提供することを目指していきます」(シュタイン氏)とする。

フォルクスワーゲングループの2015年世界販売台数
ディーゼルエンジンのリコールは2.0リッターモデルからスタートする
ブランドのスローガンを「Das Auto.」から「Volkswagen」に変更

 一方、日本国内での活動と計画については、「まずは、透明性を持って信頼回復に務めます。その思いを分かりやすく伝えるために新しいスローガンを作りました。それが『People First Volkswagen(ピープルズ・ファースト・フォルクスワーゲン)』です。ブランドの原点に立ち返り、人々のワーゲンであり、みなさまとともに成長するブランドでありたい。主役はみなさまであるという思いをスローガンに込めました。具体的には、日本のお客様とともにできることを徹底的に見直し、透明性と実効性を持って取り組んでいきます。また、新たな取り組みを『ピープルズ・ファースト・プロジェクト』と名付けました。従来からカスタマーサービス向上の取り組みを行なってきましたが、お客様や社会の声にさらに耳を傾けていくつもりです。いただいたご意見を商品計画やアフターサービスに向けて、カスタマーサービスをより重視します。信頼回復は一朝一夕でできるものではありません。このピープルズ・ファースト・プロジェクトを通して一歩ずつ着実にみなさまのフォルクスワーゲンに戻りたいと思っています」(シュタイン氏)。

 さらにシュタイン氏は、3つの軸になる製品計画についても発表。「まず1つ目は、一貫して追及している先進安全性を拡充していくことです。2012年にスモールカーセグメントとしては初となるシティエマージェンシーをup!に導入しました。同様に、現行型ゴルフや新型パサートにも先進安全装備の導入を進めてきました。衝突を防ぐ予防安全、衝突したときの安全性、そして衝突後の2次被害防止といった項目の“フォルクスワーゲン オールイン・セーフティ”を、コンパクトから上級クラスまで搭載していきます」

「2つ目はパワートレーンの拡充になります。昨年はフォルクスワーゲン初のプラグインハイブリッド車となるゴルフ GTEを導入しました。Eモビリティは単なるエコではなく、ファントゥドライブをもたらすモデルです。乗り手を選ばないプラグインハイブリッド車を主軸にして、パサート GTEを今年中に導入してプラグインハイブリッド車を幅広く展開します。一方で、2014年にe-up!とe-ゴルフの導入を発表していましたが、e-up!については導入を見送る決定を行ないました。e-ゴルフについてはより航続距離の長いバッテリーが整い次第、導入を検討します。エンジンについては、引き続きガソリンのTSIがメインになります。プラグインハイブリッド車の拡充に加えてディーゼルモデルの導入も予定しています。時期については検討中ですが、決まり次第発表します」

「3つ目は、ライフスタイルに合ったモビリティの提案になります。新型モデルはゴルフ トゥーランやパサート GTEに加えて、ティグアンやザ ビートルのスペシャルモデルなど、お客様のライフスタイルに合うさまざまなモデルの導入を予定しています」と語り、日本国内ではプラグインハイブリッド車の拡充を行ないつつ、ライフスタイルにあったさまざまなモデルの導入を予定していることを明かした。

日本国内のブランドスローガンは「People First Volkswagen」となった
People Firstプロジェクトを掲げ、信頼回復へ向けて新たな取り組みを行なう
国内の展開は3つの柱を掲げて、それぞれの拡充を実施する
先進安全装備を拡充する「フォルクスワーゲン オールイン・セーフティ」を提唱
ライフスタイルに合ったさまざまなモデルを導入していく
ゴルフ トゥーランの詳細を解説したフォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社の正本嘉宏マーケティング本部長

 そんな多様化するライフスタイルに合せたモデルとして導入されるのが、この日に発表した新型のゴルフ トゥーランになる。

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンの正本嘉宏マーケティング本部長は「フォルクスワーゲンは、社名のとおりあらゆる人のためにクルマ作りを行なってきたメーカーです。欧州を代表するフルラインアッププレイヤーとして、パーソナルユースのコンパクトカーから大切な家族や気の合う仲間たちと安全で楽しく快適に移動できる大型ミニバンまで、お客様のニーズに応えるモデルを数多く揃えてきました。特に多人数が乗るミニバンについては根強い人気のある伝説の“ワーゲンバス”、つまりタイプ2から数えて実に70年に渡る長い歴史があります。1990年代後半にはより乗用車ライクなシャランを、2004年にはコンパクトセグメントにトゥーランを投入しました。さまざまなニーズや時代に合わせてミニバンを販売してきましたが、満を持して導入するのが新型のゴルフ トゥーランになります。最新の技術とデザインで生まれ変ったオールニューモデルで、高い安全性と快適な室内空間、さらには優れた走行性能と経済性の両立など、従来モデルから受け継ぐ魅力をさらに高めた最良のミニバンになっています」と、新型ゴルフ トゥーランの魅力について語った。

 さらに正本氏は、新型ゴルフ トゥーランが5つのセールポイントを保持していると述べ、その最大のポイントがトップクラスの安全性になると解説。

 主な安全装備は、プリクラッシュブレーキや全車速追従アダプティブクルーズコントロール、レーンアシスト、プロアクティブ・オキュパント・プロテクションといった予防安全技術と、9つのエアバックやアクティブボンネットで構成する衝突安全技術、ポリトコリジョンブレーキシステムの二次被害防止などで構成される。つまり、衝突を防止することに加え、万が一衝突しても被害を防止するための機能が盛り込まれているのだ。これらの機能と新規採用されたモジュラーアーキテクチャー「MQB」によって、ユーロNCAPでは最高評価となる5スターを獲得している。

国内のミニバン市場は、シャランの属するBセグメントとゴルフ トゥーランのAセグメントで約6割
輸入車メーカーのミニバンでは、ゴルフ トゥーランとシャランがシェアの半分を占める
ゴルフ トゥーランの5つのポイント
モジュラーアーキテクチャー「MQB」を採用する
“オールイン・セーフティ”を採用した第1弾モデルが新型ゴルフ トゥーランになる
予防安全、衝突安全、二次被害防止それぞれに多くの機能を採用
歩行者保護のアクティブボンネットは初採用となる
多くの安全性能が評価され、ユーロNCAPでは5スターを獲得した
競合モデルと比較して、安全性能ではかなり優位に立っているのが分かる
MQBを採用することでホイールベースが110mm延長され、ユーティリティがアップ
3列目へのイージーエントリー機能を採用。ワンタッチでシートが倒れる
1.4リッターの排気量ながらパワー、トルクともに優れたスペックを保持する
1.4リッター TSIエンジンは、従来モデルに対しても性能が向上している
スマートフォンとの通信性を考慮したフォルクスワーゲン独自のインフォテイメントシステムを採用
エントリーモデルのトレンドラインを初設定した

 新型ゴルフ トゥーランのボディサイズは、4535mm×1830mm×1640~1670mm(全長×全幅×全高)で、先代よりも全長が130mm、全幅が35mm拡大されている。また、ホイールベースは110mm伸びた2785mm。このサイズアップにより、室内空間は定評のあった先代よりも確実に広くなった。さらに2列目シートの前後スライド量は40mm増えていて、3列目シートのレッグスペースは54mm拡大。また、2列目、3列目のシートはワンタッチで折りたたむことができ、段差のないフラットフォールドシートとなっている。こうしたユーティリティの向上も新型のゴルフ トゥーランの魅力となる。

 パワートレーンでは直列4気筒DOHC 1.4リッターターボのTSIエンジンに7速DSGを組み合わされている。最高出力は、先代よりも10PSアップした150PS/5000-6000rpm、最大トルクも先代比30Nmアップの250Nm/1500-3500rpmとなり、同セグメントではトップクラスの性能を誇っている。環境性能も向上していて、JC08モード燃費は先代の15.0km/Lから23%アップの18.5km/Lとなる。

 グレードは「トレンドライン」「コンフォートライン」「ハイライン」の3種類で、同社MPVモデルとしては初めてトレンドラインを導入した。284万7000円からという価格設定なので、国産メーカーのミニバンとも対等に渡り合えるラインアップとなっている。なお、年内にはスポーティモデルのRラインも導入予定ということなので、ハンドリング性能を求める人はRラインの登場を待つのもよいだろう。

 このように先進的な安全性と経済性を兼ね備え、フォルクスワーゲンらしさを追求したモデルが新型のゴルフ トゥーランだと正本氏は紹介した。

ゴルフ トゥーラン TSI コンフォートライン
タイヤサイズは205/60 R16。トレンドラインも同様のサイズとなる
コンフォートライン(写真)とトレンドラインのシート表皮はファブリック
ゴルフ トゥーラン TSI ハイライン
全高は1660mmで、オプションのDiscover Proパッケージを装着した場合は1670mmとなる
ハイラインのタイヤサイズは、215/55 R17
ハイライン(写真)とコンフォートラインではレザー3本スポークステアリングを標準装備
ハイラインのシート表皮にはマイクロフリースを採用する
シャランでもオプション採用しているインテグレーテッドチャイルドシート。座面を引き起こし、専用のサイドヘッドレストを装着して使用する
17万2800円高でオプション設定する電動パノラマライディングルーフ
3列目をたたんだ状態での積載量は917L。2列目まで倒せば1857Lのスペースが生まれる
エンジンは1.4リッター TSIのみの設定となる

(真鍋裕行)