インプレッション

橋本洋平のスバル「XV」「インプレッサ」+ブリヂストン「ブリザック VRX2」の最強雪道パッケージで青森~安比高原をロングドライブ

リアルワールドでスバルAWDと本まぐろ丼を味わう

青森から安比高原スキー場まで全工程約185kmをスバル「XV」(右)と「インプレッサ G4」(左)でロングドライブしてきました

 ここ最近、東京にいても積雪に見舞われ、立ち往生するクルマが多発する状況を見ていると、クルマもタイヤも万全の状態でいなければ、なんて思うことが多くなってきた。都心なら2輪駆動&サマータイヤで十分という思考は、そろそろ改めたほうがいいかもしれない。東北で4輪駆動+スタッドレスタイヤの威力と安心感を味わってきた今、僕のそんな考えはかなり加速している。

 スバルが「インプレッサ」や「XV」で展開を始めた「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」と「シンメトリカルAWD」をリアルワールドで味わうという今回の試乗イベントは、青森駅から安比高原スキー場までの全工程約185kmの多くが冬路面。舗装こそ見えるが、凍っていたり溶けてウエットになっていたり、山あいに行けばスノー路面があったりと、さまざまな環境を試すことが可能だ。また、道中にはワインディングあり、高速道路ありとバラエティに富んだコースもあるから、単に走行性能だけでなく、例えばアイサイトなどの使い勝手も試すことが可能だろう。

 まずはXV 2.0i-L EyeSightに乗って青森駅脇からスタートする。インプレッサよりも全高が引き上げられ、着座位置も高くなっているXVは、街乗りしている時点から視界は良好。路面状況の変化も即座に把握しやすいところがまずはよさ。裏路地に入れば雪や氷が点在しているところもあり、そこでは注意が必要だが、意識してみることなくスッと理解しながら安心して走れるところがよさ。シンメトリカルAWDとブリヂストンの「ブリザック VRX2」が生み出すトラクションは、ツルツルに磨かれた交差点付近であってもシッカリ止まるし、きちんと当たり前のように加速も展開する。幹線道路では轍があちらこちらにあるが、そこから受ける外乱で進路を乱すことも少なく、直進性が優れているところはポイントの1つ。SGPはインプレッサ登場時から真っ直ぐ突き進む感覚に優れていると感じていたが、XVにおいてもそれは受け継がれているように思える。

青森駅から国道103号で十和田湖へ向かうのが、スバルから指示されたルート。しかし、Car Watch編集者の指示で国道4号を浅虫温泉へと向かう
国道4号を浅虫温泉へ。目指すはドライブイン 鶴亀屋食堂
鶴亀屋食堂に到着。絶品の本マグロ丼があるのだという
本日の本マグロ丼は、長崎産。中、小、ミニの3サイズがある
せっかくなので3サイズ注文。左から中、小、ミニ。まぐろ山盛り
高さが分かるように横から。左から中、小、ミニ。正直、小でも十分な枚数のまぐろが積まれている
高さはこんな感じ。3人で腹一杯食べました
本まぐろ丼を食べたので、いよいよリアルワールドの雪道へ。というか、青森は普通に雪がじゃんじゃん降っている
青森港に戻って、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸とともに。八甲田丸を見てから八甲田方面へ向かうという趣向
八甲田ゴールドラインを南へと進む

 市街地を離れて十和田湖までのワインディングを走れば、みるみる雪深くなってくるが、そんな状況であったとしても安心感が損なわれるようなことはない。確実なトラクションと安定したストッピングパワーは相変わらず。途中、狭いワインディングで対向車とすれ違う場面が多くあったが、そこでも車体の見切りのよさ、そしてコントロール性の高さのおかげもあって、不安に思うようなことはなかった。曲率の浅いコーナーではキビキビとした身のこなしもあり、爽快な走りを展開していた。ただ、タイトなターンが連続するようなシーンでは、操舵に対してリニアさが薄いところが気になった。

 フロント側にしなやかさやストローク感がなく、サスペンションが沈み込んでくれないイメージがあるのだ。後に担当エンジニアに伺ってみると、現行XVは都市部でのタワーパーキング問題をクリアすること、そして乾燥路の運動性能を高めるために、輸出向けのXVに比べて車高を落としているのだとか。それに対応した硬めのセッティングが、今回のような低μ路ではマッチングしなかったということのようだ。もちろん、対向車線にはみ出すような危ういことは起きないのだが、XVというと悪路走破イメージを期待して購入する人も多いはず。輸出向けの最低地上高仕様も日本で購入できるように新たに設定してみてはどうかとも感じたのだ。

SUVのXVは、日本の都市部でのタワーパーキング問題をクリアするために、最低地上高は200mmに。これが乾燥路の運動性能の向上につながっているが、雪道では若干の不満に。ベース仕様ともいえるヨーロッパ仕様は最低地上高220mmのため、ユーロエディションなどのバリエーション展開に期待したい

 ワインディングの途中でインプレッサ G4 2.0i-L EyeSightに乗り換える。すると、今度はライントレース性が抜群と思えるしなやかさでワインディングを駆け抜けてくれるから面白い。フロントタイヤはステアリングの切りはじめから切り込み応答まで連続したリニアさを展開。コーナーが浅かろうが深かろうが問題なく駆け抜けてくれるのだ。その一連の動きが求めたとおりに動いてくれるからこそ爽快なのだろう。アクセルを入れてもラインが乱れることもなく、はたまたリアが発散するようなこともない。SGPの本領発揮といったところかもしれない。インプレッサ G4のバランスのよさは、悪条件で際立っていた。

一方、インプレッサ G4 2.0i-L EyeSightは、雪道でもリニアな走りを披露してくれた。セダンタイプでありながら抜群の雪道ドライブ性能を感じた。SGP+シンメトリカルAWDの素性のよさを思い知る
XVとインプレッサが装着するスタッドレスタイヤはブリヂストンのブリザック VRX2。2017-2018シーズンデビューの最新スタッドレスタイヤ。氷の性能に加え、横剛性もよく、走りの総合性能が飛躍的に向上している

 十和田湖を超え、ワインディングを下って高速道路に乗れば、ここからはアイサイトの威力を試す絶好のチャンスだ。スタッドレスタイヤ+アイサイトはどんな走りなのか? すると、当然ながらスタッドレスタイヤは剛性がそれほど高くないこともあって、SGP自慢の直進性はやや影を潜めることになる。いくら直進性が優れるSGPであったとしても、凍った路面に合わせてあるスタッドレスタイヤを装着すればこんなことも見えてくる。平たく言ってしまえば左右に微小にチョロチョロと動き、それを修正するためにアイサイトが介入することで位相遅れが発生し、ステアリングを支えている人間側が修正してあげる必要が出てくるのだ。これは難しいことなのだろうが、スタッドレスタイヤの応答性にも対応したアイサイトがほしいような気もしてくる。スバル車のユーザーは雪道を走る機会も多いだろうし、スタッドレスタイヤを装着している期間も長い。だからこそ、そんなところにもこれから対応していく必要があるだろう。細かいことではあるが、期待すればそれに確実に応えてくれるスバルだからこそ、ここではあえてリクエストしておくことにしよう。

本マグロ丼を味わい、雪道を味わい、そして温泉を味わう。蔦温泉の湯は素晴らしかったし、こういう場所に安全に愉しく来ることができるのがスバルAWD+ブリザック
蔦温泉を越えて、十和田湖近辺へ。この辺りはきれいな圧雪路
除雪していただけるからこそ冬のドライブが楽しめる。ありがとうございます
十和田道を走行中
小坂IC(インターチェンジ)からは高速道路で南下。XVの高速走行性能は際立ったものがある。「安全と愉しさ」は高いレベルにあり、その上でクルマに何を求めるのかがクルマ選びのポイントだろう

 このように、あらゆる悪条件でロングドライブを重ねればいくつか要求が出てくることも事実。だが、それらはいずれも重箱の隅をつつくレベルの話だと思って間違いない。基本的には安心、安全で愉しいドライブを可能とすることは確かである。だからこそ、冒頭に述べたとおり都市部でもスバルのAWD+スタッドレスのクルマに惹かれるのだ。だが、生まれたばかりのSGPはまだまだ磨き込めばさらなる成長も期待できそうな気配があることも事実。今後、アイサイトも含めてどのような進化を遂げるのか? それもまたスバル車の楽しみの1つである。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。