試乗インプレッション

2019年の日本導入に先駆け、BMWの新型「X5」(第4世代)をオン/オフロードでテスト

直6 3.0リッターディーゼル「X5 xDrive30d」に試乗

よりエレガントで逞しく

 初めて「X5」をドライブしたときには、大柄で背高なクルマがこんなにも軽快で快適に走れるのかと大いに感銘を受けたものだ。はや約20年も前のこと。まだSUVブーム前夜の話である。

 そんなBMWが初めてSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と表現したX5は世の中でも大いに受け入れられ、以降3世代にわたってプレミアムAWDモデルセグメントにおけるマーケットリーダーとして、実に計2200万台以上が販売されたというから恐れ入る。このほどモデルチェンジを実施して4世代目となった新型X5に、日本導入に先立ってXファミリーの生産拠点のあるアメリカで試乗する機会を得た。

 実車と対面すると、これまでにも増してエレガントで逞しくなり、大きな存在感を放つ姿に圧倒される思いだ。ボディサイズは、3代目モデルと比べてホイールベースが42mm増の2975mm、全長が36mm増の4922mm、全幅が66mm増の2004mm、全高が19mm増の1745mmへとそれぞれ拡大している。これにより乗員と荷物のためのスペースもより広くなっている。

今回試乗したのは、米国サウスカロライナ州スパータンバーグ工場で生産される新型「X5」(第4世代)。ボディサイズは4922×2004×1745mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2975mm。先代モデルから36mm長く、66mm広く、19mm高いスリーサイズになった
新型X5は一体式のフレームで囲まれた大きなキドニーグリルを採用するとともに、LEDヘッドライトなどを標準装備。アロイホイールは18インチが標準になるが、M Sport モデルではダブルスポークデザインの20インチMアロイホイールを装備

 インテリアもよりモダンかつラグジュアリーな雰囲気が増して、最新モデルらしく新しいものがふんだんに与えられている。クリスタルのATセレクターのように斬新なアイテムをはじめ、フルデジタルのディスプレイやサーモカップホルダーなど機能的にも興味深いものが多々ある。

新型X5では高めのシートポジションやドライバー重視のコクピットレイアウト、操作系の新しいデザインにより、運転時の操作性を向上。ヒーター付き電動調節式スポーツシートが標準装備されるが、オプションで運転席/助手席にマッサージ機能とシートベンチレーションが付いたマルチ・ファンクション・シートも用意
装備面では先代モデル比で採光面積を約30%拡大したというパノラマガラスサンルーフ、8つのアロマバリエーションでインテリアの空気をイオン化し、芳香効果をもたらす「アンビエント・エア・パッケージ」、サーモカップホルダーなど、さまざまな新装備が与えられる
新型X5のコクピットでは、12.3インチの高解像度メーターパネルと、同じく12.3インチの大画面コントロール・ディスプレイを採用
ラゲッジ容量は645Lで、40:20:40分割可倒式のリアシートを倒すと1860Lまで拡大できる。オプションで3列シートレイアウトを選択することもできる

 発売時に3タイプのパワートレーンがラインアップされた中で、筆者らがドライブしたのは日本にまっ先に導入されるであろう、直列6気筒3.0リッターディーゼル・エンジンを搭載する「X5 xDrive30d」だ。

X5 xDrive30dが搭載する直列6気筒3.0リッターディーゼルエンジンでは、可変インテークジオメトリー式ターボチャージャーと最大噴射圧2500barで燃焼室に直接燃料を噴射するコモンレール式ダイレクトインジェクションを組み合わせ、最高出力195kW(265PS)/4000rpm、最大トルク620Nm/2000-2500rpmを発生

快適性が大幅に高まった

 エンジンスペックは最高出力265PS/4000rpm、最大トルク620Nm/2000-2500rpmとなり、0-100km/h加速は6.5秒となかなか速い。最高速は230km/hを誇り、複合モード燃費は6.8~6.0L/100km(約14.7~16.7km/L)と、車格のわりに良好だ。

 これまでもBMWの、とりわけ6気筒版ディーゼルには乗るたびに感心させられてきたが、従来型より搭載されていたエンジンを踏襲しつつも、モデルチェンジを機に表に出ない範囲で大なり小なり改良が施されているはずの同車をドライブしても、やはりよくできていることにあらためて感心せずにいられない。

 620Nmに達する太いトルクを生み出す、いかにもディーゼルらしい力強さと、ディーゼルらしからぬスムーズな回転フィールが共存していて、音や振動も抑えられており、吹け上がりを楽しむことまでできてしまう。しかも、結構な距離を走ったのに燃料計の表示があまり下がらなかったことも印象的だった。仮に日本にもガソリンが導入されても、ディーゼルを選ぶ人が圧倒的に多いことだろうが、その期待にたがわぬ実力がうかがえた。

 フットワークもさらに洗練されていた。歴代X5でも、これほどの重量物がこともなげにスイスイとコーナーをクリアする、物理の法則を覆すがごとき走りっぷりには感心させられてきた。ただし、足まわりが突っ張っていて突き上げを感じるなど、いささか無理している感もなくはなかった。ところが新型X5ではそれが一気に軽減されて、快適性が大幅に高まっていたことに感心した。

 ダイナミック・ダンパー・コントロールを備えた新しいサスペンションが的確によく動いて、路面からの入力をしなやかにいなしてくれる。おかげで車両重量を感じさせない素直なハンドリングによる軽やかな身のこなしを、快適な乗り心地とともに味わうことができる。

予想を超えるオフロード走破性

 さらに、試乗コースの折り返し地点のわきに設定されていたオフロードコースを走る。1周するのに小一時間かかるほどの、結構な距離のコース。さすがはアメリカ、スケールが違う。

 新型X5では、従来の倍増となる最大80mmの車高調整幅を備えたオフロードパッケージを選択することで、スイッチ操作により60km/hまで使える20mm上昇モードと、30km/hまで使える本格的なオフロード向きの40mm上昇モードが選べる。

 DSCをOFFにし、オフロードモードの「ROCK」を選び、ヒルディセントを2mph(約3.2km/h)に設定し、インストラクターの先導でいざコースイン。考えてみると、「X3」で少しだけ走ったことはあるのだが、X5では初めて。X5にオフロードのイメージはあまりなかったもので、そこそこは走れるだろうけれど、それなりかなと思っていたところ、予想をずっと超える走破性の高さに驚かされたことをあらかじめお伝えしておこう。

 他の参加者の走りを見ていると、サスペンションストロークはそれほど大きいわけではなく、大きめの段差では片輪が浮いているのを何度か目にしたのだが、それでも同じ場所を自分が走ったときに、あたかも4輪すべてがしっかりと接地しているかのように走れてしまうことにも感心した。xDriveとブレーキLSDやDSCなど電子制御デバイスの連携プレーにより、車輪の空転を抑えて駆動力を伝える制御が非常に緻密なおかげで、アクセルを踏んでさえいればグングン前へ進んでいける。しかも、かなり荒れた路面でもあまりゴツゴツと来ないので、なんら不快に感じることなく走れてしまう。

 そんなわけで、どこを走っても感心させられっぱなし。“駆けぬける歓び”をいくつもの場面で味わわせてくれた。オンロードでの走りがよいのは想像どおりとしても、オフロードもこれほど扱いやすく走破性にも優れるとは恐れ入った。そして新型X5は、このカテゴリーを代表する存在として見事なまでに進化を遂げていることがよーく確認できた。2019年に予定される日本導入を楽しみに待つことにしよう。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。