試乗インプレッション
新型「CLS」の直6エンジン+ISG&ディーゼルエンジンで箱根往復
2018年9月26日 07:00
ホレボレするスタイリッシュさ
CLSが新しくなると聞いたときから、どんなデザインになるかとても気になっていた。事前情報だけでも大いに期待させるものがあったが、いよいよ実車と対面して、あまりのスタイリッシュさにホレボレ! 流麗なルーフラインに象徴される持ち前の美しいシルエットには、さらに磨きがかけられていた。
ラインやエッジを極力廃してできるだけシンプルにしたボディパネルは、なだらかな曲面のみで構成されていながらも巧く陰影を表現していて、独特の官能的な雰囲気を醸し出している。ワイドな台形のフロントグリルやサメの鼻先のように前傾して見えるフロントフェイス、斬新な前後ライトなど、今後の礎となるメルセデスの新世代デザイン語法が各部に用いられていることも見て取れる。
従来の2代目もスタイリッシュではあったものの、実のところ個人的にはSクラスに近づきすぎた感があって、線の細さがウリであるはずのCLSらしさがやや発揮できていないような気がしていた。ところが3代目は、初代が出たときのあのセンセーショナルな感覚が再び蘇ったように思う。
コクピットディスプレイやイルミネーテッドエアアウトレットなどを備え、最新のメルセデスに共通するネオクラシカルなたたずまいのインテリアもまた、外見と同様に官能的にデザインされていて目を見張る。運転席における視界が心なしか従来よりもよくなったように感じられた。
いかにも車高が低そうに見えるのに、実はEクラスとの差はわずか25mmというから驚いた。このフォルムながら室内空間は狭くなく、歴代CLSで初めて5人乗りとなったのも特筆できる。後席も平均的な成人男性の体格である筆者が座っても不満を感じない広さが確保されている。トランク容量も従来よりも30L拡大して、より利便性が向上している。見栄えのよさを際立たせながら、このように使い勝手も大幅に高めたのは大したものだ。
ガソリンとディーゼルいずれも好印象
試乗したのは、新しく導入された3.0リッター直6ガソリンエンジンの「CLS 450 4MATIC スポーツ」と2.0リッター直4ディーゼルエンジンの「CLS 220 d スポーツ」だ。
CLS 450 4MATIC スポーツには、以前もお伝えしたメルセデスとして20年ぶりの復活となる直6エンジンが搭載されている。ただし、ターボチャージャーを備えるも、スーパーチャージャーは付かない点が「S 450」とは異なる。オルタネーターとスターターの機能を兼ねたISGの恩恵で、エンジン始動が素早く静かで振動もなく、520rpmと低いアイドリング回転数はこの新しいパワーユニットならでは。そして、アクセルを踏み込むと直6らしいスムーズな吹け上がりを味わえる。加えて、その美しい音色をむしろ積極的に聞かせるかのように低く響くエキゾーストサウンドも印象深い。あくまで効率を追求した結果の産物といえるエンジンとはいえ、“直6”と聞いて思わず反応する層の期待にもしっかり応えてくれるものだ。
一方のCLS 220 d スポーツは、いかにもディーゼルらしいトルクフルな特性を持ちながらも、音や振動が極めて小さく抑えられていることに感心する。車外だとそれなりにノック音は聞こえるが、車内にいるとディーゼルとは思えないくらい静かだ。あえて直6サウンドを聞こえるようにしたのかもしれないCLS 450 4MATIC スポーツよりも、むしろ静かなほどだ。
快適で楽しく安全
今回は都内から箱根を往復して、市街地、高速道路、ワインディングをそれぞれ比較的たっぷり乗ることができたのだが、ハイレベルな快適性は、さすがはメルセデスというほかない。やや引き締まった足まわりにより、若干の硬さを感じるシチュエーションもなくはなかったが、走行距離が伸びてなじんでくると、もう少しまろやかな乗り味になるような気もする。
このサイズのクルマながら手に取るようにクルマの動きが掴めて、ワインディングを走っても楽しめてしまうのもたいしたものだ。コーナリング時のロールが比較的大きめに感じられたのは、挙動をドライバーに伝えるためにあえてそうしているのかもしれない。
両モデルの印象の違いとして、ハンドリングは前軸重が100kg軽いCLS 220 d スポーツのほうが鼻先が軽く、いくぶん動きが軽快であるのに対し、CLS 450 4MATIC スポーツのほうが4輪駆動の4MATICであることも効いてかオンザレール感覚が高いように感じられたこともお伝えしておこう。
高速道路では、世界最先端を行く安全運転支援システムが頼りになる。ステアリングアシストも進化しているようだし、車線変更を安全確認して自動でやってくれるのもドライバーの負荷を低減してくれるのは言うまでもない。途中で渋滞にも出くわすと、なおのことありがたみを実感した。
この価格帯でセダンも含め魅力的な4ドア車を求める人にとって、3代目CLSがこれまでにも増して魅力的なクルマになったことは間違いない。売れ筋は価格がだいぶ安く購入後の経済性にも優れるディーゼルとなるだろうが、個人的にはガソリンのほうがCLSのキャラクターには似合っているように思う。
こうしてすべてにおいて進化を果たした3代目CLSは、自らが開拓した4ドアクーペのカテゴリーにおいて、ますます際立つ存在となったことは間違いない。