インプレッション

3世代目となるメルセデス・ベンツの4ドアクーペ新型「CLS」にスペインで試乗

直6ターボ+ISGの「CLS 450」「メルセデスAMG CLS 53」をテスト

後席が3人掛けに

 手放しで美しさを讃える声と、「これはメルセデス・ベンツのやるべきことではない」とばかりの反対派の嘆きで、大いに意見が割れた2003年登場の初代モデルから早くも15年。いつの間にかラインアップの中ではオーセンティックな存在と位置付けられるようになった「CLS」ではあるが、ブランドのデザインアイコンとして、大きなインパクトを投げ込むという役割は、未だ不変のようだ。

 このスタイリングを見てほしい。まず視線を奪うのは、逆スラントしたノーズ、台形のラジエターグリルとの連続性を感じさせるヘッドライトなどで構成されたフロントマスクだろうか。続いて発表された新型Aクラスを見ても分かるとおり、これがメルセデス・ベンツの新しい顔になる。個人的には少々、威厳を欠くような感はしないでもないけれど、その分これまでになく軽快であるのも確か。もう少し見慣れてきて、ラインアップも増えてきたら判断が下せるようになるのかもしれない。

 あるいは、それ以上に衝撃的と言えそうなのがシャープなエッジやラインがことごとく廃された全体のフォルムの方である。サイドから見た輪郭などは、アーチ型のルーフをはじめとする初代のイメージを踏襲しているのだが、これまで何本も走っていたキャラクターラインがサイドシル近くを走る1本にまで削り取られ、とても滑らかな面を描き出している。

 実は2017年のLAモーターショーに先立って、撮影スタジオでその姿を見た時には、あまりにすっきりし過ぎていて面白みを欠く気がしていたのも事実。線が細く見える感もないではない。しかしながら今回、スペイン バルセロナの自然光の下で再会したCLSは、光のコントラストによってショルダー部にラインが現れてシャキッとした表情を見せるなど、その本当の美しさを大いにアピールしていた。そんなわけで、見るほどにワルくないねという気になってきているのが実際のところである。

 少ないラインでデザインを美しく見せるには、クオリティが伴っていなければならない。その点でも新型CLSは、例えばパネル間の隙間はこれまでのどのメルセデスよりも詰まっているし、面の平滑さも目を見張る。飛び道具があるわけではなく、品質の地道な磨き上げを続けた結果として、このシンプルで美しいデザインが可能になったのだ。

 インテリアも妖艶な仕上がりである。2枚の大画面スクリーンを並べたワイドスクリーンコクピットなどの基本レイアウトはEクラス、Sクラスなどに倣うが、柔らかな線や面、そこかしこに入れられたイルミネーションなどは、このクルマにこそ似合っている。

 新型CLSの新たなフィーチャーは2つ。まず前席では、円形のエアダクトにまでイルミネーションが組み込まれた。そして後席は遂に3人掛けとなった。これはユーザーからの根強い要望に応えたものだという。実際、3人で並んで座るのは試せなかったが、左右席のスペースは確実に余裕を増していて、頭上も天井に髪が触れる程度となっていた。外観からは意外なことに、フル5シーターとして使えるスペースが用意されたわけである。

第3世代となる新型4ドアクーペ「CLS」。ルーフライン、アーチ形のウエストライン、フレームレスのサイドウィンドウなどでクーペライクなデザインに仕上げるとともに、新たにダイヤモンド・グリルなどを採用
写真の「CLS 450 4MATIC」は直列6気筒3.0リッターターボエンジンにISG(インテグレーテッド・スターター・モーター)を組み合わせ、エンジンの最高出力は270kW(367HP)、最大トルクは500N・mを発生。電気モーターの最高出力は16kW(22HP)となる。0-100km/h加速は4.8秒

 数多くのラインアップが用意される中から今回ステアリングを握ることができたのは、「CLS 450 4MATIC」と「メルセデスAMG CLS 53 4MATIC+」の2モデルである。いずれも心臓部には新開発の直列6気筒3.0リッターターボエンジン+ISG(インテグレーテッド・スターター・モーター)が搭載され、前者はエンジンの最高出力367HPに22HPの電気モーターによるアシストが行なわれる。

 注目は、初の“AMG 53”シリーズとなる後者だ。こちらはISGにより回生した電気にて駆動され、主に低回転・高負荷域で働く電動スーパーチャージャー、そして大容量ターボチャージャーという構成となり、スペックは最高出力435HP+22HPの電気モーターアシストとなる。

「メルセデスAMG CLS 53 4MATIC+」が搭載する直列6気筒3.0リッターターボエンジンは最高出力320kW(435HP)、最大トルク520Nmを発生。電気モーターのスペックはCLS 450 4MATICと共通。0-100km/h加速は4.5秒
インテリアでは前席の円形のエアダクトにまでイルミネーションが組み込まれたほか、これまで2人掛けだった後席が3人掛けとなった。また、メーターまわりには最新のメルセデスモデルらしく、2つの12.3インチディスプレイがレイアウトされる

日本には2018年年央に上陸予定

 まず乗ったCLS 450 4MATICは、期待どおり直列6気筒ユニットならではの味わい深いエンジンフィーリングを満喫させてくれた。回転の粒が揃っていて吹け上がりは滑らかだし、回転数の上下に合わせて連続的に変化していくサウンドも実に心地よい。パワー、トルクも十分。電気モーターのアシスト感はそれほど強くないが、Ecoモード走行時、アクセルOFFによるエンジン停止状態からの復帰の際に、瞬時のレスポンスでエンジンを始動させ、力強いアシストにより段付き感なく加速に持ち込んでくれるのは、紛れもなくその恩恵だろう。

 フットワークは安定志向で、4WD故のややプッシュアンダーステア的な傾向も見られるが、いかにも剛性感高いボディ、巧みな姿勢コントロールのおかげで、安心して楽しめる。試乗車はランフラットタイヤを履いていたが、日本仕様はすべてノーマルタイヤになるとのことなので、乗り心地への不安は無用である。

 続いて走らせたメルセデスAMG CLS 53 4MATIC+は、発進の瞬間から格段のパワフルさを味わわせてくれた。アクセルONと同時にスッとトルクが立ち上がり、日常域でとても走らせやすいし、何と言っても追い越しの時などには一気に、仰け反るほどのダッシュ力を得ることができるから堪らない。

 トップエンドにかけてのひと回り上のパワー感も快感。内燃エンジンの弱点を電動化により上手に打ち消し、ストレート6の旨味だけを存分に味わわせてくれるのだ。

 AMGライドコントロール+と呼ばれる可変ダンピング機能を備えたエアサスペンション、剛性アップとネガティブキャンバー化を図った専用のフロントアクスル、電子制御式4WDシステムの組み合わせにより、フットワークもより一層、意のままに操れる感覚が強まっている。CLS 450 4MATICに比べるとターンインが素直で、しかもアクセルONで積極的に曲げていけるような感覚すらあるから、ハイパワーを躊躇なく楽しめる。それでいて乗り心地だって上質なのだから言うことなしである。

 なお、新型CLSにはAMG“63”は用意されない。AMG GT 4ドアクーペに譲った形だが、同じプラットフォームを使った4ドアクーペを2台こうして作り分けるのは、果たしてどれだけの意味があるのだろう?

 ともあれ新型CLSは、ブランドのデザインアイコンに相応しく、さらに先鋭的となったスタイリングをまとい、走りの上質さとスポーティさにも大いに光るところのあるモデルに仕上がっていた。もちろん最新の運転支援・安全装備も余さず揃っている。日本には、2018年年央には上陸する予定である。

島下泰久

1972年神奈川県生まれ。
■2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動する。2011年版より徳大寺有恒氏との共著として、そして2016年版からは単独でベストセラー「間違いだらけのクルマ選び」を執筆。また、自動運転技術、電動モビリティを専門的に扱うサイト「サステナ」を主宰する。