試乗レポート

スバルの新型「インプレッサ プロトタイプ」に試乗 磨きをかけた“心地よいドライビング”をまずはサーキットで体感

新型インプレッサ(プロトタイプ)

 スバルのエントリーモデル、インプレッサが兄弟車のクロストレックに続いて登場した。

 これまでXVとインプレッサの差別化が明確でなかったが、XVがクロストレックに進化したことでインプレッサのポジションが分かりやすくなった。

 インプレッサの目指したのは実用性とスポーツ性の両立だ。スピード感のあるデザインとそれに見合う運動性能、そしてユーティリティの高さの実現だ。

 基本的にはクロストレックとインプレッサは共通項が多いが、デザイン面ではインプレッサはフロントマスクやリアエンドのボディパーツが違いスッキリしたデザインになっている。

新型インプレッサ(プロトタイプ)。撮影車両のグレードは2.0リッター直噴エンジン+e-BOXERの「ST-H」。ボディサイズは4475×1780×1515mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
17インチダークメタリック塗装+切削光輝アルミホイールに組み合わせるタイヤはダンロップ「SP SPORT MAXX 050」
ST-Hはフロントグリルバーがダークグレー塗装となるほか、フロントフォグランプカバーがブラック塗装加飾付きとなる
リアに「IMPREZA」「e-BOXER」のエンブレムを装着
ヘッドライト。ユニット内にコーナリングランプを設定
テールランプ。ヘッドライトと同じコの字デザイン
LEDリアフォグランプは4WD車に標準装備、2WD車にオプション設定
インパネ
ステアリングはシルバーステッチ入りの本革巻
ステアリング右スポークにアイサイトの操作スイッチとSIドライブのスイッチを配置
ステアリングヒーターはST-Hのほか、ST-Gに標準装備、STにオプション設定
シフトノブまわり
フロントシートヒーターはオプション
電動パーキングブレーキスイッチの横にデジタルマルチビューモニターのスイッチを配置
11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム(ST-G、ST-Hに標準装備、STにオプション設定)
4.2インチマルチインフォメーションディスプレイ付ルミネセントメーター(ホワイトリング照明付)
シート表皮はシルバーステッチ入りのジャージ素材。本革シートはオプション
ラゲッジ。LEDリアゲートランプはST-Hのみ標準装備

 開発目標は人が感じる「心地よいドライビング」の作り込みだ。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)も2巡目に入り、先代モデルで実現できなかったことに磨きをかけたのはクロストレック同様だ。

 一方、クロストレックが悪路走破性も要求され最低地上高200mmのSUVであるのに対してインプレッサはオンロードでの使いやすさが中心で、最低地上高は130mm。このためにサスペンション設定も目的に応じて変えている。

 バネレートで言えばクロストレックはフロント24N/mm、リア27N/mm。インプレッサはフロント22N/mm、リア35N/mmでサマータイヤを履いていることもあり、キャラクター的にもリアが固められてキビキビと動く味付けになっている。両車ともショックアブソーバーの減衰力は従来型に比べて少し低く設定されているが、サスペンションの動きとしては取り付け部にスライドブッシュを使ってフリクション特性を変え、アシが最初からよく動くようにしている。ホイールのPCDも100mmから一般的な114.3mmになり剛性向上はハンドリングにも効果的だ。

 SGPの完成度が高くなったことでサスペンションは軟らかくでき、乗り心地と操安の両立を図ることができたことが大きい。

 試乗は袖ヶ浦フォレストレースウェイで行なわれた。舗装は通常路面で普段走っている舗装と同じだ。新型の4WDとFFのプロトタイプ、それに従来型のインプレッサ スポーツの試乗となる。装着タイヤはダンロップ「SP SPORT MAXX 050」でサイズは215/50R17を履く。従来型と同銘柄、同サイズだが、新しいインプレッサに合わせてタイヤもフルモデルチェンジされて、ストレートブロックに斜め溝の入らないパターンになった。

新開発となるSP SPORT MAXX 050。左が新開発品、右が従来品

 レヴォーグ以来、スバルのコクピットは大きな縦型センターディプレイが特徴だ。ナビをヘッドアップにした場合、進行方向が広がるので見やすい。

 エンジンは2.0リッター自然吸気のe-BOXER。これ以外にガソリン車もあるが、基本的にはマイルドハイブリッドがベースになる。発進はマイルドハイブリッドのアシストで静かな走り出し。エンジンが始動しても振動が少なく水平対向のバランスのよさを改めて感じる。

最高出力107kW(145PS)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kgfm)/4000rpmを発生する水平対向2.0リッター直噴「FB20」エンジンに、最高出力10kW(13.6PS)、最大トルク65Nm(6.6kgfm)を発生するMA1モーターを組み合わせる。トランスミッションはリニアトロニックCVT

 加速時もアクセルを踏んだときはレスポンスよく速度が伸びていく。電動モーターのアシストが効果的で、特にSIドライブをSPORTにすると滑らかに素早く加速するところは際立つ。

インプレッサ プロトタイプ 4WDモデル

 キビキビした中にも余裕を感じる走りはハンドリングにも表れており、ボッシュ製の2ピニオン電動パワーステアリングは、ハンドルレスポンスだけでなく、操舵力変化が少なく滑らかで上質さが各段に上がった。

 剛性面では2巡目に入ったSGPは隙間がなく、ハンドル操作もダイレクトに伝わってくる。さらにレーンチェンジンのようにハンドルを戻したとき、センター付近で引っ掛かりがなくすべてが滑らか。1クラス上のドライブフィールだ。ハンドルの切り返しでもタイヤの接地面変化が小さいようだ。

 インプレッサの運動性能はクロストレックよりもキビキビとした動きを大切にするフットワークのよさが特徴となっている。

 静粛性ではルーフの共振材が効果的で車内のノイズはよく抑えられ、ラゲッジルームから入ってくるノイズも、タイヤのロードノイズも小さくなり、全体のノイズが下げられたことも大きい。すべての音をカットしているわけではなく、ピークを抑えたことで静かに仕上げられている。

 乗り心地はサーキットでは分かりにくいが、従来型に比べると加速時のピッチングが少なく目線がぶれないことから、伝わる振動収束は早そうだ。

 乗り心地ではシートの果たす役割も大きい。新しいフレームとなったフロントシートは座面のスワリがよく、コーナーでもお尻がずれない。さらにシートバックもホールド性が高く身体をしっかり支えてくれる。乗降性もよく心地よいシートだった。

 一方、FFもハンドルの滑らかさ、ライントレース性、自然なドライブフィールは4WDと同じでさらに軽快感がプラスされた。乗り心地も突き上げが大きいかと思いきや、リアの凹凸収束性が優れており、サーキットに限ればマイナス点はなかった。

インプレッサ プロトタイプ 2WD(FF)モデル

 インプレッサは従来型では物足りなかったドライブフィールの一体感をうまくまとめ上げ、乗るのが楽しいクルマになっていた。乗り心地、ハンドリングのバランスがよく両立している。ブレーキの初期タッチやインテリアの質感など物足りない面もあるが、スバルらしさが戻ってきたようでうれしい。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学