試乗レポート

新型EVトラック「eキャンター」は静かでパワフル、ほぼワンペダル操作で運転が楽だった

2023年4月13日 開催

バッテリEVトラック新型「eキャンター」に試乗した

 三菱ふそうトラック・バスは、バッテリEV(電気自動車)トラック新型「eキャンター」の試乗会を同社喜連川研究所(栃木県さくら市)において開催した。新型「eキャンター」を同研究所のテストコースで試乗することができたので、その様子をお伝えしていきたい。

 フルモデルチェンジして登場した新型「eキャンター」は、さまざまな仕事の用途に合わせて使ってもらえるよう国内モデルでは計28型式とシャシラインアップを拡大させたことが大きなポイント。従来モデルのGVW(車両総重量)7.5tクラスにくわえて、より小型なGVW5tクラスから最大でGVW8tクラスまで展開。キャブバリエーションも従来モデルと同等の「ワイドキャブ」にくわえて、「標準幅キャブ」、中型トラック「ファイター」と同等の「EX拡幅キャブ」の3種類を展開。ホイールベースも複数のラインアップを展開し、小回りの利く2500mmから、中型車クラスの4750mmまでを揃えた。

 モーターは、後軸に統合した三菱ふそうトラック・バス独自開発の「eAxle」を採用、モーター最高出力はGVW5〜6tクラスに110kW(150PS)、GVW7.5tクラス以上に129kW(175PS)を設定、最大トルクはいずれも430Nmとなっている。バッテリはモジュール式バッテリーを採用してホイールベースに応じてバッテリーを1個から最大3個まで搭載可能、航続距離は車種に応じて99kmから最大で324kmまでの航続距離を用意した。

新型「eキャンター」

 また、架装オプションもモーター式の動力取り出し装置(ePTO)を採用することで拡大され、ダンプ、キャリアカー、脱着車、リアクレーン、ゴミ収集車の架装が可能になった。そのほかにも、車載バッテリーからパワーステーションを介して外部給電を行う外部給電システムも新たに搭載し、災害時に社会インフラの電源として使用することもできる。

新型eキャンターの冷凍車仕様
新型eキャンターのダンプ仕様
車載バッテリーから取り出した電気でコーヒーを沸かすデモも

エンジン車と比べて圧倒的な静けさで、運転操作もほぼワンペダル操作を実現

新型「eキャンター」はほぼワンペダル操作で運転が楽だった

 試乗会では、最大10%の登坂路を用意した試乗コースで、中型免許で運転できるGVW8tのウイング車にLサイズのバッテリ搭載車、準中型免許で運転できるGVW6tのドライバンに、Mサイズのバッテリ搭載車とSサイズのバッテリ搭載車、計3モデルを試乗することができた。

Lサイズのバッテリを搭載するGCW8tのウイング車
Mサイズのバッテリを搭載するGVW6tのドライバン
Sサイズのバッテリを搭載するGVW6tのドライバン

 実際に試乗して、3モデル共通して誰にでも運転して感じられると思うのは、何よりも静かでパワフルであること。ディーゼルエンジンモデルのキャンターにも同乗試乗させてもらったが、エンジン音がしない車内の静けさの違いは大きい。パワフルだと感じた部分では、試乗車は最大積載量の積荷を搭載した状態であったが、10%の勾配がある坂道発進においても、積荷を搭載していることを意識させない加速をしてみせる。

従来モデルの「eキャンター」(左)、ディーゼルエンジンモデルのキャンター(右)

 新型「eキャンター」では、運転操作に関わる機能強化として、モーターによる回生ブレーキの制動力については、回生なしの「B0」から「B1」「B2」「B3」といった、4段階に強度が増やされた。この回生ブレーキのポジションをうまく活用することで、ほぼアクセルペダルの操作だけで車速をコントロールすることができ、テストコース上での試乗ではあるがほぼワンペダル操作を実現していることが確認できた。

 回生ブレーキは、モーターを発電に使用して強力なブレーキ力を発生させるもので、物理的なブレーキで運動エネルギーを熱に変換してしまうフットブレーキを使用しないことで燃費もよくなるという。

 試乗車は最大積載量の荷物を積んだ状態であったが、下り坂の速度調節もワンペダル操作で速度調節でき、非常に安心感をもって走行することができる。普段、記者は乗用車を運転して、トラックには乗りなれないドライバーであるが、このシンプルなワンペダル操作によって、普段自分が運転するガソリン乗用車以上に扱いやすいトラックであることが感じられた。

新型「eキャンター」を高速周回路で同乗試乗
新型「eキャンター」開発メンバー
編集部:椿山和雄