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三菱ふそう「eCanter」次世代モデルの2023年量産開始に向けてカーボンニュートラル化に取り組むトラマガル工場

三菱ふそうトラック・バスの欧州市場向け電気小型トラック「eCanter」次世代モデル

欧州市場向け電気小型トラック「eCanter」次世代モデルを量産開始予定のトラマガル工場

 三菱ふそうトラック・バスは、欧州市場向け電気小型トラック「eCanter」次世代モデルを「IAA Transportation 2022」で初公開した。同モデルが生産されるポルトガルのトラマガル工場を見学できる機会を得たので、その様子をお伝えしていきたい。

 三菱ふそうでは、ポルトガル・トラマガル工場を2022年までにカーボンニュートラル化すること目標に生産体制の改善に取り組んでいる。トラマガル工場で2023年に量産開始予定の「eCanter」次世代モデルは、カーボンニュートラルを実現した工場から出荷される見通しだ。

トラマガル工場について説明をする三菱ふそうトラック・ヨーロッパ代表取締役社長 アルネ・バーデン氏

 現在、トラマガル工場では、構内車両の電動化や工場内の設備に太陽光パネルを増設して自家消費型の設備への転換、グリーン電力の使用やカーボン・オフセット証書の取得など、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めており、2022年12月にカーボンニュートラルを達成予定としている。

 トラマガル工場は、ポルトガルの首都リスボンから約150km北東に位置し、敷地面積3万9900m 2 、欧州30カ国やイスラエル向けの小型トラック「キャンター」のKD生産を行なってきた。1964年にポルトガル現地資本とフランス Berliet(現ルノートラック)と合弁で軍用トラックのKD生産を開始したのを始まりに、1980年に三菱自動車の「キャンター」「ファイター」や「パジェロ」などのKD(Knock Down)生産を開始。1996年に三菱自動車工業株式会社子会社となり「キャンター」の生産に特化。2004年より三菱ふそうトラック・ヨーロッパに社名変更。2011年より8代目「キャンター」を生産開始した。なお、約95%の車両はポルトガル以外に輸出、トラマガル工場で生産している「キャンター」の部品は、金額ベースで50%を欧州域内の60以上のサプライヤーから供給を受けている。

 現地を訪れて驚いたのは、ノックダウン生産工場と聞いていたので組立工程がメインなのかと思っていたところ、生産工場にはボディの溶接作業や塗装工程もあったこと。キャブのボディパネルは、プレスされたパネルが現地に持ち込まれていて、工場で溶接作業から、その後の塗装作業も行なわれていた。工場内を見学していると、部品を運ぶ自動搬送車が頻繁に移動していたり、コロナ禍で供給体制に影響の出た部品については、工場側に設備を導入して部品を調達するなど、工場独自の“カイゼン”への取り組みも進んでいるといい、現地スタッフのカイゼンの努力で臨機応変な対応力が鍛えられている。

仕様にあわせてフレームを組み上げていく
プレスされたパネルを溶接してキャブを組み上げていく
組み上がったキャブは塗装工程へ
塗装されたキャブ
カラーオーダーも可能
パーツのストック
エンジン車のキャンターが完成する
「eCanter」現行モデルは量産ラインから外れた場所で組み上げられていた

 トラマガル工場におけるC02排出に関わる部分としては、主には電着塗装や焼付工程に必要なオーブンといった塗装工程に関わる電気の使用量といい、細かな部分として部品の運搬に必要なフォークリフトなどの電化を進めている状況。

カーボンニュートラルへの取り組みを説明した三菱ふそうトラック・ヨーロッパ 生産本部のマルタ・ナーリヤ氏

 こうしたカーボンニュートラルへの取り組みに対して、政府からは税制優遇など補助などはないが、ポルトガル政府の政策で、化石燃料に頼らない電気の供給を得られているのが、カーボンニュートラル達成することができる1つの要因という。今後、トラマガル工場は2022年12月にカーボンニュートラルを実現して、「eCanter」次世代モデルを2023年を量産開始、欧州に向けて出荷されることになる。

ヨーロッパで最大の40台のeCanterを保有するDBシェンカーのカーボンニュートラルに向けたロードマップ

 このトラマガル工場訪問の前日、ヨーロッパで最大の40台のeCanterを保有するDBシェンカーのグローバルサスティナビリティ部門の担当者に話を聞く機会を、ドイツにあるDBシェンカーのフランクフルト支店で得た。

 DBシェンカーの脱炭素化目標としては、2040年までに企業としてカーボンニュートラルを目指すとしており、DBシェンカーの企業活動における二酸化炭素排出量のおよそ1/4を占める道路輸送部門においては、2030年までに道路輸送による二酸化炭素排出量を50%削減する計画(2021年比)、そのほかにも2030年までにビルの電気使用による二酸化炭素の排出をゼロにするなど、2030年までに企業活動全体の炭素排出量を20%削減する計画(2021年比)。

 DB シェンカーの現在の電動化車両は、eCanter、e-Bike、eVansといった車両で、小型のラストマイル車両に重点を置いている。車両の電動化をさらに進めるために、1500台近くの電気トラックを発注。電気大型トラックのメルセデス・ベンツのeActrosは既に導入しており、同様にVolvoやHylane(FCV)などの大型の電動化を進めている。

DBシェンカー グローバルサスティナビリティ部門副社長のアンドレア・グーマン氏
陸上輸送、航空輸送、船舶輸送、オフィスでの活動など企業活動におけるCO2排出において、2040年までにカーボンニュートラルを目指すDBシェンカー

 DBシェンカー グローバルサスティナビリティ部門副社長のアンドレア・グーマン氏は「カーボンニュートラルに向けて、現実解としてあるソリューションから順次取り入れていきます」と、カーボンニュートラルに向けて着実に歩みを進めていることを強調した。

 三菱ふそうを含めたダイムラー・トラック グループの目標は、2039年までに欧州、日本及び北米地域の主要3市場ですべての新型車両をCO2ニュートラル(燃料タンクから走行時まで)化することにコミットしていて、欧州陸上輸送トップ企業の目標と一致している。物流事業者やメーカーといった輸送業界が一体となって、カーボンニュートラルに向けて着実にその取り組みを進めていることが感じられた。