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いすゞ、新型「エルフ」世界初公開 BEV/HEV/FCEV対応の新プラットフォームや+300mm余裕ある「スペースキャブ」など“選べる自由”を提供

2023年3月7日 発表

 いすゞ自動車は3月7日、小型トラックの新型「エルフ」と中型トラックの新型「フォワード」を世界初公開した。新型エルフについては、2006年12月の現行モデル発表から17年ぶりのフルモデルチェンジとなり、新型エルフにはバッテリEV(電気自動車)もラインアップした。

 いすゞでは「選べる自由、それが『運ぶ』の未来」を掲げて新型エルフを開発。今回のフルモデルチェンジでは「デザイン」「ホスピタリティ」「エコノミー」「セーフティ」「コネクテッド」「ラインアップ」の6つのポイントを中心に進化させたとしている。

いすゞ自動車株式会社 代表取締役社長の片山正則氏

 同日、パシフィコ横浜で開催された「ISUZU World Premiere 2023」と題したイベントに、同社代表取締役社長の片山正則氏と、同社執行役員 技術本部 開発部門 CV統括CEの平尾聡氏が登壇。片山氏からは2023年の企業メッセージとして掲げた“加速させよう、「運ぶ」の未来。”に対する思いが語られ、平尾氏からは新型エルフの特徴などについて説明がされた。

 企業メッセージにも掲げた「運ぶ」という言葉に対して、片山氏からは「運ぶということは、世の中に与える影響は非常に大きなものがございます。例えば、現在世界のCO2排出のうち、およそ20%が運輸部門由来と言われております。そこで、使われるエネルギーがよりクリーンなものになれば、カーボンニュートラルは、そう遠い未来や理想の話ではなくなってくると考えております。つまり、運ぶが変われば、未来の社会が変わると言えるのではないでしょうか」との考えを示した。

 そして、いすゞの目指す“運ぶ”の方向について、片山氏は「社会の血流である物流、日本ではそれを支えるトラックのシェアの半分近くをいすゞグループが担っております。その責任は、非常に重大だと考えております。これからも豊かな暮らしを支えるため、より安全で乗る人にも満足してもらえるクルマ作りをしていかなければなりません。一方で、これまでいすゞが築いてまいりました、安心をベースにして、これからは、それに加えて“斬新さ”を創造していくことも求められると感じております」との方向性を語った。

 片山氏は「安全性、ドライバーの皆さまの労働環境向上、コネクティッド、そしてカーボンニュートラル、これらは世界中の物流業界において重要な課題であり、乗り越えることで、社会の進化を加速させることができる大きなチャンスでもあります。そうしたものに、われわれが責任を持って応えていくこと、それがいすゞの使命であると考えております。日本の自動車産業の夜明けから、100年以上にわたって世界の運ぶを進化させてきたいすゞには、常に新時代を切り開いていく使命や運ぶを支え創造することで、社会を前進させる使命であると感じております。私たちは、運ぶを通じて、世の中に希望をお届けします。そして、本日発表する新しい商品や技術がどのように運ぶの未来を加速させていくのか、そして、これからいすゞがどのように変わっていくのか、ぜひ実感していただければ、うれしく感じております。どうぞご期待ください」と、新商品の説明については、平尾氏にバトンを渡した。

企業メッセージについてのトークセッションも展開された
ISUZU World Premiere 2023

エルフ約2500車型、フォワード約1500車型のラインアップを実現するI-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)

いすゞ自動車株式会社 執行役員 技術本部 開発部門 CV統括CEの平尾聡氏

 新型エルフに関する説明では、いすゞ初の量産バッテリEV(BEV)をラインアップしたほか、ドライバーの労働環境改善として、新普通免許に対応する「エルフmio」や居住性を改善する「スペースキャブ」を投入。先進安全技術では国内小型トラック初搭載となる「プリクラッシュブレーキ(右左折時)」「全車速車間クルーズ」「レーンキープアシスト」「ドライバー異常時対応システム」「可変配光型LEDヘッドライト」「標識連動型スピードリミッター」「フロントブラインドスポットモニター」などを採用。地球温暖化への対応やドライバーの労働環境改善、交通事故死傷者ゼロ社会の実現に加え、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化など、世界中のユーザーの利便性を損なうことなく、物流業界において重要な課題に対応したことが強調された。

エルフワイドキャブ
フォワードワイドキャブ
エルフ標準キャブ
エルフEV
新型エルフのインテリア

 イベントに登壇した平尾氏からは、いすゞの商品開発の基盤となるI-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)について、技術の進化や車型展開のさらなる広がりを見据えて、多様なニーズに合わせ、さまざまなコンポーネントや部品、デバイスなどの組み合わせを可能とする開発手法により、エルフ約2500車型、フォワード約1500車型のラインアップを実現することが強調された。

 新型エルフに採用された新プラットフォームは、車両の操作系やレイアウトをこれまでディーゼル車と可能な限り共通化しながら電動化に対応。発表会場には、ディーゼルエンジン、ハイブリッド(HEV)、バッテリEV、FCV(燃料電池車)といった、電動化モデルのバリエーションが展示された。

エルフのハイブリッドモデル
エルフのディーゼルモデル
エルフFCEV
エルフEV
ディーゼルエンジン車については、AT免許で運転可能な9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のISIM(Isuzu Smooth Intelligent TransMission)を新開発。「4JZ1」エンジンと組み合わせることで燃費性能を追求
I-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)のコンセプト

 新型エルフにラインアップするBEVモデルにおいては、標準キャブのGVW3.5t未満車からワイドキャブのGVW7.5t車までを用意。車両の操作系やレイアウトをディーゼル車と可能な限り共通化することで、これまでディーゼル車で使われていたさまざまな架装にも対応できることになり、ユーザーの利便性を損なうことなくBEVを導入できるとしている。

 そのEVモデルの特徴については、容量20kWh/個のコンパクトなバッテリパックを開発して、車格や使われ方に応じてバッテリ容量40kWhの2パック〜最大100kWhの5パック搭載できるモジュール方式を採用。具体的には2パック/40kWhが標準キャブの標準ホイールベース、3パック/60kWhがハイキャブの標準ホイールベースとロングホイールベース、5パック/100kWhがワイドキャブのロングホイールベースといった4タイプを展開する。

エルフEV

 平尾氏は「I-MACSは、技術の進化や車型展開のさらなる広がりを見据えて、多様なニーズに合わせて、さまざまなコンポーネントや部品、デバイスなどを組み合わせを可能とする、これからのいすゞの商品開発の基盤となるものです。この手法に基づき刷新されたプラットフォームにより、さまざまな動力源や先進技術を搭載していくことで、世界中のお客さまの多様なニーズに対応するエルフ約2500車型、フォワード約1500車型のラインナップを実現いたしました。今回、開発したプラットフォームにより、いすゞは将来にわたり、選べる自由を世界中のお客さまに提供してまいります」と強調した。

ディーゼルエンジン車とEVのプラットフォームを共通化することで、これまで使われきた架装が使えるようになる

 さらに、ドライバーの労働環境向上に繋がる部分として、平尾氏は「新たな商品として標準キャブに後端を延長したスペースキャブを追加しました。このスペースキャブでは居住性を改善するとともに、キャブ内にお仕事の道具などを収納可能とするスペースを大幅に増やすことができました。また、社会課題の1つであるドライバーさん不足の解消に貢献するため、国内で唯一ディーゼルトラックで、 新普通免許にも対応するエルフmioも投入する予定です。世界で年間40万台近くの販売実績があるピックアップトラック用の小排気量エンジンを商用車用に最適化し搭載いたします。もちろん、このエルフmioにもEVを用意する予定です」と予告された。

キャブ後方に空間を用意する「スペースキャブ」
新普通免許にも対応するエルフmio
新型エルフ、新型フォワードのデザインの特徴を示すスライド