試乗記

日産「ノート オーラ オーテック」は“プレミアムスポーティ”を具現化した1台

新型「ノート オーラ オーテック」に試乗

 NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)からノート オーラのAUTECH(オーテック)版がリリースされた。ノート オーラをさらにAUTECHでアレンジした最上級モデルになり、4WDと2WDが設定される。複雑なのは同じAUTECHでもノートは車高を上げたCROSSOVER(クロスオーバー)があるのに対し、ノート オーラ オーテックでは車高をそのままにしてノート オーラの上級モデルとしたことだ。

 試乗車はNMCのある湘南の海をイメージした深いブルーメタリックカラーの特別色で、この地から発信するクルマ作りへの思いを込めたとされる。

ボディサイズ4085×1735×1525mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mm、車両重量は2WDが1270kg、4WDが1380kg、最小回転半径は5.2m
価格は2WDが305万300円、4WDが333万1900円

 エクステリアではフロントグリルに海の煌めきをイメージしたドットパターンを配し、それをシルバーのフロントスポイラーで引き立て、アクセントとしてその両サイドに置かれたブルーのシグネチャーLEDが遠方からでもAUTECH仕様と分かる。

 AUTECH専用の17インチホイールは、従来の幾何学的デザインから放射状の輝きある造形で他のオーラと差別化が図られた。エクステリアも華やかに装っている。

オーテック車共通となるドットパターンの専用フロントグリル(ダークメタルグレーフィニッシャー)を採用。AUTECHエンブレムも備える
フロント、サイド、リアにかけて、低重心とワイドスタンスを印象づけつつ、スポーティさを演出するメタル調フィニッシュの専用パーツがあしらわれる。フロント両端にはブルーの専用シグネチャーLEDを装備。“海の中のサンライト”を表現した精巧な造形と抑揚のある形状が特徴的な17インチ専用アルミホイール(ダーク金属調塗装)を採用

 インテリアはブルーのステッチが室内を引き締める。レザーシートにはこのステッチとAUTECHマークが入り、ブルーをアクセントにした本革ステアリングホイール、ダッシュボードと同様のダークウッドのコンソールパネル、ブラックのレザードアトリムなどを使いエクステリアと合わせたAUTECHらしい高級感を出している。

 シートは表皮形状が変わったためか、着座面がこれまでよりも大きく感じる。微妙だがクッションストロークも増えた気がするのは形状の微妙な違いだ。ドライビングポジションはやや高めで、コンパクトなボディサイズ4085×1735×1525mm(全長×全幅×全高)もあって直前視界も開けている。特にアナログスイッチでもオンできるサイド、前方、後方を映し出すカメラは重宝する。アラウンドビューモニターをいち早く実用化したメーカーらしい。

統合型インターフェースディスプレイを採用
インテリアは全体を専用ブラックレザレット(ブルーステッチ付き)でコーディネート
後席もブルーステッチがあしわれている
専用のブラック本革巻ステアリング(ブルーステッチ)
助手席前やセンターコンソールはダークウッド調フィニッシャーの加飾が施される

 操作系は従来のノート オーラと変わらずステアリングスポークの右スイッチでプロパイロットの操作、左でディスプレイとオーディオの操作ができ、シンプルにできている。またセンターディスプレイの操作系もアナログスイッチから入れ、分かりやすく階層に入れる。個人的にはこのくらいの操作性が分かりやすくてありがたい。

 試乗車はFF。1.2リッターの60kWの発電用3気筒エンジンから100kW/300Nmのモーターに電力を供給する。重量は1270kg。リアに50kW/100Nmのモーターを持つ4WDよりも90kgほど軽い。

 トータル出力では4WDの駆動力が大きいがFFは重量が軽い分、軽快で発進加速もけっこう力強く、中間加速も高速の合流でも必要十分だと感じた。ステアリングの操舵力も軽く、その応答性も4WDより若干早く反応する。ドライ路面ではFFを軽快に感じる人も多いと思う。

ブルーステッチの専用ブラックレザーシートに「AUTECH」刺繍が入る
センターコンソールにもAUTECHエンブレムがあしらわれる
専用フロアカーペット(ブルー、消臭機能付き、AUTECHエンブレム付き)はディーラーオプション
専用ラゲッジカーペット(ブルー、消臭機能付き、AUTECH刺繍入り)もディーラーオプション

 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームでオーソドックスなレイアウトだが、乗り心地では4WDと比較すると上下ストロークが滑らかだ。初期型から感じる連続した荒れた路面でリアが多少バタバタする癖は変わらないが、こちらもマイルドになったように感じる。大きな凹凸は突き上げ感があるものの、Bセグメントとしては納得のゆく乗り心地になっている。

搭載する直列3気筒1.2リッターガソリンエンジンは最高出力60kW(82PS)/6000rpm、最大トルク103Nm/4800rpmを発生。フロントモーターは最高出力100kW(136PS)/3183-8500rpm、最大トルク300Nm/0-3183rpmを発生

 ハンドリングは前述のように軽いフットワークが身上で、コーナーでの前後のロールも適切でRの強い首都高速でも安定した姿勢でややアンダーステアを出しながら旋回する。安定感のあるコーナリングで、装着タイヤはブリヂストンのTURANZA T005A。サイズは他のオーラと同じ205/50R17を装着する。ややスポーティで剛性感のある特徴を持つ。

フットワークは軽く、コーナリングも安定感があった

 ドライブモードはECOとNORMAL、SPORTの3種類から選べる。NORMALは回生ブレーキを強く使わず、アクセルオフではガソリン車と同じレベルでガソリン車から乗り換えても馴染みやすい。一方ECOは回生ブレーキを積極的に使い減速Gが大きい。ワンペダルドライブはできないが、アクセルペダルだけのコントロールは慣れるとイージードライブができる。SPORTはアクセルレスポンスが高くなるが過剰ではなく、日常でもスポーティで使いやすい。好みでどれを選択してもそれなりに反応してくれる。

 ちなみに自分は回生ブレーキを積極的に使え、アクセルレスポンスが普段使いでも不便さを感じないECOが好みに合っていた。さらにアクセルオフで減速を使いたい時はBレンジに入れると強い回生ブレーキが使えて市街地や山道ならBレンジも有効利用できそうだ。

個人的には「ECO」モードが好みに合っていた

 ブレーキシステムはフロントがベンチレーテッド、リアがドラム式。どのグレードも共通で2WDも4WDでも変わりはない。ストップ&ゴーの多い市街地ではブレーキタッチも素直で使いやすい。またオートパーキングブレーキも備わり少し深く踏めば自動的パーキングブレーキがかかるのも便利。長い下りや高速からの制動を考えるとリアもディスクがほしいところだが安定性は良好だ。

 ノート オーラはパワーシートやオーディオ系を初めとした快適装備、そしてプロパイロットをはじめとした先進安全装備も充実しており、大きくなったCセグからのダウンサイジングの受け皿としても対応できるポジションを築いた。日産では今後も熟成を重ねながら進化していくと明言しており、日産の日本における基幹車種となっている。

ノート オーラ オーテックは、快適装備も安全装備もしっかり搭載し、高級感のある1台に仕上がっていた
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学