試乗記

新型「ノート オーラ NISMO」、NISMOらしいGT感満載の4WD仕様に初試乗!

「ノート オーラ NISMO」の4WD仕様に初試乗

リアモーターの出力は60kW/150Nm、トルクは50%アップ

 ベーシックの「ノート」に対して「ノート オーラ」は内外装に質感を持たせたモデルで、ノートとのすみ分けがはっきりしている。コンパクトでありながら広いキャビンも市場ニーズに合っており、全車e-POWERで販売は好調だ。

 そのノート オーラのビッグマイナーチェンジに伴って、「ノート オーラ NISMO」も従来のFFに加えて4WDが加わった。実はベースのノート オーラ 4WDは地味(?)だが後輪に大出力のモーターを持って高い運動性能を発揮する。今回のノート オーラ NISMOの4WDでは大きな変更が行なわれており、リアモーターの出力をさらに上げて“コンパクトGT”のような性格を持たせたのが魅力の1つだ。

 開発はNISMOとAUTECHを統括するNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)で行なわれ、空力などモータースポーツから得られる知見などは主としてNISMOから提供されている。

 エクステリアはノート オーラ NISMOオリジナルとなり、マイナーチェンジによってフロントマスクは精悍になった。さらに空力のノウハウの入ったディテールで空気の流れを整流している。たとえばリアエンドのサイドのエアスプリッタ-を延長することで整流効果が高くなり、モーター4WDならではのフラットな床面で後部ディフューザーと連携させたダウンフォースは高いという。

今回試乗したのはノート オーラ NISMO初の4WDグレード「NISMO tuned e-POWER 4WD」(347万3800円)。ボディサイズは4120×1735×1505mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mm
空力性能を最適化した新しいフロントグリルとリアバンパーは2WD/4WD共通。4WDでは専用のフードデカールが用意されるとともに、専用デザインのエンケイ製17インチアルミホイールを採用。タイヤはミシュラン「パイロットスポーツ4」(205/50ZR17)
4WD専用のフードデカール。さりげなく4本のラインが入り4WDであることを主張する

 モーター出力はフロントは100kW/300Nmで標準車と変わらないが、リアモーターは従来の50kW/100Nmから60kW/150Nmとなり、トルクは50%のアップとなった。この大きなリアトルクは60km/hまで続き、そこから徐々に標準車に近づいていくトルクカーブ設定になっている。つまり実用的なレスポンスが高い。

 標準車の4WDでも出力の大きなリアモーターは前後駆動力配分で安定性が高く、滑りやすいコースでは絶妙なハンドリングを見せてくれる。心配だったのはリアモーターの出力が大きくなった新ノート オーラ NISMOではコーナーで押し出しアンダー気味になるのではないかと思ったが、逆に高い旋回力をもたらしていた。

 タイトなコーナーではリアは駆動力を、フロントは旋回力と駆動力のバランスがよく、力強いトルク配分でグイグイと曲がっていく。2輪駆動とは違う力強いグリップが頼もしい。4WDが本領を発揮するのは高速域のクルージングよりも中速域のワインディングロードで、旋回力の高さを活かしたフットワークはノート オーラ NISMOの4WDならではのおもしろさだ。

ノート オーラ NISMOの発電用エンジンは直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」。フロントモーターはEM47型で、最高出力100kW(136PS)/3183-8500rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/0-3183rpmとなる。リアモーターはMM48型で最高出力60kW(82PS)/3820-10024rpm、最大トルク150Nm(15.3kgfm)/0-3820rpm

 そして乗り心地は想像以上に快適。サスペンションはバネ、ショックアブソーバー共にNISMO仕様で、バネレートは上がっているが、特にバンプラバーの変更で底付き感が圧倒的に小さくなっていることが大きい。

 オプションのレカロシートは抜群のホールド感の代わりにわずかにフロントからの微振動を伝えてくるが、目線のブレが少ない。標準シートはショック吸収がよく穏やかな乗り心地で高い旋回力を持つスポーツモデルとしては望外の快適さ。前モデルのノート オーラ NISMOとは一転して硬さを感じない乗り心地となっている。

ノート オーラ NISMOのインテリア
オプション設定の「NISMO専用チューニング RECAROスポーツシート」(44万円)はパワーリクライニング機能を新たに搭載
標準シートではパワーシートを標準装備(運転席)したほか、「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」をNissanConnectナビゲーションシステム、プロパイロットなどとセットで新たにオプションで用意。価格は42万1300円

 リアのショックアブソーバーはモノチューブとなりバンプラバーとの組み合わせで突き上げをうまくいなし、上下収束も素晴らしい。一方、フロントはストラットで型式は同じだが板厚が上がり曲げに強く、ハンドリング精度の向上に効果が大きい。

 ハンドリングに影響を与えているのはそれだけではなく、電動パワーステアリングもチューニングが進み操舵感が滑らかになった。これだけでも走りの質感が上がっている。操舵力は少し重めだがNISMO仕様にはちょうど良く、増し切りの際も十分に応えてくれる。

4WDは劇的な進化を遂げ、完成度は高い

 車高は標準仕様に対して20mm低い1505mm。足下はミシュラン「パイロットスポーツ4」でサイズは205/50ZR17 93W。このスポーツタイヤを鍛造並みに軽いエンケイの軽量ホイールに履く。ホイールは標準仕様から0.5インチ広い7Jで、FFのノート オーラ NISMOに対して台あたり重量は12%軽量化されている。ちなみにノート オーラ NISMO 4WDの車両重量は1390kgで2WDの1280kgから110kgほど重いが、前後重量配分が58:52と2WDの64:36から大きく改善している点もポイントだ。

 そして4WDシステムはブレーキ制御を使っていない。前後の駆動力配分をきめ細かくコントロールして想像以上のライントレース性を示している。これも驚きだ。厚木のテクニカルセンターにはさまざまなシーンを再現できるシミュレーターがあり、前後の駆動力配分をはじめ多くの要件を1000通り以上試したとされる。実車で行なうよりはるかに時間短縮できるが、検証する方は大変な労力だっただろう。

 たしかにノート オーラ NISMO 4WDはアップダウンのあるタイトなS字でも優れたハンドル応答性を持ち、加速ポイントも速い。クルマがドライバーの意思を先まわりするように反応するのは素晴らしい。タイヤグリップをうまく活かしたしなやかな走り味はとてもスマートだ。

 センターコンソールにあるドライブモードはシンプルでNORMAL、ECO、NISMOの3つがある。通常はNORMALかECOで十分だが、NISMOを選択するとグンと前に出るような感じになりレスポンスはシャープだ。

 e-POWERの象徴だった回生ブレーキを使ったワンペダルドライブはそれほど強力な減速感はない。それを求めるならECOが少し強くなる。さらにセレクターでBを選ぶと強力な回生ブレーキを使える。こちらはメリハリの効いた力強さがほしい時におすすめだ。ちなみにノート オーラ NISMOのECOは標準車のSPORTと同程度のレスポンスとなっている。NORMALでは回生力はさらに弱くなり、ICE車に近い感覚でドライブできる。

 今回は試すことはできなかったが、雪上の旋回テストではECOはアンダー気味に、NORMALはアンダーステアを抑制し、NISMOはリアモーターを積極的に使いアクセルで姿勢コントロールするというなかなか巧みなチューニングが行なわれている。早く乗ってみたいところだ。

 ノート オーラ NISMO 4WDは劇的な進化を遂げており、完成度は高い。コンパクトなサイズ、内外装の高い質感。そして何よりも乗り心地と走りの両立は素晴らしい。NISMOらしいGT感満載の4WDの価格は347万3800円(レカロシートはオプション)。ちょっと心惹かれるノート オーラ NISMO 4WDだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学