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日産の新型「ノート オーラ NISMO」について開発陣が概要説明 走りの進化点はどこにある?

2021年秋 発売

286万9900円

新型「ノート オーラ NISMO」

今秋に発売されるノート オーラ NISMO

 日産自動車は8月17日、新型「ノート オーラ NISMO」を今秋に発売すると発表した。

 6月に発表し、8月17日に販売をスタートした「ノート オーラ」は、「ノート」が持つ「洗練された上質な空間」「静かでゆとりのある走り」「上質さを極める次世代電動4WD」の3点をさらに昇華させたことが特徴で、新次元の電気の走りと上質さをまとったプレミアムコンパクトを目指したモデル。外観ではワイドボディの採用によってノートの全幅から40mmワイド化して1735mmとし、3ナンバーボディとなった。

 また、ノート オーラのe-POWERは現行ノート(116PS/280Nm)からモーターの出力が18%、トルクが7%アップし、最高出力100kW(136PS)、最大トルク300Nmと性能向上を果たした。その一方で、ルーフやフロント/リアドア、フロントのサイドウィンドウなどに遮音性を向上させるアイテムを投入し、静粛性を向上させて上質感を高めているのもポイントの1つになっている。

 そのノート オーラをベースにNISMOらしい新世代のデザイン、高揚感をもたらすハンドリング、俊敏なレスポンスと伸びのある加速などを目指したのがノート オーラ NISMO。NISMO専用に最適化した空力デザインを用い、ボディサイズはノート オーラから80mm長く、20mm低い4125×1735×1505mm(全長×全幅×全高)とした。

 パワートレーンはノート オーラと共通で、発電用エンジンは直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」、フロントモーターはEM47で、モーターの最高出力/最大トルクも同じく100kW/300Nmとなるが、専用セッティングによりアクセル中間開度域での加速感を演出しているのが新しい。

 また、サスペンションやEPS(電動パワーステアリング)に専用チューニングを施すとともに、リアバンパー付近に補強を行なうといった車体剛性の強化も行なわれており、NISMOモデルらしい走りができる車両に仕上げている。

 エクステリアではNISMO専用に最適化した空力デザインを採用するとともに、NISMOのアイコンであるレッドアクセントの「レイヤード・ダブルウイング」によって低重心でロー&ワイドなフォルムを実現。フロントオーバーハングやリアオーバーハングの延長、サスペンションのローダウン、リアスポイラー形状の最適化などを行なうことでダウンフォースを増大。フロントバンパーにはバンパーサイドにフロントサイドエアスプリッターとインレットダクトを設定し、空気流の剥離を抑え、スプリッター内に取り込む空気流、バンパー側面の空気流もスムーズに流れるよう整えた。リアバンパーは、コーナーにリアサイドエアスプリッターを設定し、バンパー後端のコーナー部を横および後方に張り出し、バンパー側面の空気流の剥離ポイントを制御する。

 また、今後のNISMOモデルで採用が進んでいく新フロント&リアフォグランプを装備しており、フロントでは従来から70°広角配光、15%光量アップの高性能薄型LED5灯レイアウトを採用するとともに、リアではフォーミュラEのマシンにインスパイアされたという点灯時のみ赤色に浮かび上がる7灯のドットパターンを用いた。

 そうしたノート オーラ NISMOについて、オーテックジャパン ニスモ・カーズ事業部 チーフ・ヴィークル・エンジニアの長谷川聡氏が概要を説明したので、その模様をお伝えする。

アクセル中間開度域での加速感を演出

株式会社オーテックジャパン ニスモ・カーズ事業部 チーフ・ヴィークル・エンジニアの長谷川聡氏

 NISMOが手掛けるロードカーは数多あるが、いずれも速く(力強い加速力、限界の高さ)、気持ち良く(加速の伸びの良さ、ハンドリングのレスポンス)、安心(コントロール性の良さ、スタビリティ)に焦点を置いて開発を進めているという。

 今回のノート オーラ NISMOでもこうしたポイントにスポットをあてながら各性能を磨き上げ、評価軸の1つであるサーキットのラップタイム向上を実現した。

NISMOロードカーの目指すクルマ作り

 先に述べたとおり、パワートレーンはノート オーラと共通で最高出力/最大トルクは変わらないものの、VCM(ビークルコントロールモジュール)の設定変更によりノート オーラよりも加速度が速く立ち上がり、加速力が落ちにくいセッティングになっているという。このことについて長谷川氏は「モーターだとすぐに最高出力が出てしまうのですが、これをなるべく持続させるようにチューニングを施しています。e-POWERだとエンジンとモーターのコンビネーションでそれができ、エンジンをなるべく元気よくまわすことで音も加速感として演出しています」とコメント。

 今回のノート オーラ NISMOでは「カタログ数値に表れない感性領域に踏み込んだ加速性能」のセッティングに苦労を重ねたといい、「感覚的に速く走るパターンとはどういうことかというのを、ドライビングシミュレーターを使いながらドライバーと色々な加速のパターンの中から決めました。1000パターンほど実験したのですが、その中でやはり加速感がいいパターンというのがあり、それを今回クルマに転写して製品化しています」と解説している。ドライビングシミュレーターを用いた開発には日産のテストドライバーである神山幸雄氏が携わっており、実車テストも神山氏が担当して仕上げを行なっているという。

ドライビングシミュレーターを用いた開発には日産のテストドライバーである神山幸雄氏が携わった

 また、ノート オーラ NISMOではドライブモードとして力強く伸びのある加速感が楽しめる「NISMO」、日常使いも軽快に走れる「ECO」、力強さと扱いやすさを両立した「ノーマル」の3モードを用意しているが、長谷川氏によるとノート オーラの「スポーツ」モードと同等のセッティングなのがECOモードとなっており、「ノーマルモードはどちらかと言うと回生力を弱めてガソリン車と同じような感覚で走れる伸びのあるモード。一番特徴的なNISMOモードはこのユニットでマックスの加速力が出せるモードで、減速力をノーマルモードよりも若干強めてコーナー時に減速しながら入っていける設定にしています。ワインディングなどは一番楽しく走れると思いますし、首都高のようなコーナーがたくさんあるようなところでもアクセルワークで楽しく走れると思います」と、それぞれのモードの特徴について語った。

ドライブモードについて

 一方、シャシー特性を見直してハンドリングのレスポンスも向上させており、長谷川氏は「位相遅れなくシャープなステアリングを実現しました。e-POWERなので、モーターとの組み合わせなどでガソリン車よりも圧倒的にレスポンスがよくなっています」とコメント。NISMOとして一番こだわっているという安心(コントロール性の良さ、スタビリティ)については、バネ上の動きを小さくし、操舵インフォメーションを正確にしてコントロール性を向上させるとともに、NISMOモデルでは空力的にダウンフォースを作り出していて、高速走行時におけるリアタイヤの接地性を高め、これによってスタビリティを向上させているという。

 具体的なシャシー性能の改善ポイントは多岐にわたり、まずフロントまわりではスプリングレートをベース車から36%アップ(22N/mmから30N/mm)するとともに専用形状のバンプラバーを採用し、ショックアブソーバーではサスペンションの剛性を高めるために外筒の板厚アップ(t2.3からt2.6)が行なわれた。加えてEPSのアシストマップも専用設定となっている。リアまわりではスプリングレートを25%アップ(32N/mmから40N/mm)し、さらにショックアブソーバーをモノチューブ化したのもポイント。また、ホイールはワイドリム化(6.5Jから7J)され、タイヤはミシュラン「パイロットスポーツ 4」をチョイスした。

 リアショックアブソーバーのモノチューブ化について、長谷川氏は「目的は素早く減衰力を得たいこと。ショックアブソーバーはツインチューブとモノチューブがありますが、多くの自動車はツインチューブを使います。理由は色々ですが、レイアウト的に小さいスペースに入ること、小さい振動でも減衰力が得られるといったメリットが挙げられます。われわれはリアの減衰を早く立ち上げたい、リアの振動を早く収束させたいので今回モノチューブを使っています」と説明を行なった。

シャシー性能の改善ポイント
モノチューブ式ショックアブソーバーは日本向けのNISMOモデルとして初採用

 また、今回オプション設定されたレカロシート(39万6000円)は基準車のシートに対して安全性能を損なうことなくサポート性能を強化し、加えて先代ノートで用意されたレカロシートに対してバック形状を改良し、肩甲骨を面で支える構造とした。これによりロール方向、ヨー方向の体の動きを抑えてクルマとの一体感(リニアリティ)を高め、的確なステアリング操作を可能にしたという。

レカロシートについて

ノート オーラ NISMO主要諸元

モデルノート オーラ NISMO
駆動方式2WD(FF)
ボディサイズ4,125×1,735×1,505mm(全長×全幅×全高)
室内寸法2,030×1,445×1,240mm(室内長×室内幅×室内高)
ホイールベース2,580mm
トレッド(前後)1,510/1,510mm
最低地上高115mm
車両重量1,270kg
最小回転半径5.2m
WLTCモード燃費23.3km/L
発電用エンジン直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」
エンジン最高出力60kW(82PS)/6,000rpm
エンジン最大トルク103Nm(10.5kgfm)/4,800rpm
タンク容量36L
フロントモーターEM47
モーター最高出力100kW(136PS)/3,183-8,500rpm
モーター最大トルク300Nm(30.6kgfm)/0-3,183rpm
タイヤ(前後)205/50ZR17 93W XL