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日産の新型「ノート」(3代目)について、チーフビークルエンジニアの渡邊明規雄氏が解説
世界初「路面状態に応じた発電制御」技術を採用した第2世代e-POWER
2020年11月24日 12:00
- 2020年11月24日 発表
- 202万9500円~218万6800円(2WD)
日産自動車は11月24日、3代目となる新型「ノート」を発表した。2WD(FF)モデルを12月23日に、4WDモデルを2021年2月にそれぞれ発売する予定で、2WDモデルの価格は202万9500円~218万6800円。
初代ノートは、2005年1月に「これまでのコンパクトカーになかった爽快な走りと、使いやすい装備で自在に楽しめるコンパクトカー」をコンセプトに発売。続く2代目は2012年9月に登場し、2016年11月には新しい電動パワートレーンとして「e-POWER」を搭載して発売した。
そして今回発表された3代目となる新型ノートでは、「コンパクトカーの常識を超える運転の快適さと楽しさが詰まった先進コンパクトカー」をコンセプトに掲げ、車体骨格に日産初の1470MPa級の超ハイテン材を使用したプラットフォームを採用すると共に、システムを大幅に刷新しパワーアップした第2世代の「e-POWER」を初搭載。第2世代のe-POWERは、パワートレーンのハードウェアとその制御を刷新し、より力強く上質な走りと効率化を高い次元で両立させたという。さらに加速やなめらかな減速の制御、電動パワートレーンならではの静粛性といった性能をブラッシュアップしてきた。
この新型ノートについて、日産自動車 第1製品開発部 チーフビークルエンジニアの渡邊明規雄氏がオンラインで概要説明を行なったので、その模様をレポートする。
よりEVに近い力強く上質な走りを実現
新型ノートでのポイントは大きく3点。まずプラットフォームを新設計して次世代の上級小型車向けプラットフォームを採用しており、この新プラットフォームではボディの高強度・高剛性化、サスペンションおよびステアリングの高性能・高剛性化、さらに静粛性の向上が図られ、これらが走りの進化に大きく貢献するという。
この新プラットフォームの採用に伴い、新型ノートのボディサイズは4045×1695×1505mm(全長×全幅×全高。Xのみ全高は1520mm)、ホイールベースは2580mmと、主に全長を55mm短くすることでコンパクトでスタイリッシュなボディに仕上げられたのが2点目。
そしてモーター、インバーター、エンジン、ジェネレーター、バッテリーに至る主要なコンポーネント、それをつかさどる制御技術などを見直し、よりEVに近い力強く上質な走りを実現した第2世代のe-POWERを採用したことが3点目として挙げられる。
そして新型ノートでは「ドライブに感動をもたらす第2世代e-POWERと新プラットフォーム」「使いやすさを極めた上質なインテリア」「楽しいドライブをサポートする先進装備」「抜群の安定性と力強さを兼ね備えた本格e-POWER四駆」の4点の価値を目指して開発が進められたという。
まず第2世代のe-POWERについて、渡邊氏は「現行ノートに対してさらにレスポンスを早く、さらに力強くなめらかになりました。これは出力・トルクの向上によるとことが大きく、最大トルクを約10%(254Nmから280Nm)、最高出力を約6%(80kWから85kW)向上することで素晴らしい加速性能を実現しています。また、なめらかさについては開発陣が非常にこだわったポイントで、単純に力強いだけでは扱いやすさには簡単にはつながらないため、力強さとともに滑らかさを磨き上げることで、単に力強いだけでなく非常に扱いやすくて上質というところを目指しました」といい、例えば市街地走行時にアクセルを急にOFFにしてもなめらかに減速させることでドライバーに不快感を与えないこと、高速走行時には第1世代のe-POWERよりもアクセルOFF時の減速を緩やかにさせたことを紹介する。
さらに駐車時・停車時には新たにクリープ走行を可能にし、スムーズに速度コントロールを行なえるようにしたことを紹介するとともに、全車に電動パーキングブレーキを装備したことで、停止時に一定の時間ブレーキを踏み続ければ停止を保持してくれるオートブレーキホールド機能を採用したことを報告。
また、静粛性については「現行ノートも優れた静粛性を持っていましたが、新型ノートはさらにその静けさに磨きをかけ、エンジンの作動頻度を低減させるとともに、エンジンの作動音を下げる、そして車体の遮音性能を向上させることで1クラス上の静かさを実現しています」と語る。
まずエンジンの作動頻度の低減については、世界初となる「路面状態に応じた発電制御」技術を用いており、これについて渡邊氏は「やはりきれいな道を走っているときにエンジンが作動するとどうしてもエンジン音が気になる。なのできれいな路面では極力エンジンをかけないように今回制御しています。そのためにホイールの回転変動のセンシングを行ない、そのセンシングの結果から『ここは路面がきれい』と判断したときはエンジンOFF。逆に路面からの音でエンジン音が隠れるときは積極的にエンジンをかけて充電するという技術を開発しました。また、充電量に応じた発電制御(キックスから導入済み)も行なっています。従来のe-POWERだと、極力バッテリー残量を減らさないよう頻繁にエンジンをかけて発電する傾向にありましたが、現行ノートの走行データや環境データといった大量のデータを分析し、最低限発電が必要な条件を絞り出し、本当に必要なときだけエンジンをかけるという新しい制御を取り込んでいます」と説明。
また、新プラットフォーム採用によってステアリング剛性を90%増、ボディ剛性を30%増、サスペンション剛性を10%増としたことでコーナーの多いワンディングでもクルマが思い通りに動くことを紹介したほか、「こうしたコーナリングだけではなく、取りまわしのよさにもこだわって開発を行ない、新型ノートではステアリングのクイック化もしくはハンドル操作力の低減も相まって非常に優れたハンドルの操作性を実現しています。それに加え、最小回転半径はトップクラスの4.9mとし、(15インチ仕様とともに)16インチの大径タイヤでも4.9mを実現できているのは新型ノートだけ」という。
一方、インテリアでは外に向かって広がるようなインストルメントパネルにセンターディスプレイと一体化したメーターを装備し、電動化に相応しい先進感と使い易さを兼ね備えた、日産の新たなインテリアデザインの思想を体現。小型の電制シフトレバーが乗るブリッジ型のセンターコンソールには、大型の収納スペースやロングリーチのアームレストを装備している。
渡邊氏は「一番の特徴はメーターとナビゲーションが一体となった統合型ディスプレイで、コンパクトで使いやすい電制シフトも装備しました。メーターは7インチディスプレイと5インチのセグメントディスプレイを組み合わせ、単純に液晶を使っているということだけではなく、非常に見やすく扱いやすくなり、現行のメーターから大きく進化を遂げています。加えて、今回は見た目にも一体になったナビとメーターが機能的にも連携しており、目の前の交差点については7インチディスプレイでも表示でき、これによって運転していても目線の移動が少なくすみます」とその進化について解説した。
また、後席の居住性については全長を短縮してもクラストップのヘッドルーム、ニールームを維持したこと、4度のリクライニング機能を設けたことで長距離移動が楽に行なえるとのこと。
先進装備については、国内で販売される日産車で初となるナビリンク機能付き「プロパイロット」を採用。これは高速道路での同一車線走行時の運転操作をサポートするプロパイロットに、ナビゲーションシステムとの連携機能を加えることで、制限速度の変化に伴う設定速度の切り替えや、カーブの大きさに応じた減速をシステムが支援し、ドライバーの操作頻度を軽減して快適なドライブを実現するというもの。さらに高速道路上では、停止後約30秒まで追従走行を継続(現状は3秒)することができるようになったのもトピックの1つになっている。
2021年2月に発売予定の新しいe-POWER 4WDについて、渡邊氏は「これまでのe-POWER 4WDとは全くの別物で、現行ノートでは3.5kWというコンパクトなモーターを後輪に搭載しており、前輪が滑るようなシーンでその発進をアシストしていました。日常で遭遇するシーンではかなり効果を発揮していましたが、今回はそのモーターを50kWという大型のものに差し替え、今まで弱かった高出力が必要な部分、例えば雪道でいうと深い雪とか長い上り坂、それからある程度車速が高い領域での追い越し加速、そういうところで非常に大きな性能の進化を発揮するとともに、今回の50kWという大きなモーターを使ってウェットでもドライでも後輪がしっかりと駆動力を発揮し、安心したコーナリングを感じていただけるレベルに到達しています」とアピールした。