試乗インプレッション

日産「リーフ」は0.2G、「ノート e-POWER」は0.15Gの減速度。雪道でのワンペダル走行のよさを体感

 あらゆる日産車を雪上で試し、その走りの違いを体感するというイベントが北海道のモータースポーツパーク札幌を舞台に開催された。試乗車にラインアップされているクルマは「ノート e-POWER」に始まり、「リーフ」「セレナ e-POWER」などワンペダル走行が可能なものから、己のドライブでねじ伏せる必要がありそうな「フェアレディZ」や「GT-R」までと幅広い。そこには一体どんな走りの違いがあるのか? 早速試してみることにしよう。

 まず乗り込んだのはセレナ e-POWER。エンジンを搭載してはいるが、基本的にはモーターで走行する1台だ。これで一般道を走り出す。吹雪という悪条件で心配が残るところではあるが、恐る恐る動き出す。すると、エコモードでアクセルを踏み始めればフロントタイヤは空転することもなくスルリと動き出す。モータートルクが瞬間的に立ち上がることもなく扱いやすさがあるほか、アクセルペダルをOFFにすれば即座に減速Gが立ち上がってくれるところが扱いやすい。途中、吹雪がひどくなって視界がゼロになるようなシーンもあったが、危険を察知した瞬間に即座にスピードが落ちてくれることもあって、それほど怖さはなかったことが印象的だ。ワンペダル走行はなかなかありがたいものなのかもしれない。

試乗会が行なわれた北海道で限定販売されている「リボンナポリン」を手にゴキゲンな筆者
「セレナ e-POWER」の試乗時はひどい吹雪で視界がゼロになるようなシーンもあったが、危険を察知した瞬間にアクセルOFFにすると即座にスピードが落ち、それほど怖さはなかった

 その後、クローズドコースにおいて、同様のシステムを搭載するノート e-POWERを試す。今度のクルマはe-4WDを搭載するモデルだ。これは30km/hまでは後輪に駆動を与えられるもので、おかげで坂道発進ではアクセルコントロールに気を遣うことなくスルリと駆け抜けることを可能にしてくれることを確認できた。はじめはそんな低速だけの4駆では力不足かとも思っていたのだが、発進時のアシストがシッカリとするだけで走りやすさはかなり高くなることが理解できた。試しにスイッチを切り替えてFF状態で同じ坂道を上ってみたが、発進の瞬間にちょっとラフにアクセルを入れるだけで横滑りをしてしまい、操りやすさが半減することが分かる。e-4WDの恩恵はかなりのものだ。

「ノート e-POWER」の試乗車は、2018年7月に追加されたモーターアシスト方式の4WD車。発進から30km/hまでの走行でモーターが後輪に駆動力を与える

 続いて乗ったのは「ノート e-POWER NISMO S」。足まわりもハードになるし、出力もアップするだけに、雪道ではどうかとも思ったが、こちらは発進だけを慎重にこなせば、その後は一体感溢れる走りを展開してくれる。シャシーが引き締められたおかげもあり、クルマが操作に対して機敏に反応し、狙ったラインに乗せやすく、爽快な走りを展開する。スポーティさは雪の上であっても変わらず。これならちょっと派手に走ることも可能だ。

操作に対して機敏に反応し、雪の上であっても爽快な走りを展開する「ノート e-POWER NISMO S」

アクセルOFF時に4輪のブレーキが作動し、安定してしっかり減速できる「リーフ」

試乗車は2018年7月に発売された「リーフ NISMO」

 そしてワンペダル走行を可能にする究極のクルマと言っていいのがリーフだった。ノートより重量があり、低μ路ではネガが出てくるかと思いきや、低重心な感覚は相変わらずで、安定しながらクローズドコースをこなしていく。モーター出力の発生の仕方も穏やかで、FFであってもきちんと路面を捉えながら駆動を重ねていく。リーフは10000分の1秒単位でトルク制御をしているというが、その恩恵があるからこそ扱いやすさが出てくるのだろう。

 さらに、アクセルOFFにした時はエネルギー回生で減速Gを出すだけではなく、4輪のブレーキも作動しながら安定した姿勢で減速していくところが特徴的だと感じた。ピッチングの発生を最小限に抑えながら、グッと車速を落とすその制御はなかなか。ちなみに減速Gは最大で0.2Gまで出すことが可能。ブレーキの介入まで入らないノート e-POWERは0.15Gである。スロットルをOFFにすれば即座に減速できることは、この数値だけでもご理解いただけるだろう。おかげで安心感はさらに高く走りやすかった。

アクセルOFFで駆動輪である前輪に回生ブレーキが働くだけでなく、4輪のブレーキも作動させ、安定した制動力を効かせる
試乗車は「フェアレディZ NISMO」

 最後はフェアレディZとGT-Rである。ZはFRではあるが、スタビリティコントロールの「VDC」を介入させておけばリアが破綻することもなく静かに走ってくれる。アクセルをきっかけに若干クルマの姿勢を作ることも可能ということもあって、その状況であっても手足のように操れる。もちろんそれは駆動トルクが抜けやすく、車速がそれほど高くなっていないからとも言えるのだが、危険な状況に陥ることなく安定して走れることは、VDCのおかげだろう。

 それはVDCを解除してみれば一目瞭然。ちょっとでもラフにスロットルを入れれば、即座にリアが発散してしまうのだから……。だが、その動きを理解して丁寧に操作していけば、クルマは思いのまま。ドリフトアングルをどうにでもコントロールすることもできる。3.7リッターエンジンのトルクも慣れてしまえば支配下に置くことは可能。滑り出しもグリップの回復も理解しやすいことから、病みつきになりそうなほど面白い! やっぱりFRスポーツのZにはたまらない楽しさがあった。

動きを理解するとドリフトアングルのコントロールも思いのまま。病みつきになりそうなほど面白い!

 トランスアクスルレイアウトながらも4WDという特殊なレイアウトを持つGT-Rは、走り出しからコーナーリングまでバランスよくトラクションが得られる感覚があり、みるみるうちにとんでもない車速まで連れて行かれる。けれども、そこからの減速でも安定して止まり、コーナー進入ではノーズをスッとインに向けてくれる。もちろん、オーバースピードで飛び込めばフロントの重量がかなりのものだからそれを受けることはできなくなるが、スピードコントロールさえシッカリしてあげれば手の内に収めやすい。対してコーナー脱出方向ではスロットルを入れれば、まるでFRのようにアクセルコントロールがそのまま姿勢として表れる。ドリフトでもグリップでもお手のもの。そこに先述したトラクションが備わるのだから走りはかなり爽快だ。

シッカリ減速してスピードコントロールすれば、コーナー進入でノーズをスッとインに向けてくれる

 このように、日産自動車のあらゆるクルマに乗って雪道という極限を走ると、いずれもアクセルの動きに対して忠実に車両の動きがリンクするクルマ造りをしていることが伝わってくる。ドライバーの頭脳が決定した右足の意思を、即座にクルマの動きに展開してくれる。それが日産のクルマといっていい。だからこそ、どれも走りに一体感があり、安心して走りが楽しめる。極限に訪れると、そんなことがヒシヒシと伝わってくるのだった。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。