試乗インプレッション

雪道で分かったフォルクスワーゲン「パサート オールトラック」「ゴルフ R」の4WDシステム「4MOTION」の個性

一般道の圧雪路面&アスファルトと凍結路の混合路面で確認

「ティグアン TDI 4MOTION」に続いて、フォルクスワーゲンの誇る4輪駆動システム「4MOTION」モデルに試乗した。ただし、前回のクローズドコースとは違って斑尾高原(長野県)周辺の一般公道を走らせた。取材日は前夜の降雪の影響で、朝一に標高の高いところまで足を伸ばすと除雪がままならない圧雪路面に遭遇したり、標高の低い市街地ではアスファルト路に凍結路が織り混ざったスプリットμ路面(例:車両の左/右輪で摩擦係数の異なる路面)が顔を出したりするなど、降雪地帯における実際の道路環境で試乗を行なうことができた。

 4MOTIONのメカニズム解説や前/後輪の駆動力配分などの概要は前回紹介した通り。世の中にはさまざまな特性を持つ4輪駆動システムがあるが、フォルクスワーゲンのそれは確実な駆動力配分に裏打ちされた安定した走破性能が魅力。それだけでなくドライビングプロファイル機能のモードを積極的に切り替えることによって、しっかりとした後輪への駆動力配分が早期に得られ(例:「オフロードモード」)ダイナミックな走りも楽しめる。今回、公道で試乗したのは「パサート オールトラック」と「ゴルフ R」の2台。共に最新世代の4MOTIONである第5世代のハルデックスカップリング方式を採用している。

 まずはパサート オールトラックから公道に出た。搭載エンジンはティグアン TDIと同じ直列4気筒2.0リッターのディーゼルエンジンだが、車両のキャラクターに応じてスペックには違いが付けられている。ティグアン TDIが最高出力150PS/3500-4000rpm、最大トルク34.7kgfm/1750-3000rpmであるのに対して、パサート オールトラックは最高出力190PS/3500-4000rpm、最大トルク40.8kgfm/1900-3300rpmと、よりパワフルでトルクフルな特性だ。

試乗した「パサート オールトラック TDI 4MOTION Advance」(アトランティックブルーメタリック)のボディサイズは4780×1855×1535mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2790mm。フルタイム4WDシステムの「4MOTION」を採用
最高出力140kW(190PS)/3500-4000rpm、最大トルク400Nm(40.8kgfm)/1900-3300rpmを発生する直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ディーゼルターボエンジンを搭載し、デュアルクラッチトランスミッションの6速DSGを組み合わせる。JC08モード燃費は17.3km/L
18インチアルミホイールには245/45 R18サイズのミシュラン製「X-ICE3+」を装着
パサート オールトラック TDI 4MOTION Advanceのインテリア。純正インフォテインメントシステム“Discover Pro”やデジタルメータークラスター“Active Info Display”などを標準装備。シート表皮はナパレザーとなる

 このパサート オールトラックでは2018年末にオンロードでのロードインプレッションをお届けしている(関連記事:ディーゼルエンジン搭載車に待望の4WDモデル登場。フォルクスワーゲン「パサート オールトラック」をテストドライブ)が、そこでは非常に滑らかな乗り味に感心した半面、アクセルペダルの操作量に対して体感加速がワンテンポ遅れて発生する特性に疑問符を付けた。もっとも、こうした“加速の遅れ現象”は各国各社が誇る最新の排出ガス規制をクリアするディーゼルエンジン搭載車に共通する課題(ゆえにディーゼル+電動アシスト≑電動化は乗用車/商用車に共通する解決策の1つ)ではあるものの、フォルクスワーゲンに限って見ればティグアン TDIが7速であるのに対してパサート オールトラックが6速のDSG(デュアルクラッチトランスミッション)であることも要因ではないかと筆者は推察していたのだ。

 しかし、筆者の推察は早計だったようだ。降雪地帯における今回の雪上試乗を通じて、パサート オールトラックがどこに走行性能の軸足を置いているのかハッキリと見えた。そして以前、“加速の遅れ現象”と表現した特性は、路面の摩擦係数が全般的に低く、特に滑りやすい凍結路面なども走行することになる降雪地域では、逆に美点として光ることが分かったからに他ならない。

圧雪路面やウェットのアスファルトと凍結路面が織り混ざったシチュエーションなど、多様な状況で走行性能を試すことができた

 具体的なシーンで解説したい。雪道における発進時やカーブの出口付近ではアクセルペダルをじんわり踏み込んでいくことがとくに求められるシーンだが、パサート オールトラックの加速特性をもってすれば右足に特別な気を遣わずに、普段通りのアクセルワークで事足りる。また、ここで得られた心のゆとりは正確なステアリング操作に向けられるわけで、結果として車両挙動安定装置であるESCなどの電子デバイスの介入度合いを減らしながら、常に安全な走行環境へと導かれる。今さらながら“オールトラック”という車名の由来に納得した。

最新スペックの「ゴルフ R」は雪道でどう走る?

 続いての雪上試乗はゴルフ Rだ。直列4気筒直噴2.0リッターターボエンジンは7速DSGとの組み合わせで310PS/5500-6500rpm、最大トルク40.8kgfm/2000-5400rpmを発揮する。2015年、このゴルフ Rをベースにしたステーションワゴン「ゴルフ R ヴァリアント」(280PS/38.7kgfm)に試乗した時(関連記事:フォルクスワーゲン「ゴルフ R ヴァリアント」)から制御系統に変更を受け、当時から10%以上の出力向上と5%以上のトルク向上が図られた。そんな最新スペックのゴルフ Rと雪道の相性はどうかといえば、これまた大方の予想を覆すかのごとくすこぶるよくて、さらに安定した走りが楽しめた。

続いて「ゴルフ R」に試乗。ボディカラーはラピスブルーメタリック。ボディサイズは4275×1800×1465mmで、ホイールベースは2635mm。パサート オールトラックと同様に4MOTIONシステムを採用
パワートレーンは最高出力228kW(310PS)/5500-6500rpm、最大トルク400Nm(40.8kgfm)/2000-5400rpmを発生する直列4気筒DOHC 直噴ターボエンジンに、7速DSGの組み合わせ。JC08モード燃費は13.0km/L

 確かにサスペンションのバネレートは高く、ダンパーの減衰力もベースの「ゴルフ」から相当引き締められている。しかし、雪道のカーブを走らせている際にまったく車体がロールしなくて路面状況が掴みづらいかと言えばそうではなく、ブレーキ操作との連携によって右に左にとしっかりとした荷重移動が行なえる。よって、狙った走行ラインを保ちやすい。さらに4MOTIONであることも手伝い、滑りやすい雪道であっても身体とボディの一体感は舗装路におけるそれとほぼ同じレベルで維持できる。この走り、クルマに包まれているかのような安心感とでも表現するのが妥当か……。こうしたドライバーが抱く心のゆとりはパサート オールトラックでも体感したが、フォルクスワーゲン 4MOTIONシリーズに通ずる特徴だ。

雪道であってもクルマに包まれているかのような安心を感じられる

 余談だが、かつて筆者にはスバル「インプレッサ S203」を愛車としていた時期があった。冬場はスタッドレスタイヤを装着し雪道を求めて走ったが、その際にもゴルフ Rと同じように“クルマに包まれるような安心感”を抱いていたのだ。もっともゴルフ RとS203では安心の度合いに大きな開きがある。S203のASV(先進安全自動車/国土交通省)に準じた先進安全技術といえばABSやHIDヘッドライトしかなかったが、単にガチガチのサスペンション特性にするのではなく、適度な“いなし”を与えることで、摩擦係数の低い路面であっても安心して運転操作に集中させるという開発スタンスには相通ずるものがあったのだ。

 ティグアン TDIによるクローズドコース試乗、そしてパサート オールトラックとゴルフ Rの2台による雪上公道試乗だが、車種が変わっても、パワートレーンが違えどもフォルクスワーゲンの4MOTIONシリーズは徹底した安定志向であることが存分に理解できた。その上で、車種ごとの特性変化があることも体感。ティグアン TDIではスノーモードによるより確実なトラクション性能とコーナリング性能を、パサート オールトラックでは路面を選ばないオールマイティなキャラクターを、そしてゴルフ Rではオンロードでの躍動感を雪道なりに表現する懐の深さを、それぞれ学ぶことができた。

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。著書に「2020年、人工知能は車を運転するのか 〜自動運転の現在・過去・未来〜」(インプレス)などがある。

Photo:高橋 学