試乗レポート

日産の新型「ノート オーラ」に速攻試乗 2WDと4WD、どちらが魅力的?

メダリストの実質的な後継モデルは“そこまでやるか!?”のスペシャル版

 販売好調の「ノート」のカタログモデルに、かつての「メダリスト」の実質的な後継といえるスペシャル版が加わった。その名も「ノート オーラ」と、なかなか直球だ。コンセプトは「新次元の電気の走りと上質さをまとった、プレミアムコンパクト」で、そのためにこだわったのが「感性品質」「美・機能」「先進感」という。

 まず内外装が予想よりもベース車から大きく差別化が図られていて驚いた。3ナンバーのワイドボディとなり見た目の雰囲気がかなり変わっているのは見てのとおりだが、なんとバンパーだけでなく、前後のフェンダーとリアドアまで新たに起こしたというからただごとではない。つまりルーフとフロントドア以外のボディパネルが専用だ。求めた世界観を表現するためとはいえ、そこまでやるかと思わずにいられない。

 LEDを駆使したランプ類のデザインも印象深い。ベース車の1インチ増しとなる17インチホイールは高いデザイン性と性能を兼ね備えたもので、タイヤ銘柄もエコピアからトランザに変更されている。こうして差別化が図られたルックスは、明らかに放つ“オーラ”がベース車と異質だ。

今秋に発売する新型「ノート オーラ」。撮影車はガーネットレッド/スーパーブラックの2トーンを採用する2WDの「G leather edition」(269万9400円)。リアフェンダーにボリュームのあるワイドボディを用いているのが特徴の1つとなっており、ボディサイズは4045×1735×1525mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2580mm。外観では専用のフロントグリルや切削加工の上に樹脂パーツで加飾を施した17インチアルミホイール(タイヤはブリヂストン「トランザ」でサイズは205/50R17)などを採用
ノート オーラが搭載する直列3気筒DOHC 1.2リッター「HR12DE」型エンジンは最高出力60kW(82PS)/6000rpm、最大トルク103Nm(10.5kgfm)/4800rpmを発生。これに組み合わせる「EM47」型フロントモーターは現行ノートから出力が18%、トルクが7%アップし、最高出力100kW(136PS)/3183-8500rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/0-3183rpmを発生。WLTCモード燃費は2WD車が27.2km/L、4WD車が22.7km/Lとなっている

 インテリアもディスプレイの表示をはじめ、加飾やシートが専用に仕立てられているほか、BOSEとのコラボによるプレミアムサウンドシステムがオプションで用意されているのもノート オーラならでは。スラブウレタンを採用したシートの着座感も上々。これによりロングドライブでの疲労も軽くて済みそうな印象を受けた。ヘッドレストスピーカーを備えたBOSEの臨場感あるサウンドも、このクラスでは未知なるものだ。

G leather editionのインテリア。ツイード表皮と木目調パネルをインパネに採用するとともに、クラス初採用の12.3インチフルTFTメーターなどを装備。また、ルーフやフロント/リアドア、フロントのサイドウィンドウなどに遮音性を向上させるアイテムを投入するなど静粛性も高められている
BOSEと共同開発した「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」(8スピーカー〈フロント、前席デュアルヘッドレスト、ツイーター〉)は、プロパイロットやSOSコールなどとセットで用意(オプション価格は40万1500円)

 走りに関してもプレミアム感を高めるべく、15kWと20Nmものe-POWERの出力およびトルク向上が図られているほか、静粛性向上のための手当てが施されている。その価値を確かめるため、横須賀の追浜にあるグランドライブで試乗した。

これぞe-POWERの真骨頂!

 2WDと4WDの両方を同じ条件で乗り比べることができて、ベース車と同じように小さくない違いを感じたわけだが、いずれもドライブした第一印象はなかなか速い。そして静かだ。パワートレーンの透過音やウィンドウまわりから入ってくる外界の音が抑えられていて、上質に仕立てられたインテリアの雰囲気にもふさわしい乗り味とされているあたりも、あえてノート オーラを選ぼうかという層の期待に応えている。

 思えば第2世代のe-POWERを搭載したノートは、より洗練度が深まり乗りやすくなったことには違いないものの、第1世代の粗削りな中に感じられた力強さがややなりをひそめ、インパクトとしては薄れた感もあった。それがオーラでは、リニアで洗練されている上に力強さも兼ね備えた印象だ。特にSPORTモードの瞬発力ある走りが気持ちよい。これぞe-POWERの真骨頂だ。

2WDの試乗車はG leather edition(ピュアホワイトパール/スーパーブラック)

 開発関係者によると、ベース車では燃費にも配慮しつつ加速力とのバランスの落としどころを探ったところ、ノート オーラでは同システムの本来の力をほぼ出し切ったという。燃費としては多少下がっても、いざとなればこれぐらい加速できる能力を持っていると思えるのは頼もしい。

 2WDと4WDではドライブモードの設定がやや差別化されていて、4WDではECOモードとSPORTモードで加速力により大きな差がつけられていたり、Bレンジでの減速力が2WDでは最大0.18Gのところ、4WDは後輪の回生を活かして最大0.2Gとなっていたりする。

 実際にドライブしても、2WDと4WDの車両重量の差と上記の設定の違いはそのまま表れていた。参考までに、SPORTモード同士では感触としては微妙に2WDのほうが速い気がしたのだが、加速力を強めた4WDと軽量な2WDのどちらが速いのかが気になり開発関係者に聞いたところ、0-100km/h加速のようなケースでは軽さで有利な2WDのほうが速いものの、中間加速では速度域によって状況が変わることもあるそうだ。

あらためて好印象のe-POWER 4WD

4WDの試乗車はG FOUR leather edition(ミッドナイトブラック)

 足まわりについて、サスペンション自体に変更はなく、ベース車もまずまずの仕上がりながら、欲をいえばステアリングの中立付近の甘さと切り込んだ際に初期ロールがやや起こりやすく感じていたので、もしノートで何かやるとしたらサスペンションに手を入れたいと思っていた。しかし、ノート オーラではベース車からホイールとタイヤのサイズ、銘柄が変わっており、それが思ったよりも効いていて、ベース車と同様の傾向は見受けられるものの、だいぶ気にならなくなっていた。

 ベース車と同じく多くの面で4WDが優れていると感じたのは、グランドライブの限られたコースを設定された車速で走ってもやはり変わらず。乗り心地もフラットライド感も違えば、微舵領域の応答性やロールの仕方も違う。

 既出記事でも述べているのでぜひ読み返していただきたいが、こうして同じ条件下で乗り比べると違いがよく分かる。スラロームやコース上の切り返すコーナーでは差が顕著に表れ、4WDはフロントが逃げずリアもベタッと接地している感覚があり、圧倒的にライントレース性が高いことが分かる。フロントのみでは難しい姿勢のコントロールを、駆動だけでなく回生側にもリアを積極的に使うことで、この走りが実現しているようだ。やはり降雪地に住む人だけでなく、乾燥した舗装路を走ることが主体のユーザーも、この走りを味わうためにe-POWERの4WDを積極的に選ぶ価値はあるとあらためて思った次第だ。

 最近では上級車からのダウンサイザーや輸入車派に向けてコンパクトクラスにもプレミアムという概念を取り入れるメーカーが増えつつあるが、そんな中でもe-POWERの走りとプレミアムな世界観の両面をこれほど高い完成度で味わえるのはノート オーラならでは。デリバリーは秋ごろの予定というが、こんなクルマがすでに準備万端でスタンバイしていることを、ぜひ心に留めておいたほうがよいだろう。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛