試乗記
ボルボ「EX40」のツインモーター仕様でロングドライブ 上質感とパワフルさが一気にレベルアップ
2025年1月22日 11:51
ピュアEVであることを強調する“E”の文字を手にいれ、「XC40 Recharge」から名称変更となった「EX40」。そのハイエンドグレードとなる「EX40 Ultra Twin Motor」が大きく進化したということで、東京から栃木県の那須塩原を往復するロングドライブに出かけてみた。
なお、EX40には3グレードがあり、エントリーモデルのシングルモーター仕様「Plus Single Motor」は679万円から、中間グレードのシングルモーター仕様「Ultra Single Motor」は719万円から、上位グレードのツインモーター仕様「Ultra Twin Motor」は789万円からとなる。
2024年の夏に「EX30」で長野県の軽井沢までを無充電で往復したことがあり、ボルボが誇るバッテリマネジメントの実力にはいち目置いているのだが、今回はEVに厳しいといわれる冬。2023年以前に導入されていたツインモーターモデルよりも高効率な電費を実現して、航続距離が約16%伸びているというEX40 Ultra Twin Motorだが、果たしてどんなドライブになるのか期待と少々の不安が入り交じる……。
自宅前に停めたEX40は、新世代のスカンジナビアンデザインがモダンで、パッと目を惹く存在感があった。ボディサイズは全長4440mmと4.5mを切り、全幅は1875mmとややワイドなものの、狭い路地の多い自宅周辺の道でも取りまわしには苦労しなかった。
インテリアは上質なのにどこかユニークで、サステナブル素材が使われていてクリーンな印象もある。とくに、自然を身近に感じられるように採用されたという、スウェーデンのアビスコ国立公園から臨む山々に着想を得たという、透過照明の彫刻的なパネルが独特な空間を演出している。ヘッドライトが点灯するとこのパネルも落ち着いた光を放ち、立体的な構造が浮かび上がって幻想的だ。
インパネはEX30ほどシンプルで何もない光景ではないが、すっきりと整っている印象。センターディスプレイはGoogleが搭載されており、ナビだけでなくGoogleアシスタントで好きな音楽を探したり、メッセージの送信や電話など、さまざまな機能を声で操作できる。いつも使っているアプリやサービスもそのまま使えるから、普段と変わらない環境で運転できるのがありがたい。
那須塩原の目的地を入れると、到着時点でのバッテリ残量の予測が表示される。もちろんそれは運転中に刻々と増減していくのだが、EX30の時は最終的にスタート時の予測から大きく変わらない残量でゴールしたので、かなり緻密な計算に基づいているのではないだろうか。
今回はバッテリ残量90%程度の状態から片道142km、2時間30分ほどのドライブで、到着時のバッテリ残量予測が37%と表示された。カタログ値ではフル充電から最大560km(WLTCモード)の航続距離となっているEX40のツインモーターだが、高速走行や山道が含まれる上、ヒーターで室内を快適にすることなどを考慮すると、多めにバッテリを消費するという予測なのかもしれない。
狭い住宅街から幹線道路、高速道路へと、走りはどのシーンでもパワフルで上質だ。アクセルペダルの操作に対してリニアに反応してくれるため、思い通りのコントロールができてストップ&ゴーでもストレスがない。とくに車線変更や合流、追い越しでは四輪が同時に蹴り出すような一体感のある加速フィールで、スカッとする爽快感が味わえる。
このEX40のツインモーターは190kWに出力を強化したリアモーターを駆動の主体としてセッティングし、フロントには新たに110kWの誘導モーターを搭載しているという。最高出力は408PSを達成しているというから、このサイズのSUVとして見てもパワフルなことは明らかだ。
また、高速走行では高い安定感と室内の静粛性が印象的。床下に重いバッテリを配置するEVはガソリンモデルのSUVよりも低重心に有利となるとはいえ、やはりEX30よりも長く確保されたホイールベースの恩恵もあるのか、後席に座ってみてもその乗り心地のよさは変わらなかった。ほどよく厚みと弾力のあるシートも心地よく、ルーフには大型のガラスルーフが備わって視界が広いところも気持ちがいい。
さて、那須に近づいたところで撮影などを行なっていると、バッテリ残量の予測は当初よりも減ってきた。ディスプレイで近くの急速充電スポットを探すと、すぐに見つかったので早めに充電することにした。左リアに設置されている充電口は、日本人の習慣となっているバック駐車をした際に、充電器のすぐ近くにくるため充電コードを少し引き出すだけで使えてありがたい。
幸運にも90kWh級の高性能充電器で、30分の充電で80%近くまで入れられた。EX40に限らずボルボの電動モデルは、充電する前にバッテリを充電に最適な状態に調整してくれる「バッテリプリコンディショニング」の機能が付いている。これを使えば、気温や走行状態などに大きく左右される充電性能を最もよい状態にしてから充電を行なえるので、より短時間で多くの電気を取り込める。これで帰路のバッテリ残量も安心だ。
那須では舗装された山道と、少しだけ未舗装の道も走ってみたが、カーブではAWDならではの接地感が高い走りを感じられた。キビキビとした軽快感という点ではシングルモーターの方が抜き出ているが、ツインモーターはカーブからの立ち上がりでリアからの蹴り出しで一気に前に押し出されるような力強さがある。下り坂でのブレーキの効き具合はどうかなと思ったが、ペダルの踏み始めでガツンと唐突に減速することもなく、おおむね自然なフィーリングで扱いやすかった。
きれいな空気を室内に送り込んでくれる先進のエアピュリファイヤーを搭載し、ロングドライブでも常に心地よい室内が保たれていたことや、賢い安全運転支援システムのサポートもあり、東京と那須の往復はとても快適で心なしか疲労感も少ないように感じる。
気になる充電残量は、高速道路の渋滞情報を加味して最後にSAで30分の急速充電を行なったため、余裕たっぷりのゴールとなったが充電なしでも十分に帰宅できたはず。バッテリEVでロングドライブをする際の不安を、ボルボはしっかりと軽減してくれていると感じたし、EX40 Ultra Twin Motorはさらに上質感とパワフルさが一気にレベルアップしていて、走る楽しさも手に入り大満足のドライブとなった。