試乗記

テインのサスペンションキットを装着したマツダ「CX-60」をワインディングで試す 独特な乗り心地はどう変わる?

テインのサスペンションキット「FLEX Z」を装着したマツダ「CX-60」を試乗する機会を得た

 足まわり専門メーカーのテインから、マツダ「CX-60」用の車高調整式サスペンションキットである「FLEX Z」が発売された。価格は17万6000円。このサスペンションキットは、車高をダウンしてもストロークが損なわれない全長調整式を採用。アッパーマウントは音や振動を考え、あえて強化ゴムとしている。

 ショックアブソーバーはストロークを確保しやすい複筒式構造とし、減衰力調整は伸縮同時調整の16段階。室内からスイッチ1つで減衰力調整が可能なEDFCシリーズにも対応している。それに組み合わされるスプリングはフロント10Kgf/mm、リア9Kgf/mm(純正はフロント7.3Kgf/mm、リア7.4Kgf/mm)としている。

 CX-60のノーマルは瞬間的な入力がある際に起きる突き上げ感や、じんわりストロークする際になかなか上下動が収まらないなどの特性を持つが、それがどう変化しているだろうか?

試乗車はマツダ「CX-60」で直列6気筒3.3リッターディーゼルエンジンにM Hybrid Boost(48V マイルドハイブリッド)を搭載したハイブリッドモデル
テインのサスペンションキット「FLEX Z」を装着した状態でのCX-60の基準車高はフロント35mmダウン、リア40mmダウン

 純正車高比でフロント35mm、リア40mmもローダウンされたデモカーを目の当たりにすると、それだけでもかなりスポーティな印象を与えてくれる。これはかなり期待できそうだ。動かしてみると見た目通りといった感覚で、スポーティカーのように無駄な動きを出すことなく、ロールもピッチもうまく収めている感覚が得られる。けれども突き上げ感を伴うようなことはない。タイヤ&ホイールが路面にうまく追従し、縮む際にはきちんとショックが入力を収めてくれる。このフラットライドがあれば、今回のようなハイスピードワインディングでも安心して走れる。

フロントの最大車高調整範囲は102mmダウン~9mmアップ、推奨車高範囲は45mmダウン~25mmダウン
リアの最大車高調整範囲は114mmダウン~29mmアップ、推奨車高範囲は50mm~30mmダウンとなっている
試乗した製品はユーザーサイト“みんカラ”で何度もパーツ・オブ・ザ・イヤーを獲得している人気商品「FLEX Z」
減衰力の変更は上部に備わるダイヤルを回すだけ。装着用の強化ゴムアッパーマウントも付属する
メインスプリングに加えサブのヘルパースプリングも完備。ピストンロッドの傷つきやショックアブソーバ内部への異物侵入を効果的に防止するダストブーツも備え、スムーズな伸縮と高い耐久性を両立している
シェルパイプの上部を絞ったのち、オイル、ガスを封入し、かしめて密封する「シールド構造」を採用。この新方式により従来の分解式と比べてはるかに少ない時間での生産が可能となり、低価格化も実現したという
付属の調整ダイヤルを回すことで減衰力を変更できる
試乗車には装着されていなかったが、別売の「EDFC(Electronic Damping Force Controller)」シリーズにも対応していて、装着すれば室内からボタン操作で自由自在に減衰力の変更が可能となる

 開発陣に聞けばリアの減衰力設定にはかなり苦労したらしく、伸び側の減衰力は一般的なクルマに対してかなり低い設定とし、タイヤ&ホイールをしっかりと伸ばし、縮み側を強めて入力を収めようとしたとのことだ。たしかに荒れた路面を走ったとしても、接地が外れるようなことがなく安定感は高い。

スポーティカーのように無駄な動きを出すことなく、ロールもピッチもうまく収めている感覚

 ところ変わってリアシートに移動してみると、動きはかなり落ち着いている。ドンと突き上げるようなこともないし、いつまでも揺らいでしまうようなこともない。これならロングドライブに連れ出されたとしても、イヤな感覚を持つようなことはない。

荒れた路面でも安定感が高く感じた

 もしも最低地上高を下げることに不満を覚えるような方がいれば、今のような設定ではなく、車高を高めることも可能。全長調整式を採用することで、どのようにでもセッティング変更できるため、例えば雪道や悪路に行く時だけ車高を上げて対応するなどの使い方もいいかもしれない。振り幅の広さはさまざまな使い方に耐えてくれるのもありがたい。

リアシートでも動きはかなり落ち着いていた

 ここまでのオールマイティぶりがありつつ、さらに3年6万kmの補償までついてくるというところもテインらしいポイントの1つ。それを超えたとしても、カートリッジ式のショックを使っているため、そこだけを新品購入することが可能な「リプレイスメントサービス」も開始した。採用している複筒式ショックアブソーバーは非分解式のためオーバーホールは不可。だからこそ新たにこのサービスを始めたのだろう。

フラットライドを実現していてワインディングも楽しめた

 これならオーバーホール中にリフトアップしたままでクルマが使えないとか、代わりに純正ショックを保有しておく必要もなくなる。つまりは車両からの脱着作業は1回でリフレッシュできてしまうのだ。ここまでの小まわりが効くサービスが可能なのは、このサスペンションキットが日本国内(横浜工場)で生産しているからこそ。これなら長い付き合いができそうだ。

サスペンションキットは全長調整式なので、車高を下げてスポーティにもできるし、車高を上げて悪路に対応させることも可能だ
3年間または装着から6万kmの保証(2016年1月1日以降の購入分が対象)が付くほか、長期間使用後もリプレイスメントサービスでリフレッシュできるという