試乗レポート

テイン、純正形状で高い安定感と耐久性を両立したサスペンション「エンデュラプロ プラス」

超重量級のグランエースでその実力をチェックしてきた

 サスペンションメーカーのテインが、トヨタのグランエース用に「エンデュラプロ プラス(EnduraPro PLUS)」というショックアブソーバーを10月末より発売する予定だ。今回はそのデモカーをいち早く試乗させていただく。

 装着されているエンデュラプロ プラスはストローク量を確保しやすい複筒式を採用。さらにハイドロ・バンプ・ストッパーと名付けられた、フルバンプ付近のみ減衰力を増大させるシステムを搭載するショックアブソーバーだ。また、耐久性にも力を入れていて、シェルケースは純正比で約1.5倍の引張強度を持つ高強度材料を採用し、ストラットタイプでは車両側(ナックル)への取付部の板厚を増すことで、純正以上の強度を確保しているのが特徴。すでに300車種以上に適合していて、さらに適合車種を拡張させている。

フロントビュー
リアビュー
奥がロッド径28φの純正、手前がロッド径30φのエンデュラプロ プラス。ロッドやケースなど全体の強度を高めてある
フルストローク時の衝撃をショックアブソーバ内部で熱エネルギーに変換して吸収することで、挙動の乱れを防ぐとともに、耐久性も向上させるハイドロ・バンプ・ストッパーを内蔵する

 今回試乗したグランエースも純正ショックアブソーバーがφ28とだいぶ太いピストンロッドを採用しているが、エンデュラプロ プラスではさらに太いφ30を使用。これはテインとして新規のプラットフォームで、それに付随するシェル、シリンダー、ベースバルブも新規となる。乾燥重量でも2.8tに迫るグランエースの巨体を受け入れる体制は万全だ。アッパーマウントは純正を使用する。ちなみに3年または6万kmの製品保証も付く。

フロント
リア
車室内から減衰力を変更できるコントローラー「EDFC ACTIVE PRO」

 減衰力調整機構には16段階の調整を盛り込んでおり、オプションとなる「EDFC ACTIVE PRO」を組み合わせることも可能だ。前後左右のGに対して自在に減衰力の強弱をリニアに変化させることができるこのシステムは、速度域に応じた減衰力設定も可能。車室内に備えられたコントローラーを介してさまざまななセッティングを行なうことができるが、無線で足まわりと繋がるため、取り付けに関しても容易だということも特徴の1つだろう。

エンケイ製「WPS GranV」17×7Jインセット45のホイールを装着。タイヤは純正装着のブリヂストン「DURAVIS R660A」235/60R17 109/107T LT

 今回のデモカーはエンケイ製の「WPS GranV」17×7Jインセット45のホイールが装着されており、見た目の迫力も増しているが、タイヤはブリヂストン「DURAVIS R660A」235/60R17 109/107T LTで、車重のあるグランエースはタイヤトラック・バス向けのタイヤが標準装着されている。

 グランエースの巨体を受け止めるためにトラック・バス向けタイヤを純正装着せざるを得ない状況なのだが、これが乗り心地と操縦安定性の両立を難しくしている。ノーマル状態だと低速時の乗り心地に振り過ぎたせいか、リアが動きすぎる傾向があり、結果として高速域における直進安定性を失っている。ここをどうクリアするのかが注目だ。

 まずはドライバーズシートに腰かけてみると、スプリングは変更していないため、当然ながらノーマルと視界は変わらない。だが、走り出すとフラットに走る感覚に溢れていることが伝わってくる。ノーマルでは発進時にリアが沈み込んでピッチングが大きく感じるが、エンデュラプロ プラスではそこが見事に抑え込まれている感覚。

 ブレーキングでもそれは変わらない。しかしながら、乗り心地が損なわれていないところが特徴だ。Gが発生する状況に応じて減衰力を自在にコントロールしているからこその動きといっていい。一方で左右Gが発生するコーナーリングにおいても状況は変わらない。

 高速道路やワインディングといったシーンでも確実な効果が得られた。懸念材料だった直進安定性は見事に解消されており、ステアリングに力を入れずにクルマまかせに走ることを可能としていたのだ。また、ワインディングにおける荒れた路面の吸収も見事で、しなやかなさを生み出していた。

 後に後席の試乗も行なったが、そこでの乗り心地も満足できるものがあった。フワフワとした乗り心地ではなく、入力を瞬時に吸収してフラットさを生み出すその乗り味は、クルマ酔いもしにくい感覚。これなら同乗者からも不満が出ることはないと思われる。さらに、ラダーフレームならではの応答遅れを短縮し、ドライバビリティが向上していたこともメリットの1つだろう。

 今後はこのエンデュラプロ プラスに対応するダウンサスや車高調もラインアップする予定があるというテイン。日本だけでなく海外の需要も見込んで動いているとのことだったが、ここまで充実した状況があるのなら、日本でもグランエースのチューニングが盛り上がれば面白い。数は確実に少ないだろうが、だからこそ特徴ある1 台を造りたくなるユーザーもいるはず。ニッチな世界を突き進み、どんなクルマが誕生してくるのかが楽しみだ。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一