試乗記
ボルボ「EX30」で京都→東京ロング試乗 バッテリEVでの長距離移動は快適? 大変?
2024年12月9日 10:46
ボルボ史上最もコンパクトなバッテリEV(電気自動車)であるEX30は、実は日本のことをよく考えている1台だ。全長は4235mm、全幅は1835mm、そしてなんといっても全高が1550mmなのだ。この全高、サイズを気にする方々ではおなじみの数値。日本でよく目にするタワーパーキングに設けられていることが多い高さ制限の最大値である。実はEX30の1550mmという車高は、ボルボカーズジャパンから本国へのリクエストで実現したものだという。
今回はそんなEX30でロングドライブを行なった。サイズはいいとしてもバッテリEVでどこまで日本の日常生活に取り入れて満足できるのかは心配だ。それも京都を朝出て、19時までに東京へ戻ってくるというスケジュール。どれほどの苦行になるのか? はたまた快適ドライブでゴールできるのかは分からない。なにせ航続可能距離は560km(WLTCモード値)と、今回の行程とかなりの近似値なのだから。
案の定クルマを京都で受け取った時には充電残量は99%で、航続可能距離は512kmと表示されている。ゴール地点となる東京・青山の「Volvo Studio Tokyo」をナビでセットすると、充電が必要で到着時の充電残量はマイナス4%と表記された。つまりこれは、途中で充電する必要があると確定したことを意味している……。
ならば開き直るしかない。途中で充電するのが前提であるのなら、旅を楽しもうじゃないかと同行した編集者が悪魔のささやきを発した。まあ確かにエアコンを消して超エコランをして現実離れした無充電ランをしたところで、何のためにもならないだろうということなのだろう。
で、何も我慢せず京都市内を走り回り撮影に興じたかと思えば、今度は比叡山に登りワインディングを走り、最終的には「琵琶湖を見ていこう!」という観光ドライブである。今日中にゴールできるのか!? 充電する時間だって必要なんだぞ!
けれども、そんな感じで使ってみると確かにEX30のよさが光ってくる。京都市内の撮影では、細かなところを行ったり来たりと繰り返すのだが、リア駆動のおかげか、はたまたEV専用プラットフォームのおかげか、かなり大きな245/40R20サイズを装着しているにも関わらず、前輪のキレ角がきちんとあり、ボディサイズも程よいために路地裏の転回もラクラク行なえる下駄感覚。
比叡山ドライブウェイでワインディングを走れば、程よく足を引き締めたキビキビとした身のこなしと、雑味のないステアリングフィールがなかなか爽快で、そこにリアからの蹴り出しが与えられることもあってSUVながらもスポーツドライブが楽しめる。
0-100km/h加速が5.3秒という俊足ながらも、唐突さがなく走れるところはマル。ワンペダルドライブも可能ではあるが、スポーティに走りたい時にはそれを解除して、ICEで慣れ切った今まで通りのドライブ感覚に戻れるようになっているところも好感触だった。
結局のところ、こうして使ったせいでバッテリ残量はみるみる低下していき、ナビでは「目的地(東京)へ行くには、途中で充電が必要です」という案内が出てきた。けれども充電時間はたったの10分でOKというアナウンス。最近のバッテリEVはカーナビに充電ステーションの情報が入っていて、ルート上で最適な充電ポイントを教えてくれるだけでなく、目的にたどり着ける分の補充時間まで教えてくれるものもあり便利。
ただ、オススメされた充電スポットは我々の休憩タイミングとは合わず、実際には新東名高速のパーキングエリアで充電したのだが、お手洗いと軽食を食べた15分程度で、その後の移動工程分に必要な充電を完了してしまった。
充電スタンドで許された30分のすべてを使わなくてもいいし、充電する場所は任意に選べるしで、EVのロングドライブで特段我慢するようなことはなかったというのが実際のところ。
新東名高速の120km/h制限区間も、制限キッチリ使い切って走ったのがその証拠だ。すなわち、航続可能距離560kmもなかなか日本にマッチしているように感じる。
これだけのロングドライブだったため、途中で運転を交代してもらいリアシートにも座ったのだが、コンパクトに仕立てられているとはいえ、グラスルーフのおかげもあり開放感はなかなか。リアでも窮屈に感じるようなことはなかった。
このようにボディからバッテリまで、あらゆる「サイズ感」が絶妙に感じられたEX30は、お値段もまた補助金を入れると400万円台に入ってしまうというバランスのよさも備わっている。
EV専用とか輸入車SUVというと身構えてしまう方々も多いだろうが、EX30に関していえばそんな必要は一切ない。フレンドリーに付き合えそうな1台であると思える仕上がりがそこにあった。