インプレッション

MINI「クーパー クロスオーバー(ディーゼル)」

MINIブランドで初のディーゼル・モデル

 メルセデス・ベンツやBMW、そして何よりもマツダの積極的な商品展開もあって、「臭い、うるさい」と古くてネガティブなイメージがようやくにして一掃されるまでに至ったディーゼル乗用車。

 昨今の日本国内のそうした雰囲気の変化を敏感に読み取ってか、突如導入のニュースが流れてきたのがMINIブランドで初めてとなるディーゼル・モデルだ。

 ヨーロッパの市場に向けてはもちろんかねてから用意をされていたものの、2014年9月に初めて日本導入が行われたのが、「クーパーD」「クーパーSD」というMINI クロスオーバーのディーゼル・モデル。そんな両グレードに搭載されるチューニングの異なる直列4気筒2.0リッターエンジンは、いずれも可変ジオメトリー・ターボチャージャー付きの直噴ユニット。クーパーDには、日本のMINI クロスオーバー・シリーズで唯一の4WD仕様が設定されるのも見どころの1つとなっている。

 基本的なスタイリングのイメージはキープをしつつ、フロントグリルのデザインに手を加えたり、LEDフォグライトを採用したりと、見た目上も軽いリファインが行われたマイナーチェンジのタイミングを機に導入されたのは、クーパーD用が112PSと270Nm、クーパーSD用が143PSと305Nmという最高出力/最大トルクを発する、ディーゼル・エンジンを搭載する仕様。ちなみに1995ccの排気量を備えるその心臓部は、3シリーズや5シリーズ、X3など、BMW車に搭載されるものと基本構造を共にするユニットだ。

試乗車のMINIクーパー SD クロスオーバー(ブラック・デザインパッケージ装着車)は、直列4気筒DOHC2.0リッター 直噴可変ジオメトリーターボディーゼルエンジンに6速ATの組み合わせ。ボディーカラーはジャングル・グリーン・メタリック、ボディーサイズは4105×1790×1550mm(全長×全幅×全高)、車両重量は1420kg。価格は387万円
2014年9月にモデルチェンジしたMINI クロスオーバーは丸型ヘッドライト、6角形のラジエーターグリルなど従来のデザインを踏襲しつつ、ラジエーターグリルのデザインを刷新するとともに、LEDフロントフォグランプを新採用。新しいデザインオプション「ブラック・デザインパッケージ」装着車では、ヘッドライトベゼルやサイド・スカットルなどがハイグロスブラック仕上げになる
オプションの18インチホイール(タイヤサイズ:225/45 R18)にランフラット・タイヤの組み合わせ
ハイグロスブラック仕上げのルーフレール
リアコンビネーションランプにもハイグロスブラックの加飾が施される
クローム仕上げのツイン・テール・パイプはMINI クロスオーバーの特徴の1つ
テールゲート右側にグレードを示すバッヂが備わる
インテリアは伝統の丸型をモチーフとしたデザインを基調とし、ブラックの精悍な内装に仕上げた。センターメーターの文字盤は黒系のアンスラサイトを採用
後席は40:20:40の分割可倒式を採用する。ラゲッジスペースは最大1170Lまで拡大可能

振動に驚き!?

直列4気筒DOHC2.0リッター 直噴可変ジオメトリーターボディーゼルエンジンは最高出力105kW(143PS)/4000prm、最大トルク305Nm/1750-2700rpmを発生。JC08モード燃費は16.6km/L

 クーパーSDのドライバーズシートへと乗り込んで注目のエンジンに火を入れる。と同時に周囲に響くディーゼル・ノック音が予想を遥かに超えるボリュームで、少々驚かされることとなった。率直なところ、これは早朝・深夜の住宅街での始動はちょっとばかり憚れるレベル。感覚的には小型トラックがエンジンを始動させる「あの感じ」だ。

 ちなみに、そんなノイズの主な“出どころ”を車外でチェックしてみると、そんなガラ音の多くがフロントのタイヤハウス内から聞こえてくるという印象。いずれにしても、「これがあのジェントルでスムーズな320dなどと基本構造を共にする心臓の持ち主なのか」とちょっとびっくりさせられる。

 再びドライバーズシートへと戻ると、今度はそのシートを通じて直接体感させられる振動とともに、ステアリング・ホイールやペダルからも、やはり遠慮なしに振動が伝わるのが少々意外だった。さらにそうした印象は、実は走り始めた後も続くことに。走行による振動とは別に、エンジンを起震源としたバイブレーションが、終始ステアリング・ホイールやペダルに伝わるのだ。端的に言って、昨今ここまで「ディーゼル車らしいディーゼル車」にはお目に掛かった覚えがないくらいである。

 さらに、アイドリング・ストップメカが採用されていないので、そんな印象は信号で停車をするたびにいよいよ明確に。ガソリンモデルとはまったく異なる、想像以上に“ワイルド”なノイズやバイブレーションの感覚は、人によって大きく評価が別れそうな一方で、絶対的な動力性能そのものに関しては、多くの人が「素晴らしい」と賛辞を与えるであろう仕上がりぶりだ。

 そんなクーパーSDで発表されている0-100km/h加速のタイムは9.5秒という値。だが、実際の印象ではそれよりさらに俊敏に、パワフルに感じられる。6速ATとの組み合わせでも、ラフなアクセルワークではトルクステアすら認められるほどに、スタート直後からトルク感が太いのだ。「MINI」という名前にはもはや似つかわしくない大柄なボディーは、どんなシーンでもグングンと加速して行く。

 一方で、雨に濡れて滑りやすい路面では、そうした強大なトルクを前2輪のみでは確実に伝達を仕切れない場面にも幾度か遭遇することとなった。こうしたシーンでは、当然4WDシステムが威力を発揮してくれることになりそう。現状、クーパーDにしか設定のない4WDバージョンは、むしろよりパワフルなクーパーSDにこそ欲しい仕様であるとも思う。

フラット感はMINIシリーズ随一

 ところで、“ゴーカート・フィーリング”がキャッチコピーであるMINIシリーズだが、今回テストしたクーパーSDでは、その走りのキャラクターは比較的おっとりしたもの。敏捷なイメージは控えめだ。18インチのランフラット・タイヤを履く影響もあってか、バネ下の動きに大きな重量感が伴う点は、走りの軽快さという観点からもあまり好ましいとは思えないポイント。一方で、フラット感はMINIシリーズの中にあっては随一と言ってもよい印象。比較的良路での高速クルージングなどは、もっとも得意とするところであるはずだ。

 逆に、そうした基本テイストの持ち主でありながらも、わだちに対する耐性はさほど高いとは言えないし、外乱を受けてのキックバックも強めに伝えられるあたりには、「ちょっと粗っぽい仕上がりだな」と感じる人もいるはず。このあたりは、相変わらずMINIの一員らしいテイストの持ち主とも言えるわけだ。

 かくして、なんだかんだでディーゼル・エンジンを搭載したことにより、やはり個性の強い走りのキャラクターの持ち主へと仕上げられているのがこのモデル。いずれにしても、思いのほかに強い存在感を発するディーゼル・エンジンに関しては、例えアイドリング状態のチェックだけでも構わないので、ぜひとも自身での体験をオススメしたい1台だ。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は、2013年8月末納車の981型ケイマンSに、2002年式にしてようやく1万kmを突破したばかりの“オリジナル型”スマート、2001年式にしてこちらは2013年に10万kmを突破したルポGTI。「きっと“ピエヒの夢”に違いないこんな採算度外視? の拘りのスモールカーは、もう永遠に生まれ得ないだろう……」と手放せなくなった“ルポ蔵”ことルポGTIは、ドイツ・フランクフルト空港近くの地下パーキングに置き去り中。

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Photo:高橋 学