試乗記

スバル「レヴォーグ レイバック」で北海道・釧路を巡る旅

レヴォーグ レイバック

レヴォーグ レイバックで1泊2日の釧路旅

 最近、めっきり涼しくなり、どこへ行くにも気持ちがいい季節になってきた。暑い夏を必死に乗り切った分、こう快適な気温になってくると急にどこかへ遠出したくなる。もちろん私自身もその1人だ。「旅行に行くならどこだろう」と考えてみると、国内でもさまざまな場所があるが、真っ先に思い浮かんだのは北の大地、北海道。「自然いっぱいの大地でドライブしたら最高だろうなぁ」と思っていたところ、なんとスバルが北海道で試乗会を開くというお話をいただいた。「まさに最高のタイミング!」と喜んでいると、さらに今回はCar Watchの北村さんが一緒に行ってくれるという。北村さんは、私と同世代でスバルのことなら何でも知っている女性編集者だ。「これはさらに旅が楽しくなりそう!」ということで、ワクワクしながら北海道へ向かう飛行機へと乗り込んだ。

 飛行機が降り立ったのは、たんちょう釧路空港。私自身は何度も北海道を訪れたことがあるが、釧路は初めて。空港の名前にある通り、国の特別天然記念物であるタンチョウヅルが生息する土地として有名な場所だ。

レヴォーグ レイバックで釧路をドライブした

 北海道・釧路1泊2日の旅の相棒は、スバル「レヴォーグ レイバック Limited EX」だ。名前からも分かる通り、レイバックは、スバルのステーションワゴンであるレヴォーグの兄弟車で、レヴォーグよりも車高が70mm上がっており、ワゴンではなくクロスオーバーSUVとして売り出されている。

 当初は「都会派SUV」として登場したものの、スバル内でも「スバルのSUVらしくしっかりオフロードを走れて、さまざまなシーンで活躍できるSUVだと知ってもらいたい!」という思いがあるそう。クルマ好きとしては「スバルと言えば、昔から4WD性能はピカイチだし、ラリー競技でも大活躍していたし、オフロードをきちんと走れることはすでに知られているのでは」と思ってしまう。しかし、レイバックのスタイリッシュなスタイリングや、最近では運転支援システムのアイサイトが有名になったことで、レイバックも最低地上高を200mmも確保しており本格オフローダーにも負けない素質を持っていることなどは見逃されることも多いようだ。

レヴォーグ レイバック Limited EX。価格は399万3000円(写真のアステロイドグレー・パールは3万3000円高)。ボディサイズは4770×1820×1570mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
「豊かさ」「おおらかさ」を表現したフロントグリル。伸びやかなウイングはヘッドライトまでつながり、フロントグリルとフロントバンパーの一体感を演出
足下の18インチアルミホイールはスーパーブラックハイラスター塗装。装着タイヤはファルケンのオールシーズンタイヤ「ZIEX ZE001A A/S」(225/55R18)
パワートレーンは最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生させる水平対向4気筒DOHC 1.8リッターターボ「CB18」エンジンを搭載。トランスミッションにはリニアトロニック(CVT)を組み合わせる
アッシュカラーを取り入れ、シックで華やかな印象のインテリア。11.6インチセンターインフォメーションディスプレイや、12.3インチフル液晶メーターを標準装備。ステアリングはカッパー色のアクセントカラーを用いた高触感の本革巻き。ハーマンカードンサウンドシステム(フロント6+リア4)も標準装備される
フロントシート形状やクッションをレヴォーグ レイバック専用に最適化し、高いホールド性と快適な座り心地を両立。着座位置の高いSUVでもスムーズに乗り降りできるよう、座面サイド部の高さが抑えられている
ラゲッジはVDA法で561L(カーゴフロアボード上部:492L、サブトランク:69L)の大容量スペースを確保しており、大きなスーツケースも余裕で飲み込める。4:2:4分割可倒式リアシートで荷室を自由に拡張することもできる

 私自身は、流行りのSUVもいいと思うが、実はステーションワゴンもクルマのスタイルとしては好きなモデルだ。そして、両者のいいとこ取りをしているのがレイバックだと思う。改めてレイバックを見ると、「ゴツくて力強いオフロードモデル!」という雰囲気は全くなく、ボディ全体が滑らかなラインを描いていてスタイリッシュだ。今回の旅は、私と北村さん、カメラマンさんの3人での移動だったが、トランク容量は492Lで、フロア下の大型サブトランクも含めれば561Lという大きなスペースがあるので、3人分の1泊2日の荷物や撮影機材も楽々と積み込むことができた。大きめのスーツケースを含めても、4人分くらいの荷物であれば後席を倒すことなく搭載でき、前席も後席もゆったりと座ることができるので、ロングドライブの旅でも活躍しそうだ。

レヴォーグ レイバックで釧路を駆け巡る!

霧多布岬で野生生物を探せ!!

 1日目は、釧路空港から東へと向かい、東端にある霧多布岬へと行ってみることに。霧多布岬は、正式名称は湯沸(とうふつ)岬で、野生のアザラシが見られることから、地元の人たちにはトッカリ(アイヌ語でアザラシの意)岬と呼ばれて親しまれているそうだ。私も北村さんも動物が好きなので、「運がよければアザラシが見られるって! ラッコも見られるらしいよ!」とウキウキしながらレイバックを走らせた。

 改めてレイバックを運転してみると、すぐ「これなら誰でも運転しやすいだろうな」と感じた。元々の設計に加えて、SUVなので目線が高いこともあり、周囲の確認がとてもしやすいのだ。釧路空港からの道は、信号がほとんどない道をずーっと直進していることが多いので、一見安全に感じるかもしれないが、信号のない交差点で急にクルマと交差することもまれにある。お互いそれなりに速度が乗っているので、発見が遅れると危険だ。そういった意味でも、レイバックはまわりの状況を確認しやすいし、最新のアイサイトXが標準装備されており、万が一の事故に備えることもできるので、安心感を持って運転することができる。

広い北海道・釧路を快適にドライブ

 それらの安全性に加えて、レヴォーグ譲りの運動性能により運転はさらに快適だった。レイバックの運動性能が高いということは、ハンドルを切るとすごくよく曲がるとか、すごくパワーがあるとか、そういったことではなく、ドライバーがごく自然に運転できるという意味でだ。アクセルペダルを踏み込むとスッと加速し、カーブや交差点では思った通りに曲がる。そこに違和感がないので、あっという間に自分の愛車を運転しているような感覚になった。そして、北海道は舗装路でもでこぼこと荒れているところもあり、ややハンドルを取られるようなシーンもあったが、北海道のまっすぐな道路をずーっと安定して走れるので、疲れにくいと感じた。霧多布岬まで100kmを超えるドライブだったが、あっという間に着いてしまったような感覚になった。

目的地まで気を張りすぎずに運転できた

 霧多布は北海道浜中町にあり、浜中町は「ルパン三世」の作者として有名なモンキー・パンチさんの故郷なのだそう。町の各所には、ルパン三世のキャラクターパネルや等身大フィギュアなどが展示されている「ルパン スポット」が設置されていた。

 それまでは比較的晴れ間が見えていた道中だったが、霧多布岬に到着すると、一面真っ白な霧に覆われてしまっていた。クルマを停めて岬の先端まで歩いていくと、海の先が全く見えないほどの霧! 「これじゃあ何も見えないかぁ」と落胆していると、北村さんが「あれって岩ですかね? もしかして……ラッコ?」と沖の方を指さした。霧で真っ白になっている海面に目を凝らすと、確かに黒っぽい物体が海の上に浮かんでいる。数えてみると、3つの塊があって、波の動きに合わせてゆらゆらと漂っていた。さらに目を凝らすと、それは明らかに仰向けに浮いている動物の形をしていて、モゴモゴと手を動かしているところまで見えた。「本当だ、ラッコだー!」と、北村さんと大はしゃぎ。周囲にいた観光客も私たちの騒ぎように「え! ラッコ!?」と続々と集まってきて、あっという間にラッコ鑑賞会になった。距離はかなり遠く、霧も濃かったのでラッコの存在をギリギリ確認できるくらいではあったものの、運よく野生のラッコに遭遇できたことがとてもうれしかった。

周辺は晴れていたのに、霧多布岬だけ見事に真っ白
運よく野生のラッコに遭遇! 遠く小さいけれども海にぷかぷか浮いている姿が見られた

 その帰りにレイバックのCMロケ地近くの涙岬にも立ち寄ってみた。しかし、こちらも真っ白な霧に包まれて何も見えず……。涙岬は、断崖になっていて、その岩肌が乙女が泣いている横顔に見えることから、乙女の涙とも呼ばれているとか。霧が深かったことと、付近をパトロールしていた警察官に、最近では熊が出ることも多いと聞いたので、そそくさと退散。その代わり、と言ってはなんだが、少しオフロード感のある林道へと入り込んでみた。路面はほとんど砂利道で、アクセルをラフに踏み込んだらスリップしてしまいそうな雰囲気があったが、さすがスバルの4WD。オフロードでもタイヤが空転することなく、しっかりとグリップしながら進んでいけるため、何も不安がなかった。最低地上高も200mm確保されているので、アップダウンの大きい場所でもバンパーやフロアを打ち付けるようなこともないから、その点でも安心して走ることができる。レイバックはスタイリッシュなデザインをしているものの、やはりスバルらしくオフロードでもしっかり楽しめるのだと実感した。宿泊先へ向かってクルマを走らせるときにも、本州では見られないような北海道らしい広大な景色や、海沿いにある港町もじっくり堪能することができた。

都会派な印象でありながらも、大自然の中も安心して走れる

総走行距離は約300km。レイバックの印象は?

 翌日、朝起きると小雨が降っていたものの、釧路で見たいところはまだまだあるので、朝早くからレイバックで出発。最初に向かったのは、釧路湿原。釧路湿原は、日本で最初のラムサール条約登録湿地で国立公園にも指定されており、タンチョウヅルをはじめとする、さまざまな動植物の貴重な生息地となっている。

自然豊かな釧路を走り回る

 細岡展望台から釧路湿原を見渡せるということで、展望台を目指してレイバックを走らせた。展望台の駐車場は下の方に作られているので、展望台に辿り着くまでにはちょっとした山登りをしなければならない。北村さんと「運動不足だね……」と言いながらハァハァと息を切らして登っていくと、うっそうと茂っていた森林が開けて、まわりには湿原以外何もない、広大な景色が一面に広がっていた。一生懸命登ってきたこともあって、思わず「おおー!」とふたりで声を上げる。湿原には、一面に鮮やかな緑色の草木が生い茂っていて、その隙間を縫うように蛇のように曲がりくねった釧路川が通っていた。その景色はまるで日本ではないようなジャングルを見ているような気持ちになった。

ひんやりした空気の中、駐車場から湿原を見渡せる展望台までもちょっとしたアトラクション
展望台からは雄大な景色が見渡せる

 途中、道の駅「しらぬか 恋問館」にも立ち寄ることに。恋問館は2025年4月にリニューアルしたばかりで、北海道のお土産や飲食店が並んでいるだけではなく、太平洋が一望できるように海側がガラス張りになっており、子どもが遊べる遊具スペースなども広く取られていた。せっかくなので釧路でも有名なスイーツ店「jiri」のスイーツを食べてみることに。jiriという店名は、釧路で海から生まれる少し粒の大きな霧を指す言葉だそうで、霧をモチーフにしたスイーツが有名だ。ここでは、白糠町産のチーズを使用した「霧のオムレット」と「霧のエクレア」をオーダー。北村さんは、甘い物はそんなに得意ではないと言っていたものの、「霧のオムレットはチーズが濃厚だけど、レモンを使っているので後味はさっぱりとしていて食べやすい」と、おいしそうに食べていた。霧のエクレアは、旬の果物のさくらんぼを使っていて、シューはサクサクふわふわで生クリームとカスタードの組み合わせが絶妙だった。

釧路は自然だけでなく、少しレトロな雰囲気の建築もあって、いろいろ走り回っていても飽きない
ドライブの合間に、道の駅「しらぬか 恋問館」の「jiri」で甘い物を補給

 そして、旅の最後に選んだ場所は、釧路市丹頂鶴自然公園。動物好きのわれわれとしては「釧路でタンチョウヅルは外せない!」ということで、タンチョウヅルを保護・繁殖をしていて通年タンチョウヅルを見ることのできる鶴公園へとやってきた。公園には約13羽のタンチョウヅルがいて、ペアになっている個体以外はそれぞれ広い敷地スペースが与えられており、それぞれの敷地を通るように小川が流れている。その小川のおかげで、エサとなるザリガニやドジョウ、カエルが自然に発生するビオトープができあがっていて、とても快適な環境で過ごしているように見えた。それにしてもタンチョウヅルは大きい! 体長は約100~150cmで、翼を広げたときの翼開長は約220~240cmにもなるそうで、間近で見るととても迫力があった。白と黒がはっきり分かれた体の色と、頭の赤のバランスがあまりに美しく、「自然にできたデザインって本当にきれいだなぁ」と感嘆してしまった。人間の乱獲によって約10羽まで減ってしまった野生のタンチョウヅルは、現在では約1900羽に増えているという。今後もタンチョウヅルが元気に生き続けてくれることを祈りながら北海道の旅に幕を下ろした。

野生のタンチョウヅルを見ることは叶わなかったものの、保護・繁殖されているタンチョウヅルを見て、タンチョウヅルについて学ぶことができた

 初めて訪れた北海道・釧路1泊2日の旅。レイバックで約300km走り回ったが、いつの間にか自分の愛車のように体になじんで大きな疲れも感じずドライブを楽しむことができた。クルマ自体の視界のよさやアイサイトXが装着されていることもそうだが、こちらの操作に素直に応えてくれる操縦性のよさや、北海道の悪路でも気負わずに進んでいけることも、安心感を持って運転できる大きな要因だった。都会的でスタイリッシュに使えるイメージの反面、さまざまな道を力強く快適に走ってくれるスバルらしさも感じられて、レイバックでもっともっとさまざまな冒険の旅へと出てみたくなった。

レヴォーグ レイバックでさまざまな景色を見ることができた
約300kmの釧路ドライブを堪能した
伊藤梓

クルマ好きが高じて、2014年にグラフィックデザイナーから自動車雑誌カーグラフィックの編集者へと転身。より幅広くクルマの魅力を伝えるため、2018年に独立してフリーランスに。現在は、自動車ライターのほか、イラストレーターとしても活動中。ラジオパーソナリティを務めた経験を活かし、自動車関連の動画やイベントなどにも出演している。若い世代やクルマに興味がない方にも魅力を伝えられるような発信を心がけている。

Photo:高橋 学