試乗記

「MCプーラ」と「GT2ストラダーレ」で感じた、マセラティが築き上げてきたモータースポーツエッセンスとは?

クローズドコースにて「MCプーラ」(左)と「GT2ストラダーレ」(右)に試乗する機会を得た

独自の取り組みで国内販売年間800台を目指す

 マセラティがレースに参入してちょうど今年で100年になる。そんな絶妙なタイミングで、まさしくそれに相応しい「MCプーラ」と「GT2ストラダーレ」というレースに近い関係にあるモデルが日本に上陸し、その上陸したばかりの両車をサーキットで試乗するという、願ってもない機会に恵まれた。

 マセラティ ジャパンの木村隆之代表によると、マセラティは2025年には日本で750台を販売したという。ただし、これには「ギブリ」や「レバンテ」といった絶版モデルの在庫も含まれていて、圧倒的に多数を占めたのは、やはりSUVモデル「グレカーレ」だった。一方で、「MC」や「グランツーリスモ」「グランカブリオ」といったモデルも、それぞれ売れている。

2026年のマセラティ ジャパンの販売計画

 それに対し2026年の計画としては、ギブリとレバンテはもうソールドアウトで、今回紹介するMCプーラやGT2ストラダーレといったニューモデルや、新しいエキゾーストが装備されたグランツーリスモやグランカブリオ、もちろん主力のグレカーレの拡販を狙い、台数としては800台を目標にするという。

試乗会場の施設内に展示されていたMCプーラ(左)のボディカラーは特注色「AI AQUA RAINBOW MATTE - Fuoriserie」。GT2ストラダーレ(右)のボディカラーは特注色「デジタル・オーロラ - Fuoriserie」
2026年のマセラティ ジャパンの目標

 ラインアップが減ったのに強気な理由として、独自の販売戦略がある。詳しくは今後発表される情報を参照していただきたいが、現時点でも3年後にマセラティに必ず買い替えるという顧客には、とても有利な残価を保証するなどしていて、さらに他社ではやっていないような販売方法を今後、考えているのだというから楽しみだ。

 ニューラインアップについてざっくり触れると、MCプーラは「MC20」のマイナーチェンジ版となり、GTカーとしての要素も兼ね備えたスーパースポーツとなる。もう1台のフラッグシップのGT2ストラダーレは、GT2というGT2チャンピオンシップに参戦するための究極的なレーシングカーがあり、そのGT2マシンに限りなく近く、公道走行を可能としたレーシングマシンに近いモデルという位置づけとなる。

よりシャープになったMCプーラ

 MC20のときもそうだったが、いわゆるスーパーカーセグメントに属するクルマでありながら、マセラティらしく極めてすぐれた乗り心地も印象的だった。今回のMCプーラも、まだ公道では乗っていないが、おそらくそうに違いないことはサーキットを走ってもうかがい知れた。

MCプーラ。試乗車のボディカラーは特注色のAI AQUA RAINBOW MATTE - Fuoriserie
ボディサイズは4669×1965×1224mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm
フロントオーバーハングは1077mm、リアオーバーハングは892mm
搭載するエンジンは、最高出力630PS/7500rpm、最大トルク730Nm/3000~5500rpmを発生するV型6気筒3.0リッターツインターボエンジンで、最高速は320km/hを誇る。0-100km/h加速は2.9秒

 搭載されるF1由来のプレチャンバー(副燃焼室)燃焼システムを採用したV型6気筒3.0リッターエンジン「ネットゥーノ」は、ターボでありながら圧縮比が高く、レスポンスがいいのが特徴だ。

自然吸気のようなリニアなアクセルレスポンスと、ターボらしい盛り上がり感のある加速を兼ね備えていて、レッドゾーンの8000rpm強まで、勢いを衰えさせることなく回る。サウンドもV6としては重厚で、なかなか迫力がある。スポーツモードを選択すると、加速フィールもサウンドも相応に変わる。

フロントやサイドはMC20よりもシャープな造形になり、ダウンフォース向上とともに洗練されたデザインに仕上げられている
フェンダーには「MCPURA」の文字が入る
ボディサイドにはフレッシュエアをエンジンへと導くダクトが設けられている
エンジンルームの熱を放出するダクトを完備
フロントとサイドの造形変更に合わせてリアバンパーも形状が見直されている
試乗車のタイヤはブリヂストンの「POTENZA SPORT(ポテンザ スポーツ)」で、サイズはフロントが245/35R20、リアが305/30R20

 スーパーカーオーナーの中には、眺めているだけで年間1000kmほどしか走らないという人も少なくないそうだが、マセラティは違って、日常的に使いたいというユーザーに乗ってもらえているという。実際クルマ自体もそのとおり、普通にも乗れて楽しめるドライバビリティや取りまわし、パッケージを備えている。

ステアリングは上下がフラットになったタイプへ変更。オプションで上部にシフトインジケーターを内蔵したステアリングも用意している
内装はしなやかなグリップとラグジュアリーな手触りを両立させたフルアルカンターラ仕様

 前作のMC20に乗ったときにも最初に感じたのは、乗りやすさとバランスのよさだった。こんなに快適に乗れて、スーパーカーらしい刺激的な雰囲気も味わえてしまうクルマなどない。その思いが今回MCプーラに乗って再燃した。見た目だけでなく走りもより力強くシャープになり、よりスポーツカーとしての部分がうまく引き上げられている。

 あえて標準ではカーボンブレーキにしていないところもMCプーラらしいポイントで、日常での扱いやすさや音を優先したということだろう。

見た目だけでなく走りもより力強くシャープになっていた

 ドライブしたのは、コンバーチブルの「チェロ」だったので、せっかくだから途中から開けてみた。開けた姿がカッコイイのもチェロの特徴の1つだ。サイドウインドウとリアウインドウを上げると、風の巻き込みが一気に軽減されることにも驚いた。

オープンエアで走れば気分もさらに盛り上がる
【マセラティ】MCプーラルーフ開閉シークエンス(39秒)

地を這うようなコーナリングを実現するGT2ストラダーレ

 前述のとおり、そのMCプーラとGTレースに復帰するために開発されたレーシングカーの「GT2」の中間に位置するのが「GT2ストラダーレ」だ。カタログモデルとレーシングカーの要素を融合させ、極限のパフォーマンスを持ちながら公道も合法的に走れるというモデルとなる。

GT2ストラダーレ。試乗車のボディカラーはジアッロ・ジェニオ
ボディサイズは4669×1965×1222mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm
フロントオーバーハングは1076mm、リアオーバーハングは893mm
カーボンファイバーを多用することでMCプーラより計59kgの軽量化を実現。価格は4394万円~

 開発はマセラティGT2のチームが手がけており、エンジンパワーを増強させるとともに、車両重量の軽減、ダウンフォースを向上させることでその性能を一段と引き上げている。

前後に専用エアロパーツを採用し、フロントは+95kg、リアは+260kgのダウンフォースを発生する
フロントフェンダーには「GT2 Stradale」の文字が入る
MCプーラよりも大量にフレッシュエアを取り込むためにダクトにはカーボンファイバー製のカバーが設けられている
試乗車のタイヤはミシュランの公道も走れるサーキット用タイヤ「Pilot Sport Cup 2 R(パイロットスポーツ カップ2R)」で、サイズはフロントが245/35R20、リアが305/30R20。ホイール4本で18kg、ブレーキシステムで17kgの軽量化を実現している

 エンジンはドライサンプ化されたV型6気筒3.0リッターツインターボで、最高出力はMCプーラよりも10PSアップした640PS、最大トルクは逆にMCプーラより10Nm抑えられ720Nmを発揮する。MC20比で実に合計59kgもの軽量化にも成功しており、それは数値以上にドライビングパフォーマンスに与える影響が大きく、このカテゴリーにおいてもっとも俊敏な後輪駆動車となっているという。

搭載するV型6気筒3.0リッターツインターボエンジンは、最高出力640PS/7500rpm、最大トルク720Nm/3000~5500rpmを発生。最高速は324km/hを誇る。0-100km/h加速は2.8秒
内装はMCプーラと同じくフルアルカンターラ仕様
シフトボタンまわりはボディカラーと同じ黄色で囲まれている
シートは2脚ともカーボンファイバー製のセミバケットシートを採用。高いホールド感を発揮する。2脚で17kgの軽量化を達成している
リアにはラゲッジスペースも備えている
フランクの場所はダウンフォースを向上させるために、フロントバンパー下部から取り入れたエアを上方へ抜くためのダクトが設けられている(写真は施設内に展示されていた車両)

 イタリア北部に位置するバロッコのテストコースでは、わずか10PSしか違わないMC20が記録したラップタイムを5.5秒も上まわる結果を叩き出したというから相当なものだ。

 このラップタイム短縮に大きく貢献したのが高いダウンフォースだ。たしかにサーキットを走っても、まさしく地を這うようなコーナリングを体感できた。この感覚は他ではなかなか味わえないものだ。

地を這うようなコーナリングを実現

 刺激的でありながらあくまで扱いやすく、スリリングなのに乗っていて安心感があり、とてもハイパフォーマンスなのにどこか控えめなところもある。そんな器用なスーパースポーツを作れるのはマセラティしかないんじゃないだろうか。

スリリングなのに乗っていて安心感もある1台だった
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一