試乗記

注目の光岡「M55」の世界観に触れた! 古きよき時代のデザインエッセンスを再現した相棒にしたくなる1台

注目の光岡「M55」の「1st Edition」に触れる機会を得た

アメ車に憧れた日本車のデザインを、今の時代に合わせて再デザイン

 2023年11月、光岡自動車は創業55年を記念したモデル「M55 CONCEPT(エムダブルファイブ コンセプト)」を公開した。その後、2025年には6速MTの「M55 Zero Edition(ゼロエディション)」を限定100台で販売。2026年にはハイブリッドモデルのAT仕様「M55 1st Edition(ファーストエディション)」を予定販売台数250台で販売。さらに直近では6速MTの「M55 RS(アールエス)」を予定販売台数55台で販売することを発表した。

 それら反響はかなりのもので、当初販売した「M55 Zero Edition」は応募者数上限の350名に達してしまい抽選が行なわれたほど。「M55 1st Edition」も、2025年末の時点で約150台の予約が入っていたほどの人気がうかがえる。

ボディカラーは標準が「プラチナホワイトパール」「ソニックグレーパール」「プレミアムクリスタルレッドメタリック」「シーベッドブルーパール」の4色。オプションカラーが、試乗車の「ジョンマンゴー」、さらに「スカイスクレイパーグレー」「ブルーアイスランド」「オールドイングリッシュホワイト」「スプリングブルー」「パパイヤオレンジメタリック」の6色を設定している
ボディサイズは4735×1805×1415mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2735mm、最低地上高は135mm、車両重量は1520kg
シビックの全幅1800mmに対して5mmワイドになっている。全高は同じ
M55はシビックの全長4560mmに対して175mm長くなっている。リアバンパーの形状が複雑なのはシビックのテールランプの形状に由来している

 少量生産だから数字としては少ないが、実はクルマの調達がなかなか大変だったらしい。「M55」はホンダの現行シビックをベースとしているが、そのクルマは一度、光岡自動車名義で新規登録をすることが供給条件。

 納車時には中古新規登録となるため、車検が新車にも関わらず2年になってしまうところが注意ポイントだ。始めは100台を一括で買わなければならなかったが、「M55 1st Edition」以降はホンダから都度納入してもらう体制が整った。直近の「M55 RS」については調達交渉を重ねた結果、なんとか確保できたのが55台だったようだ。

ヘッドライトはクラシカルな丸目4灯を採用
ボンネットは中央とサイドにうっすらとデザインスリットがあしらわれている
フロントグリルは6角形のヘキサゴン柄を採用。ミツオカのエンブレムも配されている
フェンダーにはオレンジのマーカー型アクセントを備える。ウィンカーはサイドミラーにあるのでここは光らない
シャークグレーメタリック+マット切削のホイールはシビック純正だが、アメリカンマッスル風のホイールに履き替えるなど、さらなる個性を付与できるポイントだろう
流れるようなデザインに仕上げているサイドステップ

 今回はそんな貴重な「M55」の「1st Edition」をお借りすることができた。ベースとなるのはシビックe:HEV EXのもちろんAT仕様だ。実車を目の当たりにすると、どこか懐かしくもある雰囲気だ。

ボンネットには光岡自動車のシリアルナンバーが入っている
ドアを開けたところにはオリジナルステッカーもあしらわれている
リアの印象がシビックとはがらりと異なるオリジナルデザインのテールランプ
ダックテール風の「専用リヤスポイラー」は標準装備品
テールには「M55」のエンブレムもあしらわれる

 アメリカンマッスルカーの“ダッチチャレンジャー”をモチーフにしたのだと思ってはいたのだが、“ケンメリスカイライン”や“セリカリフトバック”のようでもある。エクステリアデザイン担当者はかつて「アメ車に憧れてデザインされた日本車のデザインを、今の時代に合わせて再デザインしてみようと思った」と語っていたのもうなずける仕上がり。リアガラスルーバーもオプション装着されており、1970年代のエネルギッシュな世界観がよみがえってくる。

オプション設定の「M55」刺繍入り専用レザーシートを追加すれば、より個性とオリジナリティが増す
オプションのレザーシートには「M55」のエンボス加工のほか、孔のあるオリジナルデザイン
ステアリング中央には「M55」のエンブレムが入る
「リヤガラスルーバー」はオプション設定となる
テールゲートを開けてリアバンパーの厚みを見ると、いかに全長が伸びているかがよく分かる
e:HEV EXグレードは電動パノラミックサンルーフも装備

 このデザインバランスを成立させるためにサイズもベースのシビックとは異なる。ボディサイズはシビックが4560×1800×1415mm(全長×全幅×全高)、M55が4735×1805×1415mm(同)となる。特徴的なのはやはり全長が175mmも伸びたことだろうか。

 ラゲッジを開ければその差は一目瞭然というくらい、フロントまわりも、リアバンパーまわりも延長されていることがうかがえる。オーバーハングはもちろん伸びるわけで、取りまわしもしにくくなるのは間違いないが、この独自の世界観があるのなら許せる。対して全幅は無理に広げなかったところが好感触。これなら1970年代の縦横比に近いかな、なぁ~んて感じるところが満載だ。

 インテリアもまた懐かしさに溢れている。オプションではあるが専用のレザーシートにはエアホールが与えられるほか、光岡自動車のエンブレムや車名も刻み込まれている。座り心地はベースモデルよりも硬質に感じるが、その感覚もまた古きよき時代を感じさせてくれるいいスパイスだ。

搭載するエンジンは、最高出力104kW(141PS)/6000rpm、最大トルク182Nm)/4500rpmの直列4気筒横置2.0リッターガソリンエンジンと、最高出力135kW(184PS)/5000-6000rpm、最大トルク315Nm/0-2000rpmのH4型モーターを搭載

思わず笑顔になれる、光岡らしいクルマ

 ここまでヒストリックな世界観に溢れてはいるが、走り出せばもちろん現代車だ。e:HEVは静かにモーター駆動で動き出し、とてもスムーズに速度を重ねていく。e:HEVだからアクセルを深く踏み込めばエンジンはステップシフトしていくのだが、日常域はいたって平和だ。

走りはシビックe:HEVのままだが、街中に出れば注目の的になることは間違いない

 これがミスマッチかと思いきや、コレはコレでアリと思えてくる。もしそれじゃ物足りないという人には、RSのMTモデルも準備されているとはさすがの体制だ。前後オーバーハングの大きさもカメラがあればそれほど苦にならないし、フロントは逆に見切りがいいかもなんて思えるところもある。

リアウィンドウのルーバーは視界的にはまったく問題ない

 また、オプションのガラスルーバーもルームミラーから見れば視界はほとんど妨げられていない絶妙な角度をキープしているところもさすがだ。実用性ありつつデザインだけで楽しむ、それもまたクルマの楽しみ方のひとつだろう。思わず笑顔になれる、実に光岡自動車らしいクルマだった。

デザイン重視で選ぶクルマがあってもいいじゃない! なんて思える1台だった
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一