試乗記
BYDのPHEV「シーライオン6」で和歌山県往復の旅 2WD/4WDの走りの違いとは?
2026年4月30日 08:00
往復1000kmオーバーのロングドライブで2WD/4WDを検証
和歌山県にある世界遺産、「高野山」を目指して。
2025年末に登場したてのBYD「シーライオン6」で、片道500kmの道のりをロングドライブする試乗会が開催された。高野山をゴールに設定した理由は、世界遺産を巡る公共交通機関としてBYDのEVバス「K8」が新たに6台採用されたから。その出発式に合わせて、シーライオン6を走らせた。
さてBYDといえばEV専用メーカーのイメージだが、今回試乗した「シーライオン6」は直列4気筒1.5リッターエンジンを搭載するPHEV(プラグインハイブリッド)だ。ちなみに同社は2008年に「F3DM」を本国で発売しており、実はこれが世界で一番最初の量産PHEVである。
現在BYDはパワートレーンの区別なく、SUVモデルを「シーライオン」シリーズに統一しており、今回試乗した「6」はDセグメントとなる。そのスリーサイズは2WD/4WDともに4775×1890×1670mm(全長×全幅×全高)で同じ。ホイールベースは2765mmだから、日本で言えばトヨタ「RAV4」「ハリアー」と同じクラスだが、少し大きめだ。そしてこの上のEセグメントに、ピュアEVとなるシーライオン7(4830×1925×1620mm[全長×全幅×全高]、ホイールベース2930mm)がラインアップされている。
その要となるエンジンは、どちらも1.5リッターの直列4気筒。2WDモデルは1498ccの自然吸気「BYD472QA」を搭載し、72kW(98PS)/122Nmの出力を発揮する。BYDは第5世代の「DM-i」ユニットで熱交換率46.06%という驚異的な数値をマークしたが、第4世代となるこのユニットも43.04%という実力の持ち主だ。一方、4WDモデルの「BYD4716ZQC」ユニットは過給機付きの1496ccとなり、その出力も96kW(131PS)/220Nmまで高められている。
バッテリは自社製のリン酸鉄リチウムイオン式「ブレードバッテリー」。その容量は両モデル共に18.3kWhだから、最新のDセグPHEVとしては控えめな数字か。
パワーユニット全体として見ると、2WDモデルは145kW(197PS)/300Nmのモーターを搭載し、システム最高出力は165kW(218PS)/300Nm。4WDモデルはフロントのモーター出力を150kW(204PS)/300Nmまで引き上げた上で、150kW(204PS)/340Nmのリアモーターを搭載。システム最高出力は238kW(324PS)/550Nmと、2WDモデルを大きく引き離している。
ちなみに0-100km/h加速は前者が8.5秒で、後者が5.9秒だ。代わりに燃費(WLTC値)は前者が22.4km/L、後者が18.5km/Lとなる。そして今回はその違いを、往復1000kmオーバーのロングドライブで検証してみる。
4WDは高速巡航やワインディングでの走りがかなりいい
まず最初に走らせたのは、4WDモデルの「Premium」(プレミアム)だ。これに大人3人と2泊3日分の荷物とカメラ機材を載せて、横浜のBYD本社から宿泊地となる和歌山県紀ノ川市を目指した。
センターコンソールのボタンを押して、少し待つとシステムが起動。小さなシフトレバーをDレンジに入れると4WDモデルは初手から無音で走り出す。走行モードは「ノーマル」。SOC(State Of Charge)設定はとりあえず30%でスタートだ。こうすることで電池残量が30%を切るまで、エンジンはチャージモードに入らない。ちなみに4WDモデルのEV航続可能距離は90km(WLTC値)、2WDモデルは100kmだ。
街中を走る印象は、EVそのもの。静粛性が高いだけでなく、アクセルに対するピックアップがいいのは4WDモデルだからだろう。高い着座位置と、広いフロントスクリーンで得られる視界は良好。その分だけ側方はAピラーの傾斜がややきつ目に感じられる(が、ロングドライブで慣れた)。
街中における運転席の印象は、なかなかにプレミアムだ。トヨタ車よりは少し硬めだけれど、ドイツ車よりはしなやかな足まわりと、肉厚なシートのおかげで乗り心地がうまくバランスしている。
対してリアシートにはやや硬さを感じた。マルチリンクは剛性感が高くていいのだが、ダンパーの縮み側減衰力とブッシュコンプライアンスも割と高めだから、突き上げたときに入力がダイレクトに入ってくる。リアシートのリクライニングは5段階もあり、レッグスペースも足が組めるほど広いのだから、もう少しだけ乗り心地をよくしてもよいと思うが、324PSの出力と2100kgの車重に対して、かなり生真面目に安全性を高めている。
よって高速巡航時や、ワインディングでの走りはかなりいい。速度が上がるほどに乗り心地はフラットになるし、4WDのおかげで直進性も高い。電動パワステのねっとりとした操舵フィールと足まわりのしなやかさはトーンがそろっていて、カーブでも姿勢を決めやすい。レーンチェンジでは切り返しと同時にアクセルを少し踏むだけで、ヨーモーメントを穏やかに収束できる。決してスポーティな身のこなしではないけれど、理屈通りに動かせば素直に走ってくれる実直さが好印象だ。
およそ60kmほど走らせたところでSOCは30%を下まわり、そこからエンジンがチャージを開始。ほどなく前輪にも駆動を直結した。その音質と音量は低めだが、まさに発電機と言える、一定の作動音が継続する。そして充電が30%を上まわると静かになった。SOCが30%を下まわればエンジンは再び稼働するから、上限の70%までレベルを引き上げて、電力を貯めてから再び設定を下げてEV走行するのも手だ。とはいえロードノイズや風切り音でエンジン音が相殺されるから、うるさいというほどではない。ちなみに駆動は常時AWDで、燃費を優先したFWD駆動にはならない。
気になったのは、インテリジェント・クルーズ・コントロール(ICC)の制御がやや甘いこと。特に操舵支援は車線の左側に寄る印象。また重心移動を細かく拾ってしまうのか、カーブでは操舵アシストが割と細かく作動した。ちなみにICCボタンをオフにすることで、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)のみに切り替えることもできる。
結局その行程はSOC25%設定のまま、556.5kmの道のりを1タンクで余裕をもって走り切り、初日の宿となる紀ノ川市に着いた。ちなみに給油量は36.43L(レギュラーガソリン)で、満タン法による燃費は15.27km/Lだった。
新東名の120km/h区間を100km/h程度で走ったことが効いたのだろう、途中事故渋滞を挟みながらも、ハイブリッドが苦手とする高速巡航を、しかも4WDモデルで走った数字としてはまずまず現実的な結果だ。ちなみに上限速度となる120km/hを出さなかったのは燃費のためではない。シーライオン6 4WDだと、ゆったりとしたクルージングが快適だったからだ。
2WDは4WDに比べて身のこなしが全体的に緩慢
翌日は宿泊地を出発していざ「高野山駅」へ。
EVバス「K8」に乗って弘法大師の眠る「奥の院」まで赴いた。
出足がスムーズかつ、変速ショックのないK8の走りはバスの運行には理にかなっており、車掌さんの小話を楽しみながら、立ったままでも終点の奥の院まで快適に移動することができた。ディーゼルエンジンのバスに比べて静粛性は圧倒的に高く、ゼロエミッションであることも環境保全につながる。その詳細はトラベルWatchでもレポートするので、そちらもぜひご一読いただきたい。
再びK8で高野山駅へと戻り、今度は2WDモデルに乗り換えて高野町周辺を走る。
日本仕様のタイヤは4WDモデルと同等の235/50R19サイズだが、乗り味はさらにしなやか系。優しい乗り味とモーターライドの組み合わせは実に穏やかで、文化遺産巡りの足としても非常にマッチングがよいと感じた。峠道での走りは、瞬発力こそ4WDモデルに劣るが、足つきのよさが際立った。
翌朝は横浜を目指すロングドライブとなった。
高速道路における2WDモデルは、やや安定性に欠ける印象だ。前席での乗り心地はとてもよいのだが、4WDモデルに比べ身のこなしが全体的に緩慢である。操舵応答性の鈍さは、足まわりの柔らかさが主な要因だろう。またリアモーターがない分、後輪軸まわりの抑えが効いていない。直進時の安定性や、レーンチェンジおよびカーブでの安定感も、リアタイヤの蹴り出しがある4WDの方が一枚上手だ。そしてこうしたリアまわりの動きが、後席の快適性にも少なからず影響していた。
復路は120km/h区間を、ICCできっちり制限速度通りに巡航してみた。興味深いのはチャージモード時のエンジン音で、自然吸気となる分だけ、音が大きく感じられた。また回転数も若干高そうだ。最終的には538.9kmの道のりを36.42Lで走り、燃費は14.7km/Lとなった。特別燃費走行をせず、厚木~横浜町田間の渋滞を挟んだ結果としては、こちらも現実的だ。
総じて4WDモデルだとやや足まわりが硬く、2WDモデルだとやや高速安定性に欠ける。BYDならここはズバッと電子制御ダンパーを投じて欲しいところだが、もう少しだけリアサブフレームまわりの剛性を高めれば、それも解決できそうな気がする。
とはいえその価格は2WDモデルが398万2000円、4WDモデルが488万8000円と、新型RAV4(PHEV)の600万円スタートという価格設定に対して、大きなアドバンテージを持っている。さらに補助金が加われば、圧倒的な現実味を帯びてくる。
ということで筆者のおすすめは、走りとプレミアム感のバランスが取れた4WDモデルだ。2WDモデルがもう少し質実剛健であればこちらをおすすめしたかったが、それはマイナーチェンジに期待しよう。





















