試乗記

【国内メーカー最新電動モデルイッキ乗り】スズキ「e ビターラ」、4WDモデルの印象は?

3月に行なわれたメーカー合同EV取材会。国内メーカーのBEV/PHEVを主とした最新電動モデルが一同に会し、各モデルに試乗することができた。今回はその第三弾としてスズキ「eビターラ」編をお届けする

 スズキ「eビターラ」はインドで生産されるスズキ初となるフルバッテリカー。トヨタとプラットフォームを共用する予定で、コンパクトクラスに向いたBEV専用プラットフォームは期待が大きい。

 ボディサイズは4275×1800×1640mm(全長×全幅×全高)で日本でも使いやすいサイズだが、スズキ車の中ではビッグサイズだ。デザインはアグレッシブ。スズキのこのクルマにかける勢いを感じさせる。

 バッテリは安定性が高く使いやすいリン酸鉄リチウムイオン。BYD製のブレードバッテリは釘刺し試験でも発火しないという強い耐性を持つ。容量は49kWhとロングレンジの61kWhの2種類があり、後者は4WDモデルが用意され、今回試乗したのは4WDモデルだ。

 サスペンションはフロントストラット、リアマルチリンクで欧州の起伏の多いコースを高速で走り抜けられるようにやや硬めの設定になっている。

 テストコースの荒れた路面では明確なショックが感じられたが、FF車より後軸にかかる荷重が大きい分、角が取れた乗り味になっていた。ピッチングが少ないのも乗り心地には効果的だ。

試乗車は「Z 4WD」(492万8000円)。eAxleの最高出力はフロント128kW/193Nm、リア48kW/114Nm。4WDの一充電走行距離(WLTC)は472kmとなっている

 ハンドリングはクイックでスズキらしい。キビキビとした動きが身上だ。しかもコンパクトSUVでありながらバッテリを床下に配置したことで重心高が下がり、ひとクラス上の安定性を手にしてコーナの旋回力も高い。

 BEVの魅力はアクセルを踏んだ瞬間に大きなトルクが出せること。約1.8tの重量(異例に軽い)を全く感じさせない加速力は魅力的。しかもアクセルの反応が素直でアクセルオフからも滑らかに加速できる。ドライバビリティは優れている。

 ただ室内外の質感はもう少し欲しいところ。またADAS系では必要な安全装備は全て備わっているが、レーンキープなどの介入に唐突感がある。

 500万円近いクルマだが、国の補助金を入れると300万円後半に収まる。こちらもスズキらしい価格戦略だ。スズキ初のBEVの完成度は高い。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛