試乗記

スズキ初のバッテリEV「eビターラ」の乗り味は?とりまわしは? 試乗して確かめた

スズキ「eビターラ」

グローバルBEVモデルがついに日本上陸

 スズキ初のクロスオーバーBEVとして、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された「eビターラ」が、ついに2026年1月16日に日本で発売となった。すでに、クローズドコースでのプロトタイプによる試乗は済ませていたが、今回ようやく一般道での試乗が叶った。クルマ社会のカーボンニュートラル実現のために普及が望まれるBEVを、もっと便利に快適に、世界中どんな道でも信頼できる走りで提供したい。そんな想いから生まれたというeビターラ。スズキらしさはまず、市街地でも扱いやすいコンパクトなサイズだ。

 4275mm×1800×1640mm(全長×全幅×全高)という数値は、現行のスズキ車としては最も大きなサイズとなるが、まわりを見渡せばプジョー・e-2008やアルファ ロメオ・ジュニア、ジープ・アベンジャーといったBEVと近しいサイズ。その中ではeビターラの全幅1800mmは最も大きく、地面にしっかりと踏ん張るようなワイドなスタンスが印象的だ。日本の道路事情では1800mmという全幅が「扱いやすさ」の1つの目安ともなっており、そこに収めてあるのは日本のユーザーにとっての安心材料となりそうだ。

eビターラの2WDと4WDの両方に試乗
スズキ初のバッテリEV(電気自動車)となるeビターラ。ボディサイズは4275×1800×1640mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm。最低地上高は185mmを確保している。車両重量は1700~1890kg。ロングホイールベース化、タイヤの大径化にもかかわらず、最小回転半径は5.2mを実現
エクステリアデザインは「ハイテク&アドベンチャー」をテーマに多角形や多面体構造を採用してSUVの力強さを、ライト類のクリアレンズやブルーの差し色などでBEVの先進感を表現。空力と軽量化を両立させた樹脂製ガーニッシュを採用した18インチアルミホイールを装着。組み合わせるタイヤは、225/55R18サイズのグッドイヤー「EfficientGrip 2 SUV」
ヘッドライトの点灯パターン。ウインカーはY字に光る
eビターラのインパネ
シルバー加飾付きのレザーステアリングを全車標準装備
シフトまわり
シフトはダイヤル式
アクセルペダルの操作のみで加減速をコントロールできる「イージードライブペダル」のスイッチを配置。SNOWモードのスイッチは2WDモデル専用。4WDモデルではヒルディセントコントロールスイッチとなる
ドライブモードスイッチ
4WDモデルはTRAILモードを搭載
スマートフォンのワイヤレス充電に対応
センターコンソールは2段になっている
メーターとオーディオ、ナビゲーションのシステムを統合したインテグレーテッドディスプレイを搭載
10.25インチメーターディスプレイ
エアコン関連の操作は物理スイッチ以外に10.1インチセンターディスプレイでも操作可能
シートヒーター、ステアリングヒーターも搭載
2WDモデルのXグレードではシート表皮がファブリックとなる
2WDと4WDモデルに設定されるZグレードではレザー調&ファブリックのシート表皮
荷室容量は5名乗車時で238~306L(VDA方式)を確保
リアシートバックは4:2:4分割可倒式シートを採用。荷物に応じてアレンジできる

 さらに大きな特徴が、熱や衝撃に強く耐久性に優れるリン酸鉄リチウムイオンバッテリを採用し、モーターとインバーターを一体化した「eアクスル」のEVシステムを搭載。バッテリ容量を49kWhと61kWhの2タイプを設定し、49kWhでは航続距離が433km(WLTCモード)、61kWhでは520km(Z/2WD)を達成していること。これまでコンパクトSUVのBEVではなかなか500kmを超えてくるモデルがなかっただけに、強みとなるはずだ。また-10℃以上ではヒートポンプシステムが作動し、ステアリングヒーターやシートヒーターによる直接暖房を採用。エアコンとの協調制御でヒーター消費電力を削減するなど、バッテリを大事に効率よく使うシステムも整っている。

 さらに、61kWhモデルには雪道や悪路も想定した4WDを設定し、2WDでも3つのドライブモード(ノーマル、エコ、スポーツ)に加えてスノーモードを設定しているところも注目すべきポイント。この4WDはいわゆる電動四駆の「ALLGRIP-e」で、前後に独立したeアクスルを配置し、「オート」と「トレイル」のモード選択によって、路面状況に最適な前後駆動力配分を独立制御するというもの。オートモードでは、通常は前後50:50の駆動力配分で加速するが、滑りやすい路面では前後70:30となるなど、さまざまなシチュエーションによって自動制御する。トレイルモードはタイヤが浮いてしまうような状況において、空転しているタイヤにブレーキをかけ、反対側のタイヤにトルク配分して脱出をサポートするという。4WDの登坂性能は、2WDの約1.4倍ということで、エスクードやジムニーといったユーザーからの乗り換え要望にも応えられるように、4WD性能にも磨きをかけているのはさすがだ。

ボンネット内にはエンジンではなくEVの制御システムが収まる
バッテリ容量は2WDモデルのXグレードが49kWh、Zグレードが61kWh、4WDモデルのZグレードが61kWhとなる。充電時間は90kWの急速充電の場合、バッテリ残量警告灯が点灯してから80%までの充電に約45分。9kWの普通充電の場合、バッテリ残量警告灯が点灯してから満充電までXグレードで約8.5時間、Zグレードで約10.5時間となる

2WDモデルと4WDモデルの走りの違いは?

 今回の試乗コースは一般道のみで、まずは2WDから走り出す。シートはしっかりめのサイドサポートがあって、ほどよいフィット感が好印象。インパネは物理スイッチが残されており、ブラウンのパネルがドアインナーまでのびていたり、ドーンと助手席とを隔てるセンターコンソールにもレザーでブラウンをあしらっていたりと、大人っぽい雰囲気。シフトまわりのピアノブラック使いは指紋などの汚れや傷が目立つという意見があり、その下に設けられた収納は、小柄な人だとシート位置が前方となって手が入りにくくなるので好き嫌いは分かれそうだが、全体的に上質感が感じられる空間だ。

 ダイヤルタイプのシフトノブは、指で右に回して「D」を選択する際にカチッとした手応えがあり、「ちゃんと入ったな」とブラインド操作でもわかりやすくて感心した。アクセルを踏み込んでいくと、発進直後から路面にしっかりと接地する安定感があり、落ち着きのあるステアリングフィールが上質な印象だ。ただしドッシリとしているということではなく、加速はとても軽やか。いきなりビュンと出るような演出はなく、右足の動きとリニアな加速フィールが味わえる。EV専用開発のプラットフォーム「HEARTECT-e」をはじめとする、軽量化と高剛性化の両立が効いているのか、タイトなカーブでの安定感と俊敏さも実感することができた。

2WDと4WDモデルの走りは安定感があり、落ち着きのある印象

 続いて4WDに乗り換えると、先ほどまでの軽快感を失うことなく、よりボディの一体感がギュッと詰まった感覚で、しっかりと路面に踏ん張る安定感が高まっていると感じる。一般道の制限速度内にも関わらず、車線変更の加速などでスポーツカーも顔負けかというような爽快な加速も垣間見えた。ただ、乗り心地に関しては路面の継ぎ目やマンホールの乗り越しなどで、ややバタバタとした振動が気になる場面があり、それは4WDでもさほど変わらないと感じたので、今後の熟成に期待。静粛性に関してはロードノイズや風切り音などが十分に抑えられており、EVならではの静かで快適な車内空間となっている。そして最小回転半径が5.2mという小回り性能の高さは、狭い路地でのUターンなどでしっかり実感することができた。

4WDモデルは軽快感もありつつ、より安定志向に

 また、スズキとしては、車両そのものだけでなくEVライフをサポートする体制構築にも力を入れており、スズキコネクトでは充電スポットの満空情報や目的地設定の自動送信、地図のリアルタイム更新などができる「ハイブリッドナビゲーションシステム」を採用。乗車前にあらかじめエアコンやシートヒーターをオンにしたり、駆動用バッテリを温めておくこともできる。購入から3年間の使用が無料というのも嬉しい。

 充電性能は、61kWhで90kWの急速充電だと約30分で10%から約65%まで完了。普通充電では6kWで約10.5時間で満充電となる。

BEVとして後発だからこそサポートを充実させた

 最後に価格は、スズキ現行車として最も高額となる399万3000円~492万8000円。ただし2026年1月から国の補助金が127万円に増額され、272万3000円から購入できることとなった。これなら、フロンクスとジムニーノマドの中間くらいの価格となり、射程圏内に入ってくる人も多いはずだ。トップグレードとなる「Z」の4WDで補助金利用後は365万8000円なので、500km以上の航続距離を持つコンパクトSUVでの同価格帯ライバルとなると、ヒョンデ・KONA Voyageくらいしか見当たらない。そう考えるとeビターラは貴重な存在だということが見えてくる。小さめでパワフルで、航続距離が長いBEVをお手頃価格で探している人に、ピッタリなのがeビターラだ。

eビターラ
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:中野英幸