試乗記
進化し続けるトヨタ「GRカローラ」の最新版、25式後期GRカローラのGR-DATに試乗した
2026年5月1日 13:30
進化し続けるGRカローラ
GRカローラのルーツは富士24時間レースでデビューし、スーパー耐久選手権に参戦している水素カローラにある。カーボンニュートラル社会実現のため、耐久レースに燃料として水素を、そしてその燃焼エンジンを持ち込みサーキットでアジャイルな開発を行なう。現実的な解まで持っていく活動は意欲的で今も継続中だ。
ヤリスより一回り大きいカローラスポーツにGRヤリスのパワーコンポーネントを搭載したGRカローラは、実用性の高さで世界中にファンが多い。サイズの関係でGRヤリスが販売されていない北米ではGRカローラがその役割を担っており、米国内で人気が上がっているラリーにも参戦する。
日本でも2022年の抽選発売では手に入らなかったユーザーが続出したが、英国のGRファクトリーが稼働することによって供給体制が整い、今後は納車待ちが少なくなることが期待される。
改めてだがGRカローラのホイールベースは2640mmとGRヤリスの2560mmより80mm長く、トレッドも50mmほど広い。それが優れた姿勢安定性につながり、デビュー時のグラベル試乗では乗りやすさに驚いた。4ドアの利便性も強みの反面、約200kg重くなる。
GRカローラはマスタードライバーのモリゾウこと豊田章男氏のアドバイスのもとに進化を続けており、2023年に発売された23式と呼ばれるモデルではサスペンション締結部の剛性アップやエアロダイナミクスを改善。さらに25式前期ではサスペンションに大幅な改良が加えられ、運動性能はドライバーの感性に沿った進化を遂げている。特にエンジンの最大トルクを370Nmから400Nmに引き上げ、GR-FOURと呼ばれる4輪駆動システムの制御を変更したことも大きい。
アップデートはそれだけに終わらない。半年後には25式後期が発表されニュルブルクリンクでのテストで得られた高Gにも適応できるボディ剛性(構造用接着剤を13.9m延長して32.7mもの長さになった)や冷却性能の改善が行なわれた。
前期と後期という比較的短い時間で改良が行なわれたのは、ニュルブルクリンクのテスト結果と英国GRファクトリーでの生産開始のタイミングもあり、後期型のデビューとなった。
もう1つ追加されたのは、メーカーオプションのJBLプレミアムサウンド。サブウーハーも含め8~9スピーカーとして、ANC(アクティブノイズコントロール)の改良でこもり音を低減した。またASC(アクティブサウンドコントロール)を装備し、加減速でのスポーツサウンドやアクセルオフ時のバブリング音を再現したレーシングサウンドも可能とした。
25式後期GRカローラのGR-DATに試乗
25式後期GRカローラで、試乗を行なったのは8速ATのGR-DATタイプ。装着タイヤはアドバン APEX(サイズ235/40R18)をBBSの鍛造ホイールに履く。
前期型ですでにATFウォーマー/クーラーと空冷式のATFクーラー、それにサブラジエターを装備したことでサーキットにおける連続高速走行にも安定した性能を発揮できるよう仕様変更が加えられていた。ダイレクトなドライビング感覚と2ペダルならではのイージードライブを両立させている。タイトなワインディングロードに連れ出してみた。
ステアリングの操舵力はスポーツモデルとして妥当な重さ。切り初めから自然な反応で応答遅れもなく素直な操舵感はスポーツカーにとって重要なポイントだ。またコーナーでの保舵も適度な手ごたえを持たせてしっとりと手になじむ。
ロアアームやステアリングギヤボックスとボディをつなぐ締結ボルトを剛性の高いフランジ形状に変えたことで常に横力がかかるボルトのほんのわずかなたわみも減じることができたという。ボディ剛性の高さは特に起伏の大きなコーナーでクルマとの一体感が高まったことで感じられたが、操舵応答性が素直なのはこのボルトの貢献も大きいそうだ。
サスペンションは固められているものの、乗り心地はわるくない。いわゆる締め上げられたレーシングカーのような硬さではなく、路面の凹凸に適応するしなやかさがGRカローラの性格を表わしている。
以前の25式前期で経験した長距離移動では、ハードなスケジュールだったにもかかわらず、高速道路から郊外路まで快適でストレスフリーだった。
コーナーでは「意外とロールする」感触だが、ロール速度はよくコントロールされ急な姿勢変化は起こさない。
常にスポーティでありながら安定性の高いハンドリングは吟味された前後のグリップバランスの賜物だ。
アップダウンの急なタイトコースも常に一定のリズムで走っていられる。ドライブモードをSPORTにするとレスポンスが高くなり各ギヤの守備範囲が広がる。ATの特性でもあるシフトアップポイントを高い回転まで維持することで高い駆動力を得られる。ECOモードで面白いのは、サイレンサーの工夫で排気音が小さくなり、早朝や夜間などに便利に使えそうだ。
前後駆動力配分はステアリング舵角などをセンシングしてそのときの最適駆動力に変化する。例えばコーナーのアプローチでは前輪の駆動力を大きくし、コーナーの半ばからは車体の姿勢に応じて後輪の駆動力を大きくしていく。これによってドライバーはオンザレール感覚でコーナーを旋回でき、4WDのありがたみを容易に体感できる。
グラベルモードを選択すると前後配分は50:50に近くなり、トラクションが強くなる一方でドライバーが曲がりやすい姿勢を整える必要がある。TRACKモードは旋回力を強くしながら後輪に流す駆動力も速い。それぞれ違う4WDの性格を感じられ、ドライバーの好みでモードを選択できるのでGRカローラの異なる面を見ることができる。
8速ATのGR-DATは前述のように守備範囲が広くダイレクト感もある。たとえばシフトアップ時はつなぎ目のない変速でハンドルに集中できるのはうれしい。ただ、コーナーの立ち上がりでは一瞬の間があっての加速、下りではダウンシフトが遅れる傾向にある。
例えばTRACKモードでは変速ショックを度外視した速いシフトができるようになると面白いだろう。2ペダルは今や当たり前の時代。ATの進化はモータースポーツに限らず必要だ。GR-DATへの期待は大きくなる一方だ。
25式後期で採用されたクールエアダクトはサーキットやラリーでの連続走行で高負荷がかかった場合にエンジンルームにたまった熱気を吸気することなく、直接クールエアをフロントグリルから吸い込める回路が開くようになっている。GRカローラ開発陣のこだわりの配慮がクルマを熟成していく。











