試乗記

氷上で「GRヤリス」「GRカローラ」競技仕様に乗ってみた、それもスパイクタイヤ仕様で

GR-FOURはあらゆるシーンで楽しめるオールラウンダー!

北海道の糠平湖でGRヤリスとGRカローラの競技仕様に乗ってみた

まずはテスト車両上がりのGRカローラに試乗

 北海道の糠平湖においてGRヤリスとGRカローラに乗ってきた。それも今じゃめったに拝むことができないピンスパイク付きのラリー仕様だ。これまでスパイクタイヤを履いた経験は15年くらい前に1日だけという若者(?)なだけに、きちんと乗りこなせるのかが心配だ。それでも気を引き締め存分にGRの世界を味わってみたい。

 早朝は氷点下20℃にも達する糠平湖に用意されていたGRの車両はどれもこれもラリー仕様。普段見る世界とはまるで違う感覚で、車高は高いし泥除けはついているし、車内に入ればロールケージは入っているしとバリバリ競技用。始めに与えられたのはテスト車両上がりのGRカローラ カモフラージュ仕様で、カラーリングだけじゃなく中身もいろいろ普段とは違っていた。

 なかでも最も興味深いのは油圧式のサイドブレーキが与えられていたことだ。これが後に登場するGRヤリスの縦引きサイドブレーキにつながったのかと思うと感慨深い。また、ステアリングは小径になっているし、エンジンをスタートすればメーター内は警告灯がいろいろと付きっぱなしになっている! 聞けばABSをキャンセルしているからとのこと。さらに出発前には「このクルマは等速トランスファーになっています」とのアナウンス。前後駆動力配分は50:50の固定状態らしい。

テスト車両上がりのGRカローラ
GRカローラが装着していたのはなんとスパイクタイヤ
室内では油圧式のサイドブレーキが目を引く

 これはきちんと曲げていかねばどうにもならなそうだなと及び腰にもなったが、フル制動や旋回を大袈裟にやってみると、全面氷上の糠平湖でもクルマが即座に要求に応えてくれるからおもしろい。

 まずはとっても難しそうなブレーキングだが、とにかく止まる。直線後半では160km/hくらい出てしまうのだが、「ここってドライ路面でしたっけ?」っていうくらいにグッと減速してくれるほど。あまり踏みすぎるとタイヤはロックしてしまい、エンジンストールに陥ることもしばしばである。

ストレート後半では160km/hにもおよぶスピードが出るものの、GRカローラはしっかり止まってしっかり曲がってくれる

 その際、ストローク豊かなサスペンションはフロントが一気に沈み、リアは跳ね上がりつつ路面を掴むような姿勢になりコーナーへと進入。ステアリングを切り込めば横方向が弱いと言われていたスパイクタイヤがきちんと向きを変え、テールが横にスーッと滑りながら姿勢を整えていくから安心。そこから先はアクセル全開! 多少テールがスライドしようが前に前にと引っ張ってくれる。これぞ四駆のおもしろさってところだろう。

 途中、試しに油圧サイドブレーキも使ってはみたが、ちょっと力がいるし、タイトターンじゃないと出番はなさそうな感覚。まあ、それ以前にこんなシチュエーションに慣れていないから使いこなせないんでしょうけれど……。そんなインプレを得たところでお時間となり、次なるクルマへと移動となってしまった。

GRカローラ糠平湖その1
GRヤリスにも試乗

 続いて試乗したのはGRヤリス。基本的には先ほどと同様の仕様となる。

 走れば200kgほどは軽いということもあってとにかく手の内に収めやすい。ノーズは鋭くインをつき、そこから派手にスライドしながらトラクションを入れても即座に収束できる感覚に溢れている。3気筒エンジンにショートオーバーハング、そしてルーフをカーボンにしてまで軽量にこだわったところが活きているのだろう。コンパクトなボディで雪壁にぶつける心配がないところもイイ!

 慣れてきてペースが上がりどんどん派手に動かし出したところで試乗は終了。許されるならもっともっと走っていたかった。それくらい氷上+ピンスパイク+GR-FOURの組み合わせはたまらない。どうせなら、こんなツアーをGRガレージとかでやってくれませんかね? オーナーが遊びにきたらピンスパイクだけレンタルとか。そんな世界を広げなきゃ、GRカローラもGRヤリスももったいなさすぎる! 本気でそんなことを思った氷上試乗だった。

氷上でピンスパイク+GR-FOURの組み合わせはたまらない魅力。もっと走りたい、そんな気持ちにさせてくれた

最新のGRヤリスとGRカローラで雪上試乗も

雪上試乗ではGR-FOURの恩恵がしっかり感じられた

 氷上に別れを告げ続いてやってきたのはワインディングだ。ここで最新のGRヤリスとGRカローラを乗ってみることに。もちろん等速トランスファーはついていないし、スタッドレスタイヤである。走ってみてまず感じるのはタイヤのグリップがない状況ながらきちんと曲がっていけることだった。等速トランスファーじゃないGR-FOURはコーナー進入でスルッと曲がり、コーナー立ち上がりではトラックモードの連続可変トルク配分を使うとリアにトルク配分を行なうことでニュートラルな姿勢で立ち上がるのだ(雪道でトラックモードを使うのは少々マニアックだが)。

 今回改めて感心したのはGRヤリスのDATの仕上がりだ。Dレンジおまかせでずっと走っていてもフラストレーションが溜まるようなことがないのだ。意図した通りにシフトしてくれるおかげでステアリング操作に集中できるところがうれしい。細かく言えばフロントまわりがMT仕様に比べて30kg近く重くなってしまうのだが、それよりもシフトミスなく走れてしまうほうが雪道ではありがたい。

25式GRカローラにも試乗

 今回のトピックだった25式GRカローラは、構造用接着剤の塗布範囲を13.9mも延長。フロントの両サイドフレーム、フロア、リアホイールハウス周辺に追加し、これまでの18.8mと合わせてトータルで32.7mにも及ぶ塗布範囲となったところがニュースだ。また、JBLプレミアムサラウンドシステムを搭載し、スピーカー数を8から9へと変更し、ANC(アクティブノイズコントロール)とASC(アクティブサウンドコントロール)を搭載。バブリングや排気音の増強といった演出も与えることが可能になった。

 雪上ワインディングでは少ししか乗れなかったが、その走りは地に足がつき確実に走れる感覚に溢れていたことが印象的だ。別の機会にこのクルマをオンロードで走った際、足まわりが今まで以上にきちんと動くようになったことがかなり好感触だった。それは同乗者でも気づくレベルで、荒れた路面における走りやすさやインフォメーションの濃厚さは別格。またもや着実に進化していることが肌で伝わる仕上がりだった。

 GR-FOURの仕上がりはまさにオールラウンダー。街乗りからサーキット、そして氷上まで、あらゆるシーンで楽しめるのは間違いない。オーナーになったらあらゆるシーンで試してみて欲しい1台だ。

GR-FOUR仕様の2台はあらゆるシーンで走りが楽しめる感覚にあふれていた
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。