試乗記

ホンダの新型「CR-V」(6代目)がデビュー! 雪上で味わう4WDセッティングの妙

新型CR-Vを雪上で試乗

新型CR-Vの主たる進化点

 6代目「CR-V」の大本命がようやく日本に導入される。これまで海外では展開していたが、日本国内には燃料電池モデルのみという現実味のないラインアップ。実は2022年に先代モデルが販売終了となり、その直後に先代CR-Vと近しいサイズの「ZR-V」が登場したということもあり、そもそも日本にCR-Vを入れる予定はなかったのだとか。けれども「海外で売っているのに日本でCR-Vが買えないのはいかがなものか?」というファンからの要望もあり、考えを改めてハイブリッドユニットのe:HEVを搭載したモデルの導入に踏み切ったというのがこれまでの流れだ。今回はそんなCR-Vを北海道上川郡鷹栖町にあるホンダのテストコースで試す。

 実車を目の当たりにするとZR-Vに比べてサイズはひとまわり大きく、ホイールベースが45mm延長されていることもあり後席の居住性やラゲッジが拡大されていることが理解できる。海外のように7人乗りがラインアップとならなかったのは残念にも思えるが、それは今後の要望次第といったところか? 堂々としたスタイル、そして燃料電池モデルのようにノーズを伸ばしていないこともあって、まとまりあるエクステリアになったのだと感じられる。

ホンダが2月27日に発売する新型「CR-V」(6代目)にテストコースで試す機会を得た。新型CR-Vはスポーティグレードの「e:HEV RS」、日本専用グレードの「e:HEV RS BLACK EDITION」を設定し、前者は2WD(FF)と4WDを、後者は4WDのみの設定。価格は512万2700円~577万9400円。試乗車は「e:HEV RS BLACK EDITION」
「e:HEV RS BLACK EDITION」のボディサイズは4700×1865×1690mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm。車両重量は1830kg
足下では微小入力から大入力まで最適な減衰力を発揮する振幅感応型ダンパーを全タイプに採用するとともに、タイヤ内部で発生する不快な共鳴音を打ち消す「ノイズリデューシングホイール」を採用
インテリアではGoogleアシスタント、Googleマップ、Google Playに対応する「9インチ Honda CONNECT ディスプレー」を搭載。BLACK EDITIONではHonda SENSING 360、ヘッドアップディスプレイ、電動パノラミックサンルーフ、運転席&助手席シートベンチレーションなどが専用装備される。走行モードはSPORT/NORMAL/ECON/SNOW/INDIVIDUALの5モード設定
新型CR-Vではステアリング角度を従来の28度から25度に変更し、より垂直に近いポジションとした。セダンライクで運転しやすく、体格差を問わず自然に操作できる運転姿勢を実現したという。また、後席足下スペースは先代比で16mm拡大し、クラストップレベルの広さを確保するとともに、後席リクライニングを2段階から8段階へと多段化。2列目シートはスライド機構も備わった

 搭載するパワートレーンはスペックだけ見ると他の2.0リッター e:HEVとさほど変わらずといった印象なのだが、実は2モーター内蔵電気式CVTに、ロックアップLowを追加したところが新しい。e:HEVは基本的にモーター駆動であるが、高速巡航時の低負荷状態ではエンジンとタイヤを直結できるモードがあった。それを低速側にももう1つ加えたところが新しい。これはキャンピングトレーラーなどを引っ張るいわゆるトーイングを目的としたもの。低速域で低負荷の時に発動されるそのシステムは、トーイング時にモーターが高温になるのを防ぐと同時に、トーイングしていない時にも燃費に貢献するという。

パワートレーンは2.0リッター直噴アトキンソンサイクルエンジンに2モーターハイブリッドの組み合わせ。エンジンの最高出力は109kW(148PS)、最大トルクは183Nm。モーターの最高出力は135kW(184PS)、最大トルクは335Nm

 駆動方式はFFとAWDの2種類で、今回はAWDモデルのみの試乗。搭載される四駆システムはプロペラシャフトを介してリアに駆動力を与える「リアルタイムAWD Intelligent Control System」。以前はアクセル開度、車輪速、そして前後Gセンサーを用いて駆動力を配分していたフィードフォワード制御だったが、新型はヨーレートセンサー、ステアリング操舵角センサーを加え、リアルタイムで理想状態にするフィードバック制御となっている。

 シャシーもまたこだわりに溢れており、フロントのサブフレームはアルミダイキャストを採用することで5kgの軽量化を実現すると同時に、フロント接地点剛性を向上。リアのサブフレームは支持マウント剛性を15%アップしたほか、スティフナーを前後方向に入れてリニアな挙動を実現。さらにボディのリアまわりにもスティフナーやバルクヘッドを追加したほか、ボディ開口部やフロアの結合部に構造用接着剤を盛り込むなど、SUVであっても走りを決して諦めないという姿勢を貫き、究極のオールラウンダーを目指したという。

CR-V、ZR-V、ヴェゼルに共通するリアルタイムAWD

さっそくテストコースに挑む

 走れば車重1830kgの巨体がストレスなく動くから感心する。静粛性豊かに静かに走り出すのだが、40km/hくらいで巡航状態になると直結モードに移行したことがモニターで分かる。というか、正直に言えばモニターでしか分からない。あまりにすべての制御がスムーズに行なわれている。

直結モードになるとモニターに描かれるエンジンの部分に歯車のようなマークがあらわれる

 それはコーナリングを行なってみても同様。フリクションなくスムーズに切れ込むステアリング、旋回に入るとリアの駆動をスッと抜いてもっと曲がり出す挙動、そして立ち上がり加速では強烈にリアに駆動力を与えてニュートラルに駆け抜ける。この際、フロントのグリップは決して外さずに動き続けるところがたまらなく気持ちよく、安心感が得られる。また、スタビリティコントロールの動きに抑え込まれるようなストレスは感じず、滑らかに全ての挙動が連続して行なわれていくところがうれしい。

制御のスムーズさにおどろくとともに、走りの気持ちよさに感心した

 今回の試乗では比較対象にZR-V、そしてヴェゼルも同じ環境にあった。ZR-Vに乗り換えると200kgほど軽いことやホイールベースが短いこともあり、CR-Vより運動性能的には優れていると思えるところがある。乗り心地もCR-Vは重厚でゆったり、ZR-Vは軽快でキビキビといった性格の違いが感じられた。

ZR-V

 ヴェゼルに乗り換えるとその傾向はより一層高まる。シャシーはフィット系をベースとしており、これだけ今回の中では兄弟とはならないのだが、ZR-Vに比べれば200kg弱軽い車重もあってさらに軽やかに走っていく感覚に溢れている。軽さもあって多少行き過ぎたとしても止まってくれるブレーキングも安心だ。

ヴェゼル

 すべてのクルマで共通している部分は、やはり「リアルタイムAWD Intelligent Control System」の仕上がりだろう。前述したCR-Vの動きがどのクルマでも展開されており、フロントタイヤは絶対にグリップを失わない制御の絶妙さがたしかに存在するのだ。「ホンダの四駆はコレだ!」といえるほどの味がサイズが違えど共通して感じられたことがおもしろかった。

 逆に言えばCR-Vはあの巨体をよくぞここまで運動性能豊かに作ったものだと感心せずにはいられない。SUVであること、そして重量があることを言い訳にするなとばかりに挑んだ数々は、確実に実を結んでいるのだと思えるものだった。それくらい走破性は豊か。過信しないようにブレーキングは早めにということを忘れずに、そんなことを思わせる仕上がりだった。

3モデルともに「リアルタイムAWD Intelligent Control System」の仕上がりのよさを感じた。新型CR-Vの公道試乗も心待ちにしたい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。