試乗記

「神に祈る時間」は克服されたのか? 開発中の「GRヤリスMコンセプト」に下山で同乗試乗 佐々木雅弘選手の激烈運転テクニックを味わう

新開発の2.0リッターエンジンをミッドシップ4WDにレイアウト

トヨタ自動車がGRブランドの本格スポーツカーとして開発中の「GRヤリスMコンセプト」。現在は新型2.0リッターエンジンを搭載する方向での開発が続いている

GRヤリスの「神に祈る時間」を根本対策するために開発された「GRヤリスMコンセプト」

 トヨタ自動車がGAZOO Racingブランドで開発中の「GRヤリスMコンセプト」。GRの名を世界中に知らしめたGRヤリスをベースに開発されているクルマで、現在は新開発の直列4気筒2.0リッター「G20E型」エンジンをミッドシップに搭載し、GRヤリスに搭載されている4WDシステム「GR-FOUR」を前後逆に搭載する形のレイアウトを採用している。

 このクルマの開発のきっかけは、トヨタのマスタードライバーでありモリゾウ選手としても知られる豊田章男氏が、GRヤリスに「神に祈る時間」があると指摘したことに始まる。この「神に祈る時間」とは、フロントエンジン+4WDのGRヤリスのコーナリング中に存在するもので、コーナリング中に積極的な姿勢コントロールが行なえない時間帯を指す。豊田章男会長のインプレッションの中に現われ、コーナリング中にそれ以上アクセルを踏むと外に膨らんで行ってしまうアンダーステア的な特性が出ることを指している。

 GRヤリスが搭載するGR-FOURでは、ジェイテクトのITCC(Intelligent Torque Controlled Coupling)という電子制御カップリング機構を採用することで前後の駆動配分を自由に変更することができるようになっているが、この駆動配分変更でも対応はできなかったようで、「神に祈る時間」の短縮のため本格的な構造変更を決断したクルマが「GRヤリスMコンセプト」になる。

 具体的にどのような構造変更が行なわれたかというと、一言で言えば現在のGRヤリスのパワートレーン配置を前後逆にしたものになる。

 エンジンとトランスミッションは後方に配置されミッドシップレイアウトを成立。そこから前方へとプロペラシャフトで駆動を導いている。但し、リアの駆動系をコンパクトにまとめるために、駆動軸は一旦後方へ導かれ、カウンターギヤでエンジン直下に置かれ、前方へと伸びる。

 齋藤尚彦氏によると、トランスミッションから直接前方に導いてしまうと、どうしてもパワートレーン系が長くなってしまい、GRヤリスの後部に納めるのが難しくなってしまうという。

 そのために、一旦駆動軸を後方に導きカウンターギヤを使って1対1で接続。前方にあるITCCカップリングに導く。ただ、今回初めて明かされた話だが、「実はカウンターギヤと言いながらチェーンで接続しているんです」(齋藤尚彦氏)とのこと。ギヤを直接接続するのではなく、チェーンを使って駆動力を伝えている。

GRヤリスMコンセプトでは、ミッドシップだけに冷却にさまざまなアイディアを持ち込んでいる。後方のGRヤリスMコンセプトは屋根上にインタークーラーを設置している
開発中のためか、リアには大きな穴が開いている。これは冷却も兼ねているのかもしれないが、メンテナンスにも便利そうだ
リアハッチを開いたところ。ところ狭しとパイプが走り回り、冷却風を導いている

 チェーンを使った場合に気になるのは、チェーンの経年劣化によるたるみや、チェーン切れの問題。チェーンのテンションをどうコントロールしているかということになる。これに関して齋藤尚彦氏は、「一般的なテンショナー」と答えており、それで十分駆動力を伝えられるということなのだろう。

 ギヤではなくチェーンで作られていれば、(車高など)将来的なレイアウトの変更にも対応しやすく、逆転GR-FOURとしての自由度も高まる。

下山の第3周回路を走るGRヤリスMコンセプト
開発ドライバーを務める佐々木雅弘選手
GRヤリスシリーズ全体の開発を率いる齋藤尚彦氏

GRヤリスの4WD制御であるGR-FOURの駆動力を基本的にリア側に増速配分、GRヤリスMコンセプトは基本的にフロント側に増速配分

 GRヤリスの採用する4WD制御であるGR-FOURは、いわゆるアクティブトルクスプリット4WDシステムになる。フロントに搭載されたエンジンからの駆動力をトランスミッションに渡し、変速された駆動力を電子制御カップリングであるジェイテクトのITCCによって後輪へと導く。この電子制御カップリングはリアデフ直前にあり、ここで駆動力を多板クラッチによって前後へと配分する。

 そのため一般的なクルマであると、フロントにエンジンとトランスミッションがある場合、クラッチを締結しない場合は前100:後0、クラッチを全締結した場合は前50:後50という駆動力配分となる。

 ところがご存じのように、GRヤリスではリア側の駆動力を50以上に持っていくことが可能となっている。これはGRヤリスの持つ、特殊な設定によって可能となっている。

 GRヤリスの開発スタッフは同車のデビュー時に、「通常、前後のデフのギヤ比が等速(同じ)場合は電子制御カップリングを直結すると50:50になります。しかし、このGRヤリスの場合は、電子制御カップリングがつかめばつかむほど(締結がきつくなればなるほど)、リアにトルクが流れていくようにしています。40:60、30:70、さらにもっとつかめば20:80などになります。タイヤでいうと、リアタイヤが速く回っているようなことになります」と語っている。

 つまり前輪の回転数に対して、後輪へトルクを持って行くプロペラシャフトを増速していることになる。ITCCを全締結した場合、前輪に対して後輪が速く回っており、トルクはどんどん後輪側に流れていく。前輪が滑るなど特殊な状況では前輪を制御することで前0:後100という状況が出現し、これがFF的にもFR的にもなるというGRヤリスの4WD制御システム「GR-FOUR」のキモになる。

 具体的には、フロントデフ・リアデフとの比がわずか0.7%「歯車の歯1つ程度」(GRヤリス開発スタッフ)異なっており、後輪側が増速されている。これは、モリゾウであるマスタードライバーの豊田章男氏らGRヤリス開発ドライバーの実走によって決まった数値とのことで、実際に走り込むことで決定した。

 GRヤリスに搭載されているITCCは、前輪のトルクを後輪に配分するという思想ではなく、増速されているためそのままでは後輪に流れてしまうトルクを、電子制御クラッチによって前輪に持って行くという思想で動作している。

 GRヤリスMコンセプトでもこの比は同様とのことで、ジェイテクトのITCCによる電子制御クラッチは、リア側にエンジンとトランスミッションを置くため、フロントデフ直前に配置。そこで直結では増速されてしまう前輪のトルクをITCCによって電子制御することでリア側に流していく極めて柔軟性の高いシステムを採用している。

 ちなみにGRヤリス、GRヤリスMコンセプトの持つ特殊な機構としたが、一般的にはあまり公表されていないが、マツダの新世代4WD制御システム「i-ACTIV AWD」も同様の仕組みを採用している。つまり、後輪を増速しているFFベースの4WDシステムとなり、後輪の方の配分トルクを大きくする状況も作り出すことができるようになっている。「Mazda3」から搭載が始まった新世代のi-ACTIV AWDに雪道で試乗したことがあるが、やけにFR的な動きをするのを疑問に思っていた。

 マツダに確認したところ、やはり後輪側を増速している機構を持っているとのことで後輪側の増速割合は約1%。つまり、GRヤリスよりも増速割合は大きく、このi-ACTIV AWDでもジェイテクトのITCCを電子制御カップリングに使っている。タイムライン的にはi-ACTIV AWDの登場の方が早く、詳しい方であればフォルクスワーゲンの4WDシステム「4MOTION」もハルデックスカップリングを使い、同様の機構を持っていた車種があるのをご存じだろう。

GRヤリスMコンセプトに搭載される新開発「G20E」型エンジン

 このGRヤリスMコンセプトに搭載されるエンジンは、トヨタが新開発中のDOHC 2.0リッタ-4気筒エンジンの「G20E」型。市販車での搭載を目指しており、トヨタ自動車のCTO(最高技術責任者)である中嶋裕樹副社長は、「縦にも横にも搭載できるエンジン」と謎の表現をしている。

 柔軟なパワースペックを持ち、GRヤリスのG16E型が3気筒1.6リッターで約300馬力出ているため、2.0リッター4気筒に期待される400馬力オーバーに中嶋氏は自信を見せていた。市販スペックでは400馬力程度と予想されているが、トヨタのエンジンに詳しい人によると、これはレーシングエンジンとしても使えるベースとして作られており、スーパーフォーミュラやGT500で使われている「NRE」の置き換えも視野に入れているとのこと。

 具体的にはヘッド交換などで600馬力程度をスコープにしており、汎用レーシングエンジンとして活躍した「3S-GE型」をイメージしている。市販エンジンをレーシングエンジンとして使うことで、現在は門外不出の特殊技術の詰まったエンジンを使っているがゆえに高くなっているレースのコストを引き下げ、多くのチームが参加できるようになる。

 これは、HRC(ホンダ・レーシング)も同様の方向性を志向しており、シビック TYPE Rに搭載されている「K20C型」エンジンをチューンアップしていくことで、スーパーフォーミュラのシャシーに搭載したいとしている。目標スペックは最高で600馬力。トヨタとホンダの目線がそろっている部分だ。

 HRCとしては、このようなエンジンができることでシャシー更新で使い道のなくなる(フォーミュラカーは、エンジンを構造体の一部として使っている。そのため特殊技術の詰まったNREはHRCが回収。使いようのなくなったシャシーだけが残る)旧シャシーを再利用。例えば、SF23が導入された際にSF19シャシーが余るなどしたが、そのようなシャシーをアジアのモータースポーツに提供し、よりフォーミュラカーレースをグローバルに展開していこうとしている。

 話がだいぶ脱線したが、開発中のGRヤリスMコンセプトは、400馬力以上というG20Eエンジンを搭載する。このエンジンを搭載した理由は、何よりもパワーが欲しかったため。ラリー2でも使用され、現代のレーシングエンジンとして1級の力を示している1.6リッター 3気筒のG16Eエンジンを超える、圧倒的なパワーを欲していたためだ。

 そして、GR-FOURによって前輪も駆動。前輪も駆動することで単にリアハッピーなクルマではなく、ラリーやサーキットで通用する本格的なレーシングカーを作り上げようとしているのだ。

開発中のGRヤリスMコンセプトは4輪ストラットサスペンションを採用

 そして、このGRヤリスMコンセプトは、単にGRヤリスの前後逆転モデルといえないほどボディまわりに手が入っていた。そもそもGRヤリスは、一般的なコンパクトカーであるヤリスをベースに、リアまわりのサスペンションの余裕を作り出すために、前半はヤリスのGA-Bプラットフォーム、後半はカローラのGA-Cプラットフォームで作られている。後半部をヤリスより一回り大きいGA-Cプラットフォームとすることで、マルチリンクサスペンションにでき、余裕のある設計となっていた(同時に、GRカローラへの発展も容易になった)。

 ところが、このG20E型エンジン搭載のGRヤリスMコンセプトでは、リアはストラットサスペンションになっているという。この点を齋藤尚彦氏に確認すると、「3気筒と4気筒では長さが違うので場所がなかった」とのこと。

 ご存じのように、フロントサスペンションに採用されているストラットサスは単純な構造だけに、エンジンまわりを囲むように配置できる。一方、マルチリンクサスペンションは、多数のリンクで自由度の高いジオメトリを得られる代わりに場所が必要になる。3気筒エンジンでは何とかなったが、4気筒ではコンパクトに仕上げるという意味でもリアをストラットにしたという。

 この齋藤尚彦氏の「3気筒では収まった」という発言には、GRヤリスMコンセプト初号車の存在がある。盛岡のラリチャレで登場し、今回ダートコース試乗の機会を得られたGRヤリスMコンセプト初号車は、G16E型エンジンのままで、リアのサスペンションもGRヤリス同等のマルチリンク。そこから発展する過程で、リアはストラットへと変更された。

 ストラットのメリットは、シンプルなだけに整備性がよく、ラリーなど厳しい環境での利用に向いている。また、力の作用点も高い位置に配置され、タイヤへの力の入力も垂直成分が多い。つまり、グリップの薄い領域(雪道やヘビーレインなど)での接地性を確保しやすい。一方、先述したようにマルチリンクと比べるとジオメトリ変化の自由度は少なく、プログレッシブなコーナリング特性を実現しにくいという欠点がある。

 もちろん、マルチリンクとすることもできるが、さらに車幅はリアが広がり改造範囲が大きくなる。齋藤尚彦氏の視野にはアマチュアラリーでの使用があるようで、ストラットでという方向で開発が進んでいた。

 ちなみに、4輪ストラットで成功したクルマとしては、スバルの初代インプレッサがある。レガシィよりホイールベースを短くして高剛性としたボディに、4輪ストラットを組み合わせシンプルで素早い動きを実現。そこに、280馬力のEJ20型エンジンと、やはりシンプルな4WD機構を組み合わせていた。その結果は多くの人が知っているとおりで、WRC(世界ラリー選手権)で大活躍。スバルの黄金時代をもたらした。

トヨタ自動車 テクニカルセンター下山の第3周回路で同乗走行

GRヤリスMコンセプトの開発ドライバーである佐々木雅弘選手との同乗走行

 エンジンの話、駆動系の話、サスペンションの話が長くなってしまったが、今回GAZOO Racingから開発中のGRヤリスMコンセプトにトヨタテクニカルセンター下山の第3周回路で同乗走行する機会をいただいた。

 しかも、比較同乗走行というもので、GRヤリスは開発ドライバーでありレーシングドライバーである大嶋和也選手のとなり、GRヤリスMコンセプトは同じく開発ドライバーでありレーシングドライバーである佐々木雅弘選手のとなりになる。

 最初はベンチマークであるGRヤリスからとなるが、大嶋和也選手は先日富士のGT500 3時間レースで2位表彰台を獲得したばかり、そこから下山に移動して次のGRヤリスの開発を行なっており、今回は現在発売されているGRヤリスでの同乗走行になる。

 大嶋選手もこの同乗走行を楽しみにしており、普段はデータ比較のために決められた速度での周回が多く、制限なしで走ることができるのは珍しいという。下山の第3周回路は、ニュルブルクリンク24時間レースが開催されるニュルの北コースを模したもので、走行距離はニュルの4分の1程度。アップダウンやうねる路面があり、クルマにとっても人にとっても厳しいテストコースになる。

 待機場所から第3周回路へ入ると、最初は左へ下りながら、すぐに右に大きく曲がっていき途中から上り坂となってまだ左へ曲がっていく。およそ2車線ほどの幅のコースだが、継ぎ目もあるなど右の路面のほうが荒れている印象がある。

 大嶋選手はこの下り坂でしっかり加速、とんでもない速度(150km/h以上だよなぁ)の領域に持っていき、下りながら曲がる、上りながら曲がるといった下山を駆け抜けていく。GRヤリスはパワーを失うことなく、上り坂でもどんどん加速し、曲がり、速度を上げていく。

 ただ、とんでもない速度ながら不思議と怖くないのは大嶋選手の運転であるためだろうか。速度は明らかに速いのだが、風景はスローモーションのように流れ、単に「GRヤリスすげぇ、大嶋選手すげぇ」みたいなボキャ貧な感想しか出てこない。

 さすがに下りながら右へ巻き込むコーナーでは、大嶋選手も速度コントロール(しかも微妙な)しながら曲がっていたが、マイナスGの発生するジャンピングポイントでも接地性は失われる感じはなく、すごい世界を体感させていただいた。

 あと、市販タイプのGRヤリスのためか乗り心地がよかったのも印象的で、いきなりタイヤがドキュンとずれることは皆無だった。とんでもない速度域でもしっかり駆動力を伝えていた(もちろん、しっかり駆動力を伝えるようなアクセルワークがあってこその結果だと思う)。

 大嶋選手によるGRヤリスの同乗試乗の後は、佐々木雅弘選手によるGRヤリスMコンセプトの同乗試乗。試乗順としては2番目だったが、前の人が出ていく様子を見ているだけでも、圧倒的な加速力が分かるほど。

 いざ、同乗して同様に第3周回路に入っていくと、佐々木選手は即座に速度を上げ、G20E型4気筒の咆哮とともに、さらにとんでもない速度域に入っていく(おそらく200km/h超えているのでは? 体感です)。リアタイヤに加わる圧倒的なパワーがきちんと駆動力に転換され、コーナーの立ち上がりなどでは爆発的に加速。でありながら、フロントに駆動力があるためか、暴れつつバランスしているという不思議な感覚。仕事柄、GTドライバーやSFドライバー、WECドライバーの同乗走行の機会もあるが、それはすべて国際格式のサーキット。ニュルブルクリンクを模したという下山は圧倒的に峠道感覚で、そこを佐々木選手の鋭い感性でGRヤリスMコンセプトは立ち上がっていく。

 佐々木選手は最初はその爆発的なパワーを、鋭い感性とステアリング操作で前進力に変えているように見えたが、後半はある程度先読みしてG20E+ミッドシップ+GR-FOURの魅力を引き出していた。

 うねるような曲がり道でも鼻先がしっかり入っていき、そこから爆発的に加速していく、大嶋選手のときには「GRヤリスすげぇ、大嶋選手すげぇ」だったが、佐々木選手とGRヤリスMコンセプトでは「なんだよこれぇ」という、さらなるボキャ貧なコメントになる。

 危険な感じはあるかと問われると、佐々木選手であるから対処してくれるのだろうなという信頼はあるものの、自分だったら「アウトの領域」に入っているのは理解できる。

 GRヤリスMコンセプトは、確かな腕と豊かな経験があってこそ入っていける領域に連れて行ってくれるクルマであることは理解できた。

 佐々木雅弘選手に加え、マスタードライバーである豊田章男氏も言っていたことではあるが、GRヤリスMコンセプトはGRヤリスの次に乗ってほしいクルマであるという。GR86でドライビングの初歩やFRの運転をしっかりマスターし、その次にGRヤリスでハイパワー4WDをしっかり理解する。その先にあるクルマとしてGRヤリスMコンセプトはあるという。

新開発のパワフルな2.0リッター「G20E型」エンジンやミッドシップ4WDターボによって生まれ変わったGRヤリスMコンセプト。「神に祈る時間」は克服されたのか?

 同乗試乗の最後に、開発ドライバーである佐々木雅弘選手に、GRヤリスMコンセプトの開発のきっかけである「神に祈る時間」の克服はできたのか聞いてみた。

 佐々木選手は、「一部の祈る時間は、なくなってると思います。かなり」と、そもそも開発のきっかけとなった、コントロールができないというパーシャル時間はなくなっているという。

 しかしながら、「種類が違う、要するにそのアンダーステアなのかオーバーステアなのかニュートラルなのかというところの、祈る時間みたいのは種類が違うのですがまだあるので、そこは直していきたい」ともいう。これはもうドライビングの達人の領域に入っている佐々木選手の言葉で、翻訳のなかなか難しいところかもしれない。

 佐々木選手は具体的には「ドライバーが『もっと切ればいいのか、『アクセルで抑えればいい』のか、『車速を落とさなきゃいけない』のかということを考える時間がある。選択肢があるじゃないですか。それを『こっちだよ』とドライバーに、『アクセルを踏みなさいよ』ってちゃんと伝えるクルマ」と語り、クルマのインフォメーション性をもっと高めていきたいという。

 この新開発の2.0リッターエンジンを搭載するGRヤリスMコンセプトは、下山のテストコースをはじめ、スーパー耐久というレース現場でも開発が続けられている。スーパー耐久は公開開発と位置付けており、ハイパワー2.0リッターをミッドシップに搭載するターボ4WDの開発過程を実際に見ることが可能だ。2026年は参戦レース数も多くなっており開発を加速させている。世界的にも珍しいハイパワーミッドシップ4WD車として、早期の登場を期待したい。

編集部:谷川 潔