試乗記

新しくなったアルファ ロメオ「トナーレ」をワインディングで味わう

アルファ ロメオ「トナーレ」

 アルファ ロメオのミドルクラスSUV「トナーレ」がマイナーチェンジされ、この試乗会が箱根「バイカーズパラダイス」をベースに開催された。

 本国デビューは2022年、日本上陸は翌年の2月だから、マイチェンのサイクルとしては少し早めか。アルファ ロメオの販売台数はひところの4万台規模から、2025年は約7万3000台にまで盛り返したが、それでも「156」で迎えたピーク時(20万台を超えたこともあった)から考えると、まだまだ巻き返しを図りたいところだろう。

 その意味でも現状2番目に売れているというこのトナーレに、カンフル剤を投入するのは理にかなっている。ちなみに一番人気は、BセグメントのコンパクトSUVとなる「ジュニア」だ。

マイナーチェンジしたトナーレに試乗

 新型トナーレの変更点だが、カンフル剤と言った割に、その内容はコンサバティブだ。

 最もわかりやすい変更部分は、アピアランス。アルファ ロメオの象徴でもある盾型グリルは、初期型のハニカムメッシュが伝統的なホリゾンタルグリル(水平基調)に改められた。どうやらこれは、世界限定33台の超フラグシップモデル「Tipo33ストラダーレ」にトーンを合わせたようだ。

 また、グリルの横には「Asole」(アゾーレ:ボタンホールの意味)と呼ばれる4つの空気孔がデザインされた。これは往年のグランプリカーや、わかりやすいところでは初代「ジュリア GTA」が持つ、エンジン冷却用の楕円冷却ホールと同じ名称なのだという。筆者もかつては“アルフィスタ”だったけれど、その呼び方は初めて聞いた。機能的にはエンジンの冷却性能や、空力性能に貢献するという。

 さらにバンパー下のエアインテークを拡大して、ラジエターの冷却効率を向上。そのエアフローはボンネット内に滞留しやすい空気を、ホイールハウスからボディサイドへ導くという。効果としてはボディの浮き上がりや、風切り音の低減に貢献するようだ。またバンパー形状の変更で、歩行者保護性能も高まったそうだ。

 こうしたフロントまわりの形状変更によってフロントオーバーハングが切り詰められ、その全長は10mm短縮された。対して試乗した「Veloce」(ヴェローチェ:イタリア語で「速い/早い」の意味)はホイールオフセットを拡大し、全幅を左右合わせて8mmアップ。よりコンパクトかつワイドな見た目を得た。

試乗したのは「トナーレ イブリダ ヴェローチェ」(653万円)。ボディカラーは新色のモンツァ グリーン。ボディサイズは4520×1835×1600mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2635mm。車両重量は1600kg
フロントデザインは、2023年に世界33台限定で発売された「33 Stradale」に通じる造形をアレンジした、より立体感と存在感のあるボーダーライン模様のデザインに刷新。スクデット横には4つの小さな開口部を初採用し、ボンネット内への吸気や空力性能の向上に貢献するほか、バンパーのエアインテークも拡大してラジエターの冷却効率を向上させている

 ちなみに20インチホイールのデザインは、クローバーの葉をモチーフにして“フォリ”と呼ばれる。フロントグリルのデザインも「トライローブ」(3つの葉っぱ)と呼ばれているのは、アルファ ロメオのシンボル「クアドリフォリオ」(四つ葉のクローバー)になぞらえたからだろう。スペシャルなモデルに付けられる四つ葉に対して、こちらは三つ葉というのも、ちょっと控えめでかわいらしい。

 総じて外観の変更は、アルファ ロメオ乗りでもなければすぐにはわからないほどのマイナーさだ。とはいえトナーレのデザインは初期型からすでに完成されていたし、そのイメージを壊すことなく磨き上げた手腕は見事だと言うべきだろう。

「イタリア車は派手で奇抜」というイメージがあるかもしれないけれど、それは日常生活に楽しさを添える、フィアットのような庶民派モデルに多い傾向。対してアルファ ロメオやマセラティといったハイブランドは、落ち着いた雰囲気が基本だから、これでいいのだ。

特徴的なデザインの灯火類や、ドアミラーのイタリアンカラー、三つ葉をモチーフにしたデザインの20インチ3ホール“フォリ”アルミホイールなど、落ち着きのあるデザインの中にさりげないこだわりが込められている
ドライバーファーストにまとめられたインテリア
走行モードを切り替えられる「ALFA DNA ドライブモードセレクター」。パワートレーンやサスペンションなどの制御を変えられる
シート表皮はブラックレザーが標準。ボディカラーによっては新たにレッドも設定された
ラゲッジ容量は500Lを確保し、日常使いからレジャーまで幅広く対応。リアシートは6:4分割可倒式で、アームレスト部分だけをあけることもできる

 国内モデルのラインアップは、残念ながらプラグインハイブリッドがディスコンとなり、マイルドハイブリッドのみに。その呼び方も、イタリア語でハイブリッドを意味する「Ibrida」(イブリダ)に改められた。

 今回試乗したのは上級版のヴェローチェだが、ベーシックモデルとしては18インチタイヤがスタンダードとなる「スプリント」を用意している。

 ジープ「レネゲード」と共用するパワートレーンは、直列4気筒1.5リッターターボ(160PS/240Nm)と7速DCTの組み合わせだ。トランスミッションに48Vモーター(15kW:20PS/55Nm)を内蔵することで、マイルドハイブリッドを名乗っているのもこれまで通りである。

 出力自体は据え置きだが、制御プログラムはアップデートを受けて、0-100km/h加速が従来から0.3秒短縮の8.5秒になった。

最高出力117kW(160PS)/5750rpm、最大トルク240Nm(24.5kgfm)/1700rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンを搭載。加えて、最高出力15kW(20PS)/6000rpm、最大トルク55Nm(5.6kgfm)/2000rpmの48V電動モーターを組み合わせている。トランスミッションは7速DCT

 マイルドハイブリッドながら、電池残量次第ではEV走行も可能なトナーレ。どうしてもアクセル開度が大きくなるワインディングの試乗だと、純粋なEV走行はほぼできなかったが、たとえエンジンがかかってたとしても、その走りはかなりプレミアムだ。

 低速時の直列4気筒ターボはトルキーかつ排気音も静かで、エンジンコンパートメントの遮音も効いているから、メカニカルノイズが気にならない。またトランスミッションの制御が洗練されたせいもあるのだろう、出足もクラッチのつながりを意識させないほどスムーズだ。

スムーズでプレミアム感のある走り

 対してハンドリングは、かなり個性的。その一番の要因となるのは、13.6:1のクイックなステアリングだろう。兄貴分となる「ステルヴィオ」は12:1だから、それよりマイルドな設定になってはいるものの、攻めたギヤ比設定であることに変わりはない。なおかつ電動パワステの制御が極めて軽いから、慣れないとハンドルが切れ過ぎてしまうほどだ。

 今回のマイチェンでホイールオフセットが広がり、理論的にはスクラブ半径も増えているから、操舵フィールは若干マイルドになっているはず。しかしそのレスポンスは、相変わらず鋭くて過敏だ。街中ではこの特性を利用して、ステアリングに軽く手を添えながら、カッコつけて乗るのがイタリア流か。

 もちろんスカして乗るのも絵になるけれど、きちんと向き合えば予想以上のピュアさで応えてくれるのが、アルファ ロメオのいいところだ。

向き合えばきちんと応えてくれる

 速度が乗るほどに電動パワステはすわりがよくなり、適度に硬い足まわりには、しなやかさが伴ってくる。欧州メーカーはあまり公表しないけれど、ブッシュなども地味に改良されているのかもしれない。

 さらにここからDNAドライブモードを「D」(ダイナミック)へと転じれば、足まわりにはスタビリティが、パワートレーンには鋭さが増す。可変ダンパーの減衰力制御は、ほどよくロールスピードを抑えてくれるけれど、突き上げるまで締め上げない絶妙なサジ加減。

 エンジンはそれまで出足だけをアシストしていたモーターが、回転上昇に合わせて追従するようになる。野太くうなるエンジンサウンドはなかなかにエモーショナルで、3速ギヤのダッシュ力も力強い。自然吸気エンジン時代ほどのエモさはないし、4速からのステップ比がかなり離れているのは残念だけれど、ステアリングコラムに備え付けられた大ぶりなパドルを操作して、積極的に走らせる楽しさはやっぱりアルファ ロメオだ。

走りはしっかりアルファ ロメオらしさがある

 プジョー/シトロエン由来のマイルドハイブリッドはフラグシップモデルにも直列3気筒1.2リッターエンジンを使っているが、やっぱりCセグメント以上のボディには、1.5リッターくらい排気量がある方がいいと思う。

 俯瞰すればそのマイナーチェンジは実に地味な内容で、目新しいことはまるでなかった新型トナーレ。しかしそもそもの出来栄えがかなり骨太で、なおかつその完成度は高かったから、これに磨きをかけた改良の作り込みとその出来栄えは、とても誠実に映った。

 次期型は恐らくフィアット・クライスラー時代のこのプラットフォームが、「STLA Medium」(ステラ・ミディアム)に刷新されるだろう。となればエンジンも、1.2リッターエンジンにサイズダウンするかもしれない。

 そう考えるといまトナーレを選ぶのは、クルマ同様コンサバだけれど、手堅い選択だ。

気になるのであれば、トナーレという選択は間違いではないだろう
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛